最終更新:2026年11月5日(2026年11月時点の法令・運用にもとづいています)
「兄はアメリカに住んでいる」「娘は結婚してブラジルにいる」「母の兄弟は韓国在住」――相続人の中に海外に住んでいる方がいると、遺産分割協議書への署名と印鑑証明書をどう集めるかが大きな課題になります。海外では日本の印鑑証明書が取れないからです。
このページでは、名古屋のごとう司法書士事務所が、日本国籍の方・外国籍の方それぞれの署名の証明方法、住所の証明、協議書の対訳と郵送のコツ、代理人を立てる方法まで、海外在住の相続人がいる相続の進め方をまとめました。

このページのポイント
- 海外在住の日本国籍の方は、現地の日本大使館・総領事館でサイン証明(署名証明)と在留証明を取得します。
- 海外在住の外国籍の方は、現地の公証人による署名認証(必要に応じてアポスティーユ)、韓国なら印鑑証明書、中国なら公証処の署名公証などで対応します。
- 協議書は対訳付きで作り、内容を固めてから送ることで、国際郵便の往復を最小限にします。
- 海外に住む方が不動産の名義人になる場合は、国内連絡先(いなければ「なし」)を登記します(2024年4月〜)。
目次
なぜ印鑑証明書の代わりが必要なのか
遺産分割協議書で不動産の相続登記をするには、相続人全員が実印を押し、印鑑証明書を添付するのが原則です。印鑑証明書は「この協議書に押された印鑑は確かに本人のもの」と証明する役割を持っています。海外に住んでいると日本で住民登録ができず、印鑑証明書も取れないため、署名(サイン)が本人のものであることを別の方法で証明します。
日本国籍の相続人が海外にいる場合
サイン証明(署名証明)
現地の日本大使館・総領事館で、領事の目の前で遺産分割協議書に署名し、その署名が本人のものであることを証明してもらいます。相続登記では、協議書と証明書を綴り合わせて割印する形式(いわゆる形式1)で取得するのが確実です。
- 持参するもの:署名前の遺産分割協議書(その場で署名します)、日本のパスポート、手数料
- 事前予約が必要な公館や、遠方の場合に出張・郵送での対応がある公館もあります
在留証明
海外での住所を証明する書類で、同じく在外公館で取得します。相続人が不動産を取得して名義人になる場合に、住所を証明する書類として必要です。
近くに日本の在外公館がない場合や、現地の公証人で署名認証を受ける方法を取る場合もあります。どの方法が提出先の法務局・銀行で通用するか、事前に確認してから動くと安心です。関連記事:海外在住の相続人がいるとき|サイン証明・在留証明の取り方
外国籍の相続人が海外にいる場合

外国籍の方は日本の在外公館でサイン証明を受けられないため、住んでいる国の制度を使います。
| 居住国 | 主な署名の証明方法 |
|---|---|
| 韓国 | 韓国の印鑑証明書(実印を押印)、または公証人による署名認証 |
| 中国 | 公証処での署名(声明書)公証+アポスティーユ |
| アメリカ・ブラジル・フィリピンなど | 現地の公証人(Notary Public 等)による署名認証+アポスティーユ |
| その他の国 | 現地公証人の署名認証、または本国の在外公館での証明など(提出先と事前協議) |
いずれの場合も、署名した本人が誰かを特定できるよう、パスポートの写しなどの本人確認書類も添付してもらいます。
海外在住の方が不動産を取得する場合
- 住所の証明:日本国籍の方は在留証明、外国籍の方は現地の公的な住所証明や、住所を宣誓した書面に公証人の認証を受けたものなどを用意します。
- 国内連絡先の登記:2024年4月から、日本に住所がない方が不動産の名義人になる場合、日本国内の連絡先(親族や司法書士など)を登記することになりました。国内連絡先となる人がいない場合は、その旨を申請することもできます。
- 国籍等の申出:2026年10月5日以降の相続登記では、新たに名義人となる申請人の国籍等の申出も必要です。
- 管理と売却:海外から日本の空き家を管理するのは負担が大きいため、日本在住の相続人が取得して代償金を支払う、売却して代金を分けるといった方法もご検討ください。
協議書の対訳と郵送のコツ
- 日本で内容を固める相続人全員の合意内容を確認し、日本語の協議書と対訳(英語・韓国語・中国語・ポルトガル語など)を作成します。
- 署名前の書類を送る海外の相続人には、署名していない状態の協議書と対訳、手続きの案内書を国際郵便(追跡できるもの)で送ります。
- 現地で署名・証明在外公館や公証人の前で署名し、証明・アポスティーユを取得してもらいます。
- 日本へ返送原本を追跡可能な方法で返送してもらい、当事務所で内容を確認します。
- 登記・預金手続きすべてそろったら、法務局・金融機関に申請します。
協議書に一字でも誤りがあると、海外とのやり取りを最初からやり直すことになります。不動産の表示、相続人の氏名のつづり(パスポート表記)、生年月日を事前に入念に確認しましょう。協議書を複数枚にする場合は、ページのつなぎ目の扱いも公館・公証人に確認しておきます。
代理人を立てる・その他の注意点
- 代理人に任せる:海外の相続人が日本の親族などに遺産分割協議を委任することもできます。その場合は、委任状に署名証明を受けて送ってもらいます。
- 未成年の相続人がいる:親と子がともに相続人になる場合、親は子を代理できず、家庭裁判所で特別代理人の選任が必要になることがあります。関連記事:未成年の子がいる外国籍の相続|親が代わりに署名できない理由
- 相続税:海外在住の相続人も、日本の財産を相続すれば日本の相続税の対象になることがあります。課税される財産の範囲は亡くなった方と相続人の住所・国籍によって異なり、海外の財産まで課税対象になることもあります。日本で相続税の申告が必要な非居住者は、国内の納税管理人を通じて申告するのが一般的です。提携税理士と連携して対応します。
- 預金の受け取り:海外口座への送金は手数料や必要書類が金融機関ごとに異なります。代表相続人がいったん受け取って分配する方法も検討します。
関連記事:外国籍の相続人がいる遺産分割協議書の作り方、分け方が決まらない相続の家を先に売るには?海外の相続人がいても、共有名義になった相続不動産を売るには?海外の共有者がいる場合も
外国籍の方の相続・海外在住の相続人がいる相続のご相談は初回無料です。
「本国の書類の取り方がわからない」「相続人が海外にいる」など、まずはお気軽にお話をお聞かせください。
受付時間 9:00〜19:00(土日祝は事前予約で相談可能)/名古屋市中区丸の内三丁目15番3号 TCF丸の内ビル6階
お問い合わせフォーム 無料面談のWEB予約海外在住の相続人がいる相続についてよくあるご質問
海外にいる相続人は日本に帰国しないといけませんか?
いいえ。現地の日本大使館・総領事館でのサイン証明や、現地の公証人の署名認証を使えば、帰国しなくても手続きできます。一時帰国の予定がある場合は、日本の公証役場で署名認証を受ける方法もあります。
サイン証明はどこで取れますか?
日本国籍の方は、お住まいの地域を管轄する日本大使館・総領事館で取得できます。署名前の遺産分割協議書とパスポートを持参し、領事の前で署名します。予約が必要な公館も多いため、事前に確認してください。
外国籍の相続人が海外にいます。どうやって署名を証明しますか?
住んでいる国の公証人の前で署名し、署名認証を受けたうえでアポスティーユを付ける方法が一般的です。韓国在住なら韓国の印鑑証明書、中国在住なら公証処の署名公証を使うこともできます。
協議書は英語で作ってもよいですか?
日本の法務局に提出するため、日本語の協議書を正本とし、海外の相続人が内容を理解できるよう対訳を付けて作成するのが一般的です。外国語のみの協議書の場合は、日本語の訳文が必要です。
海外に住む相続人が不動産を相続できますか?
できます。住所を証明する書類を用意し、日本国内の連絡先を登記します。ただし海外からの管理は負担が大きいため、売却や日本在住の相続人への集約もあわせて検討するのがおすすめです。
費用はどのくらいかかりますか?
相続人の人数や居住国、必要な翻訳によって異なるため、ご相談時に事前のお見積りをお出しします。韓国籍の方の相続登記は15万円(税別)〜です。初回相談は無料です。
※本ページは一般的な情報提供を目的としたものです。在外公館・各国の公証制度や、法務局・金融機関の運用は変わることがあります。具体的なご事情については、お気軽にご相談ください。