最終更新:2026年11月5日(2026年11月時点の法令・運用にもとづいています)
「アメリカ国籍の夫が名古屋の家を残して亡くなった」「アメリカに住む兄も相続人で、英語の書類をどうすればいいかわからない」「相続人の一人がアメリカ国籍を取得している」――アメリカが関係する相続は、州ごとに法律が違う、戸籍も印鑑証明もない、遺産管理人(プロベート)という日本にない制度があるという3つの特徴があり、戸惑う方が多い分野です。
このページでは、ごとう司法書士事務所が、日本にある財産にどの法律が適用されるのか、アメリカの相続手続きの考え方(プロベート)、出生証明書や宣誓供述書・公証の集め方、アメリカ在住の相続人がいるときの進め方をご説明します。

まず押さえておきたい3つのこと
- アメリカには全国共通の相続法がなく、州ごとの法律によります。多くの州の国際私法は「不動産は所在地の法律、動産は亡くなった方の住所地の法律」と考えるため、日本にある不動産は日本の民法で相続人を決めます(反致)。日本に住んでいた方なら預金なども日本法です。
- アメリカでは、相続は裁判所が選んだ遺産管理人(執行者)が遺産を清算してから分配する「管理清算主義(プロベート)」が基本です。日本の財産については日本の手続きで進めますが、アメリカ側の財産や税務と並行することがあります。
- 戸籍や印鑑証明はなく、州発行の出生・婚姻・死亡証明書、相続人の宣誓供述書(Affidavit)、公証人(Notary Public)の署名認証+アポスティーユで相続関係と署名を証明します。
目次
日本の財産にどの法律が適用される?
日本の通則法36条は相続を亡くなった方の本国法に委ねますが、アメリカは州によって法律が異なる国(不統一法国)なので、まず亡くなった方と最も関係の深い州の法律を本国法とみます(通則法38条3項)。そして、アメリカの各州は一般に不動産の相続は不動産所在地の法律、動産の相続は亡くなった方の住所地(ドミサイル)の法律による、という考え方(相続分割主義)を採っています。その結果、通則法41条の反致により次のように整理されます。
| 財産・状況 | 適用される相続法 | 補足 |
|---|---|---|
| 日本にある不動産 | 日本の民法 | 亡くなった方の住所がどこでも同じ |
| 日本の預貯金など(亡くなった方の住所が日本) | 日本の民法 | 長く日本で暮らしていた方はこちら |
| 日本の預貯金など(住所がアメリカの州) | その州の法律 | 州の無遺言相続法で相続人・相続分が決まります(例:配偶者と子で分ける割合は州により異なります) |
| 遺言(Will)がある場合 | 方式・効力は別途判断 | アメリカで作った遺言も、日本の財産について方式が有効なら使えます。日本の検認手続きが必要になることがあります |
名古屋の自宅など日本の不動産は、日本の民法で、日本の手続き(相続登記)で引き継げます。アメリカのプロベート裁判所の手続きを経る必要はありません。ただし、相続人であることや署名の証明は、アメリカの書類で用意することになります。
アメリカの相続制度の考え方(プロベート)
日本では亡くなった瞬間に相続人が財産を引き継ぎますが、アメリカでは、遺産はいったん遺産管理人(執行者)の管理下に置かれ、裁判所の監督のもとで債務の清算や税金の支払いを済ませてから相続人に分配されます。これがプロベート(検認・遺産管理手続き)です。アメリカ国内の財産がある場合は、現地の弁護士を通じてこの手続きを進めることになります。
- プロベートを避けるため、アメリカでは生前信託(リビングトラスト)や、口座の受取人指定(TOD・POD)、共有名義(ジョイント・テナンシー)が広く使われています。亡くなった方がこれらを利用していた場合、その財産は遺産分割の対象にならないことがあります。
- 遺言がない場合の相続人・相続分は州の無遺言相続法によります。たとえば配偶者と子がいる場合の割合や、夫婦共有財産(コミュニティ・プロパティ)の扱いは州ごとに異なります。
- 相続放棄に相当する制度(Disclaimer)はありますが、日本の家庭裁判所の相続放棄とは手続きも効果も異なります。日本の財産について放棄する場合は、日本の家庭裁判所で原則3か月以内に行います。
相続関係を証明する書類

- 死亡証明書(Death Certificate):アメリカで亡くなった場合は、州の記録機関(Vital Records)が発行する認証付きの謄本。日本で亡くなった場合は日本の除票・死亡届記載事項証明書で足ります。
- 出生証明書(Birth Certificate)・婚姻証明書(Marriage Certificate):親子関係・婚姻関係の証明に。州や郡の記録機関から取り寄せます。離婚歴がある場合は離婚判決(Divorce Decree)も必要になることがあります。
- 宣誓供述書(Affidavit of Heirship):相続人全員を明らかにし「ほかに相続人はいない」ことを、公証人(Notary Public)の前で宣誓して作成します。文案は当事務所で用意します。
- 日本側の記録:住民票の除票、閉鎖外国人登録原票、日本人配偶者・子の戸籍。日本人と結婚した方は、日本の戸籍に婚姻・出生の記載があります。
アメリカはアポスティーユ条約の締約国です。州発行の証明書は州務長官(Secretary of State)で、公証人の認証を受けた書類は州務長官や郡書記官でアポスティーユを付けてもらい、日本語訳を添えて提出します。
アメリカ在住の相続人がいるとき
- 日本国籍の相続人:お住まいの地域を管轄する日本の総領事館でサイン証明と在留証明を取得します。
- アメリカ国籍の相続人:遺産分割協議書(英語対訳付き)に公証人(Notary Public)の前で署名し、公証人の認証にアポスティーユを付けて日本へ送ってもらいます。銀行やUPSストアなどに公証人がいることも多く、手続き自体は身近です。
- 二重国籍の方:日本国籍も持っている方は、日本の総領事館のサイン証明を使うほうが日本の法務局で扱いやすい場合があります。
- 協議書の氏名はパスポートや証明書の表記に合わせ、日本の戸籍や登記簿の表記(漢字・カタカナ)との同一性を示す資料を添えます。
詳しくは「海外在住の相続人がいる相続(サイン証明・公証)」をご覧ください。
税金のこと(日本の相続税とアメリカの遺産税)
アメリカが関係する相続では、日本の相続税のほかに、アメリカの連邦遺産税や州の遺産税・相続税が問題になることがあります。アメリカ市民や居住者が亡くなった場合は全世界の財産がアメリカの遺産税の対象になり得ますが、基礎控除額が大きいため実際に課税されるケースは限られます。一方、アメリカ市民でも居住者でもない方がアメリカ国内に不動産や株式を遺した場合は、基礎控除が小さく、申告が問題になることがあります。日本の相続税は、相続人が日本に住んでいれば海外の財産も対象になるのが原則です。日米間には相続税に関する条約があり、二重課税を調整できる場合があります。具体的な税務判断は、提携税理士と、必要に応じてアメリカの税務専門家とも連携してご案内します。関連記事:外国籍の方の預貯金の相続手続き〜銀行口座の凍結解除
よくあるケースと進め方(例)
※以下は、よくあるご相談をもとにした進め方の例です(実際の事案を特定するものではありません)。
ケース1:アメリカ国籍の夫が名古屋の自宅を残して死亡、日本人の妻と子
日本の不動産なので日本民法で相続人は妻と子。夫の出生証明書と、妻の戸籍(婚姻・出生の記載)、閉鎖外国人登録原票で相続関係を証明し、妻と子の印鑑証明書で遺産分割協議を行います。アメリカ側に財産がなければ、プロベートは不要です。
ケース2:日本人の父が死亡、相続人の一人がアメリカ在住で米国籍を取得
日本民法・日本の戸籍で手続きします。アメリカ在住の相続人には、英語対訳付きの協議書に公証人の前で署名してもらい、アポスティーユを付けて返送してもらいます。帰化により日本の戸籍から除かれている場合は、除籍の記載と現在の氏名のつながりを宣誓供述書で補います。
ケース3:アメリカ在住のアメリカ国籍の方が日本に預金を残して死亡
預金には住所地の州の法律が適用されます。州の無遺言相続法にもとづいて相続人・相続分を整理し、死亡証明書・宣誓供述書にアポスティーユと訳文を付けて、金融機関に準拠法の説明書とともに提出します。アメリカ側でプロベートが進んでいる場合は、遺産管理人の選任書類を使うこともあります。
費用のめやす
アメリカが関係する相続登記は、必要な証明書の数、相続人の居住州、翻訳の量、アメリカ側の手続きとの連携の要否によって異なるため、ご相談時に事前のお見積りをお出しします。登録免許税や証明書の実費は別途です。

外国籍の方の相続・海外在住の相続人がいる相続のご相談は初回無料です。
「本国の書類の取り方がわからない」「相続人が海外にいる」など、まずはお気軽にお話をお聞かせください。
受付時間 9:00〜19:00(土日祝は事前予約で相談可能)/名古屋市中区丸の内三丁目15番3号 TCF丸の内ビル6階
お問い合わせフォーム 無料面談のWEB予約アメリカが関係する相続についてよくあるご質問
アメリカ国籍の夫が亡くなりました。日本の家はアメリカの裁判所の手続きが必要ですか?
いいえ。日本にある不動産は日本の民法で相続人が決まり、日本の法務局で相続登記をします。アメリカのプロベート裁判所の手続きは、アメリカ国内に財産がある場合に別途必要になるものです。
アメリカのどの州の法律になるのか、どう判断しますか?
亡くなった方が最後に住んでいた州(ドミサイル)を基準に判断するのが一般的です。日本に住んでいた方であれば、日本の財産については日本法が適用されるため、州法の調査が不要になることも多くあります。
出生証明書はどこで取れますか?
出生した州(または郡)の記録機関(Vital Records Office)に請求します。オンライン申請で日本へ郵送してもらえる州も多くあります。アポスティーユは州務長官で付けてもらいます。
アメリカの公証人の認証だけで日本の登記に使えますか?
公証人(Notary Public)の署名認証を受けた遺産分割協議書や宣誓供述書に、州務長官などのアポスティーユを付けたものが一般的に使われます。提出先によって求め方が異なるため、事前に確認して進めます。
相続人が二重国籍です。どの方法で署名を証明しますか?
日本国籍も持っている方は、日本の総領事館でサイン証明を受ける方法が使えます。アメリカの公証人による認証でも対応できますが、法務局での扱いやすさから、日本の在外公館の証明を使うことが多いです。
費用はどのくらいですか?
証明書の数や相続人の居住州、アメリカ側の手続きとの連携の有無で変わるため、ご相談時に事前のお見積りをお出しします。初回相談は無料です。
※本ページは一般的な情報提供を目的としたものです。アメリカの各州法や税制、在外公館・法務局・金融機関の運用は、事案や時期によって異なる場合があります。具体的なご事情については、お気軽にご相談ください。