最終更新:2026年11月5日(2026年11月時点の法令・運用にもとづいています)
「日本人の夫が亡くなった。フィリピン籍の私と子どもはどうすればいい?」「フィリピン籍の母が名古屋の家を残して亡くなった」――国際結婚のご家庭が多いフィリピン籍の方の相続は、亡くなった方が日本人かフィリピン人かで、使う法律も書類も大きく変わります。
このページでは、ごとう司法書士事務所が、ケース別にどの法律で相続人が決まるのか、フィリピン民法の相続ルール(遺留分・非嫡出子の扱い)、PSA証明書と宣誓供述書の集め方、在留資格とあわせて考えたいことを、やさしい日本語でご説明します。

まず押さえておきたい3つのこと
- 亡くなった方が日本人なら日本の民法と日本の戸籍で手続きします。フィリピン籍の配偶者・子が相続人でも、日本人同士の相続とほぼ同じです。
- 亡くなった方がフィリピン籍なら、フィリピン民法16条が「相続は本国法による」と定めているため、日本の財産もフィリピン民法で相続人・相続分を決めます(日本法に戻る「反致」は起きません)。
- フィリピンに戸籍はなく、PSA(フィリピン統計庁)発行の出生・婚姻・死亡証明書と、在日フィリピン大使館・領事館などで作る宣誓供述書で相続関係を証明します。
目次
あなたはどのケース?
| 状況 | 相続人を決める法律 | 主な証明書類 |
|---|---|---|
| A:日本人の夫(妻)が亡くなり、配偶者がフィリピン籍 | 日本の民法 | 日本の戸籍。配偶者が日本在住で印鑑登録があれば印鑑証明書も通常どおり |
| B:フィリピン籍の方が日本で亡くなった | フィリピン民法(本国法) | PSAの出生・婚姻・死亡証明書、宣誓供述書、日本の除票など |
| C:フィリピン籍の方が帰国後に亡くなり、日本に財産が残った | フィリピン民法 | PSA証明書、宣誓供述書。フィリピン側の相続手続きとの調整 |
| D:帰化した元フィリピン籍の方が亡くなった | 日本の民法 | 日本の戸籍。帰化前の親子関係はPSA証明書で補うことがあります |
※亡くなった方がイスラム教徒の場合は、フィリピン民法ではなく「ムスリム身分法」が適用されることがあります。
フィリピン民法の相続ルール
ケースB・Cでは、フィリピン民法(1950年施行)の相続のルールで相続人と相続分を決めます。日本との違いが大きいのは次の点です。
法定相続(遺言がない場合)の順位
- 第1順位:嫡出子などの直系卑属。配偶者がいる場合は、配偶者も子1人分と同じ割合で一緒に相続します(日本のように配偶者が2分の1ではありません)。
- 非嫡出子(婚姻外の子)も相続人になりますが、相続分は嫡出子の2分の1です。
- 子がいない場合は父母などの直系尊属が相続し、配偶者がいれば配偶者と半分ずつです。
- 子も親もいない場合は配偶者。配偶者と兄弟姉妹(またはその子)がいるときは、配偶者2分の1・兄弟姉妹2分の1です。
- いずれもいなければ、5親等までの傍系血族、最後は国家が相続します。
遺留分(レジティム)が広く、強い
フィリピン民法には「強制相続人(compulsory heirs)」の制度があり、嫡出子・直系尊属・配偶者・非嫡出子には遺言でも奪えない取り分(legitime)があります。たとえば嫡出子には遺産の2分の1が確保され、配偶者にはそこからさらに子1人分と同額が確保されます。日本の遺留分よりも割合が大きく、遺言で自由に処分できる部分は限られる点に注意が必要です。
そのほかの違い
- 遺言は、公証人と証人の前で作る公証遺言(notarial will)と自筆遺言(holographic will)が中心です。日本で作った公正証書遺言も、日本の財産については方式として有効に使えます。
- 相続の放棄は、公正証書または裁判所への申立てで行います。
- フィリピン国内の不動産は、外国籍の方は原則として相続による取得を除き所有できないなど、日本とは別の制限があります。
フィリピン民法で相続人を判断する場合、法務局や金融機関に対して、準拠法の根拠(通則法36条・フィリピン民法16条)と、フィリピン民法の相続人・相続分の規定を説明する書面を添えるのが一般的です。当事務所で作成します。
相続関係を証明する書類(PSA証明書・宣誓供述書)

- PSA(Philippine Statistics Authority)発行の証明書:出生証明書(Birth Certificate)、婚姻証明書(Marriage Certificate)、死亡証明書(Death Certificate)。フィリピン国内の市町村の登録官でも発行されますが、日本の手続きではPSA発行のものが求められるのが一般的です。オンライン申請で日本へ郵送してもらうこともできます。
- CENOMAR(独身証明書)/婚姻履歴証明書:前婚の有無や離婚(フィリピンでは原則離婚が認められないため「婚姻無効」の判決など)を確認するときに使います。
- 宣誓供述書(Affidavit):相続人全員が「相続人は○○であり、ほかにいない」ことを宣誓し、在日フィリピン大使館(東京)・総領事館(大阪)やフィリピンの公証人の認証を受けます。日本在住の相続人の親子関係が外国人登録原票に載っていない場合にも使います。
- 日本側の記録:住民票の除票、閉鎖外国人登録原票、日本人配偶者・子の戸籍(日本人と結婚した方は、その戸籍に婚姻・出生の記載があります)。
フィリピンはアポスティーユ条約の締約国です。PSA証明書をフィリピン外務省(DFA)でアポスティーユ付きにしてもらい、日本語訳を添えて提出します。
フィリピン在住の相続人がいるとき
フィリピンに住む相続人は、遺産分割協議書(英語または対訳付き)に現地の公証人(Notary Public)の前で署名し、署名認証とアポスティーユを付けて日本へ送ってもらいます。フィリピンでは公証制度が広く使われているため、手続き自体は比較的スムーズです。協議書の氏名はパスポートの表記に合わせ、日本の通称名との同一性を示す資料を添えます。
フィリピン国内にも財産がある場合は、現地で相続人全員による「遺産分割合意書(Extrajudicial Settlement)」を公正証書で作成し、新聞公告や現地の遺産税の納付を経て名義を移す手続きが別途必要になります。遺言や債務の有無によって利用できる手続きが変わるため、当事務所は日本側の手続きを担当し、現地の弁護士と連携してご案内します。
在留資格・住まい・お子さんのこと
日本人の配偶者を亡くしたフィリピン籍の方からは、相続と同時に「このまま日本に住めるのか」というご相談も多くいただきます。
- 在留資格:「日本人の配偶者等」の在留資格は、配偶者の死亡後14日以内の届出が必要で、その後は「定住者」などへの変更を検討することになります。相続した家に住み続けるためにも、早めに出入国在留管理庁や専門家にご相談ください。
- お子さんが相続人になる場合:未成年のお子さんと親が一緒に相続人になるときは、親が子を代理して遺産分割協議に署名できないため、家庭裁判所で特別代理人を選ぶ必要があります。
- 住まいの確保:自宅を配偶者が取得するか、売却して分けるかは、今後の生活設計とあわせて考えます。宅地建物取引士でもある司法書士が、売却・活用もふくめてご提案します。
関連記事:日本人の夫と死別したら?外国籍の妻の在留資格と相続、未成年の子がいる外国籍の相続|親が代わりに署名できない理由
よくあるケースと進め方(例)
※以下は、よくあるご相談をもとにした進め方の例です(実際の事案を特定するものではありません)。
ケース1:日本人の夫が死亡、フィリピン籍の妻と未成年の子
日本民法で相続人は妻と子。夫の戸籍で相続関係を証明でき、妻は日本の印鑑証明書を使えます。子が未成年なら特別代理人の選任を経て遺産分割協議を行い、自宅を妻が取得する形にまとめます。あわせて在留資格の手続きを進めます。
ケース2:フィリピン籍の母が名古屋の家を残して死亡、子は日本とフィリピンに
フィリピン民法で相続人は子(配偶者がいれば配偶者も)。PSAの出生証明書と死亡の証明(日本の除票)、相続人全員の宣誓供述書で相続関係を証明します。フィリピン在住の子には現地の公証人で署名認証を受けてもらい、相続登記のうえ売却まで進めます。
ケース3:フィリピン籍の夫に、フィリピンに前婚の子がいた
フィリピン民法では前婚の子も非嫡出子も相続人になります。PSAの証明書や婚姻履歴の確認で相続人を漏れなく確定し、全員の署名を集める必要があります。相続人の所在がわからない場合の進め方もご相談ください。
費用のめやす
亡くなった方が日本人の場合は、通常の相続登記とほぼ同じ費用感です。亡くなった方がフィリピン籍の場合は、PSA証明書の取得、宣誓供述書の文案作成、準拠法の説明書、翻訳が加わるため、ご相談時に事前のお見積りをお出しします。登録免許税や証明書の実費は別途です。

外国籍の方の相続・海外在住の相続人がいる相続のご相談は初回無料です。
「本国の書類の取り方がわからない」「相続人が海外にいる」など、まずはお気軽にお話をお聞かせください。
受付時間 9:00〜19:00(土日祝は事前予約で相談可能)/名古屋市中区丸の内三丁目15番3号 TCF丸の内ビル6階
お問い合わせフォーム 無料面談のWEB予約フィリピン籍の方の相続についてよくあるご質問
日本人の夫が亡くなりました。私はフィリピン籍ですが、相続できますか?
できます。亡くなった方が日本人なら日本の民法が適用され、配偶者は相続人です。国籍は関係ありません。日本に住んで印鑑登録をしていれば、印鑑証明書も通常どおり使えます。
フィリピン籍の母が亡くなりました。相続人は日本の法律で決まりますか?
いいえ。フィリピン民法が「相続は本国法による」と定めているため、日本の財産についてもフィリピン民法で相続人・相続分を決めます。配偶者と子が同じ割合で相続するなど、日本と違う点があります。
PSA証明書はどうやって取りますか?
PSAのオンライン申請サービスで日本への郵送を申し込めるほか、フィリピンのご家族に取得してもらう方法もあります。アポスティーユはフィリピン外務省(DFA)で付けてもらいます。
フィリピンでは離婚ができないと聞きました。相続に影響しますか?
影響することがあります。日本で離婚していてもフィリピン側に反映されていない場合や、婚姻無効の判決がある場合など、配偶者の地位の確認が必要です。婚姻履歴の証明書で確認します。
フィリピンにある財産の相続も頼めますか?
フィリピン国内の手続きは現地の弁護士・公証人が行う必要がありますが、日本側で必要になる書類(日本の戸籍へのアポスティーユなど)の準備や、現地専門家との連携についてご案内しています。
費用はどのくらいですか?
亡くなった方の国籍や必要な証明書によって変わるため、ご相談時に事前のお見積りをお出しします。初回相談は無料です。
※本ページは一般的な情報提供を目的としたものです。フィリピン法の内容や在外公館・法務局・金融機関の運用は、事案や時期によって異なる場合があります。具体的なご事情については、お気軽にご相談ください。