最終更新:2026年11月5日(2026年11月時点の法令・運用にもとづいています)
外国籍の方の相続でいちばん時間がかかるのが、本国の書類集めです。「どの書類を、どこに、どうやって請求するのか」「取った書類はそのまま使えるのか」「翻訳は誰がするのか」――国によって答えが違うため、インターネットの断片的な情報では迷ってしまいがちです。
このページでは、名古屋のごとう司法書士事務所が、国別の必要書類、日本で取れる記録、宣誓供述書、翻訳文、アポスティーユ・領事認証について、相続登記の実務に沿ってまとめました。

このページのポイント
- 相続人の証明は、本国の身分証明書(戸籍・家族関係の証明書・公証書・出生婚姻証明書など)と、日本の記録(住民票の除票・閉鎖外国人登録原票・届出記載事項証明書)の組み合わせで行います。
- 戸籍のない国では、相続人全員を明らかにする宣誓供述書(Affidavit)を作ることがあります。
- 外国語の書類にはすべて日本語訳を付けます。訳文には翻訳者の氏名を記載します。
- 提出先や国によって、アポスティーユや領事認証を求められることがあります。
目次
なぜ本国の書類が必要なのか
相続登記や預貯金の解約では、「この人たちが相続人で、ほかに相続人はいない」ことを書類で証明しなければなりません。日本人なら戸籍で証明できますが、外国籍の方の出生・婚姻・親子関係は、本国の役所に記録されているのが基本です。日本の法律(日本民法)が適用される場合でも、身分関係の証明には本国の書類が必要になります。
国別の主な必要書類
| 国・地域 | 主な書類 | 主な請求先 |
|---|---|---|
| 韓国 | 家族関係登録簿の証明書(基本・家族関係・婚姻関係・入養関係など、詳細証明書)、除籍謄本 | 在日韓国大使館・総領事館(名古屋は駐名古屋大韓民国総領事館)、韓国の市区町村 |
| 中国 | 親族関係公証書、出生・結婚・死亡公証書、署名の公証 | 中国の公証処(中国在住の家族が申請) |
| 台湾 | 戸籍謄本(除籍を含む) | 台湾の戸政事務所(台北駐日経済文化代表処を通じた手続きの案内もあり) |
| ブラジル | 出生証明書・婚姻証明書(Certidão)、宣誓供述書 | ブラジルの登記所(Cartório)、在日ブラジル総領事館 |
| フィリピン | PSA発行の出生・婚姻・死亡証明書、宣誓供述書 | フィリピン統計庁(PSA)、在日フィリピン大使館・総領事館 |
| ベトナム | 出生証明書・婚姻証明書、宣誓供述書など(認証が必要な場合あり) | ベトナムの人民委員会など、在日ベトナム大使館・総領事館 |
| アメリカ | 州発行の出生・婚姻・死亡証明書、宣誓供述書(Affidavit) | 各州の Vital Records 担当機関、現地または在日の公証人・領事 |
※必要な範囲は、亡くなった方・相続人の状況や提出先の法務局・金融機関によって変わります。表は一般的な目安です。
韓国の証明書の取り方は「韓国籍の方の相続」、中国の公証書は「中国籍の方の相続」で詳しく解説しています。
日本で取れる記録(閉鎖外国人登録原票など)

長く日本で暮らしてきた外国籍の方の身分関係は、日本の役所にも記録が残っています。本国の書類を補ったり、本籍地を探す手がかりにしたりするのに役立ちます。
- 住民票の除票:2012年7月9日以降、外国籍の方も住民票に記載されています。亡くなった方の最後の住所、世帯主との続柄、通称名などがわかります。
- 閉鎖外国人登録原票:2012年7月に廃止された外国人登録制度の記録で、出入国在留管理庁(法務省)が保管しています。亡くなった方の分は、相続人などが「死亡した外国人に係る外国人登録原票の写し」として請求できます。住所の履歴、本国の住所(本籍)、家族の記載などがわかります。
- 届出記載事項証明書・受理証明書:外国籍の方が日本の役所に出した婚姻届・出生届・死亡届などの記録です。届出をした市区町村に請求します。
- 日本人家族の戸籍:日本人と結婚した方、日本国籍の子がいる方は、その戸籍に婚姻や出生の記録があります。
外国人登録原票の家族欄は本人の申告にもとづく記載で、それだけで相続人を確定することは原則できません。本国の書類と照らし合わせて使います。
戸籍のない国の「宣誓供述書」
アメリカ・ブラジル・フィリピンなど、家族関係を一つの帳簿で証明できない国では、出生証明書や婚姻証明書だけでは「ほかに子がいない」ことまで証明できません。そこで、相続人が「被相続人の相続人は○○と○○であり、ほかにはいない」という内容を公証人や領事の前で宣誓し、署名した宣誓供述書(Affidavit)を作成します。
- 作成場所:本国の公証人、在日の大使館・総領事館、日本の公証役場(外国語文書の認証)など
- 記載内容:被相続人の氏名・生年月日・死亡日、婚姻歴、子の有無と氏名、相続人の範囲など
- 当事務所では、日本の法務局で通用する内容になるよう文案を作成してお渡しします
翻訳文の作り方
外国語で書かれた書類には、すべて日本語の訳文を付けます。相続登記では、次の点に気をつけます。
- 訳文の末尾に翻訳者の氏名(住所)と翻訳した日を記載します。ご家族が翻訳しても構わないのが一般的ですが、誤訳があると審査が止まります。
- 氏名・生年月日・地名は、原本の表記と日本で使っている表記(漢字・カタカナ・通称名)の対応がわかるようにします。
- 証明書のすべてを訳す必要があるか、相続に関係する部分の抄訳でよいかは、提出先によって判断が分かれることがあります。
アポスティーユと領事認証
外国の公文書を別の国で使うとき、その文書が本物であることを示す証明として、アポスティーユ(ハーグ条約の締約国間)や領事認証(締約国でない場合)が使われます。
| 国・地域 | アポスティーユ条約 | ひとこと |
|---|---|---|
| 韓国・アメリカ | 締約国 | 本国の権限機関でアポスティーユを取得 |
| 中国 | 締約国(2023年11月7日〜) | 従来の領事認証の二度手間が不要に |
| ブラジル・フィリピン | 締約国 | 公証した書類にアポスティーユを付けて送付 |
| ベトナム | 締約国(2026年9月11日〜) | 2025年12月31日に加入。発効前に取得した書類は領事認証の扱いを確認 |
| 台湾 | 締約国ではない | 公証・外交部の験証・台北駐日経済文化代表処の験証で認証 |
日本の法務局への相続登記では、提出する書類の種類や内容によって必要性が判断されます。一方、金融機関では独自にアポスティーユ等を求めることもあります。取り寄せる前に提出先の要件を確認し、二度手間を防ぎましょう。
逆に、日本の戸籍や住民票を外国の役所・銀行に提出する場合は、日本の外務省でアポスティーユを取得します(私文書は公証役場での認証が先に必要です)。
書類が集まらないときの対処法
- 本国の記録が戦争・災害などで失われている:閉鎖外国人登録原票、日本の届出記録、宣誓供述書などを組み合わせて立証します。
- 本国に請求できる家族がいない:在日の大使館・領事館での取得や、現地の代理人を通じた取得を検討します。
- 相続登記の期限が迫っている:「相続人申告登記」でいったん義務を果たし、書類がそろってから相続登記を申請できます。
関連記事:外国籍の相続で書類が集められないときの解決策、相続登記の期限まで5か月!本国書類が間に合わない外国籍の方の応急処置、外国籍の相続登記で住所がつながらない?附票がない場合の証明方法
2026年10月5日以降の相続登記などでは、新たに名義人となる申請人の国籍等を申し出て、住民票や在留カード・パスポートの写しなどで証明します。外国籍の方は在留カードやパスポートの写しを用意しておきましょう。関連記事:相続登記で国籍の申出が必要に?2026年10月の新ルール
外国籍の方の相続・海外在住の相続人がいる相続のご相談は初回無料です。
「本国の書類の取り方がわからない」「相続人が海外にいる」など、まずはお気軽にお話をお聞かせください。
受付時間 9:00〜19:00(土日祝は事前予約で相談可能)/名古屋市中区丸の内三丁目15番3号 TCF丸の内ビル6階
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本国の書類の取り寄せも依頼できますか?
はい。韓国の証明書の領事館への請求、中国の公証書の依頼文案の作成、宣誓供述書の文案作成、翻訳まで対応しています。海外のご家族とのやり取りもお手伝いします。
閉鎖外国人登録原票はどこに請求しますか?
出入国在留管理庁(法務省)に郵送で請求します。亡くなった方の分は、配偶者や子などの相続人が「死亡した外国人に係る外国人登録原票の写し」として請求できます。届くまで数週間かかることがあります。
翻訳は家族がしてもよいですか?
相続登記では、翻訳者の氏名を記載した訳文であれば、ご家族が翻訳したものでも受け付けられるのが一般的です。ただし、氏名や地名の表記違いなどで審査が止まることがあるため、慣れた専門家に任せるほうが確実です。
取った書類に有効期限はありますか?
相続登記に使う相続関係の書類には、法律上の有効期限は原則としてありません。ただし、金融機関では「発行から3か月(6か月)以内」などの独自の期限を設けていることが多いため、手続きの順番を考えて取得します。
本国にまったく書類がない場合、手続きできませんか?
日本の記録や宣誓供述書などを組み合わせて立証できる場合があります。法務局と事前に協議しながら進めることもありますので、あきらめずにご相談ください。
※本ページは一般的な情報提供を目的としたものです。各国の制度や法務局・金融機関の運用は変わることがあり、事案によって必要な書類も異なります。具体的なご事情については、お気軽にご相談ください。