遺産分割,まとまらない,相続不動産,売却,換価分割,調停,海外相続人,外国籍,名古屋,司法書士

お問い合わせはこちら

ブログ

分け方が決まらない相続の家を先に売るには?海外の相続人がいても名古屋で解説

2026/11/01

はじめに|「分け方が決まるまで、家は売れない」とあきらめていませんか

家を売ることと、代金をどう分けるかは、別々に決められます。先に売り、分け方はお金になってから話し合う道があります。

お父様が亡くなって2年。実家はだれも住まないまま傷んでいくのに、韓国にいる兄は「介護をした自分の取り分を増やすべきだ」と言い、妹は「生前にもらった人がいる」と言って、遺産の分け方の話し合いが止まっている。買いたいという人が現れたのに、「全員の合意がないから売れない」と言われてしまった――名古屋市中区のごとう司法書士事務所には、こうした「分け方で止まった家」のご相談が少なくありません。

結論から申し上げると、分け方がまとまっていなくても、家を売ること自体は先に進められます。遺産分割は全部を一度に決めなければならないものではなく、「家は売って現金にする」という部分だけを先に合意することが法律で認められているからです。代金は分けるまで安全に保管し、取り分の争いはお金になってから続ければよいのです。それでも一人が売却そのものに反対するなら、家庭裁判所の調停で「売ること」を先に決める道もあります。この記事では、名古屋市中区のごとう司法書士事務所が、なぜ売却と分割を切り離せるのか、合意書をどう作り、代金をどう保管し、反対する相続人がいるときに裁判所でどう進めるのかを、海外にいる相続人や本国法の注意点とあわせて、手続きの順番に沿ってやさしくご説明します。

「売る」と「分ける」は切り離せる|家を先に現金に換え、分け方はお金の段階で決められます

遺産分割は一部だけ先に行えるため、「家を売って代金にする」ことだけを全員で決め、取り分は後から決められます。

話し合いが止まる相続の多くは、「だれがいくらもらうか」でもめています。ところが、家が売れない本当の理由はそこではありません。亡くなった方の名義のままの家は、相続人全員が売主にならないと売れないからです。つまり必要なのは「取り分の合意」ではなく、「売ることの合意」です。この二つを切り離して考えると、出口が見えてきます。

法律の仕組みを順に見ます。民法は、相続人がいつでも協議で遺産の全部または一部を分けられると定めており(民法907条1項。2019年7月1日施行の改正で明文化)、全部が決まるまで何も確定できないわけではありません。そして、不動産を売って代金を分ける方法は「換価分割」と呼ばれ、遺産分割の正式な方法の一つです。ここで大切なのは、換価分割には「売る」と「代金を分ける」の二つの段階があり、前者だけを先に合意できることです。「家は売却し、代金から費用を引いた残りは、遺産として全員で保管し、分け方は改めて協議する」という合意は、家を現金という分けやすい形に変えるだけで、だれの取り分も決めていません。取り分を主張したい人も、売ることに反対する理由はなくなります。

実際の流れは、①相続人全員で「売る」ことと「代金の扱い」を書面にする、②その書面をもとに相続登記をして売主の名義を整える、③不動産会社を通じて売却し、決済で代金を受け取る、④代金を保管しながら、取り分の協議や調停を続ける、⑤分け方が決まったら代金を分配する、の順です。家が傷んで値下がりする前に現金に換え、固定資産税や管理の負担を止めたうえで、落ち着いてお金の話し合いができるのが、この道の利点です。

道①売ることだけ先に合意する|合意書の中身、登記の名義の置き方、贈与と見られないための書き方

合意書には「売ること」「費用の精算」「代金は分けるまで遺産として保管すること」を書き、名義の置き方は売りやすさで選びます。

売ることだけ先に合意する書面は、遺産分割協議書の形で作ります。書くべきことは四つです。第一に、対象の家を特定し、売却することを全員が同意していること。第二に、売却の代表者と、最低価格や不動産会社の選び方など、売却の進め方。第三に、代金から仲介手数料・登記費用・測量や解体の費用・固定資産税の精算金などを引くこと。第四に、残った代金を「遺産として保管し、分配は別途協議(または調停)で定める」こと。この第四の一文が、取り分の争いを先送りしながら家だけ動かす鍵です。海外にいる相続人は、現地の公証人や日本の在外公館で署名の認証を受けて郵送で参加できます(海外の相続人の署名の記事をご覧ください)。

次に、登記の名義です。売る前には必ず相続登記が要りますが、その名義の置き方は二つあります。一つは、相続人全員の法定相続分どおりの共有名義にして、全員が売主になる方法です。もう一つは、売却の便宜のため代表者一人の名義にし、その人が売主になる方法です。後者は、決済や契約の署名が一人で済み、海外の相続人の署名を何度も集めなくてよい反面、「一人の名義にしたのに代金を他の人に渡すのは贈与ではないか」という心配が出ます。この点について国税庁は、一人の名義での相続登記が換価のための便宜的なものにすぎず、代金が合意(調停)の内容どおりに実際に分配されるなら、贈与税の問題は生じないという考え方を示しています。つまり、協議書に換価のための名義であることと代金の扱いを明記し、そのとおりに分配すれば、代表者名義でも大丈夫です。

ただし、分け方を後回しにする本記事の形では、「どの割合で分けるか」がまだ書かれていません。分配の割合が決まっていない段階で代表者が代金を保管するなら、「保管であって取得ではない」ことを書面にし、保管の口座と記録を分けておく必要があります。これが次の保管ルールにつながります。なお、売却の譲渡所得税は、合意書で定めた取得割合に応じて各相続人が申告するのが原則で、分配を後から決める場合は税理士と申告の時期の整理が必要です。

道②代金を分けるまでの保管ルール|だれの口座で預かり、何を引いて、どう記録するか

代金は「だれのものでもない遺産」として、分けるまで専用の口座で預かり、出入りをすべて記録します。

家を売って代金を受け取ってから分け方が決まるまで、数か月から一年以上かかることがあります。この間の代金の置き方を決めておかないと、「代表者が使い込んだのではないか」という新しい争いが生まれます。保管の方法は二つです。一つは、代表者の名義で売却代金専用の口座を作り、生活費の口座と完全に分ける方法です。もう一つは、司法書士など専門家の預り口座で保管する方法で、相続人同士の信頼が薄いときや、海外の相続人が「日本の親族の口座では不安だ」と言うときに選ばれます。当事務所でも、売却をお手伝いした案件で、分配が決まるまで代金をお預かりする形をとることがあります。

精算の順番も決めておきます。決済で受け取った代金から、まず仲介手数料、登記費用、測量や残置物の処分費、売却までに立て替えた固定資産税や管理費を引きます。立て替えた人が本当に払ったことを領収書で示し、全員の確認を取ってから精算します。残った金額が「分ける対象」です。葬儀費用や亡くなった方の医療費の精算をここに含めるかどうかは、相続人によって考えが違うため、合意書の段階で決めておきます。

記録は、後の協議や調停の資料になります。入金日と金額、引いた費用の内訳、残高を一覧にし、通帳の写しと領収書を添えて、全員に定期的に送ります。海外の相続人には、メールで写しを送るだけでも安心が違います。分配が決まったら、海外の相続人の持分は本人名義の口座へ送金しますが、銀行では送金の目的と資金の出所を聞かれますので、売買契約書・遺産分割協議書(または調停調書)・この記録一式を用意しておきます。保管から分配までの全部を記録に残すことが、「分け方は後で」という進め方を安全にする土台です。

道③一人が売却にも反対するとき|名古屋家庭裁判所の調停で「売る」を先に決める流れ

売ることにも同意しない相続人がいれば、家庭裁判所の調停で売却だけを先に合意し、それも無理なら審判で裁判所が換価を決めます。

「自分が住みたい」「今は売り時ではない」と、売ること自体に反対する相続人が一人でもいれば、合意書は作れません。この場合の次の手が、家庭裁判所の遺産分割調停です。調停は、裁判官と調停委員が間に入る話し合いで、相手と顔を合わせずに進められます。申し立てる先は、原則として相手方の住所地の家庭裁判所か、全員が合意した家庭裁判所です。相手方が複数いれば、そのうちの一人が名古屋市内に住んでいれば名古屋家庭裁判所に申し立てられます。申立てには、申立書のほか、相続人の範囲を示す書類(外国籍の方は本国の書類と訳文)、不動産の登記事項証明書と評価の資料、遺産の目録が必要で、手数料は収入印紙1,200円と連絡用の郵便切手です。司法書士は裁判所に出す書類の作成をお手伝いでき、調停の場での代理は弁護士の役割です。

調停の中で、売却だけを先に決めることができます。取り分の対立が続いていても、「家は売却し、代金は分割の対象として保管する」という中間的な合意が成立すれば、その部分を先に調停で確定し、売却を進めながら残りの協議を続けられます。全部が決まるまで何も動かないより、家の価値を守れる進め方として、実務でも行われています。

調停でもまとまらなければ、手続きは審判に移り、裁判官が分け方を決めます。審判の中で、裁判所は必要があれば相続人に遺産の換価を命じることができ、原則は競売ですが、相当と認めるときは相続人の意見を聴いたうえで任意売却を命じることもできます(家事事件手続法194条)。ただし、競売によるべきだと意思を表示した相続人がいる場合は任意売却を命じられず、競売になると市場価格より安くなるのが通常です。つまり、調停の段階で「売ることだけでも合意する」ことが、全員にとって手取りを守る道になります。調停は1〜2か月に1回の期日で進み、成立まで1年前後かかることも珍しくないため、家の傷みや固定資産税を考えると、申立ては早いほど有利です。

外国籍ならではの注意|分け方は本国法、手続きは日本の裁判所、海外の相続人の参加方法

取り分の割合や生前贈与の扱いは亡くなった方の本国法で決まり、調停や審判は日本の家庭裁判所でできます。

外国籍の方の相続では、「分け方の中身」と「手続きの場所」が別の国の法律で決まります。まず中身です。相続は亡くなった方の本国法によるため(法の適用に関する通則法36条)、法定相続分、生前贈与(特別受益)や介護の貢献(寄与分)をどう考えるか、遺留分の有無は、韓国籍なら韓国民法、中国籍なら中国の相続法で判断します。韓国民法では配偶者の相続分が子の1.5倍で、特別受益と寄与分の制度があり、相続人はいつでも協議で遺産を分割できると定められています(韓国民法1013条)。つまり、「介護をした分を多く」「生前にもらった人は減らす」という主張そのものは、本国法でも検討の対象になりますが、計算の物差しは日本法と違います。合意書や調停の案を作るときは、本国法の相続分を一覧にして添えると、話し合いの土台がそろいます。

次に手続きの場所です。亡くなった方の最後の住所が日本にあるか、遺産が日本にあれば、日本の家庭裁判所が遺産分割の調停や審判を扱えます(家事事件手続法3条の11)。被相続人が韓国籍や中国籍でも、名古屋の家で、相続人の一部が海外にいても、名古屋家庭裁判所で進められるということです。一方、相続人の範囲を証明する書類は本国のものになるため、調停の申立ての前に、本国の家族関係の証明書や戸口簿と、その翻訳をそろえておきます。

海外にいる相続人の参加方法も考えておきます。遺産分割調停では電話会議やウェブ会議が使われており、名古屋家庭裁判所では2021年12月からウェブ会議の運用が始まっています。ただし、外国にいる本人が外国から参加できるかは裁判所の判断によるため、確実なのは日本の弁護士を代理人に立て、代理人が期日に出る方法です。海外の相続人が「売ること」に賛成なら、調停に進む前の段階で、その人の署名を認証付きで先に取っておくと、争点が「反対する一人」に絞られます。相続分の譲渡で、海外の相続人が手続きから抜ける方法もあります(音信不通の相続人の記事をご覧ください)。

待つほど減るもの・迫る期限|固定資産税と空き家、2027年3月31日、相続から10年の壁

家は待つほど価値が減り、相続登記の期限と「10年」の仕組みが近づきます。売ることだけでも先に決める理由はここにあります。

分け方が決まるまで家を置いておくと、減っていくものがあります。第一に家の価値です。だれも住まない家は傷みが早く、売却価格は年々下がります。第二にお金です。固定資産税は毎年1月1日の名義人(亡くなった方の名義のままなら相続人全員)にかかり、管理や草刈り、保険の費用が続きます。第三に、売ったときの税金の特例です。一定の条件を満たす空き家を売ると譲渡所得から3,000万円を引ける特例は、相続開始から3年目の年末までに売ることが条件の一つで、話し合いの長期化で使えなくなるご相談が実際にあります。

迫る期限もあります。相続登記は、2024年4月1日より前の相続でも2027年3月31日までに申請する義務があり、分け方が決まらない場合でも、法定相続分どおりの登記や相続人申告登記で義務を果たせます(期限の応急処置の記事をご覧ください)。法定相続分どおりの登記をしておけば、売ることの合意ができた時点で全員が売主として動けるため、本記事の進め方とも相性がよい方法です。

もう一つが、遺産分割の「10年」の仕組みです。2023年4月1日施行の民法改正で、相続開始から10年を過ぎると、生前贈与や介護の貢献を考えた取り分(具体的相続分)を主張できなくなり、原則として法定相続分で分けることになりました(民法904条の3。施行前に始まった相続は2028年3月31日か相続開始から10年のどちらか遅い日まで)。これは日本の民法のルールですので、本国法が準拠法となる外国籍の方の相続にそのまま当てはまるとは限りませんが、「取り分の主張は時間がたつほど通りにくくなる」ことは、どの国の法律でも書類や記憶が薄れる以上、同じです。「介護をした分を」と主張する側にも、「先に売って、お金の段階で早く決める」ことは不利ではありません。

当事務所は司法書士と宅地建物取引士を兼ねていますので、売ることだけ先に合意する協議書の作成、相続登記、売却の仲介と決済、代金の預かりと分配の記録、調停の申立書類の作成まで、ひとつの窓口でお手伝いします。弁護士が必要な段階では、国際相続に慣れた弁護士と連携します。

よくある質問|分け方が決まらない相続不動産の売却で多いご質問

先に売ってよいか、代金の置き方、反対者がいる場合、海外の相続人の参加について短くお答えします。

Q. 取り分の話し合いが終わっていなくても、家を先に売ってよいのですか?

はい、相続人全員が「売ること」に同意すれば売れます。遺産分割は一部だけ先に行えるため、「家は売却し、代金は分けるまで遺産として保管し、分け方は別途協議する」という協議書を作り、相続登記をしてから売却します。取り分の争いは、代金というお金になってから続けられます。

Q. 売却の代金は、だれが持っていればよいのですか?

代表者の名義で売却代金専用の口座を作るか、司法書士など専門家の預り口座で保管します。費用の精算の順番と、入出金の記録を全員に共有するルールを協議書に書いておくと、「使い込んだのでは」という新しい争いを防げます。

Q. 兄が「売りたくない」と言っています。あきらめるしかないですか?

いいえ。家庭裁判所の遺産分割調停で、「売ること」だけを先に合意する中間的な取り決めを目指せます。調停でもまとまらなければ審判に移り、裁判所が換価を命じることができますが、原則は競売で、市場より安くなりがちです。売ることだけでも調停で合意するほうが、兄を含む全員の手取りを守れます。

Q. 韓国にいる妹は、調停に参加できますか?

日本の弁護士を代理人にすれば、来日せずに参加できます。ウェブ会議の運用は広がっていますが、外国から本人が参加できるかは裁判所の判断によります。売ることに賛成なら、調停の前に認証付きの署名をもらっておくと、争点を反対する相続人に絞れます。

まとめ|家を先に売って「お金の話し合い」に変えると、相続は動き出します

売る合意、保管のルール、反対者がいれば調停。海外の相続人は代理人と認証付き署名で参加できます。

分け方の話し合いがまとまらなくても、相続した家は先に売れます。遺産分割は一部だけ先に行えるため、「家は売却し、代金は分けるまで遺産として保管する」という協議書を全員で作り、法定相続分どおりの共有名義か代表者の名義で相続登記をして売却します。代表者名義でも、換価のための便宜的な名義であることを明記し、そのとおり分配すれば贈与税の問題は生じないというのが国税庁の考え方です。代金は専用口座か専門家の預り口座で保管し、費用の精算と記録を全員に共有します。売ることにも反対する相続人がいれば、名古屋家庭裁判所の調停で売却だけを先に合意し、それも無理なら審判で裁判所が換価を命じます(原則は競売)。外国籍の方の相続では、取り分の中身は本国法、手続きは日本の家庭裁判所で、海外の相続人は日本の弁護士を代理人にして参加できます。家の値下がり、固定資産税、空き家の特例、2027年3月31日の相続登記の期限、相続から10年の仕組みを考えると、売ることだけでも先に決める価値があります。

名古屋のごとう司法書士事務所は、分け方が決まらない外国籍の方の相続不動産について、売ることだけ先に合意する協議書の作成、相続登記、宅建士としての売却と決済、代金の預かりと分配の記録、調停の申立書類の作成まで、ひとつの窓口でお手伝いしています。「兄と妹の意見が合わず、家の話が2年止まっている」という段階からのご相談で大丈夫です。登記事項証明書(なければ固定資産税の納税通知書)と、相続人それぞれの国籍・住まい・「売ることへの賛否」が分かるメモをお持ちいただければ、先に売る道が使えるか、調停が必要か、その順番をその場でお示しします。

ごとう司法書士事務所は、外国籍の方の相続手続きと相続した不動産の売却をひとつの窓口でお手伝いしている、名古屋市中区の司法書士・宅地建物取引士の事務所です(代表:後藤勝良)。所在地は名古屋市中区丸の内三丁目15番3号TCF丸の内ビル6階。地下鉄「久屋大通駅」(桜通線側1番出口)から徒歩5分、「丸の内駅」(桜通線側4番出口)から徒歩6分です。受付は平日9時から19時まで、土日祝日も事前のご予約でご相談いただけます。ご相談は基本無料です。

▶分け方が決まらないまま相続した家を売りたいときのご相談は、名古屋のごとう司法書士事務所へ。フリーダイヤル0120-290-939、またはごとう相続手続き相談センターからお気軽にお問い合わせください。

当店でご利用いただける電子決済のご案内

下記よりお選びいただけます。