最終更新:2026年11月5日(2026年11月時点の法令・運用にもとづいています)
「父は帰化して日本人になっていたのに、法務局で韓国の書類を求められた」「帰化した兄がいるが、戸籍にきょうだいとして載っていない」――帰化した方がいるご家族の相続は、日本人同士の相続に見えて、帰化前の期間を本国の記録でつなぐ作業が必要になります。
このページでは、ごとう司法書士事務所が、亡くなった方が帰化していた場合と相続人の中に帰化した方がいる場合に分けて、どの法律が適用されるのか、どの書類で相続人を証明するのか、通名や旧氏名の不動産をどう引き継ぐのかを、順を追ってご説明します。

まず押さえておきたい3つのこと
- 帰化した方は日本国籍なので、亡くなったときの相続には日本の民法が適用されます。相続人の範囲や相続分は日本人と同じです。
- ただし、帰化後の戸籍には帰化前の家族関係(帰化していない子・きょうだい・親)が載らないため、出生から帰化までの期間は、本国の除籍謄本や公証書、閉鎖外国人登録原票などで証明します。
- 帰化で氏名が変わった方の名義の不動産や預金は、帰化前の氏名と今の氏名が同一人物であることを証明する書類(帰化後の戸籍、閉鎖外国人登録原票など)をそろえて手続きします。
目次
帰化した方の相続にはどの法律が適用される?
日本の通則法36条は「相続は、被相続人の本国法による」と定めています。帰化した方の本国は日本ですから、帰化した方が亡くなった場合の相続は日本の民法で進めます。配偶者と子が相続人で、子がいなければ親、親もいなければ兄弟姉妹という順位も、相続分も、日本人同士の相続とまったく同じです。
一方、亡くなった方が外国籍のままで、相続人の側が帰化している場合は、相続の準拠法は亡くなった方の本国法です。たとえば韓国籍の父が亡くなり、帰化した子が相続する場合は韓国民法で相続人と相続分を決めます。帰化した子の身分は日本の戸籍で証明できますが、父との親子関係は帰化前の記録でつなぐ必要があります。
| 状況 | 適用される相続法 | 相続関係の証明 |
|---|---|---|
| 亡くなった方が帰化していた | 日本の民法 | 帰化後の戸籍+出生から帰化までの本国書類 |
| 亡くなった方は外国籍、相続人が帰化 | 亡くなった方の本国法(韓国法・中国法など) | 亡くなった方の本国書類+帰化した相続人の戸籍 |
| ご家族全員が同時に帰化 | 日本の民法 | 帰化時に編製された戸籍に家族が記載され、比較的簡単 |
亡くなった方が帰化していた場合の進め方
帰化が許可されると、その方を筆頭者とする新しい戸籍が作られます。戸籍の身分事項には帰化日・帰化前の国籍・帰化前の氏名が記載され、父母欄には外国籍の父母の氏名が入ります。ここまでは戸籍で確認できます。
問題は、帰化後の戸籍には帰化前に生まれた子やきょうだいが記載されないことです。帰化と同時に帰化した配偶者や子は同じ戸籍に入りますが、帰化しなかった子(たとえば先に独立して外国籍のままの長男)は戸籍に出てきません。法務局や金融機関は「ほかに相続人がいないこと」の証明を求めるため、出生から帰化までの期間について本国の記録で家族関係を確認します。
日本人の相続では「出生から死亡までの戸籍を連続してそろえる」のが基本です。帰化した方の場合は、これが「出生から帰化までは本国の記録」+「帰化から死亡までは日本の戸籍」に置き換わる、と考えるとわかりやすいです。
- 韓国籍から帰化した方:韓国の除籍謄本や家族関係登録簿の各種証明書で、出生・婚姻・子の出生を確認します。帰化後に韓国で国籍喪失申告をしていないと、韓国側の記録が現在も残っているため、かえって取得しやすいことがあります。詳しくは「韓国籍の方の相続」をご覧ください。
- 中国籍から帰化した方:中国の公証処が発行する親族関係公証書や、日本で取れる閉鎖外国人登録原票を組み合わせます。詳しくは「中国籍の方の相続」をご覧ください。
- 戸籍のない国から帰化した方:出生証明書・婚姻証明書と宣誓供述書、閉鎖外国人登録原票を組み合わせ、相続人全員の上申書を添えることもあります。
相続人の中に帰化した方がいる場合の進め方
亡くなった方が外国籍で、相続人の一人(たとえば長女)が帰化している場合、長女自身の身分は日本の戸籍で証明できます。帰化後の戸籍の父母欄に、亡くなった方の氏名(帰化前の本国の氏名)が記載されているからです。
ただし、戸籍の父母欄の氏名と、亡くなった方の本国書類上の氏名の表記が一致しないことがあります(漢字の字体、カタカナ表記、通名など)。この場合は、閉鎖外国人登録原票や帰化前の本国書類で同一人物であることをつなぎます。
帰化した相続人は、日本に住民登録と印鑑登録があるため、遺産分割協議書には実印と印鑑証明書で署名押印できます。外国籍のままの相続人(本国の印鑑証明や署名証明が必要)と比べると、この点は手続きが楽になります。
韓国籍から帰化した方が韓国で国籍喪失申告をしていないと、韓国の家族関係登録簿上はまだ韓国人として扱われ、韓国にある財産の相続で手続きが複雑になることがあります。日本の相続と並行して、本国側の記録の整理もご案内します。
帰化前の期間を証明する書類

- 帰化後の戸籍謄本(全部事項証明書):帰化日、帰化前の国籍と氏名、父母の氏名が記載されています。帰化後に転籍している場合は、帰化時の除籍謄本もさかのぼって取ります。
- 閉鎖外国人登録原票の写し:2012年7月まで市区町村が管理していた外国人登録の記録で、現在は出入国在留管理庁に保有個人情報の開示請求をして取得します。氏名(通名を含む)、生年月日、国籍、世帯構成、居住歴が記載され、帰化前の身分関係や通名との同一性の証明に役立ちます。亡くなった方の原票は、相続人などが請求できます。
- 本国の身分関係書類:韓国の除籍謄本・家族関係証明書・基本証明書、中国の公証書、台湾の戸籍謄本など。国ごとの取り方は「本国書類の取り方と翻訳・アポスティーユ」で解説しています。
- 帰化許可申請のときの書類の控え:ご家族が帰化申請時の書類(本国の出生証明書や家族関係の書類)を保管していれば、相続人の範囲を確認する手がかりになります。
- 上申書:どうしても本国書類が取れない期間がある場合、相続人全員が「ほかに相続人はいない」ことを上申する書面を作り、法務局と事前に相談します。
通名・旧氏名で登記された不動産の相続
帰化前に買った家が通名や帰化前の本名で登記されていることはよくあります。相続登記では、登記名義人と亡くなった方が同一人物であることを証明する必要があります。
- 登記簿の氏名・住所を確認する登記名義人の氏名(通名か本名か)と、登記当時の住所を確認します。
- 同一性をつなぐ書類を集める帰化後の戸籍(帰化前の氏名が記載)、閉鎖外国人登録原票(通名の記載)、住民票の除票などで、登記名義人=亡くなった方であることをつなぎます。
- 相続登記を申請する名義人の氏名が旧氏名のままでも、同一性の証明書類を添えて直接相続登記ができます。事前に氏名変更登記をする必要はありません。
相続人が帰化で氏名を変えている場合も同様で、帰化後の戸籍があれば、帰化前の氏名で作られた遺産分割協議書や委任状との同一性を示せます。
手続きの流れと期間の目安
- 戸籍と登記簿の確認(1〜2週間)帰化後の戸籍を取り、帰化日・帰化前の氏名・父母の氏名を確認。不動産の名義も確認します。
- 閉鎖外国人登録原票の開示請求(1〜2か月)出入国在留管理庁へ郵送で請求します。到着までに時間がかかるため、最初に着手します。
- 本国書類の取得と翻訳(1〜2か月)韓国・台湾は比較的早く、中国の公証書や戸籍のない国の書類は時間がかかります。
- 相続人の確定と遺産分割協議(2週間〜1か月)帰化前の記録と戸籍をつなぎ、相続人全員で協議書を作ります。
- 相続登記・預金の手続き(2〜4週間)法務局と金融機関に申請します。
全体で3〜5か月程度が目安です。閉鎖外国人登録原票の請求を早めに出すことで、期間を短くできます。
よくあるケースと進め方(例)
※以下は、よくあるご相談をもとにした進め方の例です(実際の事案を特定するものではありません)。
ケース1:韓国籍から帰化した父が死亡、母と子2人は日本国籍
日本民法で母と子が相続人です。帰化後の戸籍には父と母と子が載っていますが、帰化前に生まれて韓国籍のままの子がいないかを韓国の除籍謄本で確認します。確認後、通常の相続登記と同じ流れで進みます。
ケース2:中国籍の母が死亡、子のうち1人が帰化、1人は中国籍で中国在住
母の本国法である中国法で相続人を決めます。帰化した子は日本の戸籍と実印で、中国在住の子は現地の公証処で署名公証を受けて協議書を作ります。母と子の親子関係は、親族関係公証書と帰化した子の戸籍の父母欄をつないで証明します。
ケース3:帰化前の通名で登記された家を売りたい
帰化後の戸籍と閉鎖外国人登録原票で、通名の登記名義人が亡くなった方であることを証明し、相続人名義に相続登記をしてから売却します。当事務所は宅地建物取引士も兼ねているため、登記から売却まで一括してお手伝いできます。関連記事:相続人に帰化した方がいる場合の相続登記と不動産売却
外国籍の方の相続・海外在住の相続人がいる相続のご相談は初回無料です。
「本国の書類の取り方がわからない」「相続人が海外にいる」など、まずはお気軽にお話をお聞かせください。
受付時間 9:00〜19:00(土日祝は事前予約で相談可能)/名古屋市中区丸の内三丁目15番3号 TCF丸の内ビル6階
お問い合わせフォーム 無料面談のWEB予約帰化した方がいる相続についてよくあるご質問
帰化した父が亡くなりました。日本人と同じ手続きですか?
適用される法律は日本の民法で、相続人の範囲や相続分は日本人と同じです。ただし、出生から帰化までの期間の家族関係は本国の書類や閉鎖外国人登録原票で証明する必要があり、その分の準備が加わります。
帰化後の戸籍があれば、本国の書類はいらないのでは?
帰化後の戸籍には、帰化前に生まれて帰化しなかった子などが載りません。法務局や金融機関は「ほかに相続人がいないこと」の確認を求めるため、帰化前の期間については本国の記録が必要になるのが通常です。
閉鎖外国人登録原票はどこで取れますか?
出入国在留管理庁へ保有個人情報の開示請求をして取得します。亡くなった方の原票は相続人などが請求でき、到着まで1〜2か月程度かかります。当事務所で請求書の作成をお手伝いします。
通名で登記された家は、先に名義を直す必要がありますか?
いいえ。登記名義人と亡くなった方が同一人物であることを証明する書類(帰化後の戸籍、閉鎖外国人登録原票など)を添えれば、直接相続登記ができます。
帰化した相続人は、本国の印鑑証明が必要ですか?
不要です。日本の住民登録と印鑑登録があるため、実印と日本の印鑑証明書で遺産分割協議書に署名押印できます。
これから帰化するか永住のままにするか迷っています。相続の面ではどちらが良いですか?
帰化すると日本法・日本の戸籍で相続手続きが進み、ご家族の負担は軽くなります。ただし本国の財産や家族関係の整理も必要です。永住と帰化で相続はどう違う?の記事もご参考に、ご事情に合わせてご相談ください。
※本ページは一般的な情報提供を目的としたものです。法務局・金融機関・出入国在留管理庁の運用は、事案や時期によって異なる場合があります。具体的なご事情については、お気軽にご相談ください。