最終更新:2026年11月5日(2026年11月時点の法令・運用にもとづいています)
中国籍のご家族が亡くなったとき、最初に戸惑われるのが「中国には日本のような戸籍謄本がない」という点です。相続人を証明するには、中国の公証処で作成する「公証書」を取り寄せ、日本の書類と組み合わせる必要があります。中国に住むご家族の協力が欠かせないため、日本側と中国側で、誰が何をするかを早めに決めることが成功のカギです。
このページでは、名古屋のごとう司法書士事務所が、状況別の進め方、公証書のチェックリスト、日本側・中国側の役割分担、期間の目安を実務の目線でまとめました。準拠法や中国民法典「相続編」の内容など制度の詳しい解説は、中国籍の方が亡くなった場合の相続(制度の解説)もご覧ください。

まず押さえておきたい3つのこと
- 日本にある不動産は、中国の国際私法が「不動産の相続は所在地の法律」と定めているため、日本の民法で相続人と相続分を決めます。日本に住んでいた方の預貯金も、原則として日本の民法です。
- 相続人の証明は、中国の公証処が作る親族関係公証書などの公証書+日本語訳で行います。2023年11月から中国はアポスティーユ条約の締約国になり、認証の手間が軽くなりました。
- 中国に住む相続人は日本の印鑑証明書が使えないため、公証処での署名公証で遺産分割協議書に署名します。
あなたはどのケース?状況別の進め方
| 状況 | 適用される相続法 | ポイント |
|---|---|---|
| A:日本在住の中国籍の方が亡くなり、相続人も日本在住 | 日本の不動産・預金とも日本民法 | 中国側で必要な公証書を最小限に絞れることが多い。日本人配偶者・子は日本の戸籍も活用 |
| B:日本在住の中国籍の方が亡くなり、相続人の一部が中国在住 | 日本民法 | 中国在住の相続人の公証書と署名公証が必要。協議書の中国語対訳を用意 |
| C:中国在住の親が亡くなり、日本に預金や不動産が残った | 不動産は日本民法、預金などは中国民法典(常居所が中国のため) | 中国法では配偶者・子・父母が同順位。財産ごとに相続人が変わることがある |
| D:日本人の夫(妻)が亡くなり、配偶者が中国籍 | 日本民法(亡くなった方が日本国籍) | 日本の戸籍で手続き。中国籍の配偶者が日本在住で印鑑登録があれば通常どおり |
どのケースに当たるかで、取り寄せる書類も手続きの順番も変わります。最初のご相談で、ご家族の構成と住んでいる国、財産の内容を整理するところから始めましょう。
公証書のチェックリスト
中国の公証書は、相続人や中国在住のご家族が、戸口簿(戸籍簿)・居民身分証、派出所や婚姻登記機関の証明などを持って公証処に申請して作成します。相続でよく使うのは次のものです。
- 親族関係公証書:亡くなった方と配偶者・子・父母の関係を証明する、最も重要な書類
- 出生公証書:親子関係の証明に
- 結婚公証書:配偶者であることの証明に(離婚歴がある場合は離婚の記録も)
- 死亡公証書:亡くなった方が中国で死亡した場合、または父母などの死亡を証明する場合
- 声明書・署名の公証:中国在住の相続人が遺産分割協議書に署名する場合や、相続放棄・代理の意思を示す場合
公証書は「何を証明したいか」を具体的に伝えて作ってもらう書類です。依頼内容があいまいだと、日本の法務局で使えない内容になることがあります。当事務所では、公証処に依頼する内容(証明してほしい事項)を日本側で文案にしてお渡しし、一度で必要な公証書がそろうようにしています。
日本で亡くなった方の死亡は、日本の住民票の除票や死亡届の記載事項証明書で証明できます。長く日本に住んでいた方は、法務省の閉鎖外国人登録原票に家族の記録が残っていることも多く、公証書を補う資料になります。
日本側・中国側の役割分担

| 担当 | 主な作業 |
|---|---|
| 当事務所(日本側) | 準拠法・相続人の確定、住民票の除票・閉鎖外国人登録原票などの取得、公証書の依頼内容の文案作成、遺産分割協議書と中国語対訳の作成、翻訳、相続登記・預金手続き |
| 中国在住のご家族 | 戸口簿などの準備、公証処への申請(親族関係公証書など)、アポスティーユの取得、協議書への署名公証、日本への郵送 |
| 日本在住のご家族 | 中国のご家族との連絡、日本の戸籍・印鑑証明書の取得、協議内容の話し合い |
中国在住のご家族が高齢の場合や、公証処とのやり取りが難しい場合は、現地の代理人を通じて申請する方法もあります。状況に応じてご提案します。
期間の目安とスケジュール
- ご相談・方針決定(1〜2週間)ケースの判定、必要な公証書の特定、依頼文案の作成。
- 日本側の書類収集(2〜4週間)除票・記載事項証明書・閉鎖外国人登録原票・不動産の書類など。
- 中国での公証書取得・郵送(1〜2か月)公証処の混み具合や地域によって差があります。
- 翻訳・遺産分割協議書の作成(2〜3週間)協議書は日本語と中国語の対訳で作成します。
- 署名公証の取得・返送(3〜6週間)中国在住の相続人がいる場合。
- 相続登記・預金手続き(2〜4週間)法務局と金融機関に申請。売却する場合は並行して準備します。
全体で3〜6か月程度が目安です。相続登記の期限(相続を知った日から3年以内)を考えると、早めの着手が安心です。
中国のご家族との話し合いで気をつけたいこと
中国の民法典では配偶者・子・父母が同じ順位で均等に相続します。そのため、中国のご家族は「親(祖父母)も相続人」と考えていることがあります。しかし日本の不動産は日本民法で相続するため、子がいれば父母は相続人になりません。どの財産に、どの国の法律が適用され、誰が相続人になるのかを、最初に書面で共有しておくとトラブルを防げます。
- 連絡は、メッセージアプリなどで記録を残しながら進めると安心です。
- 代償金を中国の相続人に送金する場合は、遺産分割協議書に代償金の額と支払方法を明記したうえで送金記録を保管します(単なる贈与と区別するためで、中国側の銀行で外貨を受け取る際の資金の説明にも使えます)。送金方法や為替、中国側の外貨規制、税金の扱いも事前に確認しておきましょう(相続税については提携税理士と連携します)。
- 相続した家を売却して分ける場合は、売却の時期と分け方を協議書に明記しておくとスムーズです。
関連記事:中国にいる家族の署名はどう集める?相続の署名公証、中国籍の方の相続の登記って何?公証書から申請まで
費用のめやす
中国籍の方の相続登記は、必要な公証書の数、相続人の居住国、翻訳の量によって大きく変わるため、ご相談時に状況をうかがって事前にお見積りをお出しします。登録免許税(固定資産評価額の0.4%)、公証書の手数料、国際郵便代などの実費は別途かかります。追加費用が発生する場合は必ず事前にご説明します。

外国籍の方の相続・海外在住の相続人がいる相続のご相談は初回無料です。
「本国の書類の取り方がわからない」「相続人が海外にいる」など、まずはお気軽にお話をお聞かせください。
受付時間 9:00〜19:00(土日祝は事前予約で相談可能)/名古屋市中区丸の内三丁目15番3号 TCF丸の内ビル6階
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中国の戸口簿のコピーだけで相続登記はできますか?
戸口簿だけでは家族関係を十分に証明できないのが一般的です。公証処で親族関係公証書などを作成してもらい、日本語訳を付けて提出します。
公証書にアポスティーユは必要ですか?
2023年11月7日から中国はアポスティーユ条約の締約国となり、中国の公文書はアポスティーユを付けることで日本の領事認証なしに使えるようになりました。提出先によって求められる内容が異なるため、取得前にご確認ください。
中国の家族が日本に来られません。手続きできますか?
できます。中国の公証処で署名公証を受けた遺産分割協議書を郵送していただければ、来日していただく必要はありません。
中国在住の両親が日本の銀行口座を残して亡くなりました。
常居所が中国だった方の預金の相続には、中国民法典が適用されるのが原則です。配偶者・子・父母が同順位の相続人になるため、日本の感覚とは相続人が異なることがあります。銀行には準拠法の説明書を添えて手続きします。
日本人の夫が亡くなり、私は中国籍です。手続きは難しいですか?
亡くなった方が日本国籍なら日本民法・日本の戸籍で手続きでき、日本人同士の相続とほぼ同じです。日本に住んで印鑑登録をしていれば、印鑑証明書も通常どおり使えます。
費用はどのくらいですか?
公証書の数や相続人の居住国で変わるため、ご相談時に事前のお見積りをお出しします。初回相談は無料です。
※本ページは一般的な情報提供を目的としたものです。中国法の内容や公証処・法務局・金融機関の運用は、地域や事案によって異なる場合があります。具体的なご事情については、お気軽にご相談ください。