最終更新:2026年11月5日(2026年11月時点の法令・運用にもとづいています)
台湾籍の方の相続は、外国籍の方の相続の中では比較的進めやすい部類に入ります。台湾には日本と似た戸籍制度と印鑑証明制度があり、相続関係を戸籍謄本で証明できるからです。その一方で、「台湾民法で相続人を決める」「戸籍謄本に台湾側の認証が必要」「日本と国交がないため窓口が代表処になる」といった台湾ならではの注意点もあります。
このページでは、ごとう司法書士事務所が、台湾民法の相続ルール(配偶者の相続分・遺留分・相続放棄)、台湾の戸籍謄本の取り方と認証の手順、台湾・海外在住の相続人がいるときの進め方を、順を追ってご説明します。

まず押さえておきたい3つのこと
- 台湾の国際私法(渉外民事法律適用法58条)は「相続は死亡当時の本国法による」としているため、日本の不動産も預金も台湾民法で相続人・相続分を決めます(日本法に戻る反致はありません)。
- 台湾民法では配偶者は常に相続人で、子と一緒なら均等、父母・兄弟姉妹と一緒なら2分の1、祖父母と一緒なら3分の2を相続します。兄弟姉妹や祖父母にも遺留分があります。
- 相続関係は台湾の戸籍謄本で証明し、台湾の公証人の公証→外交部の験証→台北駐日経済文化代表処の験証という認証を経て日本に提出するのが基本です。
目次
どの国の法律で相続人が決まる?
日本の通則法36条により、台湾籍の方の相続はまず本国法によります。日本は台湾と国交がありませんが、国際私法上は台湾で現に適用されている法律(台湾民法)を本国法として扱うのが通説・実務です。そして台湾の国際私法(渉外民事法律適用法58条)も「相続は被相続人死亡当時の本国法による」としているため、日本法に戻ってくることはなく、日本にある財産も台湾民法で相続人と相続分を決めます。
遺言がある場合、日本で作成した公正証書遺言は方式として有効です。遺言の内容が台湾民法の遺留分に反する場合は、遺留分権利者から減殺を求められることがあります。
台湾民法の相続ルール
相続人の順位と配偶者の相続分
| 順位 | 相続人 | 配偶者と一緒に相続するときの配偶者の相続分 |
|---|---|---|
| 第1順位 | 直系血族卑属(子・孫など。親等の近い者が優先) | 子らと均等(例:妻と子2人なら各3分の1) |
| 第2順位 | 父母 | 2分の1 |
| 第3順位 | 兄弟姉妹 | 2分の1 |
| 第4順位 | 祖父母 | 3分の2 |
| — | 第1〜第4順位の相続人がいない | 配偶者が全部 |
- 代襲相続は第1順位(直系卑属)にだけ認められます(1140条)。兄弟姉妹の子は代襲相続しません。
- 遺留分(1223条):直系卑属・父母・配偶者は相続分の2分の1、兄弟姉妹・祖父母は相続分の3分の1。兄弟姉妹にも遺留分がある点が日本と異なります。
- 相続放棄(1174条):相続できることを知ったときから3か月以内に書面で裁判所(法院)に申し出ます。日本に住む相続人は日本の家庭裁判所で手続きできる運用です。放棄後は、次に相続人となる人への書面通知も必要です。
- 限定承継が原則:相続人は、相続した財産の範囲で債務を弁済する責任を負います(1148条2項)。
- 特別受益は贈与時の価額で計算し、寄与分の制度はありません。
- 遺言の方式:自筆・公証・密封・代筆・口授の5方式(1189条)。
お子さんのいない方が亡くなった場合、日本では配偶者と親(親がいなければ兄弟姉妹)が相続人ですが、台湾民法でも同様の順位で、配偶者の相続分は2分の1です。さらに兄弟姉妹には遺留分があるため、「すべて妻に」という遺言があっても、兄弟姉妹から遺留分の主張を受ける可能性があります。
台湾の戸籍謄本の取り方

台湾の戸籍は「戸」(住所)を単位に編製され、戸長との続柄、父母、配偶者、出生地、身分証番号などが記載されます。住民登録の機能も兼ねているため、戸籍謄本が住所証明書にもなります。相続では、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍(除戸籍を含む)と、相続人の現在の戸籍を取得します。
- 台湾のご家族が取得する:相続人本人やその親族が、台湾の戸政事務所で請求します。もっとも簡単な方法です。
- 日本から代理人に依頼する:日本在住の相続人が台湾在住の方に依頼する場合は、台北駐日経済文化代表処(名古屋を含む愛知県は大阪の弁事処が管轄)で授権書(委任状)を作成し、台湾の代理人に送って請求してもらいます。
- 台湾の戸籍は始期・終期が日本の戸籍ほど明確でないことが多く、住所変更の記載などを手がかりにつながりを確認します。足りない部分は宣誓供述書や上申書で補います。
認証(公証・験証)の手順
台湾はアポスティーユ条約に加入していないため、台湾の戸籍謄本や印鑑証明書を日本の法務局に提出する際は、次の認証手続きを経るのが一般的です。
- 台湾の公証人による公証地方法院の公証処または民間公証人で、戸籍謄本・印鑑証明書に公証を受けます。
- 台湾外交部の験証公証を受けた書類に、外交部(日本の外務省にあたる機関)の験証を受けます。
- 台北駐日経済文化代表処の験証日本の代表処(東京)または弁事処(大阪など)で験証を受けます。
- 日本語訳を付けて提出翻訳文を添えて、相続を証する書面として法務局・金融機関に提出します。
逆に、日本の書類(戸籍や協議書など)を台湾で使う場合は、日本の公証役場で認証を受けたうえで代表処の認証を受けます。詳しくは「本国書類の取り方と翻訳・アポスティーユ」をご覧ください。
台湾・海外在住の相続人がいるとき
- 台湾在住の相続人:台湾には印鑑証明制度があるため、遺産分割協議書に署名・実印押印のうえ、台湾の印鑑証明書(上記の認証付き)を添付できます。協議書には中国語(繁体字)の対訳を付けます。
- アメリカなど第三国在住の相続人:台湾籍のご家族はアメリカなどに移住していることも多く、その場合は現地の公証人(Notary Public)による署名認証付きの宣誓供述書で、相続人であることと遺産分割の内容を証明します。台湾名と現在の氏名(英語名)のつながりも供述書に記載します。
- 日本在住の相続人:日本で印鑑登録をしていれば日本の印鑑証明書を使えます。通称名で登記されている場合は、台湾戸籍上の氏名との同一性を協議書に記載します。
詳しくは「海外在住の相続人がいる相続(サイン証明・公証)」をご覧ください。
よくあるケースと進め方(例)
※以下は、よくあるご相談をもとにした進め方の例です(実際の事案を特定するものではありません)。
ケース1:台湾籍の夫が名古屋のマンションを残して死亡、妻は台湾在住、子は日本在住
台湾民法で相続人は妻と子、相続分は均等です。亡くなった方の出生から死亡までの台湾戸籍と、妻・子の現在戸籍を取得し、公証・外交部・代表処の験証を経て翻訳します。日本在住の子がマンションを取得する内容で協議し、妻は台湾の印鑑証明書を添付します。
ケース2:台湾籍の方が死亡、子はアメリカ在住、名古屋の自宅を売却したい
アメリカ在住の子には、相続人であることと遺産分割の内容を記した宣誓供述書に現地公証人の署名認証を受けてもらい、台湾名との同一性も記載します。日本在住の相続人が自宅を取得し、相続登記のうえ売却して代金を分ける方法が現実的です。
ケース3:お子さんのいない台湾籍の方の生前対策
配偶者と兄弟姉妹が相続人になり、兄弟姉妹には遺留分(相続分の3分の1)があります。日本の公正証書遺言で配偶者に財産を残しつつ、遺留分に配慮した内容にするか、生前贈与などを組み合わせるかを検討します。
費用と期間のめやす
台湾籍の方の相続登記は、戸籍の範囲と認証の手間、相続人の居住国によって費用が異なるため、ご相談時に事前のお見積りをお出しします。登録免許税や戸籍・認証の実費は別途です。期間は、台湾のご家族が戸籍を取得できる場合で2〜4か月程度が目安です。

外国籍の方の相続・海外在住の相続人がいる相続のご相談は初回無料です。
「本国の書類の取り方がわからない」「相続人が海外にいる」など、まずはお気軽にお話をお聞かせください。
受付時間 9:00〜19:00(土日祝は事前予約で相談可能)/名古屋市中区丸の内三丁目15番3号 TCF丸の内ビル6階
お問い合わせフォーム 無料面談のWEB予約台湾籍の方の相続についてよくあるご質問
台湾籍の父が日本で亡くなりました。相続人は日本の法律で決まりますか?
いいえ。台湾の国際私法が本国法を指定しているため、日本の財産についても台湾民法で相続人・相続分を決めます。配偶者と子が均等に相続するなど、日本と異なる点があります。
台湾の戸籍謄本はどこで取れますか?
台湾の戸政事務所で、本人や親族が請求できます。日本から依頼する場合は、台北駐日経済文化代表処(愛知県は大阪の弁事処)で授権書を作成し、台湾の代理人に請求してもらいます。
戸籍謄本にアポスティーユは必要ですか?
台湾はアポスティーユ条約に加入していないため、代わりに台湾の公証人の公証、外交部の験証、台北駐日経済文化代表処の験証という手順で認証を受けるのが一般的です。
台湾在住の母が相続人です。日本の印鑑証明書がなくても大丈夫ですか?
大丈夫です。台湾には印鑑証明制度があるため、台湾の印鑑証明書(認証付き)を遺産分割協議書に添付できます。
相続放棄の期限はありますか?
台湾民法では、相続できることを知ったときから3か月以内に裁判所へ書面で申し出る必要があります。日本に住む相続人は日本の家庭裁判所で手続きできる運用です。期限が短いため早めにご相談ください。
費用はどのくらいですか?
戸籍の範囲や認証の手間、相続人の居住国で変わるため、ご相談時に事前のお見積りをお出しします。初回相談は無料です。
※本ページは一般的な情報提供を目的としたものです。台湾法の内容や代表処・法務局・金融機関の運用は、事案や時期によって異なる場合があります。具体的なご事情については、お気軽にご相談ください。