共有名義になった相続不動産を売るには?海外の共有者がいる場合も名古屋で解説
2026/10/31
はじめに|「とりあえず共有」で登記した家が、売れなくなっています
共有の家を売る道は三つあります。どれを選ぶかは、共有者がどこにいて、連絡が取れるかで決まります。
お父様が亡くなったとき、分け方を決めきれずに「法定相続分どおりの共有」で相続登記をした。あるいは、期限が迫って、まず共有で登記だけ済ませた。そのあと時間がたち、いざ家を売ろうとしたら、兄は韓国に帰国していて、妹とは何年も連絡が取れない――名古屋市中区のごとう司法書士事務所には、こうした「共有のまま止まった家」のご相談が増えています。
共有の不動産は、共有者全員が同意しないと売れません。一人でも海外にいる、連絡が取れない、亡くなって持分がその家族に分かれている。そのたびに、売却のハードルは一段ずつ上がります。けれども、出口はあります。他の共有者の持分を買い取って一人の名義にまとめる、全員で同時に売る、連絡の取れない共有者がいれば裁判所の制度を使う、という三つの道です。この記事では、名古屋市中区のごとう司法書士事務所が、なぜ共有のままでは売れないのか、三つの道をどう選び、海外の共有者とどう進め、どんな税金に注意するのかを、手続きの流れに沿ってやさしくご説明します。
なぜ共有のままでは売れないのか|持分は自由に売れても、家全体の売却は全員の同意です
自分の持分だけなら一人で売れますが、家そのものを売るには共有者全員の合意と署名が要ります。
共有名義の不動産とは、一つの家や土地を、複数の人がそれぞれの持分(割合)で所有している状態です。相続で「妻2分の1、長男4分の1、長女4分の1」のように登記すると、三人の共有になります。法律上、自分の持分だけなら、他の共有者の同意なしに売ることができます。ところが、家そのものを一つの物として売るには、共有者全員の同意が必要です。買主は「家全体」を買いたいのであって、「4分の1の権利」を買いたいわけではないからです。
実際の売却の流れを見ると、全員の関与がどこで必要になるかが分かります。①不動産会社と媒介契約を結ぶ、②買主と売買契約を結ぶ、③決済の日に代金を受け取って所有権移転の登記を申請する。このすべてで、共有者全員が売主として名を連ね、契約書と登記の委任状に署名・押印し、印鑑証明書(海外在住者はサイン証明)を出します。一人でも欠けると、契約も登記もできません。
ここに時間が加わると、問題が膨らみます。共有者の一人が亡くなると、その持分は、その人の相続人(配偶者や子)に分かれて引き継がれます。三人の共有が、気づけば六人、八人になり、しかもその人たちは互いに会ったこともない。外国籍のご家族では、相続人が本国や第三国に散らばっていることも多く、全員の署名を集める作業は国境をまたぎます。「とりあえず共有」が「永遠に売れない家」に変わるのは、この時間の経過が原因です。だからこそ、共有者がまだ少なく、連絡が取れるうちに、次の三つの道のどれかで一つにまとめることが大切なのです。
道①持分を買い取って一人の名義にする|海外の共有者から買うときの署名・送金・税金
一人が他の共有者の持分を買い取れば、その後の売却はその人だけで決められます。
一つ目の道は、共有者の一人(たとえば日本に住む長男)が、他の共有者の持分を買い取って、単独の名義にまとめる方法です。まとめたあとは、売るのも貸すのも一人で決められます。将来すぐに売る予定がなく、自分が住み続ける場合にも向いています。
手続きの流れは、①持分の価格を決める、②持分の売買契約を結ぶ、③代金を支払い、持分の移転登記をする、の順です。価格は、家全体の時価に持分の割合を掛けたものが基準になります。親族の間だからといって極端に安くすると、差額が贈与とみなされて贈与税の対象になることがあるため、不動産会社の査定などで時価を押さえておきます。当事務所は宅建士として査定もできますので、価格の根拠づくりからお手伝いします。
共有者が海外に住んでいる場合は、三つの点が変わります。第一に署名です。海外在住者は日本の印鑑証明書が取れないため、売買契約書と登記の委任状への署名を、日本国籍なら現地の日本大使館・領事館で、外国籍なら現地の公証人のもとで認証してもらい、国際郵便で日本へ送ります。第二に税金です。売主が海外に住む非居住者の場合、買主は代金の10.21%を源泉徴収して税務署に納めるのが原則で、買主が個人で自分や親族が住むために買い、代金が1億円以下の場合だけ対象外です。長男が自分の住まいとして兄の持分を買うなら対象外になることが多いですが、貸す予定があれば源泉徴収が必要になり、兄の受取額がいったん減ります。第三に送金です。代金を海外の口座へ送るときは、銀行から送金の目的と資金の出所を聞かれますので、売買契約書と登記事項証明書を手元に用意しておきます。
道②全員で同時に売る|海外の共有者の委任・サイン証明・代金の分け方
全員が売りたいなら、同時に売って代金を持分どおりに分けるのが、いちばん公平で手間の少ない道です。
二つ目の道は、共有者全員で家を売り、代金を持分の割合で分ける方法です。だれも住む予定がなく、全員が「お金に換えたい」で一致しているなら、持分の買い取りを挟まないぶん、登記も税金も一回で済みます。
流れは、①全員で売却の方針と最低価格を決める、②代表者を決めて不動産会社との窓口にする、③売買契約と決済・登記、④代金を持分どおりに分配する、の順です。海外の共有者がいる場合、来日してもらう必要はありません。売買契約と登記に必要な書類を日本で作り、本人が現地の大使館や公証人のもとで署名・認証を受けて返送します。往復に時間がかかるため、買主が決まってから慌てないよう、売り出す前に署名の段取りと必要な書類を確認しておきます。契約から決済までの期間も、通常より長めに設定します。
代金の分け方にも準備が要ります。決済で買主から受け取る代金は、代表者の口座にいったん入金し、そこから各共有者へ持分どおりに送金するのが一般的です。このとき、「代表者が受け取り、持分の割合で分配する」ことを共有者全員の合意書に書いておきます。書面がないと、代表者から他の共有者への送金が贈与と見られるおそれがあるからです。海外の共有者が売主に含まれるときは、道①と同じく、その人の持分に対応する代金について買主側の源泉徴収が必要になる場合があり、決済の金額の計算が変わります。契約の前に、売主の中に非居住者がいることを不動産会社と買主に伝えておきます。
道③連絡が取れない共有者がいるとき|2023年に始まった裁判所の制度と、相続から10年の壁
所在の分からない共有者がいても、裁判所の決定を得て、その人の持分を取得したり、全員分をまとめて売ったりできるようになりました。
三つ目の道は、連絡が取れない共有者がいる場合です。以前は、一人でも所在不明なら家は事実上売れませんでした。2023年4月1日に施行された民法の改正で、二つの制度ができました。一つは、所在等不明共有者の持分を、他の共有者が取得する制度です。もう一つは、所在等不明共有者の持分を含めて、共有者全員の持分を第三者に譲渡する権限を裁判所からもらう制度です。前者は道①を、後者は道②を、所在不明の人がいても実現できるようにしたものです。
手続きの流れは、①住民票や戸籍、外国人登録原票、手紙の返送記録などで所在を調査し、分からないことを裏付ける、②不動産の所在地を管轄する地方裁判所(名古屋市内なら名古屋地方裁判所)に申し立てる、③裁判所が公告を行い、異議がなければ、申立人が不明者の持分の時価相当額を供託する、④裁判所の決定で持分を取得する、または全員分を譲渡する権限を得る、の順です。供託したお金は、不明者が現れたときにその人が受け取ります。申立てには、持分ごとに収入印紙1,000円、官報の公告費用、郵便切手のほか、不動産の評価の資料が必要です。
大切な壁が一つあります。その不明者の持分が、相続で引き継いだままで遺産分割が終わっていないものである場合、この制度は相続が始まってから10年を過ぎていないと使えません。「とりあえず法定相続分で共有登記」をした家の持分は、まさにこの状態です。相続から10年たっていなければ、所在不明の共有者については、家庭裁判所で不在者財産管理人を選んでもらい、その人が協議や売却に参加する方法を検討します(音信不通の相続人の記事で詳しくご説明しています)。どちらの道が使えるかは、相続の時期と不明者の持分の性質で分かれますので、最初の相談で登記簿と相続の経緯を確認します。
外国籍ならではの注意|持分は本国法で決まり、共有者が亡くなると本国法でさらに分かれます
共有の割合も、共有者が亡くなったときの引き継ぎ方も、日本法ではなく本国法で判断します。
外国籍の方の相続で共有になった家には、日本人の共有にはない注意点があります。まず、持分の割合です。法定相続分どおりの共有登記をするとき、その割合は亡くなった方の本国法で決まります。韓国籍なら配偶者は子の1.5倍で、妻と子2人なら妻7分の3、子がそれぞれ7分の2です。日本法の割合(妻2分の1、子4分の1ずつ)で登記してしまうと、持分が間違っていることになり、売却の前に更正の登記が必要になることがあります。
次に、共有者が亡くなったときです。その人の持分は、その人の本国法で相続人に引き継がれます。たとえば韓国籍の兄が亡くなると、兄の持分は韓国民法にしたがって、兄の妻と子に分かれます。兄の妻や子が韓国に住んでいれば、新しい共有者は海外在住者になり、持分の相続登記のために本国の書類を取り寄せ、翻訳し、署名の認証を集める作業が加わります。共有者が一人亡くなるごとに、国境をまたぐ手続きが一回ずつ増えていくのです。
もう一つが、持分の買い取りや売却のときの買主側の手続きです。海外に住む共有者が、日本に住む共有者の持分を買い取って名義をまとめる場合、2026年4月1日以降は、海外に住む人が日本の不動産を取得したときの外為法の報告(取得から20日以内)が必要になることがあります。逆に、海外の共有者の持分を日本に住む人が買い取るなら、この報告は不要です。だれがだれの持分を買うかで、必要な手続きが変わります。
共有者が元気なうちに動く理由|持分の相続、遺言、覚書で「次の共有」を防ぐ
共有者が一人増えるたびに、合意も署名も税金の計算も難しくなります。動くなら共有者が少ないうちです。
共有の家をまとめるいちばんの近道は、「共有者が少なく、全員と連絡が取れるうちに決める」ことです。共有者が亡くなると、その持分は本国法にしたがって相続人に分かれ、相続人を確定する本国書類の収集から始めなければなりません。二人の話し合いで済んだはずのことが、五人、六人の国をまたぐ協議に変わります。
すぐに売らないと決めた場合でも、できることがあります。第一に、共有者それぞれが遺言を作り、自分の持分をだれに引き継がせるかを決めておくことです。持分がさらに枝分かれすることを防げます。韓国籍の方なら、遺言で相続の準拠法を日本法に指定することもできます。第二に、共有者の間で覚書を作ることです。固定資産税や修繕費の分担、売るときの決め方、持分を手放すときは他の共有者に先に声をかけるという約束を書面にしておけば、次の世代への道しるべになります。第三に、だれかが住んでいる場合は、住んでいる人が他の持分を買い取る時期を決めておくことです。
当事務所は司法書士と宅地建物取引士を兼ねていますので、共有者の持分の確認から、持分の買い取りの価格の根拠づくりと移転登記、全員での売却の段取りと海外の共有者の署名の手配、裁判所の制度の申立書類の作成まで、一つの窓口でお手伝いします。登記簿を見て、だれが共有者で、どこに住んでいて、連絡が取れるかを整理するところから始めましょう。
よくある質問|共有名義の相続不動産の売却で多いご質問
一人で売れるか、海外の共有者の手続き、不明者がいる場合、税金について短くお答えします。
Q. 共有者の一人が反対していても、家は売れますか?
いいえ、家そのものは売れません。家全体の売却には共有者全員の同意と署名が必要です。自分の持分だけなら一人で売れますが、持分だけを買う人は限られ、価格も下がります。反対する共有者の持分を買い取るか、話し合いがまとまらなければ裁判所に共有物分割を求める方法を検討します。
Q. 韓国に住む兄が共有者です。来日してもらわないと売れませんか?
いいえ、来日は不要です。売買契約書と登記の委任状に、兄が現地の公証人などのもとで署名し、認証を受けて日本へ郵送すれば手続きできます。兄の持分に対応する代金については、買主が10.21%を源泉徴収する場合があるため、契約前に不動産会社と買主に非居住者が売主に含まれることを伝えておきます。
Q. 連絡が取れない共有者がいます。家は一生売れないのですか?
いいえ、道があります。2023年4月から、所在の分からない共有者の持分を裁判所の決定で取得したり、全員分をまとめて売ったりできる制度が始まりました。ただし、相続で引き継いだまま遺産分割が終わっていない持分は、相続から10年を過ぎていないとこの制度を使えず、その場合は不在者財産管理人の選任を検討します。
Q. 兄の持分を安く譲ってもらっても大丈夫ですか?
注意が必要です。時価より極端に安い価格で持分を買うと、差額が贈与とみなされて贈与税の対象になることがあります。不動産会社の査定などで家全体の時価を確認し、持分の割合を掛けた価格を基準にして、売買契約書を作ります。
まとめ|共有者が少なく、全員と連絡が取れる今が、いちばん売りやすいときです
持分の買い取り、全員での売却、裁判所の制度。共有者の居場所と連絡の可否で道を選びます。
共有名義の相続不動産は、自分の持分だけなら一人で売れますが、家そのものを売るには共有者全員の同意と署名が必要で、共有者が亡くなるたびにその持分が本国法にしたがって相続人に分かれ、売却は難しくなります。出口は三つです。一人が他の共有者の持分を時価で買い取って名義をまとめる道、全員で同時に売って代金を持分どおりに分ける道、連絡の取れない共有者がいるときに裁判所の決定で持分を取得したり全員分を譲渡したりする道(相続から10年を過ぎていない持分は不在者財産管理人を検討)です。海外の共有者がいる場合は、現地での署名の認証、非居住者の持分に対する10.21%の源泉徴収、海外送金の準備が加わります。外国籍の方の相続では、持分の割合も、共有者が亡くなったときの引き継ぎも本国法で判断します。
名古屋のごとう司法書士事務所は、外国籍の方の共有名義の相続不動産について、登記簿と相続の経緯の整理、持分の買い取りの価格の根拠づくりと移転登記、全員での売却の段取りと海外の共有者の署名の手配、裁判所の制度の申立書類の作成まで、司法書士兼宅建士としてひとつの窓口でお手伝いしています。「兄が帰国して以来、家のことが止まったままだ」という段階からのご相談で大丈夫です。登記事項証明書(なければ固定資産税の納税通知書)と、共有者それぞれの国籍・住まい・連絡の可否が分かるメモをお持ちいただければ、三つの道のどれが使えるかと、その順番をその場でお示しします。
ごとう司法書士事務所は、外国籍の方の相続手続きと相続した不動産の売却をひとつの窓口でお手伝いしている、名古屋市中区の司法書士・宅地建物取引士の事務所です(代表:後藤勝良)。所在地は名古屋市中区丸の内三丁目15番3号TCF丸の内ビル6階。地下鉄「久屋大通駅」(桜通線側1番出口)から徒歩5分、「丸の内駅」(桜通線側4番出口)から徒歩6分です。受付は平日9時から19時まで、土日祝日も事前のご予約でご相談いただけます。ご相談は基本無料です。
▶共有名義になった相続不動産の売却のご相談は、名古屋のごとう司法書士事務所へ。フリーダイヤル0120-290-939、またはごとう相続手続き相談センターからお気軽にお問い合わせください。
※本記事は2026年10月時点の法令・制度に基づいて作成しています。所在等不明共有者の持分取得・譲渡の制度の要件や費用、持分の売買に関する税務は裁判所・税務署の運用や個別の事情によって異なりますので、実際のお手続きの際は専門家にご確認ください。

