外国籍の方の預貯金の相続手続き~銀行口座の凍結解除を名古屋で解説
2026/10/15
はじめに|「口座が凍結されて、お金が動かせない」とお困りの方へ
銀行ごとにバラバラに見える手続きも、段取りを組めば一本道になります。
外国籍のご家族が亡くなり、銀行の口座が凍結されてしまった。窓口に行ったら「戸籍を持ってきてください」と言われたけれど、外国籍だから日本の戸籍はない。何をどう揃えればいいのか分からない――そんなご相談を、名古屋のごとう司法書士事務所は数多くお受けしてきました。
外国籍の方の預貯金の相続手続きは、日本人の場合と流れは同じでも、書類の揃え方がまったく違います。しかも銀行・ゆうちょ銀行・証券会社で窓口のルールが少しずつ違うため、知らずに回ると同じ書類を何度も取り直すことになりがちです。
この記事では、凍結解除から払い出しまでの全体の流れと、ムダなく進める段取りのコツを、やさしい日本語でまとめてご説明します。
全体の流れ|凍結から払い出しまでの5ステップ
ゴールから逆算すると、やることは5つに整理できます。
銀行は口座の名義人が亡くなったことを知ると、その口座を凍結します。よく誤解されますが、市役所に死亡届を出しても自動的に銀行へ伝わるわけではなく、家族からの連絡や新聞のお悔やみ欄などで銀行が死亡を知った時点で凍結されます。凍結されると引き出しはもちろん、公共料金の引き落としも止まるため、電気・ガス・水道・携帯電話などの引き落とし先の変更を先に整理してから連絡すると、支払いの滞りを防げます。
凍結解除から払い出しまでの流れは、どの銀行でもおおむね次の5ステップです。①銀行へ死亡の連絡をして相続手続きの書類一式をもらう、②相続人を証明する書類(外国籍の方は本国の身分関係書類と日本語訳)を集める、③だれがいくら受け取るかを決める(遺産分割協議書、または銀行所定の用紙に相続人全員が署名)、④書類一式を銀行へ提出する、⑤指定口座への払い出しを受ける。
時間がかかるのは②の書類集めで、外国籍の方の場合は2〜3か月を見ておくと現実的です。④の提出から払い出しまでは、銀行の審査に2週間から1か月程度かかるのが一般的です。
大切なのは、②で集める書類は不動産の相続登記でもほぼそのまま使えるということです。家と預貯金の手続きを別々に考えず、最初からまとめて設計すると、全体の時間と費用をぐっと圧縮できます。
必要書類の揃え方|外国籍の方は「一覧図が使えない」前提で準備する
日本人向けの便利な制度が使えないぶん、束で戦う準備をします。
日本人の相続では、法務局が発行する法定相続情報一覧図という1枚の証明書を使い回すことで、各銀行への戸籍一式の提出を省略できます。ところが、この一覧図は亡くなった方が外国籍の場合には利用できません。つまり外国籍の方の預貯金手続きは、集めた本国書類の束そのものを銀行ごとに示していくことになります。
揃える書類の中心は、亡くなった方の出生から死亡までの身分関係が分かる本国の書類です。韓国籍の方なら基本証明書・家族関係証明書・除籍謄本など、中国籍の方なら公証処の公証書、そのほかの国の方は出生・婚姻・死亡証明書の組み合わせが基本になります。これに日本語訳を付け、相続人側の書類(住民票、印鑑証明書、海外在住の方はサイン証明)を加えます。日本語訳は翻訳者の資格までは求められないのが通常で、訳文に翻訳者の署名を付ければ足りることがほとんどです。ただし古い除籍簿などは記載の読み取り自体が難しいため、無理をせず専門家に任せたほうが早く正確です。
銀行によっては、外国語書類の取り扱いに不慣れで、窓口で戸惑われることもあります。そんなときは、相続関係の説明図を添えて「だれが相続人か」を一目で分かるようにしておくと、審査がスムーズに進みます。当事務所では、この説明図の作成と銀行への説明まで含めてお手伝いしています。
銀行・ゆうちょ・証券で違う段取り|窓口ごとのクセを知っておく
同じ「預貯金」でも、窓口のルールは三者三様です。
一般の銀行は、支店の窓口または相続センターで手続きします。最近は郵送やウェブで受け付ける銀行も増えており、来店の要否は銀行ごとに違います。
ゆうちょ銀行は独特で、まず相続確認表という書類を提出し、その内容をもとに貯金事務センターから必要書類の案内が届く、という二段階方式です。ほかの銀行より往復が一回多いぶん時間がかかるため、ゆうちょ口座がある場合は最初に着手するのがコツです。
証券会社の株式や投資信託は、現金のように分けて払い出すのではなく、いったん相続人名義の証券口座へ移す(移管する)のが原則です。相続人が証券口座を持っていなければ新しく開設する必要があり、ここでも時間がかかります。亡くなった方が上場株式をお持ちだった場合は、配当金の通知や株主総会の案内が手がかりになります。
このように窓口ごとのクセを知ったうえで、どこから着手するかを決めるのが、預貯金手続きの段取りの肝です。なお、外貨預金やネット銀行の口座は、通帳がなくメールやアプリでしか存在が分からないことがあります。亡くなった方のメールに届いている銀行名を控えておくと、調査の漏れを防げます。
複数の銀行がある場合|原本の使い回しと効率のよい順番
書類の原本は1セットで足ります。返してもらいながら回しましょう。
亡くなった方が3つも4つも銀行に口座をお持ちだったというのはよくあることです。このとき、本国書類の束を銀行の数だけ取り直す必要はありません。ほとんどの銀行は、原本を提示してコピーを取ったうえで原本を返却してくれます(原本還付)。
効率のよい進め方は、まず全部の銀行に死亡の連絡をして残高証明書を取り、財産の全体像を確定させることです。残高証明書は相続税の要否の判断や遺産分割の話し合いの土台になります。そのうえで、時間のかかるゆうちょ銀行や証券会社から着手し、一般の銀行を郵送手続きで並行して進めると、全体の期間を短くできます。当事務所にご依頼いただく場合も、この「全体像の確定→時間のかかる窓口から着手→並行処理」の順で段取りを組み、ご家族には最小限の署名だけをお願いする形で進めます。
注意したいのは、書類の有効期限です。印鑑証明書やサイン証明は発行から3か月以内や6か月以内と指定する銀行が多いため、先に取りすぎると期限切れで取り直しになります。書類を取る順番まで含めて設計することが、二度手間を防ぐ最大のコツです。
当面のお金に困ったら|払戻し制度と凍結をめぐる注意点
葬儀代や生活費のために、先に一部を引き出せる制度があります。
「凍結されて葬儀代が払えない」という場面のために、遺産分割前の払戻し制度があります。相続人は、口座ごとの残高の3分の1に自分の法定相続分を掛けた金額(1つの金融機関あたり150万円が上限)を、ほかの相続人の同意なしに引き出せます。
ただし外国籍の方の相続では、法定相続分が本国法で決まるため、銀行に対して「自分の相続分はいくらか」を本国法に基づいて示す必要があります。たとえば韓国籍の方の相続なら、配偶者の相続分は子の1.5倍という韓国民法のルールで計算します。このあたりは銀行側も慣れていないことが多く、専門家が計算根拠を示す資料を添えることでスムーズに通ることがよくあります。
もうひとつの注意は、凍結前に家族のカードでお金を引き出してしまうことです。あとで相続人間のトラブルや、相続放棄ができなくなる原因になり得ます。必要なお金は、制度に乗って正面から引き出すのが安全です。
また、生命保険の死亡保険金は受取人固有の財産なので、相続手続きとは別に、受取人が単独で請求できます。保険証券が見つかったら先に保険会社へ連絡しましょう。請求から数日から1週間程度で支払われることが多く、当面の資金としては払戻し制度よりも早く確実です。
口座が分からない・眠っているとき|探し方と休眠預金
「どこに口座があるか分からない」ところからでも始められます。
亡くなった方がどの銀行に口座を持っていたか分からない場合は、通帳やキャッシュカード、郵便物(取引残高報告書・満期のお知らせ)、スマホのアプリ、確定申告の控えなどが手がかりになります。残念ながら、マイナンバーなどで全部の口座を一括検索できる仕組みはまだ整っていないため、心当たりの銀行一つひとつに、相続人であることを示して全店照会(口座の有無の調査)を依頼していくのが基本です。なお、証券口座については証券保管振替機構(ほふり)への開示請求で、どの証券会社に口座があるかをまとめて調べる方法があります。
長年放置された口座は、最後の取引から10年を過ぎると休眠預金として扱われますが、権利が消えるわけではなく、手続きをすれば払い出しを受けられます。親御さん名義の古い口座に心当たりがある方は、あきらめずに調査してみる価値があります。通名(日本名)で口座を作っていた時期がある方は、本名と通名の両方で照会するのが外国籍の方ならではのコツです。
なお、株式を長期間放置すると、株主の所在が分からないとして売却・処分されてしまう制度もあります。預貯金も証券も、「あるかもしれない」と思った時点で早めに調べることが、財産を取りこぼさないコツです。
まとめ|書類は一度揃えれば全部に使えます。まとめてご相談ください
預貯金・証券・不動産。入口はひとつ、書類もワンセットで足ります。
外国籍の方の預貯金の相続手続きは、①連絡②書類集め③分け方の決定④提出⑤払い出しの5ステップで進みます。法定相続情報一覧図が使えないぶん本国書類の束で証明すること、銀行・ゆうちょ・証券で段取りが違うこと、原本還付と書類の有効期限を踏まえて回る順番を設計すること――この3点を押さえれば、複数の銀行があっても着実に完了できます。
そして、ここで集めた書類一式は、不動産の相続登記にもそのまま使えます。当事務所にまとめてご依頼いただければ、銀行まわりの手続きと相続登記を同じ書類で並行して進め、ご家族が何度も窓口に通う負担をなくします。相続した不動産を売却する場合も、宅建士を兼ねる事務所としてそのままお手伝いできます。亡くなった親御さん名義の家がそのままになっている方は、口座とあわせて一度に片づける絶好の機会です。
通帳やカード、銀行からの郵便物を、整理せずそのままお持ちください。どの銀行から着手すべきか、その場で段取りをお示しします。
▶外国籍の方の預貯金・銀行口座の相続手続きのご相談は、名古屋のごとう司法書士事務所へ。フリーダイヤル0120-290-939、またはごとう相続手続き相談センターからお気軽にお問い合わせください。
※本記事は2026年10月時点の法令・制度・各金融機関の一般的な取り扱いに基づいて作成しています。必要書類や手続きの方法は金融機関ごとに異なりますので、実際のお手続きの際は各金融機関の案内をご確認ください。