外国籍の相続登記で住所がつながらない?附票がない場合の証明方法を名古屋で解説
2026/10/28
はじめに|法務局から「住所のつながりを証明してください」と言われたら
登記は止まっていますが、行き止まりではありません。外国籍の方には、外国籍の方の証明の道筋があります。
亡くなったお父様の名義の家を相続登記しようとしたら、法務局から「登記簿上の住所と、亡くなったときの住所が違います。つながりを証明する書類を出してください」と連絡が来た――相続登記のご相談で、とてもよくあるつまずきです。日本人の相続なら、戸籍の附票という書類で住所の履歴を一本につなげられます。ところが、外国籍の方には日本の戸籍がないため、附票もありません。「附票を取ってください」と言われても、取りようがないのです。
それでも、相続登記はできます。外国籍の方には、2012年以降の住民票と、それより前の外国人登録原票という、二つの記録をつなぎ合わせる方法があります。この記事では、名古屋市中区のごとう司法書士事務所が、なぜ住所の証明が求められるのか、外国籍の方の場合に何が違うのか、書類をどの順番で集め、取れないときにどう補うのかを、手続きの流れに沿ってやさしくご説明します。
なぜ「住所のつながり」が必要なのか|登記簿には氏名と住所しか載っていません
法務局は、登記簿の名義人と亡くなった方が同じ人だと、住所の履歴で確かめます。
相続登記で住所のつながりが求められる理由は、不動産の登記簿に、所有者の氏名と住所しか載っていないからです。生年月日も、国籍も、本籍も載っていません。相続登記は、登記簿の名義人が亡くなったことを前提に、相続人へ名義を移す手続きです。そのため法務局は、「登記簿に書かれているこの人」と「亡くなったこの人」が同じ人物であることを、書類で確かめる必要があります。同姓同名の別人の財産が、他人の相続登記で動いてしまうことを防ぐための仕組みです。
名義人の住所が、家を買ったときから亡くなるまで同じなら、問題は起きません。死亡時の住民票の除票に登記簿と同じ住所が載っているので、同じ人だとすぐに分かります。問題が起きるのは、登記のあとに引っ越していた場合です。たとえば、名古屋市中村区で家を買って登記したあと、その家は貸して、ご自身は港区の賃貸に移り、そこで亡くなったとします。登記簿の住所は中村区のまま、死亡時の住所は港区です。法務局から見ると、「中村区の〇〇さん」と「港区で亡くなった〇〇さん」をつなぐ証拠がありません。これが「住所がつながらない」と言われる状態です。
実際の流れは、こうなります。相続登記を申請すると、法務局の登記官が書類を審査します。住所の線が切れていると、申請人や代理人に「補正」の連絡が入ります。補正とは、足りない書類を出して直すことです。期限までに補えないと申請は取り下げになり、集めた書類を整え直して出し直すことになります。つまり、住所のつながりは、申請の前にそろえておくべき書類なのです。
外国籍の方は何が違うのか|戸籍の附票がなく、2012年を境に記録の場所が変わります
日本人は戸籍の附票で住所をたどれますが、外国籍の方は住民票と外国人登録原票の二段構えになります。
日本人の場合、住所の履歴は二つの書類でたどります。一つは住民票の除票で、亡くなった方の最後の住民票です。もう一つは戸籍の附票で、本籍地の役所が、その戸籍に入っている間の住所の移り変わりを記録したものです。附票を取れば、何度引っ越していても、住所の線を一通で示せることが多いのです。
外国籍の方には、この二つ目がありません。戸籍は日本国籍の人の記録なので、外国籍の方には戸籍がなく、戸籍の附票も存在しないからです。ここが、外国籍の方の相続登記で住所の証明が難しくなる根本の理由です。
その代わりに使うのが、時期によって分かれる二つの記録です。2012年7月9日に、外国籍の方も日本人と同じ住民基本台帳に載る制度(外国人住民票)が始まりました。この日以降の住所は、住民票と住民票の除票でたどれます。一方、それより前の時代、外国籍の方の住所は市区町村の「外国人登録」という別の制度で管理されていました。その記録が外国人登録原票で、制度の廃止後は国(出入国在留管理庁)が保管しています。原票には、2012年7月8日までの住所の履歴が載っています。
まとめると、外国籍の方の住所の証明は、「2012年7月9日以降は住民票、それより前は外国人登録原票」という二段構えになります。登記簿の住所が2012年より前のものなら、原票まで取り寄せなければ線がつながりません。名古屋で長く暮らしてこられた在日韓国人の方や、1990年代に来日した方の相続では、登記が昭和や平成の初めというケースも多く、原票が欠かせない場面がほとんどです。
手順①住民票の除票|2012年7月9日以降の住所は、ここでたどります
まず最後の住所地の役所で除票を取り、前の住所が登記簿と同じかを確かめます。
最初の手順は、亡くなった方の最後の住所地の市区町村で、住民票の除票を取ることです。名古屋市内にお住まいだった方なら、区役所の窓口か郵送で請求します。請求するときは、「前住所の記載を省略しないでください」と伝えてください。除票には、その住所に来る直前の住所が一つだけ記載されます。登記簿の住所が、この前住所と一致すれば、線はつながります。
一致しない場合は、さらにさかのぼります。日本人なら、ここで戸籍の附票に進みますが、外国籍の方は、前の住所地の市区町村に、その住所での住民票の除票を請求していきます。引っ越しのたびに役所が変わるので、一つずつ請求することになります。ただし、どの役所も、記録があるのは2012年7月9日以降の住所までです。それより前の住所については、役所から「外国人登録の時代の記録は、こちらにはありません」と案内されます。ここが、手順②へ進む分かれ道です。
もう一つ、知っておきたい注意点があります。住民票の除票の保存期間は、2019年6月20日に5年から150年へ延びました。しかし、延長の恩恵を受けるのは、その時点でまだ保存されていた記録だけです。2012年7月から2014年6月ごろまでに亡くなった外国籍の方の除票は、保存期間の5年が先に満了し、廃棄されている可能性があります。この場合、役所に「廃棄済みで交付できない」ことを証明する書面を出してもらい、あとの手順で使います。
請求のときは、本籍の代わりに「国籍・地域」と、通称名があればその記載も省略しないよう頼んでください。登記簿の氏名が通称名で、本名との同一性を示す必要があるときに役立ちます(通称名で登記された家の相続は、別の記事で詳しくご説明しています)。
手順②外国人登録原票の写し|2012年より前の住所は、出入国在留管理庁に請求します
亡くなった方の原票は、ご遺族が出入国在留管理庁に請求できます。手数料はかかりません。
2012年より前の住所をつなぐ書類が、外国人登録原票の写しです。亡くなった方の原票は、「死亡した外国人に係る外国人登録原票の写しの交付請求」という手続きで、ご遺族が取り寄せます。請求できるのは、亡くなった方と同居していた親族、配偶者(事実上の婚姻関係の方を含みます)、父母や祖父母などの直系尊属、子や孫などの直系卑属、兄弟姉妹です。司法書士などの代理人に委任することもできます。
請求先は、出入国在留管理庁の総務課出入国情報開示係(東京都新宿区四谷)で、窓口のほか郵送でも請求できます。名古屋からは郵送が現実的です。必要なのは、交付請求書、請求する方の本人確認書類の写し、郵送の場合は請求する方の住民票(30日以内に作成され、マイナンバーの記載がないもの)、写しを郵送で受け取るための返信用封筒などです。手数料はかかりません。
届く原票には、氏名、生年月日、国籍、居住地(住所)とその変更の履歴、世帯主や世帯構成員などが記録されています。登記簿の住所が原票の居住地の履歴に出てくれば、原票から住民票の除票へと線がつながります。原票には通称名が載っていることも多く、登記簿の氏名との照合にも使えます。なお、亡くなった方と請求者以外の個人情報は消されて交付されます。
時間の見込みも大切です。出入国在留管理庁は、交付までに長い期間がかかると案内しています。請求が集中しているためで、数か月待つことも珍しくありません。相続登記の期限(相続を知った日から3年以内、2024年4月より前の相続は2027年3月31日まで)から逆算し、原票の請求はいちばん先に出しておくのが実務の鉄則です。原票を待つ間に、韓国の家族関係登録簿の証明書など本国の書類を並行して集めれば、待ち時間を無駄にせずに済みます。
それでもつながらないとき|権利証・不在住証明書・上申書で補います
記録が残っていなくても、権利証や上申書を組み合わせて、法務局と相談しながら進められます。
原票を取り寄せても、登記簿の住所が出てこないことがあります。登記がとても古く、原票の記録より前の住所だった場合や、記載の仕方が今の住所表示と違っていて一致が読み取れない場合です。このときは、公的な住所の記録以外の資料で、同じ人であることを補っていきます。
使う資料は、主に三つです。一つ目は、登記済証(権利証)や登記識別情報です。その不動産の権利証を亡くなった方が持っていたこと自体が、名義人本人であることの有力な手がかりになります。二つ目は、不在住証明書です。登記簿の住所の市区町村に、「その住所に、その氏名の人は現在住んでいない」ことを証明してもらう書類で、同姓同名の別人がそこにいないことの裏付けになります。三つ目が、上申書です。相続人全員が「登記簿の名義人は亡くなった父に間違いありません」という事実を法務局に申し述べる書面で、相続人全員の実印を押し、印鑑証明書を添えます。固定資産税の納税通知書が亡くなった方の最後の住所に届いていたことも、補強の資料になります。
どの組み合わせで受け付けてもらえるかは、法務局の運用に幅があります。だからこそ、申請の前に、不動産を管轄する法務局(名古屋市内なら名古屋法務局)へ事前に相談するのが近道です。当事務所では、集めた書類と取れなかった書類を整理したうえで法務局と協議し、「この組み合わせで通るか」を確かめてから申請します。補正で出直す手間を省き、海外在住の相続人から上申書の署名をもらい直すような二度手間を防ぐためです。
たとえば、こんなケースを考えてみましょう。昭和の終わりに名古屋市中村区で家を買った韓国籍のお父様が、その後に二度引っ越して2020年に港区で亡くなった場合です。除票で港区の前住所まではたどれますが、その前は2012年より前の引っ越しなので、役所には記録がありません。そこで、ご長男が出入国在留管理庁に原票の写しを請求し、届いた原票の居住地の履歴で中村区の住所を確認できれば、線がつながります。もし原票でも確認できなければ、権利証と不在住証明書、相続人全員の上申書を添えて、名古屋法務局と事前に相談したうえで申請する流れになります。
次の相続で困らないために|住所変更登記の義務化と、今からできる準備
登記簿の住所を今の住所に合わせておけば、次の世代は「つながらない」に悩みません。
この問題は、予防できます。いちばんの対策は、引っ越したときに登記簿の住所も変えておくことです。2026年4月1日から、住所や氏名が変わったら2年以内に変更登記をすることが義務になりました。正当な理由なく怠ると、5万円以下の過料の対象になることがあります。2026年4月1日より前の変更も対象で、その期限は2028年3月31日です。
外国籍の方の場合、変更登記のときにも住所のつながりの証明が求められるため、今のうちに済ませておけば、将来の相続人が原票を取り寄せる手間を省けます。日本に住所のある方は、法務局に「検索用情報」を申し出ておくと、法務局が住民基本台帳の情報をもとに職権で住所変更の登記をする仕組み(スマート変更登記)を利用できます。2026年10月5日からは、この申出に国籍の情報も加わりました(詳しくは相続登記の国籍の新ルールの記事をご覧ください)。
あわせて、親御さんが元気なうちに、ご自身の外国人登録原票の写しを本人として開示請求しておく方法もあります。本人の請求なら、収入印紙300円の手数料で、原則30日以内に開示の決定がされます。亡くなったあとの遺族の請求より早く、本人に住所の履歴を確かめてもらえるので、相続の備えとして有効です。権利証と固定資産税の納税通知書を捨てずに保管しておくことも、将来の証明の支えになります。
よくある質問|外国籍の相続登記と住所の証明で多いご質問
附票の有無、原票の請求、期間、通称名について、短くお答えします。
Q. 外国籍の父の「戸籍の附票」を取るように言われました。取れますか?
いいえ、取れません。戸籍の附票は日本の戸籍に入っている人の住所の記録で、外国籍の方には戸籍がないため附票もありません。代わりに、2012年7月9日以降の住所は住民票の除票で、それより前の住所は出入国在留管理庁が保管する外国人登録原票の写しでたどります。
Q. 亡くなった父の外国人登録原票は、だれが請求できますか?
同居していた親族、配偶者(事実婚を含む)、父母・祖父母、子・孫、兄弟姉妹が請求できます。司法書士などの代理人に委任することもできます。請求先は出入国在留管理庁の総務課出入国情報開示係で、郵送でも請求でき、手数料はかかりません。
Q. 原票が届くまで、どのくらいかかりますか?
出入国在留管理庁は、請求が集中しているため交付までに長い期間がかかると案内しています。数か月待つことも珍しくないため、相続登記の準備では原票の請求をいちばん先に出し、待つ間に本国の書類を並行して集めるのが実務の進め方です。
Q. 登記簿の名前が通称名で、住所も違います。どうすればよいですか?
住所と氏名の両方のつながりを証明します。住民票の除票は通称名の記載を省略せずに取り、外国人登録原票で通称名と本名、住所の履歴をあわせて確認します。それでも足りない部分は、権利証や相続人全員の上申書で補い、申請前に法務局へ相談します。
まとめ|「附票がない」は終わりではなく、原票へ進む合図です
住民票は2012年以降、原票はそれ以前。二つをつないで、法務局に同じ人だと示します。
相続登記で住所のつながりが求められるのは、登記簿に氏名と住所しか載っておらず、法務局が名義人と亡くなった方が同じ人であることを住所の履歴で確かめるからです。外国籍の方には戸籍の附票がないため、2012年7月9日以降の住所は住民票の除票で、それより前の住所は出入国在留管理庁に請求する外国人登録原票の写しでたどります。原票はご遺族が手数料なしで請求できますが、交付までに長い期間がかかるため、いちばん先に請求します。記録が残っていない部分は、権利証・不在住証明書・相続人全員の上申書で補い、申請前に名古屋法務局と相談して組み合わせを確かめます。予防には、2026年4月から義務になった住所変更登記と、検索用情報の申出、親御さん本人による原票の開示請求が有効です。
名古屋のごとう司法書士事務所は、外国籍の方の相続登記について、除票と原票の追跡、法務局との事前相談、本国書類の収集と翻訳、そして相続した家の売却まで、司法書士兼宅建士としてひとつの窓口でお手伝いしています。「役所で、2012年より前の記録はないと言われた」という段階からのご相談で大丈夫です。手元にある権利証、固定資産税の納税通知書、古い外国人登録証明書や特別永住者証明書の写しがあれば、そのままお持ちください。どこまで記録でたどれて、どこを何で補うのか、その場で道筋をお示しします。
ごとう司法書士事務所は、外国籍の方の相続手続きと相続した不動産の売却をひとつの窓口でお手伝いしている、名古屋市中区の司法書士・宅地建物取引士の事務所です(代表:後藤勝良)。所在地は名古屋市中区丸の内三丁目15番3号TCF丸の内ビル6階。地下鉄「久屋大通駅」(桜通線側1番出口)から徒歩5分、「丸の内駅」(桜通線側4番出口)から徒歩6分です。受付は平日9時から19時まで、土日祝日も事前のご予約でご相談いただけます。ご相談は基本無料です。
▶住所がつながらない外国籍の方の相続登記のご相談は、名古屋のごとう司法書士事務所へ。フリーダイヤル0120-290-939、またはごとう相続手続き相談センターからお気軽にお問い合わせください。
※本記事は2026年10月時点の法令・制度・運用に基づいて作成しています。外国人登録原票の交付に要する期間や、住所を証明する書類の組み合わせは出入国在留管理庁・法務局の運用や事案によって異なりますので、実際のお手続きの際は最新の案内をご確認ください。

