相続登記で国籍の申出が必要に?2026年10月の新ルールを名古屋の司法書士が解説
2026/10/26
はじめに|「国籍も書いてください」と言われて驚かないために
新しく増えたのは一つの記入欄です。仕組みを知れば、こわいルールではありません。
2026年10月5日から、相続登記のルールが一つ変わりました。相続や売買で不動産の新しい持ち主になる人は、登記を申請するときに、自分の「国籍」を法務局に申し出ることになったのです。日本で暮らす外国籍の方からは、「国籍を書くと不利になるのでは」「登記簿にのって、だれにでも見られるのでは」という不安の声も聞こえてきます。
結論からお伝えすると、国籍の申出は日本人を含むすべての新しい名義人が行うもので、外国籍の方だけに課されたルールではありません。申し出た国籍は、登記事項証明書には表示されません。
この記事では、名古屋市中区のごとう司法書士事務所が、新ルールの中身、国籍を申し出る理由、外国籍の相続人が用意する書類、帰化したときや海外に住んでいるときの注意点まで、やさしい日本語でご説明します。
新ルールとは|不動産の新しい持ち主は「国籍」を申し出ます
2026年10月5日から、所有権の登記名義人になる人は、申請のときに国籍(または地域)を申し出ます。
国籍の申出とは、相続や売買で不動産の所有権の登記名義人になる人が、登記を申請するときに、自分の国籍または地域を法務局に申し出る手続きです。不動産登記規則の改正により、2026年10月5日から始まりました。取扱いの詳細は、法務省民事局長の通達(令和8年9月4日付法務省民二第872号)で定められています。
このルールは、まったく新しい制度ではありません。2025年4月21日から、所有権の登記を申請するときには「検索用情報」として、氏名とふりがな(外国籍の方はローマ字氏名)、住所、生年月日、メールアドレスを申し出る仕組みが始まっています。今回は、この検索用情報に「国籍」が一つ加わった、と考えると分かりやすいでしょう。
対象になるのは、所有権の保存や移転の登記で、名義人になる人が自分で申請する場合です。相続登記で家や土地を受け取る相続人は、まさにこの対象にあたります。日本国籍の方も「日本」と申し出ますので、外国籍の方だけが特別に求められているわけではありません。なお、申請に国籍の記載がないと、法務局から補正(書き足し)を求められます。
なぜ国籍なのか|相続のルールを決める「本国法」を知るため
法務省は、相続に適用される法律を特定し、将来の相続登記に役立てるためと説明しています。
日本の法律(法の適用に関する通則法36条)では、相続は亡くなった方の本国法によると定められています。韓国籍の方なら韓国民法、ベトナム籍の方ならベトナム民法というように、亡くなった方の国籍によって、だれが相続人になり、どれだけ相続するかの出発点が変わるのです。
ところが、これまでの登記簿には名義人の国籍の情報がなく、名義人が亡くなったあとに、どの国の法律で相続するのかを調べる手がかりがありませんでした。法務省は、国籍を記録する目的を「相続に適用される法律を特定し、相続登記に役立てるため」と説明しています。つまり今回の申出は、将来あなたが亡くなったときに、ご家族の相続手続きを進めやすくするための情報でもあるのです。
申し出た国籍は、登記事項証明書には表示されず、一般に公開されることはありません。法務局が内部の情報として持つもので、通達では、国の不動産に関する情報の基盤を通じて、行政機関で利用されることがあるとされています。国籍によって相続の権利が変わったり、登記ができなくなったりすることはありませんので、安心してください。
外国籍の相続人が用意する書類|住民票・在留カード・パスポート
国籍が分かる書類を一つ添えます。住民票を使えば、住所の証明と一通で兼ねられます。
外国籍の方が国籍を証明する書類として認められているのは、国籍や地域が書かれた住民票の写し、パスポート(旅券)の写し、在留カードの写し、特別永住者証明書の写しなどです。パスポートの写しを使う場合は、本人が「原本と同じです」と証明すれば足ります。ただし、有効期限が切れたパスポートは使えません。
実務でおすすめなのは住民票です。相続登記では、不動産を受け取る相続人の住所を証明するために、もともと住民票を提出します。外国籍の方の住民票には国籍・地域の欄がありますので、取得するときに区役所の窓口でこの欄を省略しないよう伝えておけば、住所と国籍の証明を一通で兼ねられます。
国名は、外務省のホームページにある「国・地域」の名称に合わせて申し出ます。台湾出身の方は、国ではなく「台湾」という地域として申し出ます。複数の国籍をお持ちの方はすべての国籍が記録され、無国籍の方は「無国籍」と記録されます。また、外国籍の方の登記には、2024年4月からローマ字氏名もあわせて記録されています。通称名(日本名)で登記する場合は、ふりがなで申し出ます。
外国籍の親御さんから日本国籍のお子さんが相続する場合は、お子さんは「日本」と申し出ます。住民票コードを提供して日本国籍が確認できれば、国籍を証明する書類は不要です。
帰化したとき・国籍が変わったとき|申し出た国籍を更新する方法
帰化などで国籍が変わったら、「検索用情報の単独申出」で記録を新しくできます。
相続登記のときに申し出た国籍は、その後に変わることがあります。たとえば、韓国籍のまま相続登記をして、数年後に帰化して日本国籍になった場合です。このようなときは、登記の申請とは別に、法務局へ「検索用情報の単独申出」をすることで、帰化や国籍の喪失・離脱・選択による変更を記録できます。登記官が国籍の変更を確認したときは、職権で記録されることもあります。
あわせて注意したいのが、名前の変更です。帰化して氏名が変わったときや、引っ越しで住所が変わったときは、2026年4月1日から、変更の日から2年以内に変更登記をすることが義務になりました。正当な理由なく怠ると、5万円以下の過料の対象になることがあります。2026年4月1日より前の変更も対象で、その期限は2028年3月31日です。
国内に住所がある方は、検索用情報を申し出ておけば、法務局が住民基本台帳ネットワークの情報をもとに職権で住所や氏名の変更登記をしてくれる「スマート変更登記」を利用できます。帰化を考えている方は、相続登記のタイミングと帰化の時期を合わせて段取りしておくと、手続きの重複を減らせます(永住と帰化の相続の違いは、別の記事で詳しくご説明しています)。
海外に住む相続人の注意点|国内連絡先と、自分でする変更登記
海外在住の方は、国内連絡先の登記と、住所が変わったときの自分での変更登記を忘れずに。
相続人のなかに母国や第三国に住んでいる方がいて、その方が不動産を取得する場合は、注意点が増えます。2024年4月から、国内に住所のない所有者は、日本国内の連絡先となる人の氏名・住所など(国内連絡先)を登記することになっています。連絡先となる人がいない場合は、その旨を登記します。
国籍の証明には、海外在住の方ならパスポートの写しを使うのが一般的です。遺産分割協議書への署名には、現地の大使館や公証人のサイン証明も必要になります(海外の相続人のサイン証明は、別の記事で詳しくご説明しています)。
さらに、検索用情報の単独申出は国内に住所のある人に限られ、海外在住の方はスマート変更登記の対象外です。海外で住所が変わったら、2年以内に自分で変更登記をしなければなりません。
登記とは別の手続きにも注意が必要です。2026年4月1日以降に、海外に住む人(非居住者)が日本の不動産を取得したときは、相続による取得でも、外国為替及び外国貿易法にもとづいて、取得から20日以内に日本銀行を通じて財務大臣へ報告することになっています(本人や親族が住むための住まいなど、一部の例外があります)。この報告は国籍ではなく住んでいる場所で決まるため、海外に住む日本国籍の方も対象です。
こうした管理の手間を考えると、日本に住んでいる相続人がまとめて取得して、ほかの相続人には代償金を払う方法や、売却して代金を分ける方法を選ぶほうが、結果として家族全員の負担が軽くなることもあります。
新ルールで変わること・変わらないこと|相続登記の流れと期限
増えたのは国籍の申出だけ。相続登記の流れと期限は、これまでと同じです。
新ルールで変わるのは、申請のときに不動産を受け取る人の国籍を申し出る、という一点です。記録されるのは新しい名義人の国籍で、亡くなった方の相続にどの国の法律を使うかは、これまでどおり亡くなった方の国籍で判断します。
相続登記の流れも変わりません。①本国の身分関係書類と日本語訳で相続人を確定する、②遺産分割協議書を作る、③名古屋法務局などの管轄の法務局へ申請する、という順番に、検索用情報と国籍の申出が加わるだけです。相続登記の義務(相続を知った日から3年以内、昔の相続は2027年3月31日まで)もそのままです。
一つ知っておきたいのは、国籍の情報を記録する法務局のシステムの改修は施行日より後に完了する見込みで、それまでの取扱いは別途案内されるとされている点です。申請の時期によって細かな扱いが変わる可能性がありますので、申請前には最新の案内を確認します。当事務所では、法務局の運用を確認したうえで、検索用情報と国籍の申出を含めて申請書類を整えます。
よくある質問|相続登記と国籍の新ルールで多いご質問
日本国籍の方の扱い、公開の有無、以前の登記、台湾の書き方について、短くお答えします。
Q. 日本国籍の相続人も、国籍を申し出る必要がありますか?
はい、必要です。日本国籍の方は「日本」と申し出ます。日本に住所があり、住民票コードを提供して日本国籍が確認できれば、国籍を証明する書類は不要です。
Q. 申し出た国籍は、登記簿を見ればだれでも分かりますか?
いいえ、分かりません。国籍は登記事項証明書には表示されず、一般に公開されない法務局の内部の情報です。ただし通達では、国の不動産に関する情報の基盤を通じて、行政機関で利用されることがあるとされています。
Q. 2026年10月5日より前に名義を取得していた場合も、申出が必要ですか?
以前の登記をやり直す必要はありません。新ルールは10月5日以降の申請に適用されるものです。すでに名義人になっている方は、検索用情報の単独申出によって国籍を記録してもらうこともできます。
Q. 台湾出身ですが、国籍はどう申し出ればよいですか?
「台湾」と、地域として申し出ます。住民票の国籍・地域の欄の記載に合わせると確実です。住民票の写しを提出すれば、国籍の証明と住所の証明を一通で兼ねられます。
まとめ|国籍の申出は書類を一つ足すだけ。早めの準備で安心です
新しい名義人の国籍を申し出る。公開はされない。流れと期限はこれまでどおりです。
2026年10月5日から、相続登記などで不動産の所有権の登記名義人になる人は、申請のときに国籍(または地域)を法務局に申し出ることになりました。日本国籍の方も「日本」と申し出る、すべての新しい名義人に共通のルールです。法務省は目的を、相続に適用される法律を特定し、将来の相続登記に役立てるためと説明しています。申し出た国籍は登記事項証明書に表示されず、一般には公開されません。外国籍の相続人は、国籍・地域が書かれた住民票の写しを使えば、住所と国籍の証明を一通で兼ねられます。帰化などで国籍が変わったら単独申出で更新でき、海外在住の方は国内連絡先の登記と、住所が変わったときの自分での変更登記が必要です。
新しいルールは、手続きを難しくするためのものではありません。名古屋のごとう司法書士事務所は、外国籍の方の相続登記について、本国書類の収集と翻訳から、検索用情報と国籍の申出を含む申請、相続した不動産の売却まで、一つの窓口でお手伝いしています。相続登記の義務の期限(昔の相続は2027年3月31日まで)も近づいていますので、「新しいルールで何を用意すればいいの?」という段階から、どうぞお気軽にご相談ください。ご相談の際は、固定資産税の納税通知書と、ご家族の国籍と住まい(国)が分かるメモがあれば、その場で必要な書類の一覧をお示しします。
ごとう司法書士事務所は、外国籍の方の相続手続きと相続した不動産の売却をひとつの窓口でお手伝いしている、名古屋市中区の司法書士・宅地建物取引士の事務所です(代表:後藤勝良)。所在地は名古屋市中区丸の内三丁目15番3号TCF丸の内ビル6階。地下鉄「久屋大通駅」(桜通線側1番出口)から徒歩5分、「丸の内駅」(桜通線側4番出口)から徒歩6分です。受付は平日9時から19時まで、土日祝日も事前のご予約でご相談いただけます。ご相談は基本無料です。
▶相続登記の新ルール・外国籍の方の相続のご相談は、名古屋のごとう司法書士事務所へ。フリーダイヤル0120-290-939、またはごとう相続手続き相談センターからお気軽にお問い合わせください。
※本記事は2026年10月時点の法令・通達に基づいて作成しています。国籍の申出の取扱いは、法務局のシステム改修の状況などにより変わる可能性がありますので、実際のお手続きの際は法務局・専門家に最新の情報をご確認ください。
