相続登記の期限まで5か月!本国書類が間に合わない外国籍の方の応急処置を名古屋で
2026/10/29
はじめに|「韓国の書類を取り寄せている間に、期限が来てしまう」
期限に間に合わない事情がある外国籍の方のために、先に義務だけを果たす方法があります。
相続登記は2024年4月1日から義務になり、それより前に起きた相続も、2027年3月31日までに登記をしなければなりません。今日からちょうど5か月です。ところが外国籍の方の相続では、相続人を証明するために韓国や中国など本国の書類を取り寄せ、翻訳する必要があり、それだけで2〜3か月かかることがあります。相続人の中に海外にいる方がいれば、署名の認証でさらに時間がかかります。「書類を集め始めたが、どう考えても3月までに本登記は無理だ」――名古屋市中区のごとう司法書士事務所には、この秋、そうしたご相談が増えています。
結論からお伝えします。本登記が間に合わなくても、期限内に「相続人申告登記」という申出をしておけば、申し出た方については相続登記の義務を果たしたことになります。必要な書類は本登記よりずっと少なく、登録免許税もかかりません。この記事では、なぜ外国籍の方は期限に間に合いにくいのか、申告登記で法務局に何が起き、何ができて何ができないのか、そして申告登記のあとに本登記と売却へどうつなぐのかを、時系列に沿ってやさしくご説明します。
期限の仕組み|なぜ「昔の相続」も2027年3月31日なのか
義務化の日より前に起きた相続には、施行日から3年という共通の期限が置かれたからです。
相続登記の期限は、二つあります。一つは、2024年4月1日以降に起きた相続で、不動産を相続したことを知った日から3年以内です。もう一つは、それより前に起きた相続で、こちらは一律に2027年3月31日が期限です。「20年前に亡くなった父の名義のままの土地」も、この二つ目の期限の対象です。
なぜ昔の相続まで対象になったのかといえば、相続登記の義務化そのものが、持ち主の分からない土地を減らすための制度だからです。名義が亡くなった方のまま放置された土地は、災害の復旧や道路の整備の妨げになり、全国で大きな問題になっていました。義務化の日より前の相続を対象から外してしまうと、まさにその放置された土地が残ってしまいます。そこで法律は、施行日から3年の猶予を置いたうえで、昔の相続にも登記を求めることにしました。その猶予の終わりが2027年3月31日です。
期限を過ぎると、すぐに罰が来るわけではありません。法務省の案内によると、まず法務局の登記官から、期限内に登記をするよう求める催告書が届きます。その期限までに登記をせず、正当な理由も認められない場合に、登記官が裁判所へ通知し、裁判所が10万円以下の過料を科すかどうかを決めます。正当な理由の例として、相続人が非常に多くて書類の収集に時間がかかる場合などが挙げられていますが、外国籍の方の本国書類の収集がそれにあたるかは、一件ごとの判断です。「たぶん大丈夫」と期待して待つより、期限内に義務を果たしておくほうが確実です。
外国籍の方が間に合いにくい理由|本国書類・翻訳・海外の相続人という三つの時間
日本の戸籍なら数週間で集まる相続人の証明が、外国籍の方では数か月かかります。
本登記を期限内に終えるには、「亡くなった方の相続人はこの人たちで全員です」と証明する書類をそろえ、相続人全員で遺産分割協議をし、協議書に全員が署名・押印して、法務局に申請する必要があります。日本人の相続なら、戸籍は2024年3月から全国どこの市区町村でもまとめて取れる広域交付が使え、数週間でそろいます。外国籍の方の相続では、ここに三つの時間が加わります。
一つ目は、本国書類の時間です。韓国籍なら家族関係登録簿の証明書と除籍謄本を領事館や韓国側に請求し、中国籍なら本国の公証処で親族関係公証書を作ってもらいます。相続人が兄弟姉妹やおい・めいになる相続では、亡くなった方のご両親の代までさかのぼるため、さらに時間がかかります。二つ目は、翻訳の時間です。本国書類にはすべて日本語訳を付けます。古い除籍謄本は手書きのハングルと漢字が混ざり、読み解きにも時間が要ります。三つ目は、海外にいる相続人の時間です。遺産分割協議書への署名を現地の公証人などに認証してもらい、国際郵便で往復させるため、一人あたり数週間単位の時間が加わります。
これらは、本登記に必要な「相続人全員の確定」と「全員の合意」のための時間です。つまり、外国籍の方が期限に間に合わないのは、やる気の問題ではなく、書類が国境を越える仕組みの問題なのです。だからこそ、全員の確定と合意を待たずに、まず自分一人で義務を果たせる手続きが用意されています。それが次の章の相続人申告登記です。
応急処置の相続人申告登記|最小限の書類で「義務を果たした」ことになる仕組み
「私は名義人の相続人です」と法務局に申し出るだけで、申し出た人の義務は果たしたことになります。
相続人申告登記とは、登記簿上の名義人が亡くなったことと、自分がその相続人であることを、法務局に申し出る手続きです。2024年4月1日に、相続登記の義務化とセットで始まりました。申出を受けた登記官は、その不動産の登記簿の権利部(甲区)に、「〇〇の相続人として申出があった者」として申出人の氏名と住所を付記します。この申出をした相続人は、相続登記の申請義務を果たしたものとみなされます。
この仕組みが応急処置として使えるのは、本登記と違って「相続人全員の確定」が要らないからです。法務局が確かめるのは、名義人が亡くなった事実と、申出人がその相続人の一人であることだけです。相続人の範囲や法定相続分を確定する必要はなく、遺産分割の合意も要りません。相続人のうちの一人が単独で申し出ることができ、ほかの相続人の分をまとめて代理で申し出ることもできます。登録免許税はかかりません。
申出の方法は三つあります。不動産を管轄する法務局(名古屋市内なら名古屋法務局)の窓口に持参する、書留郵便で送る、法務省の「かんたん登記申請」を使ってインターネットで申し出る、の三つで、インターネットの申出に電子署名は不要です。申出に不備がなければ付記の登記がされ、申出人に登記完了の通知書が交付されます。通知書は完了から3か月を過ぎると廃棄され、再発行されないため、受け取ったら保管してください。
一つ注意があります。申出の効果は、申し出た相続人にしか及びません。妻と子2人が相続人なら、3人それぞれが申し出るか、1人がまとめて代理で申し出る必要があります。「兄が申告登記をしたから、自分も大丈夫」とはならないのです。
外国籍の方の申出に必要な書類|本国の証明書は「自分が相続人だと分かる分」で足ります
亡くなった事実と、自分との親子関係が分かる本国書類に日本語訳を付ければ、申出はできます。
相続人申告登記に必要なのは、①名義人が亡くなった日が分かる書類、②申出人がその相続人であることが分かる書類、③申出人の住所を証明する書類、の三つです。日本人なら①②を戸籍でそろえますが、外国籍の方は戸籍の代わりに本国の書類を使います。
①については、亡くなった方が日本で亡くなっていれば、日本の住民票の除票や死亡届の記載事項証明書で死亡の事実を示せることが多く、本国書類を待たずに準備できます。②は、たとえば韓国籍の方の相続で子が申し出るなら、亡くなった方の家族関係証明書など、親子関係が分かる証明書に日本語訳を付けます。本登記のように出生から死亡までの全部の除籍謄本をさかのぼる必要はなく、「自分が相続人だと分かる分」で足ります。ここが、本国書類の収集に時間がかかる外国籍の方にとっての、いちばんの違いです。
③の住所証明は、日本に住んでいる方なら住民票の写し(マイナンバーの記載がないもの)です。国籍・地域と通称名の記載を省略しないよう、取得のときに伝えてください。海外に住んでいる相続人が申し出る場合は、住民票がないため住所証明を省略できず、法務省の案内では、居住国の政府などが作った住民票に相当する書面などを提出することになっています。
どの書類で足りるかは、国籍と家族構成によって変わります。当事務所では、申出の前に名古屋法務局へ事前に相談し、「この本国書類の組み合わせで申出が受け付けられるか」を確かめてから提出します。期限が迫る3月は法務局も混み合いますので、11月のうちに書類の設計を済ませ、12月から1月に申出を出す段取りが安心です。
できること・できないこと|名義は動かず、売却には本登記が必要です
申告登記は「名乗り」の記録です。家を売る・担保に入れるには、あらためて相続登記が要ります。
相続人申告登記でできるのは、申し出た相続人について、相続登記の義務を果たしたことにすることです。一方で、できないことをはっきり知っておく必要があります。
第一に、名義は動きません。登記簿に付記されるのは「この人が相続人として申し出た」という事実だけで、所有権は亡くなった方のままです。持分も記録されません。第二に、売却や担保設定はできません。家を売るには売主への所有権の登記が前提なので、申告登記のままでは売買契約を結んでも登記ができず、住宅ローンの担保にも入れられません。第三に、遺産分割にもとづく登記の義務は残ります。法務省の案内によると、遺産分割がまとまったときは、その日から3年以内に、分割の内容にもとづく相続登記をしなければなりません。申告登記は義務を「消す」ものではなく、「期限内に果たした」ことにする時間の確保だと考えてください。
ここで、もう一つの選択肢との違いも押さえておきましょう。「法定相続分どおりの共有の相続登記」です。こちらは本当の名義変更で、相続人の一人から申請できます。ただし、相続人全員を確定する本国書類が全部必要で、割合は亡くなった方の本国法(韓国籍なら配偶者は子の1.5倍)で計算します。つまり、法定相続分の登記は書類の面では本登記と同じ重さがあり、本国書類が間に合わない方には向きません。書類が間に合わないなら申告登記、書類はそろっているが分け方が決まらないなら法定相続分の登記、という使い分けになります。なお、2026年10月5日から始まった不動産の名義人の国籍の申出は、所有権の名義人になる登記のときに必要になる手続きで、名義が動かない申告登記の段階では求められません(国籍の申出の記事をご覧ください)。
申告登記のあとの道筋|本国書類がそろってから、本登記と売却へ
申告登記で時間を確保したら、本国書類→協議→本登記→売却の順に進めます。
申告登記は入口であって、出口ではありません。申出を済ませたら、本登記までの道筋を同時に走らせます。流れは、①本国書類の収集と翻訳を続ける、②相続人全員が確定したら遺産分割協議をする(海外の相続人はサイン証明で参加)、③協議書にもとづく相続登記(本登記)をする、④売るなら売却活動へ、の順です。
時系列で見てみましょう。11月に申告登記の書類を設計し、同時に韓国の除籍謄本など本国書類を請求します。12月から1月に申告登記を申し出て、期限の心配をなくします。本国書類は2月から3月ごろに届き、翻訳と読み解きを経て相続人が確定します。春に遺産分割協議を行い、海外の相続人の署名を認証付きで取り寄せ、初夏に本登記を申請します。本登記が終われば、その日から家を売り出せます。このとき、本国書類の収集中に査定や販売準備を並行させておけば、名義変更の完了とほぼ同時に売り出すことができます。
家を売って代金を分けるなら、協議書に換価分割であることを明記し、海外の相続人が売主に入るときは買主による源泉徴収の確認も必要です(相続した不動産の売却の記事で詳しくご説明しています)。当事務所は司法書士と宅地建物取引士を兼ねていますので、申告登記の申出から本国書類の収集、協議書の作成、本登記、そして売却まで、ひとつの窓口で途切れなく進められます。「とりあえず期限だけ何とかしたい」という段階からのご相談で大丈夫です。
よくある質問|相続登記の期限と相続人申告登記で多いご質問
Q. 父が亡くなったのは15年前です。本当に2027年3月31日までに登記が必要ですか?
はい、必要です。2024年4月1日より前に起きた相続で、まだ登記していない不動産は、2027年3月31日が相続登記の期限です。正当な理由なく期限を過ぎると、登記官の催告を経て、10万円以下の過料の対象になることがあります。
Q. 相続人申告登記をすれば、過料の心配はなくなりますか?
申し出た相続人については、相続登記の義務を果たしたものとみなされます。ただし効果は申出人だけに及ぶので、ほかの相続人はそれぞれ申し出るか、1人がまとめて代理で申し出る必要があります。また、遺産分割がまとまったら、その日から3年以内に本登記をする義務は残ります。
Q. 外国籍の父の相続で、本国の書類が1通もない状態でも申出はできますか?
死亡の事実と、自分が相続人であることが分かる書類は必要です。日本で亡くなった方の死亡は住民票の除票などで示せますが、親子関係は本国の証明書(韓国なら家族関係証明書など)に日本語訳を付けて示します。本登記と違い、出生までさかのぼる全部の書類は要りません。
Q. 申告登記をしたあと、家を売りたくなったらどうすればよいですか?
本登記が必要です。申告登記では名義が亡くなった方のままなので、売却や担保設定はできません。本国書類をそろえて遺産分割協議をし、協議書にもとづく相続登記を終えてから売り出します。
まとめ|11月中に申出の準備を始めれば、3月の期限に間に合います
本国書類が間に合わなくても、申告登記で義務を果たし、本登記と売却は春以降に。
2024年4月1日より前の相続も、2027年3月31日が相続登記の期限です。外国籍の方の相続は、本国書類の収集と翻訳、海外の相続人の署名の認証に時間がかかるため、本登記が期限に間に合わないことがあります。その場合の応急処置が相続人申告登記です。名義人の死亡と、自分がその相続人であることが分かる書類(外国籍の方は本国の証明書と日本語訳)に住所証明を添えて法務局に申し出れば、申し出た相続人は義務を果たしたものとみなされ、登録免許税もかかりません。ただし名義は動かず、売却や担保設定にはあらためて本登記が必要で、遺産分割がまとまれば3年以内の本登記の義務が残ります。申告登記で時間を確保し、本国書類がそろってから協議・本登記・売却へ進むのが、外国籍の方の現実的な道筋です。
名古屋のごとう司法書士事務所は、外国籍の方の相続登記について、相続人申告登記の申出から本国書類の収集・翻訳、名古屋法務局との事前相談、本登記、そして相続した家の売却まで、司法書士兼宅建士としてひとつの窓口でお手伝いしています。期限が迫る3月は法務局も混み合いますので、動くなら今月です。固定資産税の納税通知書と、亡くなった方の国籍とご家族の構成が分かるメモ、手元にある本国の書類があればそのままお持ちください。申告登記で足りる書類と、本登記までの日程表を、その場でお示しします。
ごとう司法書士事務所は、外国籍の方の相続手続きと相続した不動産の売却をひとつの窓口でお手伝いしている、名古屋市中区の司法書士・宅地建物取引士の事務所です(代表:後藤勝良)。所在地は名古屋市中区丸の内三丁目15番3号TCF丸の内ビル6階。地下鉄「久屋大通駅」(桜通線側1番出口)から徒歩5分、「丸の内駅」(桜通線側4番出口)から徒歩6分です。受付は平日9時から19時まで、土日祝日も事前のご予約でご相談いただけます。ご相談は基本無料です。
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※本記事は2026年10月時点の法令・制度・法務省の案内に基づいて作成しています。相続人申告登記の添付書類の取扱いは国籍やご家族の状況、法務局の運用によって異なりますので、実際のお手続きの際は法務局・専門家にご確認ください。
