相続した実家が空き家に?売る・貸す・持つの選び方を名古屋の司法書士が解説
2026/10/18
はじめに|「実家をどうするか」は、先送りするほど選択肢が減っていきます
空き家の問題は、気持ちの問題とお金の問題を分けて考えると前に進みます。
親御さんが亡くなり、だれも住まなくなった実家。思い出が詰まった家を売るのはしのびない。でも管理に通うのも大変で、固定資産税だけが毎年出ていく――相続した実家が空き家になっているというご相談は、名古屋のごとう司法書士事務所でも年々増えています。
外国籍の方の場合、相続人のきょうだいが本国や海外にいて「管理できる人が日本にいない」という事情が重なることも少なくありません。
この記事では、空き家になった実家の出口を「売る・貸す・持つ」の3つに整理し、それぞれの損得と、税金の特例の期限、決め方の手順までをやさしくご説明します。読み終わる頃には、ご家族で話し合うための材料が揃っているはずです。
まず数字で現状把握|空き家を持ち続ける年間コスト
「とりあえずそのまま」にも、毎年しっかり値段がついています。
空き家は、持っているだけでお金が出ていきます。固定資産税・都市計画税が年に数万円から十数万円。火災保険(空き家は保険料が上がったり、加入できる商品が限られたりします)。水道や電気を通したままなら基本料金。庭木の手入れや草刈りを業者に頼めば1回数万円。遠方から管理に通う交通費も馬鹿になりません。
合計すると、名古屋近郊の一般的な戸建てでも年間20万円前後の負担になることが珍しくなく、10年で200万円。そのあいだにも建物は傷み、売却できる価格は下がっていきます。
忘れられがちなのが、家の中の荷物です。どの出口を選ぶにしても、遺品の整理と残置物の処分は避けて通れず、業者に頼めば戸建て1軒で数十万円かかることもあります。これも「いつかやる」と先送りするほど気持ちの負担が重くなる作業ですので、コストの一部として最初から計算に入れておきましょう。
まずやるべきことは、この「わが家の空き家コスト」を実際の数字で書き出してみることです。固定資産税の納税通知書と保険証券、光熱費の明細を並べれば、30分でできます。感情で結論を出す前に、毎年いくら払って何を守っているのかを見える化する――これが出口選びの出発点です。
放置のリスク|「管理不全」と判断されると固定資産税が上がる時代に
「壊れるまで放っておく」が通用しない仕組みに変わりました。
空き家対策の法律(空家等対策特別措置法)は2023年に改正され、放置への対応が強化されました。以前から、倒壊のおそれなどがある特定空家に指定されて勧告を受けると、住宅用地の固定資産税の軽減(最大6分の1)が外れて税負担が跳ね上がる仕組みがありましたが、改正後は、その手前の管理不全空家の段階でも、指導・勧告を経て同じように軽減が外れ得るようになりました。
つまり、「壊れそうなほどではないが、手入れされていない家」も、行政から目を向けられる対象になったということです。窓ガラスの割れや雑草の繁茂など、ご近所からの通報をきっかけに調査が入ることもあります。
また、空き家は防犯・防災の面でもリスクを抱えます。不審者の侵入、放火、台風での屋根材の飛散によるご近所への損害――所有者は賠償責任を問われ得る立場です。海外在住で現地をすぐ確認できない相続人がいるご家族ほど、「持ち続けるなら管理の体制までセットで決める」ことが欠かせません。
選択肢①売る|3,000万円控除は期限あり。使えるうちに検討を
税金の特例には、はっきりした締め切りがあります。
売却でまず知っておきたいのが、相続した空き家を売ったときの3,000万円特別控除です。要件を満たせば、売却益から最大3,000万円を差し引けるため、税負担が大きく軽くなります。
主な要件は、昭和56年5月31日以前に建築された戸建てであること(マンションは対象外)、亡くなった方が直前までひとりで住んでいたこと(老人ホーム入所のケースも一定の条件で対象)、相続後に貸したり住んだりしていないこと、売却代金が1億円以下であることなどです。古い家屋は耐震基準を満たす必要がありますが、2024年からは、売ったあと買主側が翌年2月15日までに取り壊しや耐震改修をする場合も対象になり、使いやすくなりました。一方で、相続人が3人以上いる場合は控除額が1人2,000万円に下がります。
そして大切なのが期限です。この特例は2027年12月31日までの売却が対象で、しかも相続から3年を経過する年の年末までに売る必要があります。「貸してしまうと特例が使えなくなる」点も要注意です。昭和50年代以前のご実家をお持ちの方は、迷っている時間そのものが税負担の差になり得ます。
売り方には、家付きのまま売る方法と、解体して土地として売る方法があります。古い家は解体したほうが買い手がつきやすいこともありますが、木造戸建ての解体には150万円前後からの費用がかかり、更地にすると住宅用地の税軽減が外れて固定資産税が上がります。解体のタイミングは「売却が決まってから」「年明けすぐ」など、税金と売れ行きの両面から設計するのがコツです。
選択肢②貸す|向く家と向かない家、戸建て賃貸の現実
家賃収入は魅力ですが、「貸せる状態にする費用」を忘れずに。
名古屋近郊では戸建て賃貸の需要は根強く、駅や学校に近い家なら借り手が見つかることも多いです。家賃収入で固定資産税と管理費をまかなえれば、家を手放さずに維持できます。
ただし、現実には貸す前のハードルがあります。古い家をそのまま貸せることは少なく、水回りの修繕やクリーニングに数十万円から数百万円の初期投資が必要になりがちです。貸したあとは大家としての修繕義務を負い、入居者が長く住めば「売りたくなったときに売れない」状態にもなります。前の章でふれたとおり、いったん貸すと空き家の3,000万円特例は使えなくなる点も、順番として大切です。
収支の目安は、想定家賃から固定資産税・保険・修繕積立相当を引いて、初期投資を何年で回収できるかを計算すること。回収に10年以上かかるようなら、売却と比べてじっくり考えたほうがよい水準です。当事務所では査定と賃料相場の両方をお出しして、この計算をお手伝いしています。
選択肢③持つ|管理の工夫と、海外にいる相続人の事情
「持つ」と決めるなら、管理と次の承継まで決めるのがセットです。
お盆やお正月に家族が集まる場所として残したい、将来だれかが住むかもしれない――「持つ」という選択にも、もちろん価値があります。その場合は、だれが・どのくらいの頻度で・いくらかけて管理するかを決め、月1回の見回りと通風・通水を最低限のラインにしましょう。ご自身で通えない場合は、空き家管理サービス(月数千円から1万円程度)や、当事務所のような地元の事務所に見守りを頼む方法があります。
外国籍のご家族で注意したいのは、相続人の一部が本国や海外にいるケースです。管理の負担が日本にいるひとりに偏り、不公平感からあとで揉める原因になります。「持つ」と決めるなら、管理費用の分担や、将来売るときの条件まで遺産分割協議書に書き込んでおくと安心です。
なお、「いずれ本国へ帰るかもしれない」「子どもが日本に戻る可能性がある」という外国籍のご家族ならではの迷いもよくうかがいます。その場合は、「〇年後に家族会議で再判断する」と期限を区切って持つのがおすすめです。期限のない保留は、ただの放置に変わってしまうからです。
また、だれも引き継がない家をこのまま次の世代に渡せば、問題は倍の人数の相続人に引き継がれます。「自分たちの代で出口を決める」こと自体が、お子さんたちへの何よりの相続対策です。
決め方の手順|3つの数字で比べる。ただし名義の整理が大前提
感情論を数字の土俵に乗せると、家族の話し合いが前に進みます。
出口の決め方は、シンプルな手順をおすすめしています。①売った場合の手取り額(査定額から税金・費用を引く。特例が使えるかで大きく変わります)、②貸した場合の年間収支(家賃から経費と初期投資の回収を引く)、③持ち続けた場合の年間コスト。この3つの数字を1枚の紙に並べ、そこにご家族の気持ちを重ねて話し合うのです。数字なしの話し合いは平行線になりがちですが、数字があると「あと5年持って、次の大規模修繕の前に売ろう」といった具体的な合意に落とし込めます。
相続人のあいだで意見が割れたときは、「売って代金を分ける」(換価分割)が落としどころになることがよくあります。家そのものは分けられなくても、お金なら公平に分けられるからです。思い入れのある方が家を取得し、ほかの相続人にお金を払う代償分割という方法もあります。意見の違いは、分け方の工夫で乗り越えられることが多いのです。
そして忘れてはならないのが、どの出口を選ぶにも相続登記(名義変更)が前提になることです。売るにも貸すにも、亡くなった方の名義のままでは契約できません。外国籍の方の場合は本国書類の収集に数か月かかるため、方針を話し合うのと並行して名義の整理を進めるのが、結局いちばんの近道です。
当事務所は司法書士兼宅建士として、①②③の数字づくり(査定・賃料相場・コスト計算)と名義変更をひとつの窓口でお手伝いします。
まとめ|「気持ちの整理」と「期限」の両方に間に合ううちに
数字の見える化→家族の話し合い→名義の整理。この順で動けば大丈夫です。
空き家になった実家の出口は、売る・貸す・持つの3つです。持ち続ければ年間20万円前後のコストと管理不全のリスクが積み上がり、売るなら3,000万円特例に2027年12月31日と相続から3年という二重の期限があり、貸すなら特例を手放す覚悟と初期投資の回収計算が要ります。どれを選ぶにしても、まず数字を揃えて家族で話し合い、名義の整理を並行して進める――これが後悔しない順番です。
名古屋のごとう司法書士事務所は、外国籍の方の相続登記から、空き家の査定・売却・管理のご相談まで、司法書士兼宅建士としてワンストップでお手伝いしています。海外にいるごきょうだいとの書類のやり取りもお任せください。「まだ気持ちの整理がつかない」段階での、数字の見える化だけのご相談も歓迎です。ご相談には、固定資産税の納税通知書と、分かれば建築年のメモ(特例が使えるかの判断材料になります)をお持ちください。
▶空き家になった実家のご相談は、名古屋のごとう司法書士事務所へ。フリーダイヤル0120-290-939、またはごとう相続手続き相談センターからお気軽にお問い合わせください。
※本記事は2026年10月時点の法令・制度に基づいて作成しています。空き家の3,000万円特別控除の適用可否は要件が細かく定められていますので、実際のお手続きの際は税理士・税務署にご確認ください。