外国籍の相続登記を自分でやる方法と専門家に頼む場合の違いを名古屋で解説
2026/10/21
はじめに|「自分でできるなら、自分でやりたい」は当然の気持ちです
できる場合とできない場合を、正直にお話しします。
「相続登記は自分でもできると聞いた。司法書士に頼むとお金がかかるし、まず自分でやってみたい」――もっともなお考えです。実際、日本人の標準的な相続登記は、時間をかければご自身で申請されている方も大勢います。
では、外国籍の方の相続登記はどうか。結論を先に言うと、できるケースもありますが、日本人の場合より壁がかなり高いのが実情です。そしてその壁は、やる気や根気の問題ではなく、本国書類と国際私法という専門知識の問題です。
この記事では、名古屋のごとう司法書士事務所が、自分でやる場合の手順とつまずきポイント、頼んだ場合との時間とお金の比較、そして両方のいいとこ取りをする役割分担まで、商売抜きで正直にご説明します。読んだうえで「自分でやれそうだ」と思えたら、ぜひ挑戦してください。
結論から|自分でできる人・頼んだほうがいい人の分かれ目
分かれ目は「相続関係の単純さ」と「書類の言語」です。
自分での申請に向いているのは、次の条件がそろうケースです。相続人が配偶者と子どもだけで全員日本在住。亡くなった方の本国書類が領事館で簡単に取れる国籍(韓国籍など)。遺産分割の内容に争いがなく、不動産は自宅1件だけ。平日の昼間に役所や法務局へ通う時間がある。このすべてに当てはまるなら、挑戦する価値はあります。
逆に、次のどれかに当てはまるなら、最初から専門家に相談することをおすすめします。兄弟姉妹やおい・めいが相続人になる(本国の古い記録までさかのぼる必要がある)。相続人の中に海外在住の方がいる(サイン証明の段取りが必要)。本国の書類制度が複雑、または記録が見つからない。昔の相続を放置していて相続人が増えている。売却の予定があり、期限から逆算する必要がある。
つまり、「単純な相続関係×取りやすい書類」なら自分で、「複雑な関係×難しい書類」なら専門家へ。この記事の残りは、この分かれ目を自分で見極めるための材料です。
自分でやる場合の手順|日本人の相続登記と違うところ
手順は5つ。日本人と違うのは2番目の書類集めです。
自分でやる場合の手順は、①不動産の確認(登記簿と固定資産税の課税明細書)、②相続人を証明する書類集め、③遺産分割協議書の作成と全員の署名・押印、④登記申請書の作成、⑤法務局への申請、の5つです。法務局には無料の手続案内(予約制)もあり、申請書の様式は法務局のサイトから入手できます。
日本人との最大の違いが②です。日本人なら戸籍一式を市役所で集めれば済むところ、外国籍の方は、亡くなった方の出生から死亡までの身分関係を本国の書類で証明します。韓国籍なら家族関係証明書・除籍謄本など、中国籍なら公証処の公証書、そのほかの国なら出生・婚姻・死亡証明書の組み合わせです。そして、そのすべてに日本語訳を付けます。
もうひとつの違いは、法定相続情報一覧図が使えないことです。日本人の相続で書類を1枚にまとめられる便利な制度ですが、亡くなった方が外国籍の場合は対象外のため、書類の束をそのまま提出することになります。登録免許税(固定資産税評価額の0.4%)の計算と収入印紙の準備は、日本人の場合と同じです。
申請は、法務局の窓口への持参のほか、郵送でもできます。提出後、審査を経て登記が完了するまでは通常1〜2週間程度ですが、外国書類が含まれる案件は審査が長引くことがあります。完了後に受け取る登記識別情報(権利証に代わるもの)は再発行されない大切な書類ですので、受け取り方法まで含めて段取りしておきましょう。
つまずきポイント①本国書類|何を集めて、どう訳すか
「何が必要か」の正解が、国籍と家族構成ごとに違います。
自分でやる方が最初に立ち往生するのが、「結局、何の書類を何通集めればいいのか」です。日本の戸籍と違い、外国の身分証明制度は国ごとにバラバラで、法務局のサイトにも「あなたの場合の必要書類リスト」は載っていません。法務局の手続案内でも、外国書類の個別の品ぞろえまでは教えてもらえないのが普通です。
韓国籍の方なら、名古屋では駐名古屋大韓民国総領事館で証明書を取得できますが、どの証明書を何通、だれの分まで取るかの判断が必要です。窓口で「相続に必要な書類を全部ください」と頼んでも、あなたの家族構成に合わせた品ぞろえまでは選んでもらえません。兄弟姉妹相続なら、ご両親の出生までさかのぼる除籍謄本が加わり、古いものは漢字ハングル混じりで読み解きが必要になります。中国籍の方なら、本国の公証処での公証書づくりを現地の親族に頼む段取りが発生します。
翻訳は、翻訳者の資格までは求められず、訳文に翻訳者名を記載すれば自分の翻訳でも受け付けられるのが通常です。ただし、古い書類の誤読は命取りです。名前の表記ゆれ(本国書類のハングルや漢字と、日本の住民票のカタカナ・通名)をどう整合させるかも、初めての方が最も見落とすポイントです。ここを乗り切れるかが、自分でやれるかどうかの第一関門です。
つまずきポイント②法務局の補正|一度で通らないと何が起きるか
外国籍案件は、法務局側も慎重に審査します。
申請書類に不備があると、法務局から補正(直してください)の連絡が来ます。期限までに直せないと申請は却下や取下げとなり、集めた印紙の還付手続きから出直しです。
日本人の単純な相続登記なら補正も軽微で済みますが、外国籍案件の補正は重くなりがちです。「この証明書では相続人全員の証明として足りない」「訳文のこの部分が原文と合わない」「協議書の氏名表記が証明書と一致しない」――こうした指摘は、書類の取り直しや、海外の相続人からの署名のもらい直しに直結します。国際郵便の往復が増えるたび、完了は数週間〜数か月単位で遅れますし、そのあいだに印鑑証明書などの有効期限が切れて、さらに取り直しという悪循環も起こり得ます。
さらに、法務局の登記官によっては外国書類の取り扱いに慣れておらず、審査に通常より時間がかかることもあります。専門家は、申請前に法務局と協議して「この組み合わせで通るか」を確認してから出すため、この出直しのリスクを最小化できます。自分でやる場合も、申請前の法務局への事前相談を強くおすすめします。
時間とお金の正直な比較|節約できる額と、代わりに払うもの
節約できるのは報酬分。登録免許税と実費は、だれがやっても同じです。
お金の比較から。司法書士に頼んでも自分でやっても、登録免許税(評価額の0.4%)と本国書類の取得費・翻訳の実費は同じにかかります。節約できるのは司法書士の報酬部分で、外国籍案件ではおおむね十数万円〜の規模です。
時間の比較。自分でやる場合、書類の調査と収集、訳文づくり、申請書の作成、法務局との往復で、平日の日中の時間をかなり使います。初めての外国籍案件なら、調べものを含めて数十時間かかることも珍しくなく、補正が重なればさらに延びます。働きながらの方は、「報酬の節約額を自分の時給と費やす時間で割に合うか」で考えると判断しやすいでしょう。
見落としがちなのが、失敗した場合のコストです。期限(相続登記義務化の3年、売却予定日)に間に合わない、書類の有効期限が切れて取り直し、誤った内容で登記して更正登記が必要になる――こうなると、節約どころか二重の出費です。単純な案件ほど自分でやる価値があり、複雑な案件ほど「最初から頼むほうが結局安い」構図になります。
もうひとつの視点が、登記の先にある手続きです。集めた本国書類の束は、銀行の預貯金手続きにもそのまま使えます。登記は自分で、銀行は別途――とバラバラに進めるより、書類1セットで登記と銀行をまとめて回すほうが全体の手間は小さく、専門家に一括で頼む場合の割安感もここで生まれます。相続の全体像で比較することをおすすめします。
役割分担という第3の道|自分でやる部分と任せる部分を分ける
全部自分か全部お任せかの二択ではありません。
当事務所がよくご提案するのは、役割分担です。ご自身で動ける部分――領事館での証明書の取得、市役所での住民票や評価証明書の取得、ご家族への連絡や書類の受け渡し――を担当していただき、専門判断が必要な部分――必要書類の設計、本国法の確認、古い書類の解読、協議書と申請書の作成、法務局との調整――を当事務所が受け持つ形です。
この分担なら、報酬を抑えながら、補正や取り直しのリスクは専門家側で引き受けられます。見積もりの段階で「どこを自分でやればいくら変わるか」を明示しますので、予算に合わせて組み立ててください。
また、途中まで自分で進めた方の途中参加も歓迎です。集めた書類はムダになりません。「ここまで集めたが、この先が分からない」という状態からの引き継ぎは、ゼロからのご依頼より費用を抑えられることも多いのです。
なお、義務化の期限(3年、昔の相続は2027年3月31日)だけが差し迫っていて本登記に時間がかかりそうな場合は、相続人申告登記という簡易な手続きで義務をいったん果たしておく方法があります。これは申出人ひとりで、自分が相続人だと分かる書類を付けて法務局に申し出るだけの比較的シンプルな手続きで、自分でやるのに向いています。ただしあくまで「つなぎ」で、売却や担保設定には正式な相続登記が必要です。
まとめ|挑戦する方も、途中でやめた方も、いつでもどうぞ
見極めの基準は「相続関係の単純さ」。迷ったら初回相談で判定できます。
外国籍の方の相続登記は、相続人が配偶者と子だけで全員日本在住、書類が取りやすい国籍、争いなし、という条件がそろえば自分での申請も可能です。一方、兄弟姉妹相続・海外在住の相続人・古い記録・放置案件のどれかが絡むなら、本国書類の設計と補正リスクの観点から、専門家に任せるか役割分担で進めるのが結局の近道です。
名古屋のごとう司法書士事務所では、初回のご相談で「ご自身でできそうか、どこが難所か」を率直に判定し、自分でやる方には注意点を、任せたい方には総額の見積もりを、役割分担したい方には分担表をお示しします。自分でやると決めた方の背中を押すご相談も歓迎ですし、挑戦して行き詰まった方の途中からの引き継ぎもよくお受けしています。固定資産税の納税通知書と、ご家族の構成が分かるメモがあれば、判定はその場でできます。
▶外国籍の相続登記のご相談・難易度判定は、名古屋のごとう司法書士事務所へ。フリーダイヤル0120-290-939、またはごとう相続手続き相談センターからお気軽にお問い合わせください。
※本記事は2026年10月時点の法令・制度・実務の取り扱いに基づいて作成しています。必要書類は国籍やご家族の状況によって異なりますので、実際のお手続きの際は法務局・専門家にご確認ください。

