名古屋で韓国籍のご家族の相続|「日本と同じ分け方」で遺産分割協議を始めると、つまずきます

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名古屋で韓国籍の方の相続|遺産分割協議の前に知っておきたい「日本と違う相続分」を司法書士が解説

2026/06/24

配偶者の取り分が大きい――韓国籍の相続には、日本と違う「分け方のものさし」があります

ご家族が亡くなられたあと、相続人どうしで「誰が、どの財産を、どれだけ引き継ぐか」を話し合うことを、遺産分割協議といいます。ご自宅や預金をどう分けるかを、相続人みんなで決める大切な話し合いです。

ところが、亡くなったお父さま・お母さまが韓国籍だったり、相続人のなかに韓国籍の方がいらっしゃると、この「分け方のものさし」そのものが、日本とは少し違ってきます。多くの方が「きょうだいで仲よく半分こ」「配偶者が半分、子どもが残り半分」といった日本での感覚で考えはじめますが、韓国の法律では、配偶者の取り分が日本よりも大きく定められているなど、出発点がそもそも異なるのです。そのことを知らないまま協議を進めてしまうと、あとから「やり直し」になってしまうこともあります。

このコラムでは、名古屋・中区で相続と不動産を専門にお手伝いしているごとう司法書士事務所が、韓国籍がからむ相続で「遺産分割協議をどう考え、どう進めるとよいのか」を、できるだけやさしい言葉でご案内します。難しい法律の話はかみくだいてお伝えしますので、お茶でも飲みながら、気楽に読み進めていただければと思います。

1.なぜ「分け方」が日本と違うのか――まず決まるのは「どの国の法律で分けるか」

―― 「相続は、亡くなった方の本国の法律による」が出発点です

日本では、外国がからむ相続について「法の適用に関する通則法」という法律が、どの国のルールで相続を進めるかを定めています。そのなかの第36条に、「相続は、被相続人(亡くなった方)の本国法による」と書かれています。むずかしい言い方ですが、かみくだくと「亡くなった方が、亡くなった時点でどの国の国籍だったか」で、適用される相続のルールが決まる、ということです。

ですから、亡くなったお父さま・お母さまが韓国籍であれば、原則として韓国の民法にしたがって相続を考えることになります。日本で生まれ、日本で何十年も暮らしてこられた方であっても、国籍が韓国のままであれば、相続の「分け方のものさし」は韓国のもの、というのが基本の考え方です。名古屋で長く商売をされ、土地や建物を日本にお持ちだったとしても、この点は変わりません。

なお、亡くなった方が生前に「自分の相続については日本の法律にしたがう」という内容の遺言を残しておられた場合などは、日本法が適用される余地もあります。ただし、これは遺言の有無や書き方によって変わるデリケートな部分で、ご家庭ごとの事情によって結論が違ってきます。「うちはどちらにあたるのだろう」と迷われたときは、自己判断で進める前に、一度専門家にご確認いただくのが安心です。

ここで一つ、ほっとしていただきたいことがあります。「韓国の法律で相続する」と聞くと、「では手続きも韓国でするの?」「韓国語ができないと無理なのでは?」と身構えてしまう方が少なくありません。けれども、名古屋にあるご自宅などの不動産の名義を変える相続登記は、日本の法務局に対しておこなう日本の手続きです。適用される相続のルールが韓国のものになる、というだけで、手続きの舞台は日本です。そこは切り分けて考えていただいて大丈夫です。

2.配偶者の取り分が大きい――韓国の「法定相続分」を、具体例で見てみましょう

―― 配偶者は他の相続人の「1.5倍」、ここが日本との大きな分かれ道です

では、肝心の「分け方」です。韓国の民法でも、配偶者は常に相続人になります。そして、お子さんなど直系卑属(子・孫)がいる場合は、配偶者とお子さんが一緒に相続人になります。ここまでは日本と似ています。

大きく違うのは、その「割合」です。韓国の民法では、配偶者の法定相続分は、ほかの相続人ひとりあたりの1.5倍と定められています。文章だけだと分かりにくいので、具体的な数字でご説明します。

たとえば、亡くなったご主人に、奥さまとお子さんが2人いらっしゃったとします。日本の法律であれば、配偶者が2分の1、お子さん2人で残りの2分の1を分け合い、お子さんは1人あたり4分の1ずつ、という分け方になります。ところが韓国の法律では、「配偶者1.5:子1:子1」、つまり「3:2:2」の割合になります。計算すると、奥さまが7分の3、お子さんがそれぞれ7分の2ずつ、ということになります。配偶者の取り分が、日本よりもはっきり大きくなるのがお分かりいただけると思います。お子さんが1人だけの場合は「配偶者1.5:子1」で「3:2」、奥さまが5分の3、お子さんが5分の2となります。

ご家族の構成によって割合は変わりますので、ほかのパターンも、いくつか並べておきます。読み飛ばしていただいてもかまいませんが、「うちはどれに近いかな」と探してみてください。

  • 配偶者と子ども:配偶者が1.5、子どもが1人あたり1。子1人なら配偶者5分の3・子5分の2、子2人なら配偶者7分の3・子それぞれ7分の2、子3人なら配偶者9分の3(3分の1)・子それぞれ9分の2です。
  • 配偶者がすでに亡くなり、子どもだけ:お子さんどうしで均等に分けます。子2人なら2分の1ずつ、子3人なら3分の1ずつです(この点は日本と同じ感覚です)。
  • お子さんがおらず、配偶者と親(直系尊属):韓国では、子や孫がいないときは、配偶者とご両親などが一緒に相続人になります。割合はやはり配偶者が1.5。たとえば配偶者とご両親お二人なら「1.5:1:1」で、配偶者が7分の3、ご両親がそれぞれ7分の2です。
  • 配偶者だけ(子も親もいない):日本では兄弟姉妹が加わることがありますが、韓国では、子も親もいなければ配偶者がひとりで相続するのが原則です。配偶者の立場が手厚いことが、ここにもあらわれています。

こうして並べてみると、どのパターンでも「配偶者の取り分が日本より大きめ」という共通点が見えてきます。ご自身のご家庭がどれにあてはまるかは、戸籍をたどって相続人を確定させてはじめて確定します。「たぶんこれだろう」で進めず、まずは正確な家系の確認から始めるのが、遠回りに見えていちばんの近道です。

これは、遺産分割協議をするときの「目安の出発点」になる大切な数字です。もちろん、相続人全員が納得すれば、この割合どおりにきっちり分けなくてもかまいません。「お母さんに多めに残してあげよう」と相続人みんなで決めるのは自由です。けれども、その「自由に決める」話し合いをするにも、まずは法律上の出発点がどこにあるのかを知っておかないと、議論がかみ合わなくなってしまいます。日本式の数字を前提にしたまま話を進めて、あとから「実は割合が違った」と分かると、せっかくの合意がふりだしに戻ってしまうこともあるのです。

少し最近の話題にも触れておきます。韓国では、相続人に最低限保障される取り分である「遺留分(いりゅうぶん)」をめぐって、2024年に憲法裁判所が、亡くなった方の兄弟姉妹の遺留分を認める規定を違憲とする判断を示しました。これを受けて、韓国の相続のルールは現在、見直しの動きが進んでいるとされています。ただし、これは「最低限の取り分」である遺留分についての話で、いままでご説明してきた「法定相続分(基本の分け方の割合)」とは別の論点です。また、改正の中身や時期は本コラム作成時点で流動的な部分があり、確実なことは言い切れません。実際のご相続にどう影響するかは、手続きを始める時点での最新のルールを一つひとつ確認しながら進める必要があります。このあたりは、まさに専門家の出番だとお考えいただければと思います。

3.「割合」が分かったら、次は協議を実際にまとめる――名古屋での進め方

―― 相続人全員の合意と、韓国の印鑑証明・サイン証明という関門

分け方の割合が分かったら、いよいよ遺産分割協議を「形」にしていきます。ここで大切なのは、相続人が「全員」そろって合意する必要がある、という点です。一人でも欠けていたり、連絡が取れない相続人がいたりすると、協議は成立しません。韓国籍のご家庭では、ご親族の一部が韓国に住んでおられたり、お子さんやお孫さんの代でアメリカなど海外に渡っておられたりすることもめずらしくありません。「誰が相続人なのか」をもれなく確定させる作業そのものが、最初の山場になります。

相続人全員の合意ができたら、その内容を書いた遺産分割協議書に、全員が署名・押印します。日本に住んでおられる相続人であれば、実印を押して印鑑証明書を添えるという、おなじみのやり方になります。ありがたいことに、韓国にも日本と同じように実印と印鑑証明の制度がありますので、韓国にお住まいの相続人にも、協議書を国際郵便でお送りして、署名・実印の押印をいただき、韓国の印鑑証明書を添えて返送していただく、という形で対応できます。

少しやっかいなのが、日本の住民登録を抜いて海外に住んでおられる場合です。このときは、実印と印鑑証明書の代わりに「サイン証明(署名証明)」という書類が必要になります。これは、お住まいの国にある日本の大使館・領事館(在外公館)や、現地の公証人の面前でご本人が署名することで発行してもらう書類です。発行までに時間がかかることも多く、海外との郵便のやり取りも重なって、遺産分割協議書を一通仕上げるだけでも数か月単位の時間がかかることがあります。「思っていたより時間がかかった」というお声を、私どもも名古屋でよくお聞きします。

名古屋という土地柄も、少し関係してきます。名古屋・中区をはじめとする市内には、戦後の早い時期から商売や事業を営んでこられた在日韓国人のご家庭が根を張っておられ、栄や大須のあたりでお店や建物をお持ちだったというお話も少なくありません。代がわりを重ねるうちに、ご親族が東京や大阪、さらには海外へと散らばり、「名古屋の不動産は残っているけれど、相続人は全国・世界にいる」という状態になっているご家庭も見受けられます。名古屋の方は、堅実で、ものごとをきちんと筋道立てて進めたいという気質の方が多い印象がありますが、相続人が遠方に分かれていると、その「きちんと」を実現するための連絡や書類のやり取りに、思った以上の手間がかかるのです。だからこそ、地元・名古屋で韓国籍の相続を扱い慣れた専門家に、早い段階で全体の段取りを整理してもらうことが、結果的にいちばんの安心につながります。

ここで気になるのが、2024年4月から始まった相続登記の義務化です。不動産を相続した方は、相続によって取得したことを知った日から原則3年以内に相続登記をしなければならず、正当な理由なくこれを怠ると、10万円以下の過料(かりょう)の対象になり得るとされています。「協議に時間がかかっているうちに、期限が来てしまうのでは」とご心配になるかもしれません。そうした場合には、いったん法定相続分どおりの登記を入れて義務をいったん果たしておき、協議がまとまってから改めて名義を整える、といった進め方もあります。どの方法がそのご家庭にとって無理がないかは、相続人の人数やお住まいの場所、お持ちの財産によって変わってきますので、早めにご相談いただくほど、選べる道が広がります。

なお、相続したご自宅をこの先「売却する」ことまで見据えておられるご家庭も増えています。名古屋でも、親世代がお住まいだった家が空き家のまま残るケースが目立ってきました。日本全体で見ても、これから高齢の世代がさらに増え、住む人のいない家が市場に出てくる一方、若い世代の人口は減っていきます。投資家が値段をつける物件と、ふつうに住むための家とでは値動きの事情も異なり、世界的な建築資材の高騰もあって、相場の見通しは一筋縄ではいきません。地域によっては、これまでのように資産価値を保ちにくいエリアも出てくると考えられます。だからこそ、「相続登記を入れて終わり」ではなく、「その後どう活かすか・手放すか」まで含めて考えておくことが、これからの相続では大切になってきます。

よくあるご質問

―― 名古屋で多くいただくご相談を、Q&Aの形でまとめました

最後に、韓国籍のご家族の相続について、私どもが名古屋でよくお受けするご質問を、いくつかご紹介します。

Q. 亡くなった父は韓国籍ですが、私は日本に帰化しています。それでも韓国の法律で分けるのですか? 分け方のものさしは、相続人ではなく「亡くなった方」の国籍で決まります。お父さまが韓国籍のまま亡くなられたのであれば、相続人であるあなたが日本国籍であっても、原則として韓国の民法にしたがって相続分を考えることになります。

Q. 韓国の戸籍のような書類は、どこで取ればよいのですか? 韓国には、日本の戸籍にあたる「家族関係登録」という制度があります。亡くなった方や相続人の身分関係を証明する書類は、この制度のもとで取り寄せます。日本人の戸籍を一括で取れる「広域交付」という新しい仕組みは、韓国籍の方にはそのまま使えませんので、別のルートでの取得が必要です。集め方には少しコツがいりますので、迷われたときはお声がけください。

Q. 相続人の一人が韓国(または海外)にいて、なかなか話がまとまりません。どうすれば? 遠方の相続人がいるご家庭では、まず「誰が相続人か」を確定し、連絡の取れる方から順に意向をうかがっていくのが現実的です。協議そのものは郵送やオンラインでも進められます。どうしても合意に至らない場合の手続きもありますので、こじれてしまう前にご相談いただくほど、穏やかにまとまりやすくなります。

Q. 遺産分割がまとまるまで、どれくらいかかりますか? ご家庭の事情によって大きく変わりますが、海外の相続人がいてサイン証明などが必要な場合は、数か月単位で見ておかれると安心です。2024年から相続登記が義務化され、期限も意識する必要がありますので、「落ち着いてから」ではなく、早めに一歩を踏み出されることをおすすめします。

「日本の感覚」で分ける前に、韓国の相続分という出発点を確かめることが、遠回りを防ぐ近道です

まとめ

韓国籍のご家族の相続では、まず「亡くなった方の本国法=韓国の民法で分け方が決まる」という大きな前提があり、その韓国の法律では配偶者の取り分が日本よりも大きい、という特徴があります。この出発点を知らないまま遺産分割協議を進めてしまうと、あとからやり直しになったり、相続人どうしの思いがすれ違ってしまったりすることがあります。さらに、相続人全員の合意を取りつける作業や、韓国の印鑑証明・海外でのサイン証明の取得には思いのほか時間がかかり、2024年に始まった相続登記の義務化の期限も意識しておく必要があります。

少し前まで、韓国・朝鮮籍の方は、日本国籍を取得される「帰化」も含めて、その人口や国籍のかたちが少しずつ変化してきました。長く日本で暮らしてこられたご家庭ほど、「うちは日本式なのか、韓国式なのか」が一見して分かりにくく、ご自身だけで判断するのが難しい場面が多いものです。

ごとう司法書士事務所は、名古屋・中区で、相続のご相談を一つひとつのご家庭の事情にあわせてオーダーメイドでお手伝いしています。司法書士であると同時に宅地建物取引士でもある立場から、戸籍や書類の収集、遺産分割協議書の作成、法務局への相続登記、そしてその先の不動産の売却まで、窓口をひとつにしてご一緒できるのが私どもの強みです。費用についても、最初に分かりやすくご説明する明瞭会計を心がけています。ご相談は無料でお受けしていますので、「何から手をつけたらいいのか分からない」という段階で、どうぞお気軽にお声がけください。お一人おひとりのご事情をうかがいながら、いちばん無理のない進め方を一緒に考えてまいります。

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