名古屋で韓国籍の方の相続|便利な「戸籍の広域交付」が使えない理由と書類の集め方を司法書士が解説
2026/06/19
便利になった戸籍集め――でも、韓国籍のご家族の相続には「落とし穴」があります
ご家族が亡くなられたあと、相続の手続きを始めようとして、まず必要になるのが「亡くなった方と相続人をつなぐ書類集め」です。最近は、2024年から始まった「戸籍の広域交付」という新しい仕組みのおかげで、日本人の戸籍であれば、本籍地が遠くても、お住まいの市区町村の窓口でまとめて取れるようになりました。「これは便利になった」と感じておられる方も多いと思います。
ところが、亡くなったお父さま・お母さまが韓国籍だったり、相続人のなかに韓国籍の方がいらっしゃると、この便利な広域交付が、そのままでは使えないことがあります。「日本に長く住んでいたのに、どうして?」と戸惑われる方は、名古屋でも少なくありません。韓国籍の方の身分関係は日本の戸籍には載らないため、別のルートで、別の種類の書類を、別の場所から取り寄せる必要があるのです。
このコラムでは、名古屋・中区で相続と不動産を専門にお手伝いしているごとう司法書士事務所が、韓国籍がからむ相続で「どんな書類を、どこから、どうやって集めるのか」を、できるだけやさしい言葉でご案内します。難しい制度の話はかみくだいてお伝えしますので、お茶でも飲みながら、気楽に読み進めていただければと思います。
日本の戸籍は全国どこでも。けれど韓国の書類は、まったく別の入り口から
1.便利になった「戸籍の広域交付」――でも、韓国籍のご家族には使えないことがあります
まず、最近話題になっている「戸籍の広域交付」からお話しします。
これは2024年3月に始まった、改正戸籍法による新しい制度です。それまでは、亡くなった方の「生まれてから亡くなるまで」の戸籍を集めるには、本籍を置いていた市区町村ひとつひとつに請求しなければならず、転籍を繰り返した方の場合は、全国あちこちに郵送で取り寄せて、何週間もかかることがめずらしくありませんでした。広域交付が始まってからは、お近くの市区町村の戸籍窓口で、本籍地が遠方であっても、戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍謄本をまとめて受け取れるようになりました。相続の書類集めは、日本人の戸籍に関しては、たしかにずいぶん楽になったのです。
ただし、この広域交付には、いくつか大切な約束ごとがあります。請求できるのは、ご本人と、その配偶者・お子さんやお孫さん・ご両親や祖父母といった、直系のご家族に限られます。ごきょうだいや代理の方は、この制度では請求できません。また、顔写真付きの身分証明書を持って、ご本人が窓口に出向く必要があり、郵送やインターネットでの請求はできない決まりです。
そして、ここが今日いちばんお伝えしたいところなのですが、広域交付はあくまで「日本の戸籍」の制度です。戸籍は日本国籍をお持ちの方のための仕組みですから、韓国籍のまま亡くなられた方は、そもそも日本の戸籍に載っていません。つまり、韓国籍のお父さまの「除籍謄本を広域交付で」と窓口に行っても、日本の戸籍が存在しない以上、取りようがないのです。韓国籍の方の身分関係を証明する書類は、日本の役所ではなく、韓国側の制度から取り寄せることになります。便利になった広域交付の話と、韓国の書類集めは、入り口がまったく別、とイメージしていただくと分かりやすいと思います。
なお、生前に日本へ帰化されていた方は、亡くなった時点では日本国籍ですので、帰化後の戸籍は広域交付の対象になります。ただし帰化前の経歴は日本の戸籍ではたどれませんので、その部分はやはり韓国側の書類が必要になります。ご家庭によって事情はさまざまですので、「うちはどちらにあたるのか」が分かりにくいときは、遠慮なくご相談ください。
除籍謄本と家族関係登録、出生から亡くなるまでを一本につなぐ
2.韓国の証明書類は「2008年」を境に、集め方が変わります
では、韓国側の書類はどう集めるのでしょうか。ここでカギになるのが「2008年」という年です。
韓国では、もともと日本とよく似た戸籍制度がありましたが、2008年1月1日にこの戸籍制度が廃止され、「家族関係登録制度」という新しい仕組みに切り替わりました。そのため、亡くなった方の人生をたどるときは、2007年12月31日までの分と、2008年以降の分を、別々の書類でつないでいく必要があります。
具体的には、2007年末までの古い身分関係は「除籍謄本(제적등본・チェジョクトゥンボン)」でたどります。これは、かつての韓国の戸籍が閉鎖されたもので、出生や婚姻、家族の構成などが記録されています。一方、2008年以降から亡くなるまでの部分は、家族関係登録制度のもとで発行される「基本証明書」「家族関係証明書」「婚姻関係証明書」といった証明書で確認していきます。たとえば、亡くなったことや相続人となるお子さんの存在は、これらの証明書を組み合わせて証明していくことになります。除籍謄本だけでは2008年以降の動きが分からず、新しい証明書だけでは2007年以前の家族関係がたどれない――だからこそ、両方をそろえて、出生から死亡までを一本の線でつなぐ作業が必要になるのです。
そして、これらの書類を請求するときには、いくつかの情報が欠かせません。韓国名(ハングルと漢字)、生年月日、そして日本でいう本籍にあたる「登録基準地(旧・本籍地)」などです。とくに登録基準地が分からないと、書類が探せずに手続きが止まってしまうことがあります。ご高齢のご相談者さまですと、「父の韓国名の漢字は分かるけれど、登録基準地までは知らない」というケースも多く、ここでつまずいて来られる方は本当によくいらっしゃいます。そんなときは、先ほどお話しした閉鎖中の「外国人登録原票」(出入国在留管理庁への開示請求で取得します)に、登録基準地の手がかりが残っていることがあり、そこから糸口をたどっていく、といった調査も行います。
領事館・翻訳・期限、そして相続した不動産の「出口」まで
3.名古屋で実際に集めるときの段取りと、いまの時代の動き
最後に、名古屋で実際に書類を集め、相続を進めるときの段取りを、今の時代の流れとあわせてお伝えします。
ひとつめは、取り寄せ先と翻訳のことです。韓国の家族関係登録に関する証明書は、名古屋では中村区・名駅南にある駐名古屋大韓民国総領事館でも申請できる場合があります(おおむね一週間から二週間ほどかかります)。ただし、必要な書類の種類によっては、領事館では取り切れず、韓国本国へ請求しなければならないこともあり、ここは事案ごとに見極めが必要です。運用は変わることもありますので、確実とは言い切れない点はご理解ください。そして、取り寄せた書類はハングルで書かれていますから、日本の相続登記や金融機関の手続きで使うには、日本語の翻訳文を添える必要があります。書類を集めること自体に加えて、「どの書類が・どこから・いつ届くか」を見通して全体を組み立てることが、手続きをスムーズに運ぶ肝になります。
ふたつめは、期限のことです。2024年4月から相続登記が義務化され、不動産を相続したことを知った日から原則3年以内に登記をしないと、正当な理由なく怠った場合に10万円以下の過料の対象になり得ます。さらに2026年4月からは、住所や氏名を変えたときの変更登記も義務化され、こちらは2年以内、5万円以下の過料が定められています。韓国の書類集めはどうしても時間がかかりやすいので、「気づいたら期限が近づいていた」とならないよう、早めの着手が安心です。あわせて、近年の世の中の動きとして、特別永住者として日本で暮らしてこられた在日韓国人の方が年々減り、日本国籍へ帰化される方も一定数いらっしゃいます(法務省の統計では、2024年に帰化を許可された韓国・朝鮮籍の方はおおよそ二千人台とされていますが、年によって増減があり、正確な数字は公表資料でのご確認をおすすめします)。世代交代が進むなかで、「親は韓国籍、子は帰化して日本国籍」というご家庭の相続は、名古屋でもこれから増えていくと見られます。
みっつめは、相続したご自宅やマンションを「最終的にどうするか」という出口の話です。名古屋では、中区をはじめとする都心部の不動産は底堅さがある一方で、これから全国的には、若い世代の人口減少と、団塊世代の高齢化にともなう空き家の増加で、エリアによって資産価値の差が広がっていくと見られています。世界的なインフレや建築資材の高騰で新築の価格が上がり、投資家向けに動く価格と、実際に住む方向けの価格とが、別々に動く傾向も強まっています。地方や郊外を中心に、資産価値を保ちにくいエリアが出てくることも予想されますので、相続した不動産を「いつ・どう手放すか」は、登記とあわせて落ち着いて考えたいテーマです。当事務所は司法書士であると同時に宅地建物取引士でもあり、相続登記から不動産の売却、その先の資産のことまで、窓口をひとつにしてお手伝いできます。
―― ここで、よくあるご相談を一つ、人物が分からない形にしてご紹介します。中区にお住まいの60代の女性が、「韓国籍のまま亡くなった父の、実家のマンションを売りたい」とご相談に来られました。広域交付で簡単に取れると思っていたのに、窓口で「韓国籍の方の戸籍はありません」と言われて途方に暮れた、とのことでした。お話を伺うと、登録基準地が分からないとのことでしたので、外国人登録原票の開示から手がかりを探し、除籍謄本と家族関係の各証明書を取り寄せて翻訳し、相続人を確定。相続登記までお済ませしたうえで、宅地建物取引士として売却の段取りまで一貫してお手伝いしました。「最初に全体の流れを教えてもらえたので、安心して任せられた」と言っていただけたのが、何よりでした。
まとめ
韓国籍のご家族の相続は、「日本の戸籍の感覚で進めない」ことが安心への第一歩
韓国籍がからむ相続でいちばん大切なのは、「日本の戸籍の感覚のまま進めない」ということです。便利になった戸籍の広域交付は日本人の戸籍のための制度で、韓国籍のまま亡くなられた方の書類は、そもそも日本の役所では取れません。韓国側の制度から、2007年末までの「除籍謄本」と、2008年以降の「家族関係登録の各証明書」を組み合わせ、出生から亡くなるまでを一本につなぐ――この流れと、登録基準地などの必要な情報、そしてハングルの書類には翻訳が要る、という点を、どうか押さえておいてください。
とはいえ、これらをご家族だけで読み解くのは、決してやさしいことではありません。ごとう司法書士事務所では、ご家庭の事情をひとつひとつ丁寧にお伺いし、画一的な対応ではなく、その方に合わせたオーダーメイドの進め方をご提案しています。費用についても、ご依頼の前に分かりやすくご説明する明瞭会計を心がけております。司法書士であり宅地建物取引士でもある専門家として、書類集めから相続登記、不動産の売却、その先の資産のことまで、プライベートな相談相手として寄り添ってまいります。
名古屋・中区で、韓国籍のお父さま・お母さまの相続や、相続した不動産のことでお悩みでしたら、どうぞお一人で抱え込まずに、まずはお気軽にお声がけください。ご相談は何度でも無料で承っております。