# 名古屋の空き家を個人間売買で手放す前に|司法書士が教える税金と登記の三つの注意点

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名古屋の空き家を個人間売買で手放す前に|司法書士が教える税金と登記の三つの注意点

2026/06/18

まずはじめに

「親から相続した実家が、誰も住まないまま空き家になっている」「お隣さんから、うちの空き家を譲ってほしいと声をかけられた」——名古屋市内でも、こうしたご相談が年々増えています。不動産会社を間に入れず、ご近所さんやお知り合いと当事者どうしで売り買いをする「個人間売買」は、仲介手数料がかからないという大きな魅力があります。

けれども、空き家にはふつうの中古住宅とは違った、空き家ならではの落とし穴があります。とくに税金の特例や登記の名義は、知らずに進めてしまうと、あとから「もっと早く相談すればよかった」と悔やまれることが少なくありません。

この記事では、名古屋市中区で司法書士と宅地建物取引士をしている立場から、空き家を個人間で売買するときに気をつけたいことを、できるだけやさしい言葉でお伝えします。専門用語にはそのつど説明を添えますので、不動産にくわしくない方も、どうぞ気楽に読み進めてください。

一、なぜいま名古屋で空き家の個人間売買が増えているのか(街の事情と、放置のリスク)

総務省の令和5年(2023年)住宅・土地統計調査によると、名古屋市の住宅約131万戸のうち空き家はおよそ17万3千戸、空き家率は13.2%にのぼりました。およそ7〜8戸に1戸が空き家という計算です。名古屋は大都市のなかでは比較的おさえられた数字とはいえ、それでも空き家は確実に増え続けています。

背景には、高齢の親世代が施設に移ったり亡くなったりして実家が空くこと、お子さん世代はすでに別の場所に持ち家があって戻らないこと、そして名古屋市内でも地域によって不動産の価格や売れやすさに大きな差が出ていること(いわゆる二極化)があります。駅近の人気エリアならすぐに買い手がつく一方で、郊外や古い住宅地では、不動産会社に頼んでもなかなか売れない物件も出てきています。

そうしたなかで、「広く売り出すより、事情を知っているご近所さんや親せきに直接譲るほうが早い」と、個人間売買を選ぶ方が増えているのです。実際、当事務所にも「隣地の方が駐車場として買いたいと言ってくれている」「空き家を借りて住んでいる方から、いっそ買い取りたいと相談された」といったご依頼が寄せられます。

たとえば先日も、市内の住宅地に実家を相続された六十代の女性から、こんなご相談がありました。間口の狭い古いお宅で、不動産会社からは「この立地と建物では買い手を探すのに時間がかかる」と言われていたそうです。ところが、長年隣に住むお宅から「庭を広げたいので土地ごと譲ってほしい」と声をかけられ、話はとんとん拍子に進みました。仲介手数料もかからず、顔の見える相手に渡せて安心、というわけです。名古屋でも、こうした「売りにくい物件ほど、近くの人にこそ価値がある」というケースは少なくありません。個人間売買は、まさにそのご縁を形にする方法なのです。

ここで知っておいていただきたいのが、空き家を放置するリスクです。2023年12月に施行された改正空家対策特別措置法では、これまでの「特定空家」に加えて「管理不全空家」という新しい区分が設けられました。庭木や建物の傷みを放っておくと、特定空家になる前の段階でも市から勧告を受けることがあり、勧告を受けると、住宅が建つ土地の固定資産税を軽くする「住宅用地特例」が外れてしまいます。その結果、土地の固定資産税が最大でおよそ6倍になる可能性があるのです。

つまり、「持っているだけで毎年お金が出ていき、放っておくと負担がさらに重くなる」のが空き家です。だからこそ、元気なうちに、信頼できる相手へきちんと手放しておくことには大きな意味があります。

二、税金で損をしないために(空き家の3,000万円特別控除と、個人間売買の意外な落とし穴)

空き家を売るときに、ぜひ知っておいていただきたいのが「相続した空き家の3,000万円特別控除」です。これは、相続で取得した古い実家を売って利益(譲渡所得)が出たとき、その利益から最高3,000万円までを差し引ける、という制度です。差し引いた結果が0円になれば、譲渡所得にかかる税金がかからずに済むこともあります。

この特例は、もともと令和5年末で終わる予定でしたが、令和9年(2027年)12月31日までの売却に延長されています。おもな要件として、昭和56年(1981年)5月31日以前に建てられた家であること、亡くなった方が亡くなる直前までその家に一人で住んでいたこと、などがあります。古い実家を相続して困っている方にとっては、とても心強い制度です。

ところが、ここに個人間売買ならではの大きな落とし穴があります。この特例は、配偶者や親子、生計をともにする親族など「特別の関係がある人」へ売った場合には使えないのです。個人間売買は、お知り合いや親せきへ譲るかたちになりがちですから、「身内に安く譲ろう」と思って進めた結果、3,000万円もの控除が受けられなくなってしまう、というのは十分に起こり得ます。せっかくの節税の機会を、相手の選び方ひとつで失ってしまうわけです。

なお、令和6年(2024年)からは制度が一部変わり、買主が引き渡しのあとに耐震改修や取り壊しをする場合でも一定の条件で対象になったほか、相続人が3人以上のときは一人あたりの控除額が2,000万円までとなりました。

もうひとつ、古い実家を売るときに見落とされがちなのが「取得費」の問題です。何十年も前に親御さんが買われた家だと、購入時の契約書や領収書が見つからないことがよくあります。取得費がわからない場合は、売った金額の5%を取得費とみなして計算することになり、その結果、思ったより利益(譲渡所得)が大きく出てしまうことがあります。だからこそ、3,000万円特別控除のような特例が使えるかどうかが、手取り額を大きく左右するのです。「身内に安く譲るのだから税金なんて関係ない」と思っていたら、特例が使えず、かえって手元に税負担だけが残ってしまった——そんな残念な行き違いを避けるためにも、売る相手と段取りは、契約前に一度整理しておくことをおすすめします。

税金の取り扱いは、お一人おひとりの事情や、その年の制度によって結論が変わります。ここに書いた内容はあくまで一般的な目安です。実際にいくら税金がかかるか、特例が使えるかどうかは、必ず税理士や所轄の税務署にご確認ください。当事務所でも、登記の手続きとあわせて、信頼できる税理士のご紹介を承っています。

三、司法書士の目から見て、必ず確認したいこと(名義・旧耐震・同時履行)

最後に、登記の専門家である司法書士の立場から、空き家の個人間売買で「ここだけは確認しておきたい」という三点をお伝えします。

一つめは、名義です。空き家は、亡くなった親御さんの名義のまま、相続登記(名義変更)がされていないケースがとても多くあります。名義が故人のままでは、買主へ所有権を移すことができません。令和6年(2024年)4月から相続登記は義務化され、正当な理由なく放置すると過料の対象にもなりました。まずは登記簿で今の名義を確認し、相続人が複数いる場合は、誰が売主になるのかをきちんと整理しておく必要があります。

実際にあったお話として、買い手が決まってから登記簿を確認したところ、名義がなんと二代前のおじいさまのままだった、というケースがありました。間に亡くなった方が重なると、相続人がねずみ算式に増え、面識のない遠い親せきまで含めて全員の同意と署名・押印をそろえなければなりません。買主の方は「早く話を進めたい」とおっしゃっていましたが、結局、相続人を一人ひとりたどって連絡し、書類を整えるのに数か月を要しました。空き家の個人間売買は、売る相手が決まってからではなく、「売れそうだ」と思った段階で名義の状態を確かめておくと、こうした遠回りをぐっと減らせます。

二つめは、古い建物ならではの責任です。空き家の多くは昭和の旧耐震基準で建てられており、雨漏りやシロアリ、傾きといった見えない不具合をかかえていることがあります。引き渡したあとにこうした問題が見つかると、売主が「契約不適合責任」を問われ、修理費の請求や契約解除に発展することもあります。親しい間柄の個人間売買だからこそ、建物の状態を正直に書面に残し、「現況のまま引き渡す」といった取り決めを契約書にきちんと盛り込んでおくことが、のちのトラブルとお互いの信頼を守ります。

三つめは、お金と名義を「同時」に動かすことです。たとえば、買主が代金を払ったのに名義変更がされず、そのあいだに売主側の事情が変わってしまう、といったことが起きると、当事者だけでは収拾がつかなくなります。司法書士が間に入り、買主から売主へ代金が支払われるのと引きかえに所有権移転登記を申請する——この「同時履行」を段取りすることで、双方が安心して取引を終えられます。これは、まさに登記の専門家が立ち会う意味のあるところです。

なお、空き家の活かし方は「売る」だけではありません。賃貸に出して家賃収入を得る道もありますが、古い家ほど貸す前のリフォーム費用がかさみがちです。建物を解体して更地で売る方法は買い手を見つけやすくなる一方、解体費がかかり、さらに住宅用地特例が外れて翌年の固定資産税が上がる点に注意が必要です。また、認知症などで将来ご自身の判断が難しくなる前に備えるなら、家族信託という選択肢もあります。どれが一番よいかは、建物の状態・ご家族の状況・お気持ちによって変わります。「とりあえず売る」と決める前に、いくつかの道を並べて比べてみることをおすすめします。

空き家の個人間売買は、相手が決まっていれば話が早く、費用もおさえられる、よい選択肢です。一方で、名義・税金・建物の状態と、確認すべきことが重なる場面でもあります。少しでも迷ったときは、登記と不動産の両方を見られる専門家に、早めに声をかけていただければと思います。名古屋で空き家のことでお悩みの方の、心からの安心につながれば幸いです。

まとめ

最後に、この記事の要点を振り返ります。名古屋市の空き家率は13.2%に達し、空き家は「持っているだけで毎年費用がかかり、放置すると管理不全空家の勧告を受けて固定資産税が最大6倍になりかねない」資産です。だからこそ、事情を知るご近所さんや知人へ直接譲る「個人間売買」は、仲介手数料もかからず、納得して手放せるよい方法といえます。

ただし、空き家ならではの注意点が三つあります。第一に、相続した空き家の3,000万円特別控除は令和9年末まで使えますが、配偶者や親子など「特別の関係がある人」への売却では使えないため、身内へ譲るときほど慎重な確認が必要です。第二に、相続登記がすんでいないと売主を確定できず、放置されているほど相続人が増えて手続きが長引きます。第三に、古い建物の不具合をめぐる契約不適合責任と、代金支払いと所有権移転登記をきちんと「同時」に行う段取りが、トラブルを防ぐ要になります。

これらは、登記の専門家である司法書士と、不動産取引の専門家である宅地建物取引士、その両方の視点をあわせて見ることで、はじめて漏れなく整います。空き家のことで「何から手をつければよいか分からない」というときは、どうか一人で抱え込まず、早めにご相談ください。あなたの大切なご実家が、次の方のもとで気持ちよく活かされていくよう、丁寧にお手伝いいたします。

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