名古屋のマンション、10年後に「資産が残る部屋」と「売れない部屋」 ― 個人間売買で後悔しないために、司法書士が解説する資産価値の二極化

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名古屋のマンション個人間売買|資産価値の二極化を司法書士が解説

2026/06/09

まずはじめに

「マンションは立地が命」とよく言われます。けれども実際にお客様のご相談を受けていると、同じ名古屋市内、同じ駅、ときには同じ建物の中でさえ、10年後に資産価値がしっかり残るお部屋と、買い手がつかず手放すに手放せないお部屋とに、はっきり分かれていく様子を目の当たりにします。

この「二極化」は、不動産会社を通さずにご親族やお知り合いの間で売り買いをする「個人間売買」のときに、とりわけ大きな落とし穴になります。仲介の専門家が間に入っていれば当然チェックしてくれるはずの「そのマンションが将来も価値を保てるかどうか」という視点が、当事者だけの取引ではすっぽり抜け落ちてしまいがちだからです。

この記事では、名古屋で長年、相続と不動産に携わってきた司法書士・宅地建物取引士の立場から、マンションの個人間売買にひそむ「資産価値の二極化」という現実と、その見極め方を、できるだけやさしい言葉でお話しします。タワーマンションをはじめとする区分所有のマンションならではの注意点を、初めての方にもわかるように整理しました。

1.「同じ名古屋でも分かれていく価格」― 平均が上がっても、あなたの部屋が上がるとは限りません

上昇しているのは“一部のエリア”だという事実を知ることから始まります。

名古屋の中古マンション価格は、ここ10年で大きく上がりました。ある民間調査では、市内の中古マンションの平均価格は2016年の約2,059万円から、2025年には約2,907万円へと上昇しています。この数字だけを見ると「名古屋のマンションは安泰だ」と感じられるかもしれません。

ところが、もう少し細かく地域別に見ると、景色は一変します。2026年に向けた価格の騰落率では、千種区・東区・中区・熱田区といった都心や人気エリアがプラス10%を超えて伸びている一方で、上昇が1ケタ台にとどまる区が大半を占め、なかには前年を下回りマイナスに転じた区もあります。つまり「名古屋全体の平均」が上がっていても、それはごく一部の強いエリアが全体を押し上げているだけで、あなたのお部屋がその恩恵を受けているとは限らないのです。

この二極化は、個人間売買の「価格の決め方」に直結します。ご親族やお知り合いの間では、「相場はよくわからないけれど、きりのいい金額で」「身内だから少し安く」と、感覚で値段を決めてしまうことが珍しくありません。けれども、近隣の似た物件が実際にいくらで取引されているかという根拠を持たずに価格を決めると、二つの危険があります。ひとつは、これから価値が下がるお部屋を相場より高く買ってしまうこと。もうひとつは、身内同士だからと相場より極端に安い価格をつけた結果、その差額が「贈与」とみなされ、買主に思わぬ贈与税がかかってしまうことです。実際に名古屋市内でも、「親から子へ格安でマンションを譲ったつもりが、後から税務署の指摘を受けた」というご相談は後を絶ちません。

価格そのものを査定するのは不動産の評価の領域ですが、その価格に納得できる根拠を残し、契約書という形で当事者の合意をきちんと書き残しておくことは、後の親族間トラブルや税務上の問題を防ぐうえで欠かせません。なお、税額の具体的な計算は物件や事情によって大きく変わりますので、必ず税理士や税務署にご確認ください(この記事の内容は2026年6月時点の情報です)。

2.「価格表に載らない“管理”という価値」― 修繕積立金が、10年後の明暗を分けます

マンションは「買った後」にお金がかかり続ける資産です。

戸建てと違い、マンションには「管理費」と「修繕積立金」という、所有している限り毎月払い続ける費用があります。そして、この管理の状態こそが、資産価値の二極化を生む最大の要因のひとつです。見た目がきれいでも管理組合が機能していないマンションは静かに価値を失い、築年数が経っていても管理が行き届いたマンションは価値を保ちます。個人間売買では、ここが最も見落とされやすいところです。

とりわけ注意したいのが修繕積立金の不足です。国土交通省の調査によれば、段階的に積立額を増やしていく方式のマンションでは、長期修繕計画の当初から最終年までに積立金が平均で約3.6倍に上がっていた例があり、なかには5倍を超えて値上げされたケースもありました。さらに、築40年以上のマンションの約4割、築30年以上の約2割で、必要な大規模修繕が適切に行えていない可能性があると指摘されています。タワーマンションの場合はこの問題がいっそう深刻で、高層階は通常の足場を組めず、ゴンドラや特殊な昇降設備を使うため、修繕費が一般のマンションより大幅に高くなりやすいのです。「将来、積立金が足りずに一時金を求められる」「修繕できないまま老朽化が進む」という事態は、決して他人事ではありません。

ですから、マンションを個人間で売買する前には、価格表には決して載らない次の情報を必ず確認してください。管理費と修繕積立金の金額と滞納の有無、長期修繕計画の内容と次回の大規模修繕の予定、これまでの修繕の履歴、そして管理組合がきちんと総会を開いて運営できているか。これらは管理組合や管理会社が発行する書類で確かめられます。買主にとっては「引き継いだ後にいくらかかるのか」を知るための、売主にとっては「きちんと管理してきた価値」を正しく伝えるための、大切な資料です。

司法書士は、所有権を移す登記の場面で、その区分所有建物の権利関係――敷地利用権が建物と一体になっているか、過去の担保が残っていないか――を登記簿から読み解く専門家です。管理状態という「目に見えない価値」と、登記という「権利の裏付け」の両面から、安心して引き継げる取引かどうかを点検することができます。

3.「相続とルール改正が変える、これからのマンション」― “節税の常識”はもう通用しません

タワーマンションをめぐる税と法律は、ここ数年で大きく変わりました。

マンション、とりわけタワーマンションは、長く「相続税の節税に有利」と言われてきました。実際の市場価格に比べて相続税の評価額が低く出やすく、その差を使って相続税を抑える、という考え方です。しかし、この“常識”は2024年に大きく見直されました。

2024年1月1日以降に相続や贈与で取得した区分所有マンションについては、相続税評価額の計算ルールが変わりました。これまで評価額と市場価格の開きが大きかった点を是正するため、築年数・総階数・所在する階・敷地の持分の狭さといった要素から「評価の乖離率」を求め、評価額が市場価格のおおむね6割を下回る場合には6割の水準まで引き上げる、という補正が入るようになったのです。高層階ほど従来は評価額が低く出ていたため、この改正による影響を強く受けます。「タワマンを買えば相続税が大きく減る」という以前の感覚のまま個人間で売買や贈与を進めると、想定外の税負担につながりかねません。具体的な評価額や税額は個別の事情で変わりますので、必ず税理士などの専門家にご確認ください。

法律の面でも変化が続いています。老朽化したマンションの管理と再生を円滑に進めるため、区分所有法などを改正する法律が2025年に成立し、2026年4月の施行が予定されています。一定の要件のもとで建替えや一棟売却などの決議要件を緩和し、所在のわからない所有者がいても管理や再生が進めやすくなるよう手当てするもので、名古屋でも今後ますます増える築古マンションの行く末に深く関わってきます。こうした制度は不確実な部分も残りますので、売買のタイミングでは最新の情報を確認することをおすすめします。

そして、これらの背景には名古屋ならではの事情があります。市内の人口は都心部に集まる一方で、郊外や高経年のマンションでは空き家や非居住の住戸が増え、所有者の高齢化も進んでいます。相続を経て名義があいまいになったマンションは、いざ売ろうとしても相続人全員の同意が必要になり、一歩も進めなくなることがあります。2024年4月からは相続登記が義務化され、相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内の登記申請が求められるようになりました。マンションを次の世代へ、あるいは個人間で円滑に引き継ぐためには、権利の整理が出発点になります。これはまさに、司法書士が日々お手伝いしている分野です。

価格の二極化を見抜き、管理という見えない価値を確かめ、相続と最新ルールに備える――この三つの視点を持つだけで、マンションの個人間売買はぐっと安全になります。名古屋でマンションの売買や相続でお悩みのときは、権利と手続きの専門家である司法書士に、どうぞお気軽にご相談ください。

まとめ

最後に、この記事の要点を振り返ります。

同じ名古屋市内のマンションでも、資産価値は年々はっきりと二極化しています。市場の平均価格が上がっていても、それは千種区・中区など一部の強いエリアが全体を押し上げているだけで、すべてのお部屋が値上がりしているわけではありません。個人間売買では、相場の根拠を持たずに感覚で価格を決めると、高く買いすぎる危険と、安すぎて贈与税がかかる危険の両方が生じます。

そして、マンションの価値は価格表に載らない「管理」で大きく差がつきます。修繕積立金の不足や大規模修繕の遅れ、管理組合の機能不全は、買った後に重い負担となってのしかかります。とりわけタワーマンションは修繕費が高額になりやすく、管理費・積立金・滞納の有無・長期修繕計画は、売買の前に必ず確認したい情報です。

さらに、税と法律の前提もここ数年で大きく変わりました。2024年からは区分所有マンションの相続税評価が見直され、かつての「タワマン節税」の常識は通用しにくくなっています。2025年に成立した区分所有法などの改正(2026年4月施行予定)や、2024年4月からの相続登記の義務化も、これからのマンションの継承に深く関わります。

価格・管理・相続――この三つの視点を持って臨めば、マンションの個人間売買は格段に安心なものになります。権利の確認も名義の整理も、出発点は登記です。名古屋でマンションの売買や相続にお悩みの際は、司法書士・宅地建物取引士として一人ひとりに合わせたお手伝いをいたしますので、どうぞお気軽にご相談ください(本記事の内容は2026年6月時点の情報に基づきます)。

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