名古屋でいらない土地を相続したら|相続土地国庫帰属制度の使い方

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名古屋でいらない土地を相続したら|相続土地国庫帰属制度の使い方

2026/07/09

「実家は何とかなった。でも、あの山林はどうすれば……」

親御さまが亡くなり、名古屋の実家の相続はひと区切りついた。ところが遺産の中に、郷里の山林や田んぼ、誰も使っていない原野が残っている——。そんなご相談が、ここ数年で目に見えて増えてきました。

団塊の世代のみなさまがすべて75歳以上となった「大相続時代」の今、名古屋にお住まいの方が、遠く離れた土地を相続する場面は珍しくありません。今年7月に発表された路線価では愛知県が5年連続で上昇した一方、地方の山林や農地には「売りたくても買い手がつかない」土地が数多くあります。同じ相続財産でも、土地の価値は二極化しているのが現実です。

こうした「手放したくても手放せない土地」の受け皿として2023年4月に始まったのが、相続した土地を国に引き取ってもらう「相続土地国庫帰属制度」です。この記事では、制度のしくみ、引き取ってもらえる土地の条件、費用の目安、そして制度を使う前に考えていただきたい選択肢まで、司法書士兼宅地建物取引士がわかりやすく解説します。

相続土地国庫帰属制度とはどんな制度?|申請は全国で5,500件を超えました

相続土地国庫帰属制度とは、相続や遺贈(相続人に対するものに限ります)で取得した土地を、法務局の審査を経て国に引き取ってもらえる制度です。2023年4月27日に始まり、法務省の統計(速報値)によると、2026年5月末時点で全国の申請件数は5,545件、実際に国庫への帰属が認められた件数は2,762件にのぼります。申請の内訳は田・畑が約2,200件と最も多く、次いで宅地、山林と続きます。「いらない土地を国に返したい」というニーズが、それだけ全国に存在するということです。

この制度の大きな特徴は、制度が始まる前に相続した土地でも申請できることです。「30年前に相続した父名義の山林」でも対象になります。また、土地が共有になっている場合でも、相続で持分を取得した方がいれば、共有者全員が共同で申請することで利用できます。

相続放棄との違いは「土地だけを選んで手放せる」こと

よく混同されるのが相続放棄です。相続放棄は、原則として相続を知ってから3か月以内に家庭裁判所へ申し立てる必要があり、しかも預貯金や実家も含めた遺産のすべてを放棄しなければなりません。「実家と預金は相続したいが、山林だけはいらない」という選び方はできないのです。

これに対して国庫帰属制度は、いらない土地だけを選んで手放すことができ、申請の期限もありません。相続からずいぶん時間が経っていても使える、後出しのきく制度だといえます。

どんな土地でも引き取ってもらえる?|「引き取れない土地」の要件に注意

どんな土地でも引き取ってもらえるわけではありません。国が将来管理していくことになるため、法律で「引き取れない土地」が定められています。大きく分けて、そもそも申請できない土地(却下要件)と、審査の結果引き取れないと判断される土地(不承認要件)の二段構えです。

そもそも申請できないのは、次のような土地です。

  • 建物が建っている土地(空き家が残ったままの土地は、まず解体が必要です)
  • 抵当権などの担保権や、賃借権などの使用収益権が設定されている土地
  • 通路や墓地、水道用地など、他人に使われている・使われる予定のある土地
  • 土壌汚染がある土地
  • 境界がはっきりしない土地や、所有権について争いがある土地

また、申請はできても、急な崖がある土地、放置された工作物や車両がある土地、地中に埋設物がある土地、隣の土地の所有者と争わなければ使えない土地など、管理に過大な費用や労力がかかる土地は不承認となります。

ここで実務上とても大切なのが、境界の問題です。「境界がはっきりしない土地」は門前払いになってしまうため、隣地との境がわからない古い土地では、事前の調査や資料の準備が申請の成否を分けます。なお、法務省の統計では却下・不承認は合計160件余りにとどまっており、事前にしっかり準備をして申請すれば、決して「狭き門」ではないことも申し添えておきます。

費用はいくらかかる?|審査手数料と負担金の目安

費用は「審査手数料」と「負担金」の二本立てで、最低でも1筆あたり合計21万4,000円かかります。

まず申請時に、土地1筆につき1万4,000円の審査手数料を収入印紙で納めます。この手数料は、審査の結果却下・不承認になった場合や、途中で取り下げた場合でも返還されません。

そして審査に通ると、10年分の土地管理費に相当する「負担金」を納めます。負担金は原則として1筆あたり20万円です。ただし例外があり、市街化区域や用途地域内の宅地・農地は面積に応じて計算され、たとえば市街化区域内の宅地100平方メートルであれば55万円前後が目安になります。また、山林(森林)は原則20万円ではなく常に面積に応じた算定となりますが、単価が低いため、小さめの山林なら20万円台に収まることも珍しくありません。正確な金額は、法務省ホームページの自動計算シートで事前に確認できます。

覚えておいていただきたいのが、隣り合った土地をまとめて申請する場合の特例です。同じ種目の土地が2筆以上隣接しているときは、申し出により「1つの土地」とみなして負担金を計算できるため、田んぼが3筆並んでいるようなケースでは、負担金を大きく抑えられることがあります。

申請から国庫帰属までの流れ

手続きは、おおまかに次の五つの段階で進みます。

  1. 事前相談……土地を管轄する法務局(愛知県内の土地は名古屋法務局の本局)で、制度の対象になりそうか相談します。予約制で、対面のほか電話でも相談できます。
  2. 申請書類の作成・提出……承認申請書のほか、土地の位置や範囲がわかる図面、隣接地との境界点や土地の形状がわかる写真、申請者の印鑑証明書などを揃えて提出します。
  3. 法務局による審査……書面審査に加えて、担当官による実地調査が行われます。必要に応じて追加資料を求められることもあります。
  4. 承認・負担金の通知……審査に通ると、承認の通知とあわせて負担金の額が通知されます。
  5. 負担金の納付……通知が届いてから30日以内に負担金を納付します。納付した時点で、土地の所有権が国に移ります。期限内に納付しないと承認の効力が失われてしまうため、この30日はしっかり意識しておきましょう。

審査期間は、名古屋法務局では標準で8か月程度とされています。書類の作成や境界資料の収集といった事前準備は、司法書士がお手伝いできる部分です。なお、承認までの間も固定資産税や管理の負担は続きますので、手放すと決めたら早めに動くことが結局いちばんの節約になります。

国に引き取ってもらう前に考えたい「ほかの選択肢」

国庫帰属制度は「最後の受け皿」であり、その前に検討すべき道がいくつかあります。順番に考えることで、費用を払って手放すはずの土地が、思わぬ収入に変わることもあるからです。

第一に、本当に売れない土地なのかの見極めです。名古屋市内やその近郊の土地であれば、多少条件が悪くても買い手がつく可能性は十分あります。実際、「売れないと思い込んでいた土地に、隣地の方が『広げたいから譲ってほしい』と手を挙げた」というのは、不動産の現場ではよくある話です。隣地の所有者への打診は、費用もかからない最初の一手です。

第二に、自治体の空き家・空き地バンクや、地元の森林組合・農業委員会への相談です。地方の農地や山林には、その地域ならではの引き受け手が見つかることがあります。

このあたりの見極めは、名古屋の方の堅実な気質にもよく合うところだと感じています。「損はしたくない。でも、子どもに迷惑も残したくない」——そのどちらも大切にするなら、感覚ではなく、査定と費用の試算という数字で比べて決めるのがいちばんです。市内や近郊の土地なら売却で手取りを得られる可能性を探り、遠方の山林や農地なら国庫帰属の費用と将来の管理負担を天秤にかける。土地ごとに答えは変わります。

そのうえで、市場でも隣地でも引き取り手がない土地について、費用を払ってでも管理の責任から解放される道として国庫帰属制度を位置づける。これが正しい順番だと私は考えています。今後の日本は、若い世代の人口減少で土地の需要そのものが縮んでいきますから、「資産価値を保てない土地」は地方を中心にさらに増えると見られています。子や孫の代に負担を先送りしないという意味で、負担金は「将来の管理費の前払い」と捉えることもできるのです。

ひとつ注意点があります。土地を手放す前提であっても、2024年4月に義務化された相続登記(3年以内・怠ると10万円以下の過料の対象)への対応は別途必要になる場面が多く、権利関係を整理してから国庫帰属を進めるのが実務の基本です。当事務所では、司法書士として相続登記と国庫帰属の書類作成を、宅地建物取引士として「そもそも売れないのか」の市場査定を、ひとつの窓口でまとめてご提案しています。

想定事例:名古屋の実家と、郷里の田んぼを相続したケース

たとえば、名古屋市守山区にお住まいの60代の女性が、亡くなったお父さまから守山区の実家と、郷里である県外の田んぼ2筆・山林1筆を相続したようなケースを考えてみましょう。

実家は相続登記のうえご自身がお住まいになるとして、問題は遠方の田と山林です。地元の不動産会社に聞いても買い手はつかず、耕作してくれる人も見つからない。固定資産税は年数千円でも、草刈りの依頼や見回りの手間、「何かあったら」という心配が続きます。

このケースでは、まず3筆すべての相続登記を済ませ、境界資料を揃えたうえで国庫帰属を申請する流れが考えられます。隣接する田2筆は「1つの土地」とみなす特例を使えば負担金は2筆で20万円、山林は面積算定で20万円台前半、審査手数料が3筆分で4万2,000円。あわせて50万円前後の費用で、将来にわたる管理の責任から解放される計算です。「その金額なら、子どもたちに残す心配ごとがひとつ消えると思えば安い」——ご相談の場で、そんな声をいただくことの多い制度です。

よくある質問(FAQ)

Q1.売買で買った土地や、生前贈与でもらった土地も申請できますか?

A.できません。この制度の対象は、相続または相続人への遺贈によって取得した土地に限られます。ご自身で購入した土地や、生前贈与で取得した土地は対象外です。

Q2.古い空き家が建ったままの土地でも引き取ってもらえますか?

A.建物がある土地は申請自体ができません。先に建物を解体して更地にする必要があります。解体費用と負担金を合わせると相応の金額になるため、解体前に「古家付きのまま売れないか」を検討する価値は十分あります。

Q3.相続登記がまだ済んでいなくても申請できますか?

A.相続登記が未了でも、相続で取得したことを証明する書類を添えれば申請は可能とされています。ただし、相続登記は2024年4月から義務化されており、3年の期限(過去の相続分は2027年3月31日まで)は国庫帰属の申請とは別に進行します。実務上も、権利関係を明確にするため相続登記とあわせて進めるのが安心です。

Q4.負担金は必ず20万円で済みますか?

A.原則は1筆20万円ですが、市街化区域や用途地域内の宅地・農地、そして森林は面積に応じて計算され、数十万円以上になることもあります。逆に、隣接する同じ種目の土地をまとめて申請すれば負担金を1筆分に抑えられる特例もあります。申請前に必ず試算しておきましょう。

Q5.申請してからどのくらいで結果が出ますか?

A.名古屋法務局では標準処理期間を8か月程度としています。書類の不備や現地調査の状況によってはさらにかかることもあるため、余裕をもったスケジュールで進めることをおすすめします。

土地を「手放す」のも、立派な相続対策のひとつです

まとめ

相続土地国庫帰属制度は、売れない土地・使わない土地を次の世代に引き継がせないための、いわば出口の制度です。ポイントを整理します。

  • 相続や相続人への遺贈で取得した土地なら、昔の相続分でも申請できる
  • 建物がある土地や境界が不明確な土地は引き取ってもらえないため、事前準備が成否を分ける
  • 費用は審査手数料1万4,000円+負担金原則20万円(1筆あたり)。隣接地の合算特例も活用できる
  • ただし順番が大切。「本当に売れないのか」を見極めてから使うのが賢い利用法

なお、制度の運用や負担金の扱いは今後見直される可能性があります。最新の情報は法務省の公表資料や専門家にご確認ください。

当事務所は、司法書士兼宅地建物取引士として、相続登記から不動産の売却査定、そして国庫帰属制度のような「手放す選択」まで、おひとりおひとりの事情に合わせたオーダーメイドのご提案を明瞭な料金でお示ししています。名古屋の実家のことも、遠方の山林や農地のことも、「うちの土地はどうなるだろう」という段階からで結構です。どうぞお気軽にご相談ください。

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