相続開始後に相続人に問題がある時【名古屋のごとう司法書士事務所】
2020/03/27
1 そもそも相続人はどうやって特定するの?
相続人で遺産分割協議をしなくてはいけないことはご理解いただけたと思います。では相続人はそもそもどうやって特定するのでしょうか?相続人の特定方法を知らなければ、相続人が誰なのかわからず相続手続きがスタートしません。
実は、相続人は、戸籍で特定されるのです。
相続人になる人は、基本的には血のつながりがある人達です。養子の場合は法律で強制的に血のつながりを作る場合です。
出生、結婚、離婚、死亡などその人に起こる家族関係が記録されるのが戸籍なのです。そこで、相続人になり得る、配偶者、子、直系尊属(祖父母)、兄弟姉妹は、戸籍で調べます。そんなの調べるまでもなくわかっているではないか、と思われる方もお見えだと思います。
その通りです。ほとんどの場合は、知り得る家族関係でおよその相続人は見当がつきます。しかし、前妻の子や認知した子、養子など実は知らされていない家族関係が戸籍を調べるとわかってしまうことがあるのです。そんなのテレビドラマの世界だと思われるかもしれませんが、私も司法書士をして10年以上経ちますが、何度かそのような場面に遭遇したことがあります。
いずれにしても、相続人の特定は重要事項なので、戸籍という公的な証明書で相続登記や預金相続手続きなどの各種相続手続きは行われるのです。
2 相続人が死亡した場合
相続開始後、相続人が亡くなってしまったとき、どうすべきでしょうか?配偶者に代わりに遺産分割協議に参加してもらえばよいのでしょうか?
実は、話はそれほど簡単ではありません。
相続人に相続が開始した場合、その相続人の相続を考えることになります。つまり、その亡くなった相続人の、相続人を調査し、誰が権利義務を承継しているかを確認します。なぜなら、亡くなった相続人の相続人が、遺産分割協議に参加する資格があるからです。
相続人に高齢の方がいる場合や持病を持たれている場合などは、注意しましょう。いくらその相続人と話を進めていても途中で白紙に戻ってしまう可能性があるのです。権利義務を承継した新たな相続人が従前の遺産分割に関する話を承継してくれる保証はないのです。
そのような場合は、話がまとまったものだけでも先に遺産分割協議書を作成しておくことも有効です。そうすれば、当該遺産分割協議書に記載された相続に関する内容以外について、新たな相続人と協議すればいよいからです。
3 相続人が認知症になった場合
相続開始後、相続人が認知症により判断能力や意思能力が衰えてしまった場合はどうすればよいでしょうか?
高齢の相続人の場合は、よくあることです。
まずは、本当に遺産分割協議をすることができないか確認をしましょう。遺産分割協議をするには意思能力が必要です。遺言書の作成でも同様ですが、認知症であっても、状況によって遺産分割協議をすることは可能です。「認知症=意思能力なし」とまでは言えないのです。
認知症の場合、多くは、会話をするにも調子の良い時、悪い時があると思います。つまり、理論上は、調子のよい意思能力があるときに遺産分割協議をすればよいのです。具体的には、相続に関する遺産分割協議書に実印をもらうことです。署名ができればベストでしょう。
残念ながらとても意思能力があるとは言い難い場合などは、相続人本人が遺産分割協議をすることはできません。このH場合は、代理人を立てる必要があります。しかし、意思能力がない相続人は、自らの意思で代理人に委任することはできません。
そこで成年後見制度を利用することになります。
相続人の住所地を管轄する家庭裁判所に成年後見等の申立てを行い、裁判所の代理人となる成年後見人等を選んでもらうのです。選任された成年後見人等は、本人の代わって他の相続人と一緒に遺産分割協議を行い、遺産分割協議書にも成年後見人が押印します。それで、その後の相続手続きができるのです。
しかし、この成年後見制度は、相続における遺産分割協議の相続人代理人としただけではなく、その後の生活全般にかかわるようになり、財産管理まですることが考えられます。つまり、スポットで代理を頼むような制度ではなく、相続人本人が死亡するまでずっと成年後見人等は仕事をするのです。
場合によっては、そのことが気になり、認知症の相続人の親族が成年後見制度に消極的になることが考えられます。そうなると、他の相続人はうまく相続手続き等を進められなくなる可能性があるので注意しましょう。
4 相続人が行方不明の時
相続開始後、相続人がどこにいるのかわからない場合があります。戸籍上は生きているが、住民票の住所にも住んでいないこともあります。そうなると、公的な証明書等では本当の居場所を突き止めることはできません。
では、他の相続人はどうすることもできないのでしょうか?
この場合以下の方法が考えられます。順を追って名古屋の司法書士が解説します。
(1) 相続人が生きているが行方不明の場合
どこかで生きているが、住所がわからない。連絡も取れない。このような状態の時、どうすべきでしょうか?
この場合は、「不在者の財産管理人」と選任してもらい、その人に代理人として相続に関する遺産分割協議に参加してもらいます。不在者の財産管理人を選任してもらう方法は、相続人などの利害関係人が家庭裁判所に申し立てをして、裁判所に選任をしてもらう形です。
(2) 相続人の生死そのものが不明の時
相続が開始した後、ある相続人が生きているか死んでいるのか全く情報がない場合があります。何十年も前に行方不明になって親族の誰も情報を持っていない。
このような場合、他の相続人は、果たして相続に関する伊佐分割協議を進めることができるのでしょうか?
この場合は、「失踪宣告」の制度を利用します。
通常は7年以上その相続人の生死が明らかでない場合に、相続人などの利害関係人が家庭裁判所に申し立てをして、失踪の宣告をしてもらいます。そうすると、その相続人は死亡したものとみなされます。
つまり、その相続人に相続が開始するわけです。しかし、注意点は、死亡したとみなされるのは、7年の失踪期間の満了日です。もともとの相続開始日より前であれば、いわゆる代襲相続の問題となり、代襲相続人が代わりに相続における遺産分割協議に参加します。そうではなく、もともとの相続開始日後に失踪期間が満了するのであれば、数次相続として、単純に相続人の遺産を承継する当たらな相続人が遺産分割協議に参加する形になります。
まとめ
以上、名古屋の司法書士が相続における相続人に問題があると気の解決方法についてご紹介しました。
相続人に高齢者がいる場合は、認知症や死亡のリスクを考えて遺産分割協議をする必要があります。相続後、遺産分割協議を急いでしなくてはいけないこともあるでしょう。成年後見人や新たな相続人が参加すればよいといった単純な話では終わらないのがこの問題の難しさです。
成年後見制度への抵抗がある場合、遺産分割協議が進まないケースは意外に多いのです。また、新たな相続人が被相続人の話をあまり聞いていないくて状況がわからずに法定相続分を当然のように主張してトラブルになることもあります。法定相続分の主張は相続人としては当たり前の権利ですから、新たな相続人との接し方には要注意です。頭ごなしにいかないなどの配慮が必要でしょう。
名古屋の司法書士事務所「ごとう司法書士事務所」でも、これまでの相続に関する相談事例や相続実務の経験を生かして、トラブルにならない相続をご提案していきます。相続の問題は、感情の対立が起こることがしばしばあります。一度感情的なもつれが生じるとなかなか当事者間での修復は難しいでしょう。
早めに第三者の司法書士や弁護士等の相続専門家に相談をして、未然にトラブルを防止することをお勧めします。