外国籍の親が認知症になる前にできる家族信託~親名義の家を子が管理し、必要なときに売れるようにしておく信託契約の仕組み、信託登記の流れと費用、準拠法と本国法の遺留分、海外にいる家族・帰国する親の扱い、親が亡くなったあとの登記までを名古屋の司法書士が解説

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外国籍の親が認知症になる前の家族信託|子が家を管理・売却できる備えを名古屋で解説

2026/11/04

はじめに|「親が認知症になったら、親名義の家は売れない」を知ったときに

家族信託は、親が元気なうちに家の管理と売却の権限を子に預けておく契約です。外国籍の親子でも使え、国境をまたぐ相続の手続きも軽くします。

韓国籍のお父様は80歳。名古屋の家に一人で暮らしていますが、最近もの忘れが増え、施設への入居も考え始めています。入居費用は家を売って用意するつもりでした。ところが司法書士に相談すると、「お父様の判断能力がなくなってからでは、家族でも家を売れません。成年後見人を立てれば売れますが、裁判所の許可が要り、後見は一生続きます」と言われた――名古屋市中区のごとう司法書士事務所には、外国籍のご家族から、こうした「親の家が凍る前に何かできないか」というご相談が寄せられます。

結論から申し上げると、親が元気なうちなら、家族信託という契約で備えられます。親(委託者)が子(受託者)に家の名義と管理・売却の権限を預け、家から生まれる利益(売却代金や家賃)は親(受益者)のものとして使う仕組みです。親が認知症になっても、子は裁判所の許可なしに家を売って施設費用に充てられ、親が亡くなったあとは、あらかじめ決めた人に家が渡ります。外国籍の親子でも、日本法を準拠法として契約でき、日本の不動産の信託登記も日本人と同じ手続きです。ただし、受託者を海外に住む子にはできないこと、親が母国へ帰る場合の扱い、親の本国法の遺留分との関係、そして親が亡くなったあとの登記で本国の書類がどこまで要るかという、外国籍ならではの注意点があります。この記事では、名古屋市中区のごとう司法書士事務所が、なぜ認知症で家が凍るのか、信託でどう解けるのか、契約と登記はどう進み、本国法と海外の家族の事情をどう織り込むのかを、順を追ってやさしくご説明します。

なぜ親の家は凍るのか|判断能力がなくなると売れず、後見は裁判所の許可と一生の負担がつきます

家の売却も預金の解約も本人の意思が要るため、認知症が進むと家族は何も動かせず、後見人を立てても売却には家庭裁判所の許可が要ります。

家を売る契約や預金の解約は、本人が内容を理解して意思を示すことが前提です。認知症が進んで判断能力がなくなると、本人は契約できず、家族が代わりに署名することもできません(代筆した契約は無効です)。家も預金も、法律上は「凍った」状態になります。外国籍の親御さんの場合、日本語での意思確認が難しくなると、公証人や不動産会社の本人確認の段階でさらに早く止まることがあります。

凍った家を動かす方法として用意されているのが成年後見制度です。家庭裁判所に申し立てて後見人を選んでもらえば、後見人が本人に代わって家を売れます。ただし、本人が住んでいた家(居住用不動産)を売るには家庭裁判所の許可が必要で、「施設費用に充てるためにやむを得ない」と認められなければ売れません。後見は本人の財産を守るための制度なので、「子に贈与する」「孫の学費に使う」といった家族のための使い方はできず、後見人が親族でない専門職になれば報酬も続きます。そして原則として、本人が亡くなるまで終わりません。外国籍の親御さんの後見では、本国法と日本法のどちらで後見を開始するかという問題もあり(日本に住所があれば日本の家庭裁判所が日本法で開始できます)、本国の家族の同意書を求められることもあります。

つまり、認知症になってからの選択肢は「裁判所の管理のもとで、必要最小限だけ動かす」に限られます。親が元気なうちに、家の管理と処分を家族に預けておく仕組みが家族信託で、「凍る前に鍵を渡しておく」備えです。

家族信託の仕組み|親が委託者兼受益者、子が受託者。名義は子へ、利益は親のまま

親が子に家を信託すると、登記の名義は子になり、管理と売却は子が決められますが、売却代金や家賃は親のために使います。

家族信託には三つの立場があります。財産を預ける人が委託者(親)、預かって管理する人が受託者(子)、財産から生まれる利益を受け取る人が受益者(親)です。親が委託者と受益者を兼ねる形を自益信託といい、親の家の認知症対策ではこの形が基本です。登記の名義は受託者である子に変わりますが、子は家を自分のものにしたわけではなく、「親のために管理する」義務を負います。売却代金も家賃も親の財産として、親の施設費用や生活費に使います。自分のものになっていないので、この時点で贈与税はかかりません。

信託契約には、受託者の権限として「家を管理し、必要なときは売却できる」「代金を親の生活と介護のために使う」と書き、親が亡くなったときに信託を終了して家(または売却代金の残り)をだれに渡すか(帰属権利者)も書きます。後見と違う点は三つです。第一に、売却に裁判所の許可が要らないこと。第二に、「この家は売ってよいが、代金のうち一定額は妹の学費に」など、家族の事情に合わせた使い方を契約で決められること。第三に、親が亡くなったときの家の行き先を、遺言と同じように契約で決めておけることです。

一方で、信託にできないこともあります。受託者は親の身の回りの契約(施設の入所契約や医療の同意)はできず、それは後見や任意後見の役割です。また、信託した財産以外(信託していない預金など)は動かせません。信託と任意後見、遺言を組み合わせて設計するのが実務の形です。

契約と信託登記の流れと費用|公正証書、信託口口座、登録免許税は土地0.3%・建物0.4%、贈与税はかかりません

契約書を公正証書で作り、法務局で所有権移転と信託の登記をし、銀行で信託口口座を開きます。登記の税金は相続より安い水準です。

手続きの流れは、①親子で信託の目的(家の管理と売却、代金の使い道、親の死後の行き先)を決める、②司法書士が契約書の案を作り、公証役場で公正証書にする、③法務局で「所有権移転及び信託」の登記を申請する、④銀行で受託者名義の信託口口座を開き、家賃や売却代金の受け皿にする、の順です。公正証書は法律上の必須ではありませんが、親の判断能力が十分なうちに公証人の前で契約したという記録になり、後に兄弟から「認知症だったのに契約させた」と争われることを防ぎます。外国籍の親御さんで日本語の読み書きに不安がある場合は、公証役場で通訳人を立ち会わせる必要があり、事前に公証人と打ち合わせます。親の本人確認は在留カードまたは特別永住者証明書と印鑑証明書で行います。

費用の中心は登録免許税です。委託者から受託者への所有権移転の登記は非課税で、信託の登記にだけ、土地は固定資産税評価額の0.3%(2029年3月31日までの軽減税率)、建物は0.4%がかかります。評価額1,500万円の土地と500万円の建物なら、4万5,000円+2万円で6万5,000円です。贈与の登記(2%)と比べて安く、不動産取得税もかかりません。親が受益者のままなので贈与税もかからず、家賃収入があれば、これまでどおり親が確定申告します。このほか、公証役場の手数料、司法書士の契約設計と登記の報酬がかかります。

登記に必要な書類は、親の登記識別情報(権利証)、3か月以内の印鑑証明書、固定資産評価証明書、子の住民票(外国籍なら国籍記載のある外国人住民票)、信託契約書(公正証書)、委任状です。2026年10月5日からは、受託者として名義人になる子も国籍の申出をします。登記簿には、所有者として子の名前と住所が記録され、「信託」の登記と信託目録(委託者・受託者・受益者・信託の条項)が付きます。買主や銀行は、この信託目録を見て受託者に売却の権限があるかを確認しますので、売却の権限は契約書にはっきり書いておきます。

外国籍ならではの設計|準拠法は日本法を選び、受託者は日本に住む子、帰国する親と海外の兄弟の扱い

契約で準拠法を日本法と定め、受託者は日本に住む子にします。親が帰国しても信託は続き、海外の兄弟は受益者や帰属権利者として設計に入れられます。

第一に準拠法です。信託契約は当事者が準拠法を選べるため(法の適用に関する通則法7条)、契約書に「この信託は日本法による」と明記し、日本の信託法に従って設計します。日本にある不動産の権利の移し方は所在地の法律、つまり日本法で決まり(通則法13条)、登記も日本人と同じ手続きです。親子の国籍によって信託の効力が変わることはありません。

第二に受託者の選び方です。受託者になれないのは未成年者で、国籍の制限はありません。ただし、未成年かどうかは本人の本国法で判断され、韓国籍なら19歳が成年です。実務上の問題は居住地です。受託者は日本の家を管理し、不動産会社や買主と契約し、信託口口座を日本の銀行で開く必要があるため、海外に住む子を受託者にすると、銀行の口座開設や決済の立会いで行き詰まります。受託者は日本に住む子にし、海外の兄弟は受益者(親の死後に代金の一部を受け取る人)や帰属権利者として契約に入れる設計が現実的です。日本に住む子が一人しかいない家庭では、その子が受託者、海外の兄弟は将来の受け取る側、という形になります。

第三に親の帰国です。親が信託のあとに母国へ帰っても、信託は続きます。家は受託者である子が日本で管理し、売却代金は受益者である親のために使えます。親が日本の非居住者になると、家賃を得ている場合は借主に源泉徴収の義務が生じることがあり、受益者としての税務の扱いが変わりますので、帰国前に税理士と確認します。むしろ、帰国後に親が認知症になった場合、日本の家庭裁判所での後見は手続きが重くなるため、帰国前に信託を結んでおく価値は大きいといえます。

第四に、海外の兄弟への説明です。信託登記で家の名義が日本に住む子に変わると、海外の兄弟から「勝手に家を取った」と見えることがあります。信託目録に親が受益者であること、親の死後の行き先が書かれていることを、契約の前に兄弟へ共有しておくと、後の争いを防げます。

本国法の遺留分と信託|親の死後にだれが家を受け取るかは、本国法の遺留分を侵さない形で決めます

信託で決めた家の行き先も、親の本国法の遺留分の対象になり得ます。他の子の取り分を残す設計にしておきます。

信託契約で「親が亡くなったら家は長男に」と決めておくと、遺言と同じ働きをします(遺言代用信託)。ここで気をつけたいのが、相続は亡くなった方の本国法によるため(通則法36条)、他の子の遺留分も本国法で判断される点です。日本の裁判例には、遺留分の制度を逃れる目的の信託は、その部分が無効とされたものがあります(東京地方裁判所平成30年9月12日判決)。本国法が韓国法なら、配偶者と子には法定相続分の2分の1の遺留分があり、信託で長男にすべてを渡す設計は、他の子から遺留分の請求を受けるおそれがあります。中国籍の方は遺留分の制度がない一方、フィリピン籍の方は子に必ず残す取り分(レジティーム)が強く、国によって重さが違います。

したがって、親の死後の行き先は、「家は長男に、売却代金のうち一定割合は二男と長女に」のように、本国法の遺留分を下回らない設計にします。信託と併せて公正証書遺言を作り、韓国籍の方なら遺言で相続の準拠法を日本法に指定することで、遺留分の計算を日本法でそろえることもできます(韓国籍の方の遺言の記事をご覧ください)。信託の設計と遺言の準拠法指定は、同じ日に公証役場でまとめて行うのが効率的です。

親が亡くなったあと|信託の終了と登記の流れ、相続登記より軽い本国書類、相続税の扱い

親の死亡で信託が終わり、受託者が帰属権利者へ名義を移す登記をします。遺産分割協議は不要で、本国書類は相続人であることの証明に絞られます。

親が亡くなると、契約で定めたとおり信託は終了し、受託者である子が、帰属権利者(たとえば長男自身)へ家の名義を移す登記をします。手続きは、①受託者が信託財産の清算(家賃の精算、売却代金の残りの確認)をする、②法務局で「信託の登記の抹消」と「所有権移転」の登記を申請する、③帰属権利者が相続税の申告をする(信託で受け取る家や代金は相続で取得したものとみなして相続税の対象になります)、の順です。

ここに、外国籍のご家族にとって大きな利点があります。通常の相続登記では、相続人全員を本国の書類で確定し、全員で遺産分割協議書に署名し、海外の相続人は署名の認証を受けなければなりません。信託では、家の行き先が契約で決まっているため、遺産分割協議も全員の署名も不要です。本国の書類が要るのは、登録免許税を相続と同じ0.4%にするための「帰属権利者が委託者の相続人である」ことの証明と、死亡の証明に絞られます。信託の効力が生じたときから親だけが受益者であり、帰属権利者が親の相続人であれば、信託終了時の所有権移転の登録免許税は相続と同じ0.4%とされています(登録免許税法7条2項。東京国税局の文書回答事例でも確認されています)。相続人でない人(たとえば孫)を帰属権利者にすると2%になりますので、設計の段階で確認します。

相続税は、親が亡くなったときに、信託財産を帰属権利者が相続したものとみなして計算します。信託にしたからといって相続税が減るわけではありませんが、増えることもありません。海外に住む兄弟が売却代金の一部を受け取る設計なら、その送金の段階で、受け取る国の税務も確認しておきます。

当事務所は司法書士と宅地建物取引士を兼ねていますので、信託契約の設計、公証役場との調整(通訳人の手配を含む)、信託登記と国籍の申出、信託口口座の案内、受託者としての売却の仲介と決済、親の死後の信託終了の登記まで、ひとつの窓口でお手伝いします。税務は提携する税理士と連携します。

よくある質問|外国籍の親の家族信託で多いご質問

外国籍でも使えるか、海外の子を受託者にできるか、税金、後見との違いについて短くお答えします。

Q. 親も子も外国籍ですが、家族信託は使えますか?

はい、使えます。契約で準拠法を日本法と定め、日本の信託法に従って設計します。日本にある家の名義の移し方と登記は日本法で決まるため、日本人と同じ手続きです。親の本人確認は在留カードと印鑑証明書で行い、日本語に不安があれば公証役場で通訳人を立ち会わせます。

Q. 海外に住んでいる兄を受託者にできますか?

法律上は国籍や居住地の制限はありませんが、受託者は日本の家の管理、売却の契約、日本の銀行での信託口口座の開設を行うため、海外在住の方では実務上行き詰まります。受託者は日本に住む子にし、海外の兄は受益者や帰属権利者として契約に入れる設計をおすすめします。

Q. 家の名義を子に移すと、贈与税や不動産取得税がかかりますか?

かかりません。親が受益者のまま(自益信託)なら、子は家を自分のものにしたわけではないため贈与税の対象にならず、不動産取得税もかかりません。登記の税金は、所有権移転分が非課税で、信託の登記に土地0.3%・建物0.4%がかかります。親が亡くなって帰属権利者が家を受け取るときに、相続税の対象になります。

Q. 成年後見と家族信託はどちらがよいですか?

目的が違います。後見は本人の財産を守る制度で、家の売却に家庭裁判所の許可が要り、本人が亡くなるまで続きます。信託は家族が設計する契約で、売却に許可は要らず、代金の使い道や親の死後の行き先も決められますが、施設の入所契約や医療の同意はできません。親が元気なうちに信託と任意後見、遺言を組み合わせるのが実務の形です。

まとめ|親が元気で、日本に住む子がいる今が、家族信託を結べる唯一の時期です

認知症になってからでは契約できません。準拠法を日本法に、受託者を日本の子に、本国法の遺留分を侵さない行き先を決めて、公正証書と信託登記で備えます。

外国籍の親の家は、親の判断能力がなくなると売れなくなり、成年後見を使っても売却には家庭裁判所の許可が要り、後見は一生続きます。親が元気なうちに結ぶ家族信託なら、家の名義と管理・売却の権限を日本に住む子(受託者)に預け、売却代金や家賃は親(受益者)のために使え、親の死後の行き先も契約で決められます。契約は公正証書にし(日本語に不安があれば通訳人を手配)、法務局で所有権移転と信託の登記をし、信託口口座を開きます。登記の税金は信託分の土地0.3%・建物0.4%だけで、贈与税も不動産取得税もかかりません。外国籍ならではの設計は、準拠法を日本法と明記すること、受託者を日本在住の子にすること、親が帰国しても信託は続くこと、親の死後の行き先は本国法の遺留分を侵さない形にして公正証書遺言と準拠法の指定を併せることです。親が亡くなったあとは、遺産分割協議も全員の署名も不要で、本国書類は相続人であることの証明に絞られ、帰属権利者が相続人なら登録免許税は相続と同じ0.4%です。

名古屋のごとう司法書士事務所は、外国籍のご家族の家族信託について、信託契約の設計、公証役場との調整、信託登記と国籍の申出、信託口口座の案内、受託者としての売却と決済、親の死後の信託終了の登記まで、司法書士兼宅建士としてひとつの窓口でお手伝いしています。「父のもの忘れが増えてきて、施設の費用を家で用意したい」という段階からのご相談で大丈夫です。登記事項証明書(なければ固定資産税の納税通知書)と、ご家族それぞれの国籍・住まい・だれが日本にいるかが分かるメモをお持ちいただければ、信託が使えるか、だれを受託者にするか、親の死後の行き先をどう決めるかをその場でお示しします。

ごとう司法書士事務所は、外国籍の方の相続手続きと相続した不動産の売却をひとつの窓口でお手伝いしている、名古屋市中区の司法書士・宅地建物取引士の事務所です(代表:後藤勝良)。所在地は名古屋市中区丸の内三丁目15番3号TCF丸の内ビル6階。地下鉄「久屋大通駅」(桜通線側1番出口)から徒歩5分、「丸の内駅」(桜通線側4番出口)から徒歩6分です。受付は平日9時から19時まで、土日祝日も事前のご予約でご相談いただけます。ご相談は基本無料です。

▶外国籍の親の家族信託のご相談は、名古屋のごとう司法書士事務所へ。フリーダイヤル0120-290-939、またはごとう相続手続き相談センターからお気軽にお問い合わせください。


※本記事は2026年11月時点の法令・制度に基づいて作成しています。信託に関する税務(贈与税・相続税・登録免許税の扱い)、金融機関の信託口口座の取扱い、本国法の遺留分の適用は個別の事情や各国の法改正によって異なりますので、実際のお手続きの際は税理士・専門家にご確認ください。

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