実家を継ぎたいがお金がない?代償分割の資金づくりを名古屋の司法書士が解説
2026/10/25
はじめに|「家は残したい。でも、きょうだいに渡すお金がない」
家を売らずに、公平に分ける方法があります。カギは資金の設計です。
親御さんが遺した名古屋の実家。自分はそこに住み続けたい、あるいは思い出の家を手放したくない。でも、ほかのきょうだいにも相続の権利があり、遺産のほとんどがその家だけ――このとき使われるのが、家を受け継ぐ人がほかの相続人にお金を払って調整する代償分割という方法です。
ところが、いざ話し合いを始めると「代償金をいくらにするのか」「そんな大金をどう用意するのか」で行き詰まるご家族がとても多いのです。外国籍の方の場合は、相続分の割合が本国法で決まることや、海外にいるきょうだいへの送金など、さらに考えるべき点が加わります。
この記事では、名古屋のごとう司法書士事務所が、代償分割を実現するための金額の決め方と資金づくり、分割払いの方法まで、司法書士兼宅建士の視点でやさしくご説明します。
代償分割とは|家はひとりが継ぎ、ほかの相続人にはお金で調整する
家は分けられなくても、お金なら公平に分けられます。
代償分割とは、特定の相続人が不動産などの遺産を取得する代わりに、ほかの相続人に対して自分のお金(代償金)を支払うことで、全体として公平に分ける方法です。たとえば、遺産が評価額3,000万円の実家だけで、相続人が兄弟3人なら、実家を継ぐ長男がほかの2人に1,000万円ずつ支払えば、3人とも1,000万円ずつ相続したのと同じになります。
遺産を分ける方法には、ほかに、物そのものを分ける現物分割、売ってお金を分ける換価分割、みんなで持ち合う共有があります。共有は、売るにも貸すにも全員の同意が必要になり、次の相続で持ち主がどんどん増えていくため、おすすめできません。家を残したいなら、代償分割がもっとも筋のよい方法です。
ただし、代償分割には「家を継ぐ人に、代償金を払えるだけの資金があること」という大前提があります。資金の裏付けがないまま協議書に金額だけを書いても、あとで払えなくなれば、きょうだい間の深刻なトラブルになります。だからこそ、金額の決め方と資金の用意を、協議の前に設計しておくことが大切なのです。
代償金はいくら?|家の評価方法で金額が大きく変わる
「家の値段」の物差しは1つではありません。ここが最初の争点です。
代償金の金額は、家をいくらと評価するかで決まります。ところが、不動産の評価方法は複数あり、どれを使うかで金額が大きく変わります。主なものは、固定資産税評価額(市役所の評価で、時価よりかなり低め)、相続税路線価(国税庁の評価で、時価の8割程度が目安)、不動産会社の査定額(実際に売れそうな価格)、不動産鑑定士の鑑定評価(もっとも正式だが費用がかかる)の4つです。
家を継ぐ側は低い評価を、お金を受け取る側は高い評価を望むのが自然な心理で、ここが話し合いの最初の争点になりがちです。法律上「この評価を使わなければならない」という決まりはなく、相続人全員が納得すればどの物差しでも構いません。実務では、査定額を基準にしつつ、売却時にかかる仲介手数料や税金分を差し引いて調整する、といった落としどころがよく見られます。
もうひとつ見落としがちなのが、「いつの時点の価格か」です。代償金は、亡くなった日ではなく、遺産分割を行う時点の評価で考えるのが原則とされています。話し合いが長引くあいだに相場が動くこともあるため、評価の基準日も合意事項に含めておくと安心です。
当事務所は宅建士として不動産の査定も行えるため、名古屋とその近郊の相場を踏まえた客観的な査定額をお示しできます。「第三者の数字」があるだけで、きょうだい間の話し合いはぐっと冷静になります。
資金の用意①自己資金とローン|相続した家を担保に借りる方法
手元資金が足りなくても、借りて払う道があります。
代償金の資金は、まず家を継ぐ人自身の預貯金が基本です。亡くなった方の預貯金も一緒に相続する場合は、「家は長男、預貯金は弟と妹」という形で、現金を代償金代わりに配分すると、代償金の負担を減らせます。
それでも足りない場合は、金融機関からの借入れを検討します。相続した家を担保にして借りる不動産担保ローンや、金融機関によっては代償金の支払いを目的としたローンを扱っているところもあります。このとき前提になるのが相続登記です。家の名義が亡くなった方のままでは担保に入れられないため、遺産分割協議→相続登記→担保設定・融資実行→代償金の支払い、という順番を、協議の段階から設計しておく必要があります。
外国籍の方の場合、ローンの審査では在留資格が見られることが多く、永住者かどうかで借りられる商品や条件が変わることがあります。また、登記と融資の日を合わせて、代償金を受け取る側に確実に渡るよう段取りを組むことが大切です。当事務所では、協議書の作成から相続登記、金融機関との日程調整まで一貫してお手伝いします。
資金の用意②生命保険|親が元気なうちにできるいちばんの備え
代償金の準備は、相続が起きる前から始められます。
代償分割の資金づくりで最も効果的なのが、生命保険の活用です。親御さんが、家を継ぐ予定の子を受取人にした生命保険に入っておけば、亡くなったときに受け取った保険金を、そのまま代償金の原資にできます。
死亡保険金は受取人固有の財産として扱われ、遺産分割の対象になりません。つまり、家を継ぐ子が保険金を受け取り、それを元手にほかのきょうだいへ代償金を払えば、家を手放さずに、公平な分け方を実現できるのです。保険金は請求から短期間で支払われることが多く、話し合いがまとまったらすぐに資金を用意できる点も大きな利点です。
このしくみは、親御さんが元気で、保険に加入できる健康状態のうちにしか作れません。あわせて遺言で「実家は長男に相続させる」と定め、代償金を払う考え方も書き添えておけば、きょうだい全員が親の意思を知ったうえで手続きできます。家を残したいご家族ほど、「遺言+生命保険」の組み合わせを早めに検討する価値があります。
一括で払えないとき|分割払いを協議書にどう書くか
分割払いは可能です。ただし約束の書き方が命です。
代償金は、相続人全員が合意すれば分割払いにすることもできます。たとえば「1,000万円を、毎月10万円ずつ、100回に分けて支払う」という形です。ただし、払う側の生活状況が変われば支払いが滞るおそれがあり、受け取る側にとってはリスクのある約束です。
そこで遺産分割協議書には、支払総額、各回の金額と支払日、振込先、そして支払いが一定回数遅れたら残りを一括で請求できるという条項(期限の利益の喪失)を明記します。さらに受け取る側の安心のために、相続した家に抵当権を設定して代償金の支払いを担保する方法もあります。受け取る側が海外在住なら、送金手数料をどちらが負担するか、為替はいつの時点で計算するかまで決めておくと、あとの行き違いを防げます。
約束をより確実にしたい場合は、協議書の内容を公正証書にしておく方法もあります。分割払いの代償分割は、書き方ひとつで「きょうだいの絆を守る約束」にも「将来の争いの種」にもなりますので、文案づくりは専門家にお任せください。
税金と外国籍ならではの注意点|贈与税・譲渡所得・本国法の相続分
協議書の書き方と払い方で、余計な税金を防げます。
まず贈与税の注意です。代償金のやり取りを遺産分割協議書に明記しておかないと、家を継いだ人からきょうだいへの「贈与」とみなされるおそれがあります。必ず「代償分割として支払う」ことを協議書に書いてください。
次に、代償金をお金ではなく、自分が持っている別の不動産で払う場合です。これは税務上その不動産を売ったのと同じ扱いになり、払う側に譲渡所得税がかかることがあります。また、相続税がかかる規模の相続では、代償金を受け取った人がその金額分の相続税を負担するのが基本です。こうした税務は提携税理士と連携して確認します。
外国籍の方の相続で特に大切なのが、相続分の割合が本国法で決まる点です。たとえば韓国籍の方の相続では配偶者の相続分は子の1.5倍となり、日本法の割合とは異なります。代償金の「公平な金額」を計算する前提が日本と違うため、まず本国法でだれがどれだけの権利を持つのかを確定させることが出発点です。
具体例で見てみましょう。韓国籍のお父様が亡くなり、相続人は妻と子2人、遺産は評価額3,000万円の実家だけ、というケース。韓国民法では妻が7分の3、子がそれぞれ7分の2です。長男が実家を継ぐなら、法定相続分どおりに調整するとすれば、母に約1,286万円、弟に約857万円、合計で約2,143万円の代償金が必要になります。日本法(妻2分の1、子4分の1ずつ)で考えると母に1,500万円、弟に750万円となり、同じ家でも払う相手ごとの金額が変わるのです。海外在住のきょうだいがいる場合は、協議書への署名をサイン証明で行い、代償金の海外送金の段取りもあわせて設計します。
まとめ|「払えない」なら換価分割も。数字を出してから決めましょう
評価額・資金・払い方。この3つの数字がそろえば、家族の話し合いは前に進みます。
代償分割は、家を残したい相続人がほかの相続人にお金で調整する、家族の思いと公平さを両立できる方法です。成功のカギは、家の評価額を第三者の査定で客観的に決めること、自己資金・相続登記後のローン・生命保険で資金の裏付けをつくること、分割払いなら期限や担保まで協議書に書き込むこと。外国籍の方は本国法の相続分を確定させるところから始めます。
それでもどうしても資金が用意できない場合は、無理に代償分割を選ぶより、家を売って代金を分ける換価分割を検討するほうが、きょうだいの関係を守れることもあります。大切なのは、数字を出してから決めることです。
名古屋のごとう司法書士事務所は、司法書士兼宅建士として、実家の査定から代償金の設計、協議書の作成、相続登記、ローンの日程調整、そして換価分割を選ぶ場合の売却まで、ひとつの窓口でお手伝いします。親御さんがご健在なら、遺言と生命保険による事前の備えのご相談も歓迎です。ご相談の際は、固定資産税の納税通知書と、継ぐ予定の方の預貯金のおおよその額、相続人の構成が分かるメモをお持ちいただければ、その場で代償金の目安と資金計画のたたき台をお示しします。
▶代償分割・実家の相続のご相談は、名古屋のごとう司法書士事務所へ。フリーダイヤル0120-290-939、またはごとう相続手続き相談センターからお気軽にお問い合わせください。
※本記事は2026年10月時点の法令・制度に基づいて作成しています。代償分割に関する税務の取り扱いは個別の事情によって異なりますので、実際のお手続きの際は税理士等の専門家にご確認ください。

