二次相続まで考える韓国籍の相続|母に全部は危ない?名古屋の司法書士が解説
2026/09/25
「全部お母さんでいいよね」。その優しさが、数年後の重荷になるかもしれません|二次相続という視点
お父様の相続で家族が選びがちな「母に全部」。韓国籍のご家庭では、この選択の影響が日本人のご家庭より大きくなりやすいのです。
名古屋市中区にあるごとう司法書士事務所では、随時無料相談を実施しています。
お父様が亡くなったとき、多くのご家族はこう考えます。「お母さんの生活が心配だから、遺産は全部お母さんに」。お子さんたちの優しさから生まれる、ごく自然な選択です。ところが相続の専門家は、この場面で必ず先のことを考えます。お母様が亡くなったときの「二次相続」です。
一次相続(父の相続)で母に財産を寄せるほど、二次相続(母の相続)では、税金の負担が重くなり、親というまとめ役のいない兄弟だけの遺産分割になり、そして手続きの苦労がもう一度やってきます。この「二回セットで考える」という視点は、いまや日本人の相続では常識になりつつあります。
そして韓国籍のご家庭には、さらに二つの事情が加わります。一つは、韓国民法の相続分は配偶者がお子さんの1.5倍と手厚く、ただでさえ「母寄せ」が起きやすい構造であること。もう一つは、韓国の書類集めという大仕事が、父と母、それぞれの相続で二回やってくることです。
この記事では、外国籍の方の相続を数多くお手伝いしてきた名古屋のごとう司法書士事務所が、韓国籍のご家庭のための二次相続対策を、一次相続の分け方から夫婦の遺言まで、順を追ってやさしく解説します。
二次相続とは?|相続は「二回セット」で考える時代へ
一次で楽をすると、二次で苦労する。相続には、そんなシーソーのような関係があります。
二次相続とは、ご両親のうち後に亡くなった方の相続のことです。父の相続が一次相続、その後の母の相続が二次相続、という関係になります。なぜこの二回目が問題になるのでしょうか。理由は三つあります。
第一に、税金です。相続税には、配偶者が取得した財産について大きく税負担を軽くする配偶者の税額軽減という仕組みがあり、一次相続で「母に全部」とすれば、そのときの相続税はゼロか、ごく少なくできることが多いのです。ところが二次相続では、この軽減はもう使えません。しかも相続人が一人減るぶん基礎控除も小さくなります。たとえば相続人が母と子2人なら基礎控除は4,800万円ですが、二次相続で子2人だけになると4,200万円。母自身の財産と父から引き継いだ財産が合算されて、二次相続で一気に課税ラインを超える、というのが典型的なパターンです。
第二に、話し合いの難しさです。一次相続では、お母様という重しがあるため、お子さんたちも角を立てずにまとまりやすいもの。しかし二次相続は兄弟姉妹だけの話し合いです。親というまとめ役を失った遺産分割は、感情のもつれが表に出やすくなります。
第三に、手続きの負担です。戸籍や証明書の収集、遺産分割協議書の作成、相続登記、預貯金の解約。この一式が、二次相続でもう一度必要になります。相続登記は2024年4月から義務化されており、「母の名義に変えないまま放っておく」という逃げ道も、もうありません。
だからこそ、一次相続の分け方を決めるときに、二次相続まで見通しておくことが大切なのです。
韓国籍だと「母寄せ」が起きやすい|配偶者1.5倍の相続分が生む構造
韓国民法の手厚い配偶者相続分。それ自体は奥様の味方ですが、二次相続の視点では注意が必要です。
韓国籍の方が亡くなると、相続には原則として韓国民法が適用されます。そして韓国民法の法定相続分は、配偶者がお子さんの1.5倍。妻と子2人なら、妻7分の3、子がそれぞれ7分の2です。日本民法の「妻2分の1・子で残りを分ける」と比べても、配偶者に手厚い設計になっています。
この手厚さは、残された奥様の生活を守るという意味では心強い仕組みです。ただ、二次相続の視点で見ると、法定相続分どおりに分けるだけでも日本人のご家庭より多くの財産が母に集まりやすい、という構造を意味します。さらに実際のご相談では、法定相続分にかかわらず「全部お母さんに」という遺産分割協議を選ぶご家族が少なくありません。韓国法の構造と家族の優しさが重なって、母寄せが二重に進みやすいのです。
数字で見てみましょう。遺産が7,000万円、相続人が妻と子2人の場合、韓国法の法定相続分では妻3,000万円、子が2,000万円ずつです。これを「全部母に」とすれば、母は自身の財産に加えて7,000万円を抱えることになり、二次相続の遺産はその分だけ膨らみます。逆に一次で法定相続分どおりに分けておけば、二次相続に回るのは母の取得分と固有財産だけ。同じ家族でも、一次の分け方ひとつで二次の景色はまったく変わるのです。
母に集まった財産は、いずれ必ず二次相続でお子さんたちに引き継がれます。そのとき、名古屋の自宅の名義変更、預貯金の解約、そして相続税の検討が、まとめてやってきます。一次相続で「今の税金がゼロになるから」という理由だけで分け方を決めてしまうと、二次相続で想定外の負担に直面しかねません。なお、相続税そのものは財産の所在や住所を基準に課される税金で、国籍によって扱いが変わるものではありません。だからこそ、税額の試算は日本人の相続と同じように必要で、当事務所では提携税理士とともに一次・二次を通した比較シミュレーションをおすすめしています。
書類の苦労も二回やってくる|韓国書類の収集は一次相続で終わらない
父の除籍謄本の山を越えても、次は母の分。しかも二次相続のときには「教えてくれる人」がいません。
韓国籍のご家庭の相続で最大の関門は、書類です。相続人を証明するために、韓国の家族関係登録簿の証明書や古い除籍謄本を取り寄せ、日本語訳を付けて手続きを進めます。日本の戸籍のようにまとめて取れる広域交付は使えず、収集には数週間から数か月。この苦労が、一次相続と二次相続で、父の分と母の分、二回やってくるのです。
しかも、二次相続のほうが条件は不利です。一次相続のときは、お母様が「お父さんの本籍は釜山の〇〇」「婚姻の届出は済んでいる」といった情報を教えてくれます。ところが二次相続では、その情報源であるお母様がもういません。母の本籍地、婚姻や出生の届出状況、使ってきた通名。これらを知る人がいなくなってから調べ始めると、書類収集の難易度は跳ね上がります。当事務所が以前の記事でご紹介した「親に元気なうちに聞いておきたい5つのこと」は、まさにこの二次相続の場面で効いてくる備えです。
実務のヒントを一つ。一次相続で書類を集めるとき、少しだけ視野を広げて、お母様の家族関係証明書なども一緒に取り寄せて内容を確認しておくことをおすすめします。父の相続では母の書類も一部必要になるため、ついでに母の記録の届出漏れや記載の食い違いをチェックできるのです。もし不備が見つかれば、お母様がお元気なうちに整えておく。これだけで、将来の二次相続の書類収集はぐっと軽くなります。
もう一つの落とし穴が、一次相続の放置です。父名義の自宅を母名義に変えないまま母も亡くなると、父と母、二つの相続手続きを同時に解きほぐす数次相続になります。書類は二人分、遺産分割協議も二段構え。相続登記義務化の過料リスクも二重です。「母が住んでいるから名義はそのままでいい」は、二次相続の準備としては最も避けたい選択といえます。
二回セットで軽くする設計図|一次の分け方・夫婦の遺言・生前の整備
二次相続対策の主役は、実は「一次相続の遺産分割」と「ご夫婦それぞれの遺言」です。
では、韓国籍のご家庭は、どう備えればよいのでしょうか。設計図は三枚あります。
一枚目は、一次相続の分け方の工夫です。「全部母に」と決める前に、母の今後の生活費、母自身の財産、そして二次相続の税負担を並べて考えます。たとえば、自宅は母が取得して住まいを確保しつつ、預貯金の一部はお子さんが一次相続の段階で取得しておく。母の生活に必要な分はしっかり確保しながら、二次相続に回る財産を適度に減らしておくのが基本の考え方です。奥様の住まいの確保については、配偶者居住権という選択肢もありますが、韓国籍の方の相続では準拠法の壁があるため、後述の遺言とセットで設計する必要があります。
二枚目は、ご夫婦それぞれの遺言です。韓国籍の方は、遺言で相続に適用される法律を日本法に指定できます。お父様の遺言で日本法を指定しつつ財産の行き先を決め、お母様も同時に遺言を作っておく。夫婦で一度に作ってしまうのが実務的には最も効率的で、どちらが先に亡くなっても対応できる態勢が整います。二次相続は「母の相続」ですから、母の遺言こそが二次相続対策の本丸です。兄弟だけの遺産分割協議を、遺言で丸ごと不要にできます。
このほか、お母様の生前贈与や、お子さんを受取人にした生命保険の活用も、二次相続の財産を計画的に減らし、納税資金を準備する定番の手法です。制度の使い勝手は税制改正で変わっていきますので、実行の際は提携税理士と最新の条件を確認しながら進めます。
三枚目は、情報と記録の生前整備です。ご夫婦それぞれの韓国の本籍地、家族関係登録簿の記載内容、通名の歴史、財産の一覧。これらを一次相続が起きる前、つまりご両親がお元気な今のうちにまとめておけば、一次も二次も書類収集の期間を大幅に短縮できます。一次相続が起きてしまった後でも、遅くはありません。父の相続手続きを進めるその機会に、母の分の情報整理と遺言作成まで一緒に済ませてしまうこと。それが、二次相続への最高の備えになります。
まとめ|一次相続の遺産分割協議は、二次相続の設計図です
「今」だけで決めず、「次」まで見て決める。韓国籍のご家庭こそ、二回セットの相続設計を。
以上、韓国籍のご家庭のための二次相続対策を解説しました。
ポイントを振り返ります。二次相続は、税負担・兄弟だけの話し合い・手続きの再来という三つの重さを持つこと。韓国民法の配偶者1.5倍の相続分と家族の優しさで、韓国籍のご家庭は「母寄せ」が起きやすく、二次相続が膨らみやすいこと。韓国書類の収集は父と母で二回必要になり、二次相続では情報源のお母様がいない分だけ難しくなること。そして対策の柱は、一次相続のバランスの取れた遺産分割、日本法指定を含むご夫婦それぞれの遺言、情報と記録の生前整備の三枚の設計図であることです。
相続のご相談で「あのとき、こうしておけば」という後悔を伺うたびに思うのは、二次相続の失敗のほとんどは一次相続の時点で防げたものだ、ということです。名古屋のごとう司法書士事務所では、一次相続の遺産分割・相続登記のお手伝いの際に、必ず二次相続まで見据えたご提案を行っています。司法書士兼宅地建物取引士として不動産の分け方・活かし方をご一緒に考え、税額の試算は提携税理士と連携。お父様の相続の渦中にある方も、まだ先の話として備えたい方も、どうぞお気軽にご相談ください。
▶韓国籍の方の相続・二次相続対策のご相談は、名古屋のごとう司法書士事務所(フリーダイヤル0120-290-939)へ。相続放棄、相続税、遺産分割など相続に役立つ情報満載の相続専門サイト「名古屋で相続相談・相続登記ならごとう相続手続き相談センター」もあわせてご覧ください。
※本記事は2026年9月時点の情報をもとに作成しています。相続税の取り扱いは個別のご事情により異なりますので、税額については税理士にご確認ください。法改正や運用の変更により取り扱いが変わる場合がありますので、実際のお手続きの際は、司法書士など専門家に最新の情報をご確認ください。