遺言書の新制度をご存知ですか?【名古屋のごとう司法書士事務所】
2020/10/20
新たにスタートした遺言書保管制度を解説します
遺言を検討している方に朗報です!!遺言の選択肢が広がりました!
これまでは、遺言といえば、「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」が一般的でした。
そのうち、自筆証書遺言がもっと使いやすくなったのです。
これまでは、紛失等の危険や遺言の存在が誰にもわからなくなってしまい、相続手続きに遺言が反映されないといった事態もありました。
今回の保管制度では、これらの自筆証書遺言のデメリットが大きく改善されたのです。
これによって、自筆証書遺言は、自分で保管をする場合と国に保管をしてもらう場合の2つに分かれることになりました。
もちろん、従来通り、自分だけで遺言を大切に保管して頂きても構いません。しかし、保管に不安がある方は、第三者機関である国に預けることで安心してその後の生活が送れるようになります。もちろん、保管後、誰かに見られる心配もありません。
以後、法務局で相続登記などの不動産登記を扱う司法書士が、遺言書保管制度について解説していきます。
1 遺言書保管制度とは
遺言書保管制度とは、自筆証書遺言を作成した後に、法務局に申請をすることで作成した遺言を本人に代わって国が預かってくれる制度です。
申請書を書いたり、添付書類を整えたり、遺言書を作成したり、遺言者本人が手続きを行う必要がありますが、司法書士などの専門家がサポートをすれば難しい手続きではありません。手数料も3900円と公正証書遺言の作成実費より安いのです。
しかも、保管してくれる効果は、単に紛失防止だけにあるわけではありません。以下で解説するメリットも大きく、自筆証書遺言での作成を検討されている方にとっては、朗報です。
しかし、遺言書の保管制度を利用しても遺言書の有効性が確保されるわけではありません。遺言書の作成自体は、民法に沿った方式で作成しなくでは無効ですし、相続開始後に遺言書の有効無効が裁判で争われる可能性も残ります。
したがって、遺言書自体は、しっかりしたものを作らなくてはいけません。
2 遺言書保管制度のメリットは?
自筆証書遺言を保管してもらうメリットの1つ目は、「紛失、改ざん等の防止」です。
自筆証書遺言は、自分で遺言書を作成し、自分で保管します。保管してから時間の経過により保管場所を自分でも忘れたり、同居の家族に見つかって、隠されたり改ざんされる危険があります。
自分自身が認知症となって、勘違いをして捨ててしまったり、破いてしまったりする可能性もあります。盗まれると疑心暗鬼になって、どこか誰にもわからないような場所にしまってしまい、とうとう後日発見されずに終わってしまうこともあります。
2つ目のメリットは、「検認手続きが不要になる」です。
これも自筆証書遺言を躊躇する理由にあげられていました。家庭裁判所へ遺言書の検認手続きをする必要があるので、相続人にとっては、結構負担になります。また、他の相続人に遺言書の存在を知らしめることにもなります。法定相続人への通知がいくことが多いからです。これによって、遺留分請求のきっかけになる可能性もあります。
検認手続きが不要な遺言としては、従前より公正証書遺言がありました。
公正証書遺言のメリットのひとつでした。公正証書遺言にはその他にも、遺言内容を公証人もチェックしますから、遺言が無効になりにくいというメリットもあります。
今回の新法によって、自筆証書遺言でも、検認手続きが不要になりました。
手軽に作成でき自筆証書遺言の弱い点を補完しています。
3つ目のメリットは、「遺言書の検索」です。
前述のとおり、自筆証書遺言は、自分で書いて自分で保管するため家族の誰かに話す必要はありません。自分だけで完結します。その点がメリットでもありデメリットにもなっていたのです。
つまり、自分だけがわかる場所に隠しておいても、亡くなった後に発見される保証はないのです。自分でも忘れることもありますし、間違って捨ててしまうこともあるでしょう。
しかし、遺言書の保管申請をしておけば、法務局が保管してくれますので、原本の安全は守られます。
また、実は相続開始後に相続人は遺言書の有無を調べたり、遺言書の内容を確認することもできるのです。
さらに一歩進んで、相続開始後、受遺者などに通知を送ってもらうこともできます。通知をもらった受遺者は、遺言の存在を知り、法務局で遺言内容も確認できます。これによって、確実に渡したい人へ相続財産を渡すことができます。この効果はかなり大きいのではないかと個人的には思っています。
これまでは、公証役場で遺言書の検索をして遺言書の有無を調べていましたが、今後、遺言書保管制度が知れ渡れば、法務局での遺言書の検索が一般的になるかもしれません。
自筆証書遺言か公正証書遺言が、どちらの形式で遺言書を作成したのかわからない場合は、両方遺言書の検索をして調べることになります。
3 遺言書の保管はどこにできるの?
遺言書保管制度では、自筆証書遺言を作成後、管轄の法務局に申請をすることで保管が開始します。
ではどこの法務局でしょうか?
次の三つの管轄法務局の中から選んで申請をすることができます。
① 遺言者の住所地
➁ 遺言者の本籍地
③ 遺言者が所有する不動産の所在地
ただし、遺言書の保管申請をする時には、遺言者本人が法務局に行く必要があります。公正証書遺言で公証人が遺言者の自宅等へ出張をしてくれるような制度はありません。したがって、遺言者の行きやすい法務局を選ぶ方がよいでしょう。
4 遺言者が亡くなった後は、どうなるの?
遺言者が亡くなると、メリットでも説明しましたが、相続人等が遺言書の有無を検索することができます。請求する証明書は、「遺言書保管事実証明書」です。
遺言書保管事実証明書によって、遺言書があることがわかれば、今度は、「遺言書情報証明書」を取得して遺言書の内容を確認することができるのです。
上記の確認と公証役場での公正証書遺言の検索をすることで、ほぼ遺言書の有無を調べることができるのです。
なお、遺言書の保管申請後、遺言者は遺言書を閲覧することができます。また、遺言書の保管申請をいつでも撤回することができます。ただし、いくら保管申請を撤回しても遺言書が無効になるわけではありません。自筆証書遺言としての形式を満たしていれば、有効な遺言として効力を持ちます。その後、やっぱり家で自分で保管しても大丈夫です。
前述のとおり、さらに便利な制度もあります。
遺言者本人が亡くなった後に、遺言者が指定する人に遺言書の保管を通知することができるのです。この通知は利用するか否かは自由です。また、通知できる相手は、基本的には、相続人や遺言により財産を受け取る受遺者、そして遺言執行者です。
遺言書保管制度を知らなければ、そもそも検索をすることも思いつきません。そのような場合でも、亡くなった後に遺言書が法務局に保管されている旨の通知が届くので、誰にも気づかれない事態を避けることができます。この制度は、公正証書遺言にはありません。したがって、受遺者等への通知は、自筆証書遺言の利用促進に大いに貢献するのではないかと思っています。
まとめ
以上、名古屋の司法書士が、新しくスタートした遺言書保管制度について解説しました。
自筆証書遺言を検討している方は一度利用を検討してみてはいかがでしょうか。
民法改正で、一部自筆ではない遺言書でも大丈夫になっています。しかし、大事な部分は自筆が必要ですので高齢でうまく字が書けない場合などは、やはり、公正証書遺言を検討すべきでしょう。
また、高齢者が書く遺言は、凝りすぎて複雑な内容にすると本当に本人が理解して書いたか疑われます。後日、他の相続人等から遺言の有効性について争われる可能性があるのです。あまりに考えすぎて練りに練った遺言では逆にトラブルになることもあるのです。バランスよく作成しましょう。
そのような場合は、紛争回避のためにシンプルでオーソドックスな記載の仕方がよいでしょう。内容を簡素化しますが、押せるべきポイントはしっかり押さえる、そんなイメージです。
これからは、遺言の作成パターンは、3つになります。
①自筆証書遺言で自分で保管する
➁自筆証書遺言で法務局が保管する
③公正証書遺言で公証役場が保管する
ご自身の状況に応じて使い分けるようにしましょう。いずれの場合でも、遺言書を作成する動機となる根本的な問題へのアプロ―チは司法書士などの専門家が得意とするところです。
まずは、遺言の選択がベストか、別の解決方法はないか検討し、結論として遺言を作成する場合には、上記の3つの作成方法や遺言内容を吟味します。作成後も事情の変更により遺言内容の見直しや別の方法を検討したりします。
いかがでしょうか。
名古屋のごとう司法書士事務所でも遺言書作成を応援しています。
相続問題に積極的に取り組んでいる司法書士が最後まで皆様に寄り添って導いていきます。
遺言に不安な方は、些細なことでもお気軽にご相談下さい。