不動産売却チラシの見方【名古屋のごとう司法書士事務所】
2020/09/07
専門家が読み解く不動産売却チラシの本音とは
新聞のチラシに、不動産会社の広告がよく入っています。不動産を探している人や家を購入しようとする人には役立つ情報です。
一方、売主としては、どのような感じで不動産が売却されていくのかを知るチャンスでもあります。不動産を売却する時は、通常、不動産の売買仲介の会社に依頼をします。
昨今は、インターネットが物件探しの主流です。ほとんどの買主はネットで物件探しをしているといっていいでしょう。昔のように不動産屋さんに行って、物件情報を聞き出すといった作業は現在は皆無です。中には店舗に行けば掘り出し情報が聞ける可能性がありますが、ほとんどないといってもいいでしょう。
そこで、最近は一般の人が不動産会社に話を直接聞く機会が減っています。
様々なうたい文句で、不動産会社は営業活動をします。中には「これってどうなの?」と首をかしげたくなる広告も見ます。
今回は名古屋で司法書士と不動産売買仲介業をやっている当センターが、気になる公告について、専門家目線で冷静に解説をしていきたいと思います。
1 買取保証とは
買取保証は必ずしも、有利な条件ではありません。
買取の条件をよく吟味しましょう。
例えば、一旦、専属で媒介の契約を交わして、一定期間後に売れなければ買い取るというパターンです。
不動産会社としては、顧客の囲い込み戦略です。
仲介でうまく売れれば、それもよし。仮に売れなくても、最後は買取で利益を出す。こんな感じかもしれません。
というのは、通常、買取業者の買取額は、不動産売買の相場ではありません。買取会社の買取額は、相場より安くなります。
買取後の不動産の活かし方は色々ですが、例えば、リフォームをして販売する形です。又は別の不動産業者への転売です。リフォームをして再販する場合、できるけ仕入れである買取額は低いにこしたことはありません。少なくとも相場で買っていては、そこにリフォーム代を代金にのせて売ることはとても大変です。
つまり、このパターンは、買取額を相場で買い取る場合はよいですが、そうではなく、安くなる買取業者の買取額で買い取ってもらっては意味がありません。不動産会社的には、実は買取業者を探すのはそれほど難しくありません。実際に買取額はどの会社でもそこまで変わらないことが多いのが実感です。だから、上記のやり方は、私たちでも、顧客の希望を聞きながら、普通にやっています。どこかのタイミングで買取業者への売却の選択肢もお伝えするのです。
買取保証の条件次第ですが、有益であることもありますが、あまりお得な情報ではない可能性もあるので、すぐに飛びつかないようにしましょう。
冷静に条件を分析すべきでしょう。
2 「無料で査定します!」の意味
不動産会社がする査定も誤解が多い広告のひとつです。
実は、からくりも多いんです。
無料だからとすぐに飛びつかないようにしましょう。
まず、不動産会社が査定した不動産の価格は、必ず売れる金額でも不動産会社が買い取る金額でもありません。
あくまで、地価公示価格、路線価や取引事例を参考にして、売却できる予想額を出しているだけです。
不動産査定額と買取額は違います。
つまり、この不動産査定額はどこの不動産会社が出しても基本的には大きく違わないはずです。単なる売却の相場を出しているだけですから、不動産売買のプロである不動産会社が出すものは同じになるはずです。
しかし、現実的には多少違うことがあります。
なぜか?
通常、不動産の売却予想額である査定額は、ある程度の幅を持たせても妥当なものだからです。一定の価格帯で査定額を算出できることも多く、そういう意味では、売却できる可能性が高い金額が査定額とも言えます。相場より高ければ売却可能性が低くなるだけです。実際、何社かで不動産の査定を依頼してもそれほど大きく違わないはずです。
ただし、不動産会社の中には、意図的に高めの査定額を出して、前述した一般の方の誤解を利用して営業をする業者もあるようです。繰り返しになりますが、不動産査定額は、売却の保障がある金額ではありません。買取金額ではありません。単なる売却相場を出しているだけです。購入金額を決めるのは買主の方です。
結論としては、不動産の相場が知りたい場合、不動産査定額はどの不動産会社でも大丈夫です。また、前述のとおり、査定額の高い低いで依頼をする不動産会社を選ぶ理由もありません。もし、売却したい金額がある場合は、その金額で売却として取り扱ってくれる不動産会社を選べばよいです。なぜなら、例えば相場よりかなり高い金額でしか売らない場合は、前述のとおり、売却可能性が低くなるので、仲介手数料が基本的には成功報酬である不動産会社としては積極的になれません。やる気がわかないのが本音でしょう。
蛇足ですが、不動産会社が行う査定は、基本的には査定を専門に扱う別の会社にやってもらうことがほとんどです。不動産会社にすれば査定額の算出を外注をしている形です。大手でさえもベースの内容は査定専門会社に依存していることがほとんどだと思います。そういう意味でも査定を行う不動産会社選び自体はそれほど意味がないのです。
むしろ、不動産会社の目線では、不動産査定の依頼を入り口に営業活動をしたいというのが本音でしょう。だから、高め金額で売却査定書を出して、一般の人の誤解を利用して仕事にしようとするのです。だましているとまではいかないにしても、売主の方の不利益になる情報を積極的に言わないことは考えられます。営業では常套手段かもしれませんが、司法書士をやっている身としてはこのようなやり方には違和感を覚えざるを得ません。
当事務所では、不動産の売却をグループ会社でやっていますが、司法書士事務所の方針をベースにしているので隠し事なく本当の情報を提供してご判断を仰ぐようにしています。そのようにすることこそ事務所の存在意義だと思っています。
不動産査定は、不動産会社の営業のきっかけになるものと覚えておきましょう。
3 「売却求む!○○区の土地を探している買主がいます!」の意味
たまに広告で見る表現方法です。
最初はどこかの会社が出した広告を別の会社もマネをしている場合もあるでしょう。
実は、この広告にもやはり裏はあります。
もちろん、有益な情報となり不動産がすぐに売れることもありますが、そうではない場合もあるというお話です。
確かに本当に広告に掲載されたような購入希望者がいる場合もあります。
しかし、その広告に出てくる買主は、その不動産会社を介してしか不動産を購入しないのでしょうか?
そんなことはあまりありません。購入希望者は、インターネットなど別の方法でも物件を探しています。購入を依頼したひとつの不動産会社に専属で任せている人はあまりいないでしょう。何社かに声をかけつつ、自分でも情報を集める。今の物件探しは、この方法が主流ではないかと思います。売主と買主にはそれぞれ仲介会社が必要ですが、売主と買主で不動産会社が別々になっても全く問題ないのです。不動産会社としては、売主と買主を仲介して仲介手数料を両方からもらいたいでしょうが。
そもそも、購入希望者は、通常不動産会社に行くことを嫌がります。
一度行くと、しつこく営業をされるかもしれないからです。電話をすることにも抵抗があります。
しかも、今は、昔と違い、インターネットで売り出し物件を探すサイト(アットホーム、ホームズ、スーモなど)がいくつかあります。購入希望者は、このポータルサイトで物件チェックをするでしょうし、実は、売却物件を任された不動産会社にしてもこのポータルサイトに掲載をすることを営業の柱にしています。あとはグーグルのリスティング広告なども利用します。
物件近所へのチラシのてまき、新聞折り込み広告などの古典的な手法もなくなっていませんが、あまり有効ではありません。昨今はDMなどのチラシはすぐにゴミ箱いきのことが多いでしょうし、新聞に至っては購読者が減少している現代では、昔のような効果は期待できません。
やはり、広告の主役は完全にインターネットでしょう。
「○○地区の購入希望者がいます。売って下さい」の広告は、参考ぐらいの気持ちで見るのがいいと思います。
実際に、広告を出した不動産会社はその購入希望者の情報を開示しない可能性もあります。そんな購入希望者が本当にいるのかいないのかわかりようがないのです。購入希望者の情報は、個人情報ですからいくらでも理由をつけて断れます。「先日、別の物件を購入してしまったんです」「新築を購入されたそうです」など営業トークでいくらでもかわすこともできます。
考えようによっては、売却の依頼を受けたいがための営業トークの一種にも思えます。前述のとおり、広告に書いてある購入希望者で本当にすぐにとんとん拍子に売却に進むのでしょうか?本当のところはその不動産会社しかわかりません。世の中そんな都合の良い話はそれほどないと考えるのが自然でしょう。
これは、会社の規模には関係ないと思います。大手の不動産会社でも起こり得ますし、中小の町の不動産会社でも起こり得ます。ご参考にしてみて下さい。
最後に
以上、名古屋の司法書士事務所が、グループ会社で不動産売買仲介をやっているので、本音で裏事情を話してみました。
不動産の広告は記載内容に法規制もありますが、嘘ではなくでも親切な不動産会社ならそんな話はしないなと感じることは結構あるのです。一般の方にはわかりにくいですが、不動産会社はやや特殊な空気があります。ほかの業界と少し異質な面もあります。高額な不動産を扱いますから、トラブルや詐欺などの犯罪も多いです。昔から、取引に反社会勢力が関係することもあり、実は結構怖い取引でもあります。
しかし、まっとうに仕事をしたいと考える不動産会社にとっては、実はよい時代なのです。
隠し事がしにくくなっていますし、不動産の仲介会社の本当の意味が問われています。究極的には、不動産仲介会社が必要なのか?そんな疑問もわいてくるかもしれません。
しかし、現状では、仲介なしで他人から不動産を買うことは極めて危険でしょう。法律上は不動産売買に仲介は必須ではないので大丈夫ですが、完全に売主と買主の自己責任になります。
当事務所では、グループ会社に不動産会社(売買仲介)をやっていますが、現代の不動産会社の意味は、買主や売主を探すことがメインではないと思っています。インターネットがなかった時代は、物件情報が簡単に得られませんから、物件情報を持っている不動産会社が優越的な立場でしたが、誰でも気軽にネット検索ができる時代では情報は、それ自体では何ら価値を持ちません。
むしろ、物件情報はネットによって不動産会社、売主や買主などに共通の情報になっています。そこから先の役割が仲介会社には求められています。それは、法律が難しい不動産売買契約であり、買主にとっては必須となる登記手続きなどです。これらはすべて取引の安全を守るものであり、売主と買主の意向に沿った取引を実現につながります。
つまり、どの不動産会社(又は担当者)を選ぶかで、不動産取引の安全性や有利な情報が得られるかが違ってくるのです。
不動産の広告をきっかけに、不動産の仲介会社のことも考えてみて下さい。
欧米では、仲介業者は法律、税務、金融の高い知識や能力が必要な職業とされているようです。確かに、本当に依頼者に質の高いサービスを提供しようとすると、これらの知識は高い次元で保たれていなければできません。しかし、日本の宅地建物取引士は、資格試験レベルでもそのような能力がなくても合格できています。欧米に比べて日本の宅地建物取引士が地位や立場が弱いと言われています。
日本でも本当の意味で仲介業者が成長しなければいけない時代がやってきたのかもしれません。今後は、能力がない仲介業者は淘汰されていくと言われています。そのことに一般消費者の方が気づきはじめているのです。