相続の放棄をする方法とは?【名古屋のごとう司法書士事務所】
2020/03/10
1 相続放棄とは
相続人は、被相続人に相続が開始した時から3カ月以内に家庭裁判所に手続きをすることで、相続放棄をすることができます。
ここでいう相続放棄とは、最初から相続人にならないことを意味します。つまり、相続開始時から被相続人の遺産すべてを承継しません。よって、不動産や預金、株式、投資信託などの資産はもとより、貸金の借金や保証債務なども一切承継しません。
この相続放棄まで利用する主な理由は、やはり多額の債務を抱えた状態で亡くなった場合です。プラスの資産がほとんどないので、あとから借金が見つかってもいいようにあらかじめ相続放棄をしておくケースもあります。
(1) 相続放棄後の他の相続人の相続分はどうなるの?
例えば、子の3人(A、B、C)が相続人の場合、この状態では法定相続分は各自3分の1です。この状態で、Aが相続放棄をすると、相続人はB及びCのみになります。つまり、BとCの法定相続分は各自2分の1となり、結果として相続粉が増えます。
2 遺産分割協議で相続分を放棄する
遺産分割協議は、相続人全員が参加をして遺産の分け方を協議するものです。基本的には資産の分け方を決めますが、債務についての負担を決めることもできます。ただし、その場合は、債権者の同意がないと債権者には主張できません。
この遺産分割協議で、資産を何も取得しないで、他の相続人が相続するという内容も可能なのです。そのように決定すれば、結果として資産を何も取得しない状態を作ることはできます。ただし、債務については、上記のとおりですから注意が必要です。
3 相続分譲渡で相続分を放棄する
自分の持っている相続分を他の相続人等へ譲渡することができます。
例えば、上記の例と同じく3人の子が相続人(A、B、C)の場合、Aの3分の1の相続分をBに譲渡すると、Bはもともと持っている相続分3分の1と譲渡された3分の1を合わせた3分の2の相続分を持つことになります。Cは3分の1のままです。この相続分の割合でBとCは遺産分割協議などを行う形になります。
4 特定の相続人に相続分を渡したいとき
3人の子(A、B、C)が相続人で、Aが、親の面倒を見て家業を継ぐBに自分の相続分を譲りたいと考えています。Cは、自分の法定相続分を主張しています。
このような場合、Aはどのような方法をとるべきでしょうか?
(1) Aが相続放棄をした場合
Aが家庭裁判所に相続放棄をすると、Aは相続開始の時点から相続人ではなくなります。つまり、資産も債務も何も相続しません。そこで、BとCが各2ぶんの1づつ相続分をもつ形になります。
この場合、BとCは対等の権利関係となり、Bの立場にとっては良いとは言えません。遺産分割時に、家業に必要な資産を承継する代わりに多額の代償金を支払うことになりかねません。
一方、この場合Aは、相続からは完全に離れます。債務の承継の心配も一切ありません。個人事業主や中小企業の社長の場合、個人的に予期せぬ借金があとから見つかることもあるようです。しかし、相続放棄をすれば、その心配はなくなります。
ただし、AがBを助けたいと思っている場合は、あまり得策とは言えません。Aが相続放棄で相続関係から離脱すると、残されたBとCの対立構造が浮き彫りになります。
(2) 遺産分割協議でAの相続分をBが自由にできるようにした場合
Aは、自分の相続分3分の1をBに譲る形をとり、Bが3分の2、Cが3分の1の内容とする遺産分割協議を3者間で行うことで、Bを助けることができます。
ただし、この場合、Aは債務については注意が必要です。遺産分割協議でAが負うべき債務はBが承継するという形をとるべきでしょう。債権者との関係では難しくても、AとBとの間ではそのようにしておく方がよいと思います。
(3) AがBに相続分を譲渡する場合
Aの3分の1の相続分をBに譲渡する方法です。この結果、遺産分割協議は、3分の2のBと3分の1のCによる話し合いになります。この場合でも、遺産分割協議同様にBが有利に話を進めることができそうです。ただし、債務については承継されるかは見解が分かれているところもありますが、承継されないものとして考えた方が無難でしょう。
まとめ
以上、名古屋の司法書士が、相続放棄の効果や他の相続人への影響、さらに自分の相続分を他の相続人へ譲渡する方法について解説しました。
どうでしょう?相続といっても実はいろいろなやり方があることがお分かりいただけましたでしょうか?
それぞれの方法にもメリットデメリットがあります。それらを十分理解したうえで、どれを選択するかを検討したいものです。
ここまでくると専門性が強く複雑になりますので、お悩みの方は司法書士や弁護士などの法律専門職の意見を聞いてみてはいかがでしょうか?きっと参考になるはずです。