相続人のうち認知症の人がいる時の遺産分割協議【名古屋のごとう司法書士事務所】

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相続人のうち認知症の人がいる時の遺産分割協議【名古屋のごとう司法書士事務所】

2020/03/07

認知症の相続人を無理に遺産分割協議に参加させて大丈夫なのか?

相続人が高齢者の方ばかりの相続事例はよくあります。

そうなると、相続人に相続が開始する可能性もありますが、その前段階で、相続人が認知症等になり、判断能力が衰えてしまうことがあるのです。多くの人は、亡くなる前はこのような状態になる可能性があります。

 

このような場合、他の相続人だけの意見で内容を決定し、形だけ遺産分割協議をした形をとっても問題ないのでしょうか?

法律的には問題点が多いと思います。

 

では、どうすればいよいのでしょうか?

今回は、名古屋の司法書士が、相続人のうち、認知症等で判断能力が衰えてしまった場合について、その対処法をお話しします。

1 遺産分割協議をするために必要な条件とは?

遺産分割協議は、法律行為です。

被相続人が残した財産の分け方を決める行為ですから、法律行為とされており、遺産分割協議を有効に成立させるには相続人全員が意思能力を有している必要があります。

 

売買契約などと同じです。

つまり、当事者である相続人の全員の決定で行う遺産分割協議では、いくら書面上の形を何らかの方法で整えても、そのうち誰か一人でも不参加の場合や意思能力がない場合は有効に法律行為である遺産分割協議が成立しません。つまり無効です。偽造等をすれば犯罪になってしまいます。安易な気持ちで代筆や実印の押印は控えた方がよいでしょう。

 

この問題は、遺言を作成するときもある問題です。

遺言書の場合でもそうですが、もし相続人が高齢などの理由で判断能力に不安がある場合、内容をできるだけシンプルで簡単なものにしましょう。複雑な代償分割や相続財産の複雑な分け方は一般の人でも理解しにくいのです。それが高齢者等であればなお無理と言えるでしょう。

こんな複雑な内容を理解していたとは思えないとあとから問題になるのです。

遺産分割をする能力に問題がありそうな場合でも、希望を叶える方法がある場合もあります。そのような場合は、あきらめないで一度相続の専門家へご相談されることをお勧めします。

2 相続人の認知症等が軽い場合

この場合は、遺産分割協議をする際の意思能力の有無で判断されます。

意思能力を、常に持っていない場合でも、遺産分割協議の時点でたまたま意思能力がある状態であれば成立する余地はあります。例えば、高齢の方の場合、その日の天候や体調により、心身の状態が異なることがよくあります。調子のいい日に遺産分割協議を行えば、有効になることも考えられます。

この場合、認知症等の相続人が意思能力を有することがわかる証拠等を整えておくといいでしょう。例えば、担当医の意見書や診断書などがあります。少なくとも利害関係のない第三者を遺産分割協議に関与させるといいと思います。

 

しかし、一般的には無理に遺産分割協議をしないで、補助人や保佐人等の後見制度(本人の状態に応じて、補助人、保佐人または後見人が選任される)を利用して、裁判所から選任される補助人等に本人の代わりに遺産分割協議に参加してもらう方が安全です。
※本人の状態が軽い順から、補助人、保佐人、後見人が選任されます。一番症状が重いと判断された場合の後見人は、本人に代わってほとんどの行為をすることができます。

 

後見制度を利用するには費用と時間が少しかかりますので、遺産分割協議を急いでいる時は気をつけましょう。また、裁判所から選任される補助人等が他の相続人等の言うとおりに遺産分割に承諾するとは限りません。選任された補助人等は、本人の権利を守る立場ですから、本人のために行動します。決して親族等のためには行動することはありません。

 

話をまとめると、ケースに応じて体調の良い時に遺産分割協議を行うか後見制度を利用して補助人等に遺産分割協議に参加してもらうかを選択する形になります。

 

 

3 相続人の認知証等が重い場合

意思能力の有無が問題になる点は、2の症状が軽い場合と同じです。

こちらの場合の方が、より後見制度を利用するしかない可能性が高まります。認知症等の症状には、日によって調子の良い時と悪い時があると思います。良い時(意思能力があるとき)であれば理論上は遺産分割ができるという話です。

 

いずれにしても、後日、問題のある遺産分割協議として、無効を主張されて裁判にならないように細心の注意をする必要があります。

保佐人等の後見開始の申立てをすることができる人は、本人、配偶者、4親等内の親族などです。本人ができなくても、周りにいる人で申し立てをすることが可能です。誰も申立人になってもらえない場合は、市町村が申立人になることも可能です。ただし、このような市町村申立てはやむを得ない場合と考えた方がよいでしょう。

 

注意点もあります。

この後見制度を利用する場合、スポットでの利用はできません。

つまり、遺産分割だけのために利用することは想定されていません。基本的には本人が死亡するまで選任された後見人等が後見業務を続けます。特定の目的が達成されたからといって、後見人等が自由に辞任できるわけではないのです。複数人の後見人を選任することは可能です。複数人の場合のパターンは、身上監護は親族後見人がなり、財産管理等は司法書士や弁護士などの専門職後見人が選べれるパターンです。

なお、後見開始申し立てを裁判所に提出をして、後見人が選任されるまでの間にやっぱりやめたいと言ってもその場合にも裁判所の許可が必要です。

まとめ

以上、名古屋の司法書士が、相続人に認知症等で判断能力や意思能力に問題がありそうな場合の遺産分割協議の対処法を解説しました。

 

必ず後見制度を利用しなくては遺産分割協議する余地はあります。実際、そのようにして行われている遺産分割協議を目にすることもあります。いずれにしても、あとから検証されてもそれに耐えうる証拠などを整えておくとよいでしょう。後日紛争になった場合に、説明できるからです。

 

お困りの方はご参考にしてみて下さい。

 

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