AIや無料書式でできる相続登記の注意点|司法書士兼宅地建物取引士が解説
2026/05/07
近年、「AIで相続登記ができる」「無料の書式を使えば自分で名義変更できる」といった情報を、インターネット検索やYouTube、SNSなどで目にする機会が急増しています。
特に2024年4月から相続登記が義務化されたことで、「早めに手続きをしなければ」と考える方が増え、名古屋市内でも相続登記に関する検索数や相談件数は大きく増加しています。
以前は、相続登記というと「難しい法律手続き」「専門家に依頼するもの」というイメージを持つ方が多かったのですが、最近はAI技術の進歩によって、一般の方でも簡単に書類を作成できるサービスが増えています。
実際、
- 相続登記申請書の自動作成
- 遺産分割協議書のテンプレート作成
- 必要書類の一覧表示
- 法務局提出用データの生成
- 相続関係説明図の作成支援
などを行うサービスも登場しており、「専門家に依頼しなくてもできそう」と感じる方も少なくありません。
また、最近は物価上昇や将来不安の影響から、「できるだけ費用を抑えたい」と考える方も増えています。
特に相続では、葬儀費用、固定資産税、空き家管理費、相続税、解体費など、想像以上に多くのお金がかかることがあります。
そのため、
「登記くらいは自分でできないか」
「AIを使えば簡単ではないか」
「無料書式で十分ではないか」
と考える流れは、ある意味では自然なことかもしれません。
実際、相続人が少なく、財産内容も単純なケースであれば、法務局の案内や書式を利用しながら相続登記を進められる場合もあります。
しかし、不動産相続は単なる“書類作成”ではありません。
特に名古屋では、中区や東区など需要の高いエリアと、郊外エリアとで不動産価値の差が広がりつつあります。
さらに今後は、日本全体の人口減少や高齢化、空き家増加の影響により、「相続した不動産をどう維持・処分するか」が大きな社会問題になるともいわれています。
一見すると価値があるように見える不動産でも、
- 売却しづらい
- 管理費だけがかかる
- 共有状態で動かせない
- 老朽化による解体費負担が重い
- 相続人同士で意見がまとまらない
といった問題を抱えるケースは珍しくありません。
また、AIは入力された情報をもとに文章や書類を作ることは得意ですが、
- その相続方法が将来的に問題にならないか
- 不動産の資産価値はどう変化しそうか
- 売却時に支障がないか
- 税務上の不利益はないか
- 相続人間で後に争いが起きないか
といった「実務上のリスク判断」までは難しいのが現実です。
実際の相続では、戸籍の読み違い、古い抵当権、共有問題、数次相続、空き家問題など、表面的な書類作成だけでは見えない論点が数多く存在します。
だからこそ、相続登記では「単に名義変更するだけ」ではなく、その不動産を今後どう管理し、どう活用し、どう承継していくかまで含めて考えることが重要です。
この記事では、AIや無料書式を利用した相続登記のメリットと注意点を整理しながら、不動産実務にも精通した司法書士兼宅地建物取引士の立場から、名古屋の相続不動産で実際に起こりやすい問題や、後悔しないための考え方について、できるだけわかりやすく解説していきます。
1 AIや無料書式で相続登記を行う人が増えている理由
ここ数年、AI技術の急速な進化によって、法律や不動産に関する手続きも大きく変化し始めています。
以前であれば、専門家しか作成できないと思われていた書類についても、現在ではインターネット上のサービスやAIツールを利用することで、一般の方でも比較的簡単に作成できるようになりました。
相続登記についても例外ではありません。
最近では、
- AIによる相続登記申請書の自動生成
- 遺産分割協議書のテンプレート作成
- 相続関係説明図の自動作成
- 必要書類の一覧表示
- 法務局提出用フォーマットへの変換
- 相続手続全体の流れ案内
などを行うサービスが数多く登場しています。
特にスマートフォン世代の方を中心に、「まずはネット検索」「まずはAIに聞いてみる」という流れが一般化しており、名古屋市でも相続発生後に最初から司法書士事務所へ相談するのではなく、最初は自分で調べながら進めようとする方が増えています。
実際、Google検索やYouTubeでも、
- 「相続登記 自分でできる」
- 「相続登記 AI」
- 「無料で相続登記」
- 「司法書士に頼まない方法」
といった検索が増えており、相続登記を“できるだけ低コストで済ませたい”というニーズの強まりが見て取れます。
背景には、近年の生活コスト上昇もあります。
現在は、
- 物価上昇
- 光熱費高騰
- 建築費高騰
- 固定資産税負担
- 介護費用増加
などにより、多くの家庭が将来への不安を感じています。
さらに相続が発生すると、
- 葬儀費用
- お墓関係の費用
- 空き家管理費
- 遺品整理費
- 不動産維持費
- 相続税
など、想像以上に支出が重なることがあります。
そのため、「登記だけでも自分でやりたい」と考える方が増えるのは自然な流れともいえます。
また、2024年4月から相続登記が義務化された影響も非常に大きいです。
これまでは、「とりあえずそのまま放置していた」というケースも少なくありませんでした。
しかし現在は、相続によって不動産を取得したことを知ってから3年以内に相続登記をしなければならず、正当な理由なく放置した場合には過料の可能性もあります。
そのため、
「早く手続きをしなければ」
「まず自分でできるところまでやろう」
という心理が働きやすくなっています。
実際、比較的シンプルな相続であれば、AIや書式を利用して相続登記を進められるケースもあります。
例えば、
- 相続人が配偶者と子のみ
- 相続人間に争いがない
- 不動産が自宅1件だけ
- 被相続人の戸籍収集が比較的簡単
- 売却予定がない
- 抵当権などの複雑な権利関係がない
といったケースです。
法務局も近年は一般向け案内を充実させており、以前よりは個人申請しやすくなっている面もあります。
ただし、ここで非常に重要なのは、「書類作成ができること」と「相続問題が適切に解決できること」は別だという点です。
AIや無料書式は、あくまで“入力された情報をもとに文書を生成する仕組み”です。
つまり、前提情報が誤っていたり、そもそもの判断が不適切だった場合でも、その問題自体を指摘できないことがあります。
例えば、
- 誰が不動産を取得するのが適切か
- 共有名義にして問題ないか
- 売却したほうがよい不動産ではないか
- 将来空き家リスクが高くないか
- 相続税対策上不利ではないか
- 相続人同士で後に争いにならないか
といった、“将来を見据えた判断”は、単純なテンプレートでは対応が難しい部分です。
特に名古屋の不動産は、エリアによる資産価値の差が年々大きくなっています。
例えば、
- 中区
- 東区
- 千種区
- 昭和区
などの人気エリアは比較的需要が安定している一方で、郊外エリアや築古物件では、今後の人口減少の影響を受けやすい地域もあります。
最近では、「相続した実家が売れない」という相談も増えています。
特に団塊世代の高齢化が進む中で、今後は相続不動産の供給増加が予想されており、空き家問題はさらに深刻化する可能性があります。
そのため、不動産相続では単に「名義変更する」だけでなく、
- 将来の管理
- 売却可能性
- 維持コスト
- 家族間の関係
- 資産価値の推移
まで考慮する必要があります。
また、最近はAIの回答をそのまま信じてしまうケースも増えていますが、AIは必ずしも最新法令や地域実務に完全対応しているわけではありません。
相続登記では、
- 法務局ごとの実務運用
- 不動産表示の細かな違い
- 戸籍の読み取り
- 古い権利関係
- 数次相続
- 代襲相続
など、実務経験が重要になる場面も少なくありません。
特に不動産は、法律だけではなく、
- 税務
- 売買実務
- 市場動向
- 建築
- 空き家問題
とも密接に関係しています。
司法書士兼宅地建物取引士の立場から見ると、「登記自体はできたものの、その後の不動産処分で困る」というケースは実際に少なくありません。
だからこそ、AIや無料書式は便利なツールとして活用しつつも、重要な判断については、不動産や相続実務を理解した専門家の視点を取り入れることが、結果的に家族全体の負担軽減につながる時代になってきているといえるでしょう。
2 AIでは判断できない「不動産相続」の本当のリスク
AIや無料書式の最大の特徴は、「一定の条件に沿って書類を作成すること」にあります。
そのため、単純な入力作業や定型的な文章作成については、以前よりもかなり便利になっています。
しかし、不動産相続の現場では、「書類が作れた=問題が解決した」ではありません。
実際には、相続登記の本質は単なる名義変更ではなく、“その不動産を今後どう扱っていくか”にあります。
ここを見落としてしまうと、数年後、あるいは次の相続のときに、家族が大きな問題を抱えることがあります。
特に近年の名古屋では、不動産価格の二極化や空き家問題が進みつつあり、「とりあえず相続登記だけ済ませておく」という考え方が、将来的なリスクになるケースも増えています。
AIは入力された情報をもとに文書を生成することはできますが、
- その不動産が将来どうなる可能性があるか
- 共有名義が本当に適切か
- 売却しやすい不動産か
- 管理負担が将来問題にならないか
- 相続人間で感情的対立が起きないか
といった、人間関係や不動産市場まで含めた総合的判断は難しいのが現実です。
「平等だから共有名義」が将来トラブルになることも
AIやインターネット情報では、「法定相続分どおり共有にすれば平等」と説明されることがあります。
確かに、法律上は共有登記自体に問題はありません。
しかし、実務ではこの“共有状態”が長期的に大きな問題になるケースが非常に多いのです。
例えば、親の実家を兄弟3人で共有相続した場合、最初のうちは問題なくても、時間が経つにつれて考え方が変わることがあります。
- 売却したい人
- 住み続けたい人
- 賃貸にしたい人
- 空き家のまま残したい人
で意見が分かれると、不動産が動かせなくなることがあります。
さらに問題なのは、共有者が亡くなるたびに権利関係が複雑化していく点です。
例えば兄弟3人共有だった不動産でも、その後それぞれに子どもが相続すると、共有者が6人、9人、12人…と増えていくことがあります。
実際、名古屋市内でも、
- 「相続人が多すぎて売却できない」
- 「誰が固定資産税を払うのかわからない」
- 「遠方の相続人と連絡が取れない」
といった相談は珍しくありません。
特に昭和40年代から平成初期に建てられた住宅では、名義が何十年も更新されず、相続関係が非常に複雑になっているケースもあります。
AIは「共有で登記可能です」とは示してくれても、“共有が将来どういう問題を生むか”までは考慮してくれません。
「資産になる不動産」と「負担になる不動産」は違う
以前は、「不動産は持っていれば安心」「土地は値下がりしない」と考えられていた時代もありました。
しかし現在は、不動産市場そのものが大きく変化しています。
特に今後の日本では、
- 若年人口減少
- 高齢化
- 空き家増加
- 建築費高騰
- 実需層の減少
などにより、不動産の価値が維持できるエリアと、そうでないエリアの差が広がる可能性があります。
名古屋でも、中区・東区・千種区など一部エリアでは需要が比較的安定していますが、郊外や築古住宅では将来的な価格下落リスクを考慮しなければならない場面も増えています。
特に最近は、
- 相続した空き家が売れない
- 解体費が高額
- 管理費だけかかる
- 買主が見つからない
というケースも増えています。
例えば、築50年近い木造住宅の場合、
- 解体費用
- 測量費
- 残置物撤去費
- 境界問題
などを考えると、「資産」というより“維持コストのかかる不動産”になることもあります。
しかし、AIや無料書式では、その不動産の市場性や将来性までは判断できません。
不動産は法律だけでなく、
- 地域需要
- 再建築可否
- 接道状況
- 用途地域
- 売却実務
など、多くの要素で価値が変わります。
司法書士兼宅地建物取引士の視点では、「名義変更すること」よりも、「その不動産を今後どう扱うべきか」のほうが重要になる場面も少なくありません。
「登記できる」と「安全に相続できる」は別問題
AIを利用した相続登記で特に注意したいのは、“形式的には正しくても、実務上問題が残るケース”です。
例えば、
- 古い抵当権が残っている
- 境界未確定
- 未登記建物がある
- 農地が含まれている
- 私道持分が複雑
- 借地権関係がある
など、不動産には登記簿だけでは見えにくい問題が存在することがあります。
特に古い不動産では、現在の所有者自身も状況を正確に把握していないケースがあります。
また、AIは一般論には強い一方で、
- 名古屋法務局の運用実務
- 地域特有の不動産事情
- 相続人の感情面
- 売却時の実務問題
など、“現場で起きる問題”への対応は難しい部分があります。
例えば、名古屋では昔から「親の家は残したい」という考えを持つ方も多く、感情面から共有状態が続くケースがあります。
しかし実際には、
- 固定資産税負担
- 空き家管理
- 修繕費
- 相続人間の意見対立
などにより、次世代が大きな負担を抱えることもあります。
特に最近は、空き家対策特別措置法の運用強化や、管理不全空き家への対応も進んでおり、「放置しておけばよい」という時代ではなくなっています。
AI時代だからこそ「誰に相談するか」が重要になる
AIは今後さらに進化していくでしょう。
書類作成や情報整理では、相続実務でも便利な場面が増えていくと思われます。
しかし、不動産相続は、
- 法律
- 登記
- 税務
- 不動産市場
- 売却実務
- 家族関係
などが複雑に絡み合う分野です。
だからこそ、単純なテンプレート処理ではなく、「その家庭にとって何が最善か」を考える視点が重要になります。
特に名古屋では、都心部と郊外で不動産事情が大きく異なり、今後の人口動態の影響も無視できません。
相続登記は単なる事務手続ではなく、“次世代へ不動産をどう引き継ぐか”という重要な問題です。
AIを便利な道具として活用しながらも、最終的な判断については、不動産実務まで理解した専門家の視点を取り入れることが、将来の安心につながる時代になっているといえるでしょう。
3 「書類は合っているのに補正になる」相続登記の実務
AIや無料書式を利用して相続登記を進める方の中には、
「ネットの説明どおりに作った」
「AIが作成した内容をそのまま提出した」
「法務局の書式を使ったから大丈夫だと思った」
というケースが少なくありません。
しかし、実際の法務局実務では、「一見問題がなさそうな書類」であっても補正になることがあります。
ここでいう“補正”とは、法務局から「このままでは登記できないため修正してください」と指摘を受けることです。
補正自体は珍しいものではありませんが、一般の方にとっては、
- 何を直せばよいかわからない
- 法務局からの説明が難しい
- 追加書類が必要になる
- 平日に再対応しなければならない
- 精神的に不安になる
など、大きな負担になることがあります。
特に相続登記では、単純な入力ミスだけでなく、“前提となる調査不足”が原因で補正になるケースも多くあります。
AIは入力された情報をもとに文書を作成するため、そもそもの情報や判断に誤りがある場合、その問題自体を発見できないことがあるのです。
相続登記は「書類作成」より「事前調査」が重要
一般の方が誤解しやすいのですが、相続登記で本当に重要なのは、実は“申請書作成そのもの”ではありません。
むしろ重要なのは、
- 戸籍調査
- 不動産調査
- 権利関係確認
- 相続関係の整理
- 不動産表示の確認
などの事前作業です。
例えば被相続人の戸籍についても、
- 転籍の繰り返し
- 婚姻前戸籍
- 改製原戸籍
- 戦前戸籍
- 養子縁組
- 認知
- 代襲相続
などが絡むと、一般の方が正確に読み解くのは簡単ではありません。
最近は「戸籍を全部集めたつもりだったが不足していた」というケースもよくあります。
特に高齢の被相続人では、本籍移転を何度も行っている場合もあり、戸籍の流れを正確に追わなければなりません。
AIは「必要な戸籍一覧」を示すことはできても、実際の戸籍内容から相続関係を正確に判断する作業は、依然として実務経験が重要になる場面があります。
不動産表示のミスは非常に多い
相続登記の補正で特に多いのが、「不動産表示」の誤りです。
不動産登記では、
- 所在
- 地番
- 家屋番号
- 種類
- 構造
- 地積
- 床面積
などを、登記簿どおりに正確に記載する必要があります。
しかし一般の方は、
- 固定資産税納税通知書
- 住所表示
- 住宅地図
などを見ながら記載してしまい、登記簿上の表示と食い違うケースがあります。
例えば、
「○丁目○番地」と「○番○」の違い
「住所」と「地番」の違い
「建物番号」と「家屋番号」の違い
を正確に理解するのは、慣れていないと難しい部分です。
特に名古屋市内でも、古い住宅地では、
- 分筆履歴
- 合筆履歴
- 区画整理
- 住居表示変更
などにより、現在の住所と登記簿表示が大きく異なることがあります。
AIは入力された情報をそのまま反映するため、入力時点で誤りがあれば、そのまま誤った申請書が完成してしまうことがあります。
「実は売れない不動産だった」というケースも
相続登記では、“登記そのもの”に意識が集中しがちですが、本来重要なのは、その不動産を将来どうするかです。
例えば名古屋市郊外や近隣地域では、
- 接道条件が悪い
- 再建築不可
- 境界未確定
- 擁壁問題
- 私道問題
- 老朽化
などを抱えた不動産も少なくありません。
しかし、AIや書式サービスでは、その不動産の市場性や売却難易度までは判断できません。
実際には、
「相続登記だけ済ませたが、その後売れないことが判明した」
「古い抵当権が残っていた」
「隣地との境界問題があった」
というケースもあります。
特に最近は、人口減少や空き家増加の影響により、“相続しただけでは資産にならない不動産”も増えています。
以前は「土地は持っていれば安心」と考えられていましたが、現在は、
- 固定資産税
- 解体費
- 草木管理
- 空き家管理
- 修繕費
などの負担が大きくなることもあります。
特に今後は、団塊世代の相続増加によって空き家供給がさらに増える可能性があり、地方だけでなく都市部周辺でも不動産価値の二極化が進むと予想されています。
そのため、相続登記では「名義変更できるか」だけでなく、「その不動産が将来どうなるか」を考える視点が非常に重要です。
実際によくある“補正後の不安”
実務では、AIやネット書式で相続登記を進めた後、途中で不安になって相談に来られる方も少なくありません。
例えば、
「法務局から補正の電話が来たが内容が理解できない」
「戸籍が足りないと言われた」
「遺産分割協議書の記載が違うと言われた」
「追加書類を求められた」
という相談です。
特に一般の方は、「法務局から連絡が来た」というだけで大きな心理的負担を感じやすいものです。
また、補正対応を進める中で、
- 古い抵当権
- 未登記建物
- 相続漏れ
- 共有問題
など、当初想定していなかった問題が見つかることもあります。
最初は「簡単そうだから自分で」と思っていても、途中から手続きが複雑化し、結果的に長期間放置されてしまうケースもあります。
実際、相続登記義務化後は、「途中まで自分でやったが限界を感じた」という相談は以前より増えています。
AI時代でも実務経験は重要
AIは今後さらに便利になっていくでしょう。
書類の下書き作成や情報整理では、大きな助けになる場面も増えると思われます。
しかし、相続登記は単なるデータ入力ではありません。
実際には、
- 戸籍をどう読むか
- 相続関係をどう整理するか
- 不動産の問題点をどう見抜くか
- 将来の売却をどう考えるか
- 家族間トラブルをどう防ぐか
といった、実務経験に基づく判断が非常に重要です。
特に不動産は、
- 法律
- 税務
- 売買実務
- 建築
- 市場動向
が密接に関係する分野です。
司法書士兼宅地建物取引士の立場から見ると、「登記が終わった時点」ではなく、“その後に問題が起きないこと”のほうが重要だと感じる場面は少なくありません。
AIや無料書式は便利な時代だからこそ、「どこまで自分で行い、どこから専門家の判断を取り入れるか」を見極めることが、これからの相続登記ではより重要になっていくでしょう。
まとめ
AIや無料書式を利用して相続登記を進める方の中には、
「ネットの説明どおりに作った」
「AIが作成した内容をそのまま提出した」
「法務局の書式を使ったから大丈夫だと思った」
というケースが少なくありません。
しかし、実際の法務局実務では、「一見問題がなさそうな書類」であっても補正になることがあります。
ここでいう“補正”とは、法務局から「このままでは登記できないため修正してください」と指摘を受けることです。
補正自体は珍しいものではありませんが、一般の方にとっては、
- 何を直せばよいかわからない
- 法務局からの説明が難しい
- 追加書類が必要になる
- 平日に再対応しなければならない
- 精神的に不安になる
など、大きな負担になることがあります。
特に相続登記では、単純な入力ミスだけでなく、“前提となる調査不足”が原因で補正になるケースも多くあります。
AIは入力された情報をもとに文書を作成するため、そもそもの情報や判断に誤りがある場合、その問題自体を発見できないことがあるのです。
相続登記は「書類作成」より「事前調査」が重要
一般の方が誤解しやすいのですが、相続登記で本当に重要なのは、実は“申請書作成そのもの”ではありません。
むしろ重要なのは、
- 戸籍調査
- 不動産調査
- 権利関係確認
- 相続関係の整理
- 不動産表示の確認
などの事前作業です。
例えば被相続人の戸籍についても、
- 転籍の繰り返し
- 婚姻前戸籍
- 改製原戸籍
- 戦前戸籍
- 養子縁組
- 認知
- 代襲相続
などが絡むと、一般の方が正確に読み解くのは簡単ではありません。
最近は「戸籍を全部集めたつもりだったが不足していた」というケースもよくあります。
特に高齢の被相続人では、本籍移転を何度も行っている場合もあり、戸籍の流れを正確に追わなければなりません。
AIは「必要な戸籍一覧」を示すことはできても、実際の戸籍内容から相続関係を正確に判断する作業は、依然として実務経験が重要になる場面があります。
不動産表示のミスは非常に多い
相続登記の補正で特に多いのが、「不動産表示」の誤りです。
不動産登記では、
- 所在
- 地番
- 家屋番号
- 種類
- 構造
- 地積
- 床面積
などを、登記簿どおりに正確に記載する必要があります。
しかし一般の方は、
- 固定資産税納税通知書
- 住所表示
- 住宅地図
などを見ながら記載してしまい、登記簿上の表示と食い違うケースがあります。
例えば、
「○丁目○番地」と「○番○」の違い
「住所」と「地番」の違い
「建物番号」と「家屋番号」の違い
を正確に理解するのは、慣れていないと難しい部分です。
特に名古屋市内でも、古い住宅地では、
- 分筆履歴
- 合筆履歴
- 区画整理
- 住居表示変更
などにより、現在の住所と登記簿表示が大きく異なることがあります。
AIは入力された情報をそのまま反映するため、入力時点で誤りがあれば、そのまま誤った申請書が完成してしまうことがあります。
「実は売れない不動産だった」というケースも
相続登記では、“登記そのもの”に意識が集中しがちですが、本来重要なのは、その不動産を将来どうするかです。
例えば名古屋市郊外や近隣地域では、
- 接道条件が悪い
- 再建築不可
- 境界未確定
- 擁壁問題
- 私道問題
- 老朽化
などを抱えた不動産も少なくありません。
しかし、AIや書式サービスでは、その不動産の市場性や売却難易度までは判断できません。
実際には、
「相続登記だけ済ませたが、その後売れないことが判明した」
「古い抵当権が残っていた」
「隣地との境界問題があった」
というケースもあります。
特に最近は、人口減少や空き家増加の影響により、“相続しただけでは資産にならない不動産”も増えています。
以前は「土地は持っていれば安心」と考えられていましたが、現在は、
- 固定資産税
- 解体費
- 草木管理
- 空き家管理
- 修繕費
などの負担が大きくなることもあります。
特に今後は、団塊世代の相続増加によって空き家供給がさらに増える可能性があり、地方だけでなく都市部周辺でも不動産価値の二極化が進むと予想されています。
そのため、相続登記では「名義変更できるか」だけでなく、「その不動産が将来どうなるか」を考える視点が非常に重要です。
実際によくある“補正後の不安”
実務では、AIやネット書式で相続登記を進めた後、途中で不安になって相談に来られる方も少なくありません。
例えば、
「法務局から補正の電話が来たが内容が理解できない」
「戸籍が足りないと言われた」
「遺産分割協議書の記載が違うと言われた」
「追加書類を求められた」
という相談です。
特に一般の方は、「法務局から連絡が来た」というだけで大きな心理的負担を感じやすいものです。
また、補正対応を進める中で、
- 古い抵当権
- 未登記建物
- 相続漏れ
- 共有問題
など、当初想定していなかった問題が見つかることもあります。
最初は「簡単そうだから自分で」と思っていても、途中から手続きが複雑化し、結果的に長期間放置されてしまうケースもあります。
実際、相続登記義務化後は、「途中まで自分でやったが限界を感じた」という相談は以前より増えています。
AI時代でも実務経験は重要
AIは今後さらに便利になっていくでしょう。
書類の下書き作成や情報整理では、大きな助けになる場面も増えると思われます。
しかし、相続登記は単なるデータ入力ではありません。
実際には、
- 戸籍をどう読むか
- 相続関係をどう整理するか
- 不動産の問題点をどう見抜くか
- 将来の売却をどう考えるか
- 家族間トラブルをどう防ぐか
といった、実務経験に基づく判断が非常に重要です。
特に不動産は、
- 法律
- 税務
- 売買実務
- 建築
- 市場動向
が密接に関係する分野です。
司法書士兼宅地建物取引士の立場から見ると、「登記が終わった時点」ではなく、“その後に問題が起きないこと”のほうが重要だと感じる場面は少なくありません。
AIや無料書式は便利な時代だからこそ、「どこまで自分で行い、どこから専門家の判断を取り入れるか」を見極めることが、これからの相続登記ではより重要になっていくでしょう。