後見制度の民法改正で相続登記はどう変わる?名古屋の司法書士兼宅地建物取引士がわかりやすくお話しします

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【名古屋】後見制度の民法改正で相続登記はどう変わる?司法書士兼宅建士がやさしく解説

2026/05/22

まずはじめに

 

「最近、母の物忘れがちょっと気になってきて、相続のことが心配で…」 「名古屋の実家、空き家のままになっているのだけれど、どうしたものかしら」 「相続人の中に判断能力が落ちてきた人がいて、話し合いが前に進まない」

 

こんなお悩み、最近ほんとうに増えてきたなあと感じます。 団塊の世代の方々が後期高齢者の年代に差しかかった今、「認知症」と「相続」の問題は、同じタイミングでご家庭にやってくることが多いんですね。そして、ご家族に認知症の方がいらっしゃると、どうしても避けて通れないのが「成年後見制度」です。

 

実は2026年4月3日、政府が成年後見制度を見直す「民法等の一部を改正する法律案」を閣議決定しました。今、国会で審議が進んでいるところで、2000年に今の制度がスタートしてから約26年ぶりの大きな見直しになります。これが通ると、相続登記や不動産の売却にも、けっこう大きな影響が出てくるんです。

 

そこで今回は、名古屋市中区で司法書士兼宅地建物取引士として、相続登記と不動産売買のご相談を日々お受けしている私の立場から、後見制度の改正で何がどう変わるのかを、女性の方やご高齢のご家族にも「あ、そういうことね」とわかっていただけるよう、できるだけかみ砕いてお話ししてみますね。

 

※今お話しする内容は、今の時点で公開されている情報をもとにしています。施行は2028年中の予定ですが、最終的な中身は国会の審議で確定しますので、実際にご相談されるときには、改めて最新の情報をご確認ください。なお、税金の具体的な判断は税理士さんの領域になりますので、本記事では概要のご案内にとどめています。

1.2026年の民法改正で「後見制度」が大きく変わります ―「補助」への一本化と終身制の廃止

 

これまでの成年後見制度って、ご本人の判断能力の度合いに応じて「後見」「保佐」「補助」という3つの種類に分かれていました。 ところが、閣議決定された改正案では、この3つを「補助」一本にまとめる方向で見直されます。これって、「判断能力が落ちている=何もできない」と決めつけずに、「ご本人にできることはちゃんと残して、その人らしく暮らしていただこう」という発想への大きな転換なんですね。

 

もう一つの大きなポイントが、いわゆる「終身制」の廃止です。 今の制度だと、いったん成年後見が始まったら、原則として亡くなるまでずっと続きます。「実家を売るために、しかたなく後見をつけたのだけれど、その後もずっと家庭裁判所への報告が続いて、ちょっとしんどい」というご家族の声を、私もこれまで何度もお聞きしてきました。 改正後は、家庭裁判所が「もう制度を使う必要はないですね」と認めれば、補助開始の審判を取り消したり、同意権や代理権の一部だけを取り消したりすることもできるようになる見込みです。

 

そして、補助人さんが持つ権限も、遺産分割や不動産処分など「ほんとうに必要なところ」にしぼり込まれていきます。 ご家族の目線で言いかえると、

 

・ご本人ができることは、ご本人にやっていただく ・どうしても支援が必要な部分だけ、補助人さんに関わってもらう ・必要がなくなったら、制度を終わらせることもできる

 

こんなふうに「その人に合わせて作る」オーダーメイド型の制度に近づいていきます。 当事務所が以前から大事にしてきた「お一人おひとりに合わせたオーダーメイドのサービス」という考え方とも、目指している方向はほとんど同じ。ようやく時代にも、ご家族の感覚にも合った制度になってきたなあ、というのが率直な感想です。

 

ちなみに、後見人さんの交代についても、「ご本人の利益のために特に必要がある場合」という新しい交代理由が用意される予定で、相性や生活のしやすさに応じて選び直しやすくなる見込みです。

2.改正で相続登記や不動産処分はどう影響するの? ― 名古屋の現場感覚からお話しします

 

ここからが、相続登記や名古屋の不動産でお悩みの方にとって、いちばん気になるところかもしれません。 先に結論からお伝えすると、改正後は、相続登記や相続不動産の売却が「これまでよりぐっと前に進めやすくなる場面」と、「やっぱり家庭裁判所の関与が必要な場面」とが、はっきり分かれてきます。

 

まず、相続登記との関係から整理しますね。 2024年4月から相続登記は義務化されています。原則として、相続が始まったことと、ご自身が所有権を取得したことを知った日から3年以内に登記をしないといけません。これを怠ると、10万円以下の過料が課される可能性もあります。 ところが、相続人さんの中に認知症などで判断能力が不十分な方がいらっしゃると、そのままでは遺産分割の話し合いができません。話し合いがまとまらないと、不動産は法定相続分での共有のままになり、あとで売ろうとしたときに、ものすごく動きにくくなってしまうんですね。

 

そこで登場するのが、成年後見制度というわけです。 今の制度だと、不動産処分や遺産分割のためだけに後見をつけたとしても、一度始まると終われない。これがけっこう重い選択だったんです。 改正後は、「補助」に一本化されたうえで、たとえば「この実家の遺産分割と売却に関する代理権だけ」というように、必要な場面に絞った権限設定がしやすくなる方向です。終身制も廃止されますので、必要な手続きが終わったら、そこで制度から離れる、ということも視野に入ってきます。 これって、ご相談者さんにとって、気持ちの面でも費用の面でも、後見制度をぐっと選びやすくなる、ということですよね。

 

一方で、ご本人がお住まいの居住用不動産の処分については、これまでどおり家庭裁判所の許可が必要になる見込みです。たとえば、お母さまが今お住まいの名古屋市中区のご自宅マンションを売る場合、補助人さんがついていても、家庭裁判所の許可なしに勝手に売ることはできません。 ここは、ご本人の生活の土台を守るための大事な歯止めなので、改正後も基本的にそのまま残ると考えていただいてよいと思います。

 

ここで、名古屋ならではの事情も少しだけ。 名古屋市は、中区・東区・千種区などの中心エリアと、緑区・守山区・南区などの郊外エリアでは、相続不動産の置かれた状況がずいぶん違います。中心部の区分マンションや収益ビルは、国内外の投資家による投資需要に支えられて値段が下がりにくい一方、郊外の戸建てや古い借地権付きの建物は、人口減少と空き家増加の影響を受けやすいエリアです。 この先の日本は、若い世代の人口減少と、団塊世代以降の相続発生による空き家供給増という2つの波にさらされていきます。世界的なインフレで建築資材も高くなっていて、新築住宅は普通のご家庭ではなかなか手が届かない価格帯になってきていますが、その一方で、地方や郊外の中古不動産については、資産価値を保つのがむずかしいエリアも徐々に増えてくると見込まれます。「投資用としての値段」と、「ご自宅として住むための値段」はもう別ものになってきているなあ、と肌で感じます。 こうした流れの中で、認知症の相続人を抱えたまま、相続登記も売却も先送りにしてしまうと、「気がついた時には買い手がつかない」「お子さん・お孫さん世代に負担を残してしまう」ということにもなりかねません。後見制度の改正は、こうした「動かしたいのに動かせない名古屋の不動産」を動かしやすくしてくれる、ありがたい改正だと感じています。

3.名古屋で後見と相続登記をスムーズに進めるためにご家族ができる準備 ― ご相談事例から

 

少しイメージしやすいように、当事務所にお寄せいただいたご相談事例を一つご紹介しますね(プライバシー保護のため、内容を少し変えています)。

 

【ご相談事例】 名古屋市中区にお住まいの70代の女性、Aさまからのご相談です。 「90歳の母が、名古屋市天白区の戸建てを持っているのだけれど、最近、認知症が進んで施設に入ったの。これからの介護費用のためにも、自宅を売っておきたい。ただ、父は10年前に亡くなっていて、その時にきちんと母名義への相続登記をしていなかったことに気がついて…。弟は東京にいて、相続の話し合いには協力的なのだけど、母のことが心配で動けないでいるのよ」

 

このような場合、整理しないといけない論点は3つあります。

 

まず一つ目。お父さまの相続について、お母さまと弟さまとの間で改めて遺産分割協議をして、不動産の名義をきちんと整えないといけません。でも、お母さまの判断能力が不十分だと、そもそも遺産分割協議そのものができないんです。 二つ目。その後の天白区のご自宅の売却についても、所有者であるお母さま本人の意思能力が必要なので、ご本人だけでは契約ができない可能性が高い。 三つ目。お母さまが施設にいらっしゃる間も、ご自宅は空き家になり、固定資産税や管理コストが、じわじわとご家族の負担を増やしていきます。

 

私がAさまにご案内したのは、今の制度のもとでは、まずお母さまについて家庭裁判所に成年後見等の申立てをして、後見人等が遺産分割協議に加わって相続登記を完了させ、家庭裁判所の許可を得たうえでご自宅を売る、という流れでした。 この時に大事にしているのが、「司法書士の相続登記」「宅地建物取引士の不動産売却」「金融機関へのお届出」を、別々の専門家に分けて依頼しなくてもいい、ということ。当事務所は、私自身が司法書士で、同時に宅地建物取引士として不動産売却専門会社も運営していますので、この一連の流れを一つの窓口でまとめてお引き受けできます。Aさまにも「あちこち回らなくていいから助かるわ」と言っていただけました。

 

民法改正後は、こうしたAさまのような場面でも、「お母さまについては、遺産分割と自宅売却のために必要な範囲だけ補助人をつけて、それが終わったタイミングで補助開始の審判の取消しも視野に入れる」という、もう一段きめ細やかな設計ができるようになりそうです。 これは、「後見をつけると一生続いてしまうから…」とためらってこられたご家族にとって、ほんとうに大きな朗報だと思います。

 

最後に、ご家族として今からできる準備を、いくつかお伝えしておきますね。

 

一つ目は、ご両親がお元気なうちに、名古屋の実家の登記簿(登記事項証明書)を一度取り寄せて、登記名義が誰のままになっているかを確認してみてください。亡くなったお祖父さま・お祖母さまのお名前のままになっているケース、ほんとうに少なくないんです。

 

二つ目は、判断能力がしっかりしておられるうちに、「任意後見契約」や「家族信託(民事信託)」といった事前の準備を検討してみてください。これらは法定の成年後見と違って、ご本人が「誰に・何を・どこまで任せるか」を自由に決められる制度です。改正後の補助制度とうまく組み合わせれば、ご本人のお気持ちをいちばん大事にしながら、将来の備えができます。

 

三つ目は、ご相談はできるだけ早めに、お一人で抱え込まずに、相続登記と不動産売買の両方をちゃんと理解している専門家に声をかけてみてください。法務局や家庭裁判所を相手にする後見申立て・相続登記・不動産登記は、法律系の国家資格の中では、基本的に司法書士か弁護士が担う仕事です。後見の申立てから相続登記、相続不動産の売却までを一つの線でつないで相談できる専門家を選んでおくと、結果的にご家族の時間や費用のご負担もぐっと軽くなるはずです。

まとめ

 

今回は、2026年4月3日に閣議決定されて、いま国会で審議されている民法改正案を切り口に、後見制度の見直しが相続登記や不動産処分にどんな影響を与えるのかを、名古屋市の司法書士兼宅地建物取引士の立場からお話ししました。

 

ポイントをもう一度だけ整理させてくださいね。

 

一つ目は、「後見」「保佐」「補助」の3類型が「補助」に一本化されて、いわゆる終身制も廃止される見込みだということ。 二つ目は、補助人さんの権限が、遺産分割や不動産処分など「ほんとうに必要なところ」にしぼられて、必要がなくなれば制度を終わらせることもできるようになるということ。 三つ目は、後見人さんの交代もしやすくなって、ご家族の事情に合わせた柔軟な使い方ができるようになるということ。 四つ目は、相続登記との関係では、「必要な期間だけ・必要なところだけ」後見制度を使う、という設計がしやすくなり、2024年4月にスタートした相続登記の義務化にも対応しやすくなるということ。 そして五つ目は、名古屋の不動産事情は、中心部と郊外でかなり様子が違うので、空き家化や郊外の資産価値の変化への備えは、早めにしておきたい、ということ。

 

施行は2028年中の予定ですが、最終的な内容は今後の国会審議で確定しますので、最新の動きは当センターの「相続お役立ち情報」などで、引き続きお伝えしていきますね。

 

名古屋市内とその周辺で、相続登記、相続不動産の売却、認知症のご家族にまつわる手続きでお困りの方は、どうかお一人で抱え込まずに、ごとう相続手続き相談センターまで気軽にお声がけください。 「こんな初歩的なことを聞いてもいいのかしら」というご相談こそ大歓迎です。代表司法書士兼宅地建物取引士が、ご相談者さまお一人おひとりに合わせたオーダーメイドのプライベートコンサルティングを、親切丁寧・明朗会計をモットーに、じっくりお話を伺いながらお引き受けします。

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