韓国籍の父が突然亡くなった方へ|韓国の本籍・家族関係が分からない相続登記と名古屋の不動産売却

お問い合わせはこちら

ブログ

韓国籍の父が亡くなったときの相続登記|韓国情報が分からない妻・子のための名古屋の手続き

2026/05/20

まずはじめに

お父様が亡くなった後、死亡診断書、年金、預貯金、不動産、葬儀後の手続きなどが一度に押し寄せてきます。
そのうえ、亡くなったお父様が韓国籍であった場合、「韓国の本籍を知らない」「韓国名を聞いたことがない」「家族関係証明書と言われても分からない」ということで、相続手続きが急に止まってしまうことがあります。

特に名古屋では、戦前・戦後から日本で暮らしてきた在日韓国人の方、特別永住者の方、そのご家族から、相続登記や相続不動産の売却についてご相談を受けることがあります。家では日本名・通称名だけで生活し、子どもや配偶者に韓国の登録基準地、韓国名、親族関係を詳しく伝えていないケースも珍しくありません。

しかし、韓国の情報が分からないからといって、相続登記や不動産売却ができないわけではありません。
大切なのは、最初から「日本の戸籍だけで足りるはず」と思い込まず、韓国籍の相続として、必要な資料を順番に確認することです。

2024年4月1日から相続登記は義務化され、不動産を相続で取得したことを知った日から原則3年以内に登記をする必要があります。正当な理由なく放置した場合、過料の対象となる可能性があります。
名古屋市内に自宅、空き家、マンション、土地がある場合は、相続登記だけでなく、その後に「住むのか」「貸すのか」「売却するのか」まで含めて考えることが大切です。

1 韓国籍の父の相続で最初につまずくのは「韓国の家族関係が分からない」ことです

韓国籍のお父様が亡くなった場合、相続手続きの最初の壁になるのは、預貯金の解約や不動産の名義変更そのものではなく、実は「お父様の韓国側の身分関係をどのように証明するか」という点です。

日本で生まれ、日本で働き、日本で家族を持ち、名古屋で長年暮らしていたお父様であっても、国籍が韓国籍である以上、相続人を確認するためには、日本の戸籍だけでは足りないことがあります。
日本人の相続であれば、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍を集めることで、配偶者、子ども、親、兄弟姉妹などの相続関係を確認できます。ところが、韓国籍の方は日本の戸籍に入っていないため、日本の役所で取得できる住民票の除票や死亡届の記載だけでは、法務局や金融機関に対して「相続人はこの人たちだけです」と十分に説明できない場合があります。

ここで必要になるのが、韓国の家族関係登録簿や除籍謄本などの韓国側の証明書です。
韓国では、現在、日本の戸籍に近いものとして、基本証明書、家族関係証明書、婚姻関係証明書、入養関係証明書、親養子入養関係証明書などが使われています。また、2007年以前の身分関係を確認するために、古い除籍謄本が必要になることもあります。

しかし、ご相談の現場では、ここで多くのご家族が困ってしまいます。

「父が韓国籍だったことは知っていましたが、韓国の本籍地は聞いたことがありません」
「家ではずっと日本名で生活していたので、韓国名が分かりません」
「父の親や兄弟の話をほとんど聞いたことがなく、韓国に親族がいるのかも分かりません」
「母も高齢で、昔のことを聞いてもはっきり思い出せません」
「法務局に相談したら韓国の書類が必要と言われましたが、何を集めればよいのか分かりません」

このような不安は、決して特別なものではありません。
在日韓国人の方の中には、日本での生活が長く、日常生活では通称名を使い、韓国の登録基準地や韓国名、親族関係について、配偶者や子どもに詳しく話していない方も少なくありません。特に、昭和の時代から名古屋で生活してきた方の場合、家族の中では「お父さん」「おじいちゃん」としての姿が中心で、法律上の国籍や韓国側の身分登録については、家族もほとんど意識しないまま年月が過ぎていることがあります。

たとえば、次のようなケースがあります。

名古屋市内に自宅を持つ韓国籍のお父様が突然亡くなりました。
お母様と子どもたちは、葬儀後に預金や不動産の手続きを始めましたが、金融機関から「韓国の家族関係証明書を提出してください」と言われました。
ところが、家族が分かるのは、お父様の日本での通称名、生年月日、住所だけです。韓国名も、登録基準地も、韓国に親族がいるかどうかも分かりません。自宅の権利証や古い書類を探しても、すぐには手がかりが見つかりませんでした。

このような場合でも、相続手続きを進める方法がないわけではありません。
まずは、日本側に残っている資料から手がかりを探していきます。具体的には、住民票の除票、死亡届の記載事項証明書、特別永住者証明書、古い外国人登録証、年金関係書類、健康保険関係の書類、パスポート、不動産の権利証、登記済証、登記識別情報通知、過去の売買契約書、固定資産税の通知書、古い戸籍関係の写し、親族が保管していた韓国書類などです。

これらの資料の中に、韓国名、国籍、生年月日、登録基準地、父母の氏名、過去の住所、外国人登録番号などの手がかりが残っていることがあります。
一つひとつの書類だけを見ると大きな意味がないように思えても、複数の資料を突き合わせることで、韓国側の証明書取得につながる場合があります。

ここで注意したいのは、ご家族の記憶だけで相続人を判断してしまわないことです。

「父は一人っ子だと聞いていた」
「前の結婚はないと言っていた」
「韓国には親族はいないはず」
「子どもは自分たちだけだと思う」

このような話は、手続きの出発点としては大切です。
しかし、相続登記では、法務局に対して、客観的な証明書をもとに相続関係を説明する必要があります。韓国側の婚姻関係、認知、養子縁組、前婚の有無、子の有無などが、相続人の範囲に関係することもあります。ご家族にとっては聞きづらい内容であっても、相続登記や不動産売却を正しく進めるためには、確認を避けて通ることはできません。

また、韓国の証明書を取得できたとしても、それで終わりではありません。
韓国の証明書は韓国語で作成されているため、日本の法務局に提出する際には、通常、日本語訳が必要になります。さらに、証明書の内容を日本の相続登記の手続きに合わせて整理し、誰が相続人なのか、どのような相続分になるのか、遺産分割協議をする場合は誰が協議に参加する必要があるのかを確認しなければなりません。

特に名古屋の相続不動産を売却したい場合は、この確認がとても重要です。
不動産を売却するには、原則として先に相続登記を済ませ、亡くなったお父様名義の不動産を相続人名義に変更する必要があります。相続人の確定が不十分なまま売却の話を進めてしまうと、買主が見つかった後で登記ができない、契約予定日までに書類が整わない、相続人の一人から同意が得られない、という問題が起きることがあります。

相続手続きでは、「とりあえず売りに出す」「とりあえず遺産分割協議書を作る」という進め方が、かえって遠回りになることがあります。
韓国籍のお父様の相続では、最初に次の点を整理することが大切です。

お父様の韓国名が分かるか。
登録基準地または旧本籍地の手がかりがあるか。
韓国の家族関係登録簿や除籍謄本を取得できるか。
日本側の住民票や死亡届と韓国側の証明書の人物が同一人であると説明できるか。
配偶者や子ども以外に相続関係に影響する人がいないか。
韓国語の証明書を日本語に訳し、登記で使える形にできるか。
名古屋の不動産について、相続登記後に売却するのか、保有するのか、管理をどうするのか。

韓国籍の相続でご家族が一番不安になるのは、「知らないことを責められるのではないか」という点かもしれません。
しかし、実際には、妻や子が韓国の登録基準地や韓国名を知らないことは珍しくありません。お父様が生前に話していなければ、残されたご家族が分からないのは当然です。

大切なのは、分からないことをそのままにせず、今ある資料から順番に確認することです。
相続登記や相続不動産の売却は、感情の整理がつかない時期に進めなければならないことも多く、ご家族だけで抱えると負担が大きくなりがちです。

韓国籍のお父様の相続では、「韓国の情報が分からないから手続きができない」と考えるのではなく、「分からない情報をどの資料からたどるか」という視点で進めることが大切です。
その最初の整理ができるかどうかで、その後の相続登記、預貯金の手続き、名古屋の不動産売却までの流れが大きく変わります。

2 韓国籍の父の相続では、日本法だけでなく韓国法の確認が必要になることがあります

韓国籍のお父様が亡くなった場合、ご家族が最初に感じる疑問の一つが、「日本に住んでいたのだから、日本の相続として進めればよいのではないか」という点です。

実際、亡くなった場所も日本、住んでいた場所も名古屋、財産も名古屋市内の自宅や日本の預貯金だけ、配偶者や子どもも日本で生活している、というケースは多くあります。
このような場合、ご家族の感覚としては「普通の日本の相続」と考えるのが自然です。

しかし、法律上は少し注意が必要です。
相続では、亡くなった方の国籍が大きな意味を持つことがあります。被相続人であるお父様が韓国籍であった場合、相続人の範囲や相続分を考えるうえで、韓国法を確認しなければならない場面があります。

日本の相続登記をするのだから、日本の法務局に出す手続きだけを考えればよい、というわけではありません。
名古屋市内の土地や建物の名義変更をする場合でも、その前提として、「誰が相続人なのか」「誰が遺産分割協議に参加すべきなのか」「配偶者と子どもの相続分はどのように考えるのか」を正しく確認する必要があります。

ここを誤ると、後から手続き全体がやり直しになることがあります。

たとえば、お父様が韓国籍で、お母様が日本国籍、子どもが2人いるケースを考えてみます。
お父様は名古屋市内で長年生活し、韓国には財産がありません。自宅も預貯金も日本にあります。ご家族は、「母と子ども2人で話し合えばよい」と考えます。

もちろん、多くの場合、その方向で手続きを検討することになります。
しかし、確認すべきことはそれだけではありません。

韓国側の身分関係資料に、前婚の記録はないか。
他に子どもはいないか。
認知された子はいないか。
養子縁組の記録はないか。
婚姻関係に日本側の認識と違いはないか。
死亡時点の国籍は本当に韓国籍でよいか。
帰化していないか。
遺言書はないか。
その遺言書で準拠法に関する指定がされていないか。

このような点を確認しないまま、「家族で分かっている範囲」だけで遺産分割協議書を作ってしまうと、法務局や金融機関で追加資料を求められることがあります。
また、相続不動産を売却する段階になって、買主や仲介業者、金融機関、司法書士の確認で問題が見つかると、売買契約の日程に影響することもあります。

特に不動産売却では、時間の遅れが実害につながることがあります。
買主が住宅ローンを利用する場合、融資実行日や決済日が決まっています。相続登記が間に合わなければ、売却代金を受け取ることも、所有権を買主に移すこともできません。
そのため、韓国籍のお父様の相続では、売却の話を具体的に進める前に、相続関係と必要書類の見通しを立てておくことが大切です。

ここでよくある誤解があります。

「父はずっと日本にいたので、韓国法は関係ないと思っていました」
「韓国語が分からないので、韓国の書類は不要だと思っていました」
「母と子ども全員が納得しているので、それだけで登記できると思っていました」
「名古屋の不動産だから、日本の戸籍だけで足りると思っていました」

このように考えてしまうのは無理もありません。
一般の方にとって、相続準拠法や外国籍の相続という考え方は、日常生活で触れることがほとんどないからです。

ただ、相続登記は、家族の合意だけで完了する手続きではありません。
法務局に対して、亡くなった方と相続人との関係を証明し、登記名義を移す根拠を説明する手続きです。
そのため、被相続人が韓国籍である場合には、韓国側の証明書と韓国法の確認が重要になります。

もちろん、すべてのケースで難しい争いになるわけではありません。
配偶者と子どもだけで相続人が明確な場合、必要書類が比較的スムーズに集まる場合もあります。
一方で、次のような事情があると、より慎重な確認が必要になります。

お父様が再婚である。
前妻との間に子どもがいる可能性がある。
韓国側の親族関係を家族がほとんど知らない。
韓国名や登録基準地が分からない。
古い除籍謄本の記載が複雑である。
相続人の一部が韓国籍である。
相続人の一部が海外に住んでいる。
お父様が生前に帰化申請をした可能性がある。
遺言書らしきものが見つかっている。
名古屋の不動産を早めに売却したい。

このような場合は、単に書類を集めるだけではなく、相続関係を法律的に整理する必要があります。

たとえば、亡くなったお父様が韓国籍で、名古屋市中村区に自宅を所有していたケースを考えてみます。
お母様と長男、長女の3人は日本に住んでおり、家族の話し合いでは「お母さんが自宅を相続し、将来施設に入るときに売却する」という方針になりました。
ところが、韓国の証明書を確認したところ、お父様に前婚歴があり、前婚の子の存在を確認する必要が出てきました。

このような場合、現在の家族だけで遺産分割協議をしても、手続きとしては不十分になる可能性があります。
相続人となる人が他にもいる場合、その人を除いて作成した遺産分割協議書では、相続登記ができないことがあるからです。

ご家族にとっては、突然知らなかった親族の存在を確認しなければならないことになり、精神的な負担も大きいと思います。
しかし、不動産の名義を正しく変更し、将来の売却や管理でトラブルを残さないためには、ここを曖昧にすることはできません。

また、韓国籍の相続では、「日本国籍の相続人」と「韓国籍の相続人」が混在することもあります。
たとえば、お父様は韓国籍のまま亡くなり、お母様は日本国籍、子どもの一人は日本に帰化しており、もう一人は韓国籍のままというケースです。
この場合、相続人それぞれの本人確認資料、住所証明書、印鑑証明書、署名証明書などの扱いを、実際の登記手続きに合わせて確認する必要があります。

さらに、相続人が日本国外に住んでいる場合は、書類の取得や署名押印の方法にも注意が必要です。
日本に住んでいる相続人であれば印鑑証明書を使えることが多いですが、海外在住者の場合は、在外公館の署名証明など別の方法を検討することがあります。
このように、国籍、住所、居住国によって、必要書類や進め方が変わります。

名古屋の相続不動産を売却する場合、この確認はさらに重要です。
売却代金を相続人で分ける予定であれば、誰がどの割合で取得するのか、売却前に名義を誰にするのか、売却後の代金分配をどのように行うのかを、遺産分割協議書の中で整理しておく必要があります。

たとえば、相続人全員で共有名義にしてから売却する方法もあります。
一人の相続人が代表して不動産を取得し、売却代金を他の相続人に分配する方法を検討することもあります。
ただし、どの方法がよいかは、不動産の内容、相続人の関係、売却予定、税務上の問題、将来のトラブル防止などによって変わります。

ここで安易に進めると、思わぬ問題が生じることがあります。

共有名義にした後、一人の相続人が売却に反対する。
売却代金の分配方法を決めていなかったため、後で揉める。
相続登記後に別の相続人の存在が分かる。
韓国語書類の訳文に不備があり、法務局から補正を求められる。
売買契約の決済日までに登記が完了しない。
相続人の一人が高齢で、手続き中に判断能力の問題が出てくる。

韓国籍のお父様の相続では、法律上の確認と実際の不動産取引の段取りを分けて考えることはできません。
相続登記だけを見ればよいように思えても、その後に名古屋の不動産を売却するのであれば、売買契約、決済、買主への所有権移転、固定資産税の精算、残置物処分、建物解体、境界確認など、実務上の流れまで見通しておく必要があります。

特に最近は、相続登記の義務化により、相続した不動産を長期間そのままにしておくことへの意識が高まっています。
以前であれば、「いつか名義を変えればよい」「売るときに考えればよい」と放置されていた不動産も、今後は早めに相続登記を行い、管理や処分の方針を決めることが求められます。

名古屋市内の不動産でも、エリアや物件状態によって売却のしやすさは大きく異なります。
駅に近いマンションや整形地の土地であれば比較的売却しやすいこともありますが、古い空き家、道路との関係が複雑な土地、境界が不明な土地、再建築に制限がある物件では、売却前の確認に時間がかかることがあります。

そのため、韓国籍のお父様の相続では、次のような順番で考えると整理しやすくなります。

まず、お父様の国籍、韓国名、登録基準地、死亡時の住所を確認します。
次に、日本側と韓国側の証明書を集め、相続人を確定します。
そのうえで、韓国法を踏まえて相続分や遺産分割協議の参加者を確認します。
名古屋の不動産について、登記事項証明書、固定資産評価証明書、名寄帳、公図、測量図などを確認します。
最後に、相続登記をするだけでよいのか、売却を前提に登記内容を検討するのかを決めます。

この流れを最初に作っておくと、ご家族の不安はかなり軽くなります。
反対に、韓国法や韓国書類の確認を後回しにしてしまうと、手続きの途中で何度も立ち止まることになります。

韓国籍の相続で大切なのは、「難しいから進められない」と考えることではありません。
「日本法だけで考えてよいのか」「韓国法の確認が必要なのか」「どの書類で相続人を証明するのか」を、一つずつ確認することです。

お父様が韓国籍であっても、残されたご家族が韓国の法律に詳しい必要はありません。
韓国語が読めなくても、韓国の登録制度を知らなくても、当然です。
むしろ、分からない状態から始まるのが普通です。

だからこそ、相続登記と不動産売却を別々に考えず、最初の段階で全体像を整理することが重要になります。
名古屋の不動産を守るのか、売却するのか、相続人でどのように分けるのか。
その前提として、韓国籍のお父様の相続をどの法律とどの証明書で説明するのか。

この順番を間違えなければ、韓国の情報を十分に聞かされていなかった妻や子であっても、相続登記と不動産の整理を前に進めることができます。

3 名古屋の相続不動産は、登記後に「売る・持つ・貸す」を早めに判断することが大切です

韓国籍のお父様が亡くなった後、相続人を確認し、韓国の書類を集め、相続登記の準備が整ってくると、ご家族の中で次に問題になるのが「この不動産をこれからどうするのか」という点です。

相続登記は、不動産の名義を亡くなったお父様から相続人へ変更するための手続きです。
しかし、実際の相続では、名義を変えただけで問題が終わるわけではありません。

名古屋市内の実家に誰かが住むのか。
空き家のまま管理するのか。
賃貸に出せる状態なのか。
売却して現金で分けるのか。
建物を解体して土地として売るのか。
相続人の一人が取得し、他の相続人に代償金を支払うのか。

このように、相続登記の後には、不動産をどう扱うかという現実的な判断が必要になります。

特に、お父様が韓国籍で、妻や子が韓国の情報を十分に聞かされていなかったケースでは、相続登記にたどり着くまでに時間と気力を使ってしまうことがあります。
韓国の家族関係証明書や除籍謄本を集め、翻訳を用意し、相続人を確認し、遺産分割協議書を作成するだけでも、ご家族にとっては大きな負担です。

そのため、相続登記が終わると、「とりあえず名義変更できたから、後のことは落ち着いてから考えよう」となりがちです。
しかし、不動産は預貯金と違い、そのまま置いておくだけでも費用と管理責任が発生します。

固定資産税は毎年かかります。
マンションであれば、管理費や修繕積立金が続きます。
戸建てであれば、庭木、草、雨漏り、シロアリ、台風被害、近隣からの苦情、防犯上の問題が出てくることがあります。
空き家期間が長くなれば、建物の傷みも早くなります。

最初は「思い出のある家だから残したい」と考えていても、実際に管理を続けてみると、負担の大きさに気づくことがあります。

たとえば、次のようなご相談があります。

韓国籍のお父様が名古屋市内の戸建てを所有したまま亡くなりました。
お母様は高齢で、すでに子どもの近くの施設に入っています。
長男は東京、長女は大阪で暮らしており、名古屋の実家に戻る予定はありません。
最初は「父が大切にしていた家だから、しばらく残そう」という話になりました。

ところが、数か月後には庭の草が伸び、近所の方から連絡が入りました。
台風の後には屋根の一部が傷んでいるのではないかと心配になり、長男が新幹線で名古屋まで確認に来ました。
固定資産税の通知も届き、火災保険の更新も必要になりました。
誰も住まない家のために、時間、交通費、管理費用がかかり続けることが分かり、最終的には売却を検討することになりました。

このようなケースは、決して珍しくありません。

名古屋は大都市であり、一定の不動産需要があります。
しかし、名古屋市内であればどこでも同じように高く売れる、というわけではありません。
駅からの距離、周辺の生活施設、道路付け、土地の形、建物の状態、築年数、駐車場の有無、ハザード情報、学校区、再建築の可否などによって、売却のしやすさは大きく変わります。

また、名古屋の不動産市場を見るときは、表面的な価格上昇だけで判断しないことも大切です。
近年は建築資材や人件費の上昇により、新築住宅やマンションの価格が高くなっています。
その一方で、一般のご家庭の収入が同じように増えているわけではなく、若い世代が住宅を購入しにくくなっている面もあります。

さらに、日本全体では人口減少が続いており、若年層の人口は将来的に減っていきます。
一方で、団塊世代を中心とする高齢者の相続が増え、空き家や相続不動産の供給が増えることも予想されます。
つまり、今は売れる不動産であっても、将来も同じ条件で売れるとは限りません。

特に、地方や郊外の不動産では、今後、資産価値を保ちにくいエリアが増える可能性があります。
名古屋市内でも、交通利便性が高い地域、商業施設や病院が近い地域、再開発の影響を受ける地域は評価されやすい一方、駅から遠い古い住宅地、道路が狭い地域、空き家が増えている地域では、売却に時間がかかることも考えられます。

不動産価格を見るときには、「投資用」と「実需用」を分けて考える必要があります。
投資用物件は、国内外の投資家が利回りや将来性を見て購入するものです。
一方、実需用の住宅は、実際に家族が住むために購入するものです。

名古屋駅周辺や栄、金山、千種、東区の一部など、投資や再開発の視点で注目されるエリアもあります。
しかし、相続で受け継ぐ実家の多くは、投資家向けの収益物件ではなく、一般の買主が住まいとして検討する不動産です。
そのため、投資用不動産の価格上昇ニュースだけを見て、「うちの実家も高く売れるはず」と考えるのは危険です。

実際の売却では、買主が住宅ローンを組めるか、建物をそのまま使えるか、リフォーム費用がどれくらいかかるか、解体して土地として購入する方がよいか、隣地との境界がはっきりしているかなど、かなり現実的な判断がされます。

相続した不動産を売るかどうか迷う場合は、感情面と資産面を分けて考えることが大切です。

思い出がある家だから残したい。
親が苦労して買った土地だから手放したくない。
いつか子どもや孫が使うかもしれない。
売ってしまうと親に申し訳ない気がする。

このようなお気持ちは自然なものです。
特に、韓国籍のお父様が日本で苦労して築いた自宅であれば、ご家族にとって単なる不動産ではなく、家族の歴史そのものだと思います。

一方で、不動産は持っているだけで管理責任が発生します。
誰も住まない家を長期間残すことが、本当にご家族のためになるのか。
相続人の一人だけが管理を負担していないか。
将来、さらに次の相続が起きたときに、権利関係が複雑にならないか。
建物が老朽化して、近隣に迷惑をかける可能性はないか。
売却できる時期を逃してしまわないか。

こうした点も、冷静に確認する必要があります。

たとえば、相続人が母と子ども2人の場合、最初は母が自宅を相続することがあります。
お母様がその家に住み続けるのであれば、それは自然な選択です。
しかし、お母様がすでに施設に入っている場合や、今後自宅に戻る可能性が低い場合は、母名義にしてから売却するのか、子どもを含めた相続人全員で共有にして売却するのか、遺産分割協議の段階で検討しておいた方がよいことがあります。

何となく共有名義にすると、後で売却するときに相続人全員の協力が必要になります。
共有者の一人が売却に反対した場合、話が進まなくなります。
共有者の一人が認知症になった場合、成年後見制度の問題が出てくることもあります。
共有者の一人が亡くなると、その人の相続人が新たに関係者となり、さらに手続きが複雑になります。

相続不動産では、「とりあえず共有」は慎重に考えた方がよい選択です。
もちろん、共有が適している場合もあります。
しかし、売却を前提にしているのであれば、誰が不動産を取得し、売却代金をどのように分配するのかを、遺産分割協議の段階で整理しておくことが重要です。

韓国籍のお父様の相続では、この点がさらに大切になります。
相続人の一部が韓国籍であったり、海外に住んでいたり、韓国の証明書の取得に時間がかかったりする場合、後から再度全員の協力を得ることが簡単ではないからです。

相続登記の段階で不動産の出口を考えておくと、売却までの流れがスムーズになります。

たとえば、売却を予定している場合には、登記前に次のような点を確認します。

相続人全員が売却に同意しているか。
売却代金の分け方について認識が一致しているか。
誰の名義で相続登記をするのがよいか。
売却に必要な印鑑証明書や本人確認書類を用意できるか。
韓国籍の相続人や海外在住の相続人がいる場合、署名証明等の準備が必要か。
建物内の残置物を誰が片付けるか。
境界確認や測量が必要か。
建物をそのまま売るのか、解体して売るのか。
譲渡所得税など税務上の確認が必要か。

このように、相続登記と売却準備はつながっています。

特に名古屋市内の古い戸建てでは、境界がはっきりしていないことがあります。
昔から住んでいる家では、隣地との間にブロック塀があり、親同士は何となく了解していたけれど、正確な境界確認書はないということもあります。
売却時には、買主から境界の明示を求められることがあります。
土地の面積や越境物の有無によって、売却価格や契約条件に影響することもあります。

また、建物が古い場合、買主がそのまま住むのではなく、解体前提で購入することもあります。
その場合、解体費用を売主が負担するのか、買主が負担するのか、売買価格にどう反映するのかを検討する必要があります。
相続人が「古家付き土地」として売るのか、「更地渡し」とするのかによって、手元に残る金額も変わります。

マンションの場合も注意が必要です。
名古屋市内のマンションは、駅近や管理状態のよい物件であれば需要がある一方、築年数が古く、修繕積立金が上がっている物件、管理組合の状況に不安がある物件では、売却前に資料確認が必要です。
管理費や修繕積立金の滞納がないか、リフォーム履歴はあるか、管理規約上の制限はないかなども確認します。

相続した不動産を貸すという選択肢もあります。
ただし、賃貸に出す場合も、安易に考えることはできません。
古い建物を貸すには修繕費がかかります。
借主が入れば家賃収入は得られますが、退去、修理、滞納、管理会社への委託、税務申告などの手間も発生します。
将来売却したいときに、賃借人がいることで売却方法が変わることもあります。

「売ればよかったのか、貸せばよかったのか」という判断は、単純な損得だけでは決められません。
相続人の年齢、住んでいる場所、資金状況、家族関係、不動産の状態、今後の管理能力によって、適した選択は変わります。

名古屋の相続不動産では、次のような考え方が現実的です。

相続人の誰かが住む予定があるなら、維持費や将来の名義を含めて検討する。
誰も住まないなら、早めに売却査定や管理方法を確認する。
貸す場合は、修繕費と将来の売却のしやすさを考える。
売却する場合は、相続登記、境界、残置物、税金、解体費用を先に整理する。
思い出を残したい場合でも、写真や家財の整理を行い、不動産そのものを残すべきか冷静に判断する。

韓国籍のお父様が残した不動産は、ご家族にとって特別な意味を持つことがあります。
異国である日本で生活の基盤を作り、名古屋で家を持ち、家族を育てたという事実は、簡単にお金に換えられるものではありません。
しかし、その思い出を大切にすることと、使われない不動産を将来にわたって抱え続けることは、必ずしも同じではありません。

むしろ、きちんと相続登記を行い、必要な整理をしたうえで売却し、その代金をお母様の生活費や施設費用、子どもたちの将来のために使うことが、お父様の残した財産を生かす方法になることもあります。

最近は、相続した実家を空き家にしたままにせず、早めに整理したいという相談が増えています。
背景には、相続登記の義務化だけでなく、空き家管理の負担、高齢の相続人の増加、建物老朽化への不安、不動産市場の将来への不透明感があります。

特に、妻が高齢で、子どもが名古屋を離れている場合、相続した不動産を長期間持ち続けることは現実的でないことがあります。
相続人が元気なうちに話し合い、登記と売却の方針を決めておくことが、後のトラブル防止につながります。

司法書士兼宅地建物取引士の立場から見ると、相続不動産の問題は、登記だけでも、不動産売買だけでも解決しきれないことがあります。
登記の専門知識がなければ、誰の名義にすべきか、どのような遺産分割協議書にすべきかを判断しにくいことがあります。
不動産取引の知識がなければ、その登記方法が将来の売却に適しているか、売却時にどのような問題が出るかを見落とすことがあります。

相続登記と不動産売却を一体で考えることにより、ご家族にとって無理のない出口を選びやすくなります。

たとえば、名古屋市内の不動産を売却する予定がある場合、単に相続人全員の共有名義にするのではなく、売却実務や税務上の確認も踏まえて、どのような形で登記するのがよいかを検討します。
また、売却前に権利証が見つからない場合、登記識別情報がない場合、住所変更登記が必要な場合、抵当権が残っている場合など、登記上の問題も同時に確認します。

韓国籍のお父様の相続では、書類がそろうまでに時間がかかることがあります。
だからこそ、書類収集を始める段階で、不動産の方針も並行して考えておくことが大切です。

「韓国の書類がそろってから売却を考える」のではなく、
「韓国の書類を集めながら、不動産の売却可能性も調べる」
という進め方の方が、時間を有効に使えます。

不動産会社に査定を依頼する場合も、相続登記が未了であること、被相続人が韓国籍であること、相続人が誰になるか確認中であることを正しく伝えておく必要があります。
相続登記の見通しがないまま高い査定額だけを聞いても、実際に売却できる状態でなければ意味がありません。
逆に、登記と売却を同時に見通しておけば、売買契約や決済の時期を現実的に考えることができます。

名古屋の不動産は、場所によってはまだ十分な需要があります。
しかし、将来の人口動態や空き家増加を考えると、すべての不動産がいつまでも資産価値を保つとは限りません。
特に、誰も住まない家を「とりあえず置いておく」ことは、将来の相続人に負担を先送りすることにもなります。

韓国籍のお父様が残した不動産をどうするかは、ご家族にとって簡単な決断ではありません。
ただ、決めないまま時間が過ぎると、固定資産税、管理、老朽化、相続人の高齢化、次の相続という形で、問題が少しずつ大きくなっていきます。

相続登記は、名義を変えるための手続きです。
しかし、本当に大切なのは、その名義変更の先にあるご家族の生活と資産の整理です。

売るのか。
持つのか。
貸すのか。
誰が管理するのか。
いつまでに決めるのか。
売却代金をどのように分けるのか。
お母様の生活費や介護費用にどう活用するのか。

これらを早めに話し合うことで、相続不動産は「重荷」ではなく、これからの生活を支える財産として整理しやすくなります。

韓国籍のお父様の相続で、韓国の情報が分からないまま始まった手続きであっても、一つずつ確認すれば道筋は見えてきます。
相続人を確定し、相続登記を行い、名古屋の不動産をどう扱うかを考える。
この流れを丁寧に進めることが、ご家族にとって一番安心できる方法です。

まとめ

韓国籍のお父様が突然亡くなり、残された妻や子が韓国の情報をほとんど聞かされていない場合、相続手続きは最初から不安の多いものになります。
葬儀が終わったばかりで気持ちの整理もつかない中、金融機関、不動産、年金、保険、役所の手続きが次々に出てきます。そのうえで、「韓国の家族関係証明書が必要です」「登録基準地は分かりますか」「韓国名は何ですか」と言われると、多くの方は戸惑ってしまいます。

しかし、韓国の情報を知らないことは、決して特別なことではありません。
在日韓国人の方の中には、日本で生まれ、日本で育ち、日本名・通称名で長く生活し、家庭内でも韓国の登録基準地や韓国名、韓国側の親族関係について詳しく話してこなかった方が少なくありません。妻や子がそれらを知らないのは、むしろ自然なことです。

大切なのは、「分からないから手続きができない」と考えるのではなく、「今ある資料から、分からない情報を順番にたどる」という考え方です。
住民票の除票、死亡届、特別永住者証明書、古い外国人登録証、年金書類、パスポート、不動産の権利証、固定資産税の通知書など、身近な資料の中に、韓国名や登録基準地につながる手がかりが残っていることがあります。

韓国籍のお父様の相続では、日本の戸籍だけでなく、韓国の家族関係登録簿や除籍謄本などを確認し、誰が相続人になるのかを正確に整理する必要があります。
また、被相続人が韓国籍である以上、相続人の範囲や相続分について、韓国法の確認が必要になることもあります。名古屋の不動産だから日本の手続きだけでよい、という単純な話ではない点に注意が必要です。

さらに、名古屋市内に自宅、土地、マンションなどの相続不動産がある場合は、相続登記だけで終わりではありません。
その不動産に誰かが住むのか、空き家のまま管理するのか、賃貸に出すのか、売却して現金で分けるのかを、早めに考える必要があります。不動産は持っているだけでも固定資産税、管理費、修繕費、近隣対応などの負担が発生します。相続人が名古屋を離れて暮らしている場合は、空き家管理そのものが大きな負担になることもあります。

相続登記が義務化された現在、名義変更を長期間放置することはおすすめできません。
時間が経つほど、相続人が高齢になったり、次の相続が発生したり、連絡を取るべき人が増えたりして、手続きが複雑になることがあります。特に韓国籍の相続では、書類取得や翻訳に時間がかかることもあるため、早めに全体の見通しを立てることが大切です。

韓国の本籍地が分からない。
韓国名を聞いたことがない。
父の韓国側の親族関係が分からない。
相続人に韓国籍の人がいる。
名古屋の実家を売却したいが、相続登記が終わっていない。

このような場合でも、最初からすべてを分かっている必要はありません。
必要なのは、現在分かっている情報と手元にある資料を整理し、韓国側の証明書、日本側の証明書、不動産の資料、相続人の意向を一つずつ確認していくことです。

ごとう司法書士事務所では、司法書士として相続登記を行うだけでなく、宅地建物取引士として、名古屋の相続不動産を売却するか、保有するか、どのように整理するかという点まで含めてご相談を承っています。
相続登記と不動産売却を別々の手続きとして考えるのではなく、ご家族の事情、費用、今後の生活、資産の残し方に合わせて、無理のない進め方を一緒に整理します。

韓国籍のお父様の相続は、一般の方にとって分かりにくい手続きです。
だからこそ、分からないことを責める必要はありません。
まずは、今ある資料から確認を始め、名古屋の不動産とご家族のこれからを守るために、相続登記と不動産整理の道筋を早めに整えていくことが大切です。

当店でご利用いただける電子決済のご案内

下記よりお選びいただけます。