相続した貸家や貸地はどうすればよいのか?【名古屋のごとう司法書士事務所】
2020/12/17
1 貸地と貸家は相続でどうなるのか?
人に貸している土地や建物がある場合、相続が発生しても基本的には法的な部分は何ら変わりません。
従前どおりの賃貸借契約関係が続きます。
貸主が亡くなった場合、貸主の立場と貸地や貸家を相続します。
相続ですから、そのままを丸ごと承継します。
つまり、相続により相続人は突然大家さんの立場になるのです。
貸主と借主の間に管理会社が入っている場合は、その届出が必要でしょう。
また、管理会社が入っているか否かにかかわらず、相続後の借主の賃料の振込先などを借主に伝える必要があります。通常は書面で通知することが多いでしょう。
相続人は、貸主ですから、賃貸借契約に基づき貸主の責任を承継します。土地や家に何か不具合があれば修繕等をして借主が利用できる状態にしなくてはいけません。場合によっては費用がかかるでしょう。
また、このような収益物件は、入ってくる賃料だけで成り立っている場合ばかりではありません。銀行からローンをしている場合もあります。不動産に銀行の抵当権などの担保権がついているかもしれません。担保権がついていても人に貸すこと自体には何ら問題はありません。
しかし、相続は、債務も承継します。つまり、銀行のローンも承継するのです。この点は銀行を協議をする必要があるでしょう。住宅ローンであれば、団体信用生命保険で亡くなった後の残債はゼロにできるでしょうが、収益物件の場合は別です。
生前、被相続人から収益物件の内情を知らされていない場合、賃料収入とローンの確認を早い段階でする方がよいでしょう。
2 賃貸借契約はどうすべきか?
先に説明した通り、賃貸借関係は、被相続人から相続人にそのまま承継されます。
そこで、一つ問題になることがあります。
①賃貸借契約の内容が貸主に不利になっている又は②賃貸借契約を解約したい場合です。
賃貸借契約の内容を変更したい
①の賃貸借契約の内容が不利とは、例えば、賃料が著しく低い場合です。
昔の賃貸借契約は、現行の借地借家法ではなく、旧法の借地法や借家法の適用を受ける契約である可能性があります。
実は、現在の法律である借地借家法の方が貸主にとっては全体的に有利な点が多いと言われています。
昔のお金の価値のままの賃料でずっとやってきたケースも意外に多いのです。何世代にもわたって貸地に自分の家を建てて住み続ける借主の方はお見えです。人のいい地主さんはお金に困っていないこともあり、賃料を上げることを言い出せずにそのままにしていることもあるようです。
現代の感覚では、そのエリアの賃料相場に合わせて賃料を上げることは当然の流れのように思えますが、自動的に賃料を上げることはできません。まずは、賃貸借契約書にどのように規定されているかです。しかし、昔の賃貸借契約書は、手書きのものやひな形を使っていても内容がよく考えられていないものも多く、よくチェックをする必要があります。
いくら賃貸借期間が定められていても、基本的には更新されます。更新を拒絶するには貸主の更新拒絶の理由が必要です。単なる自己都合では更新拒絶はできません。原則は、借主保護の観点で法律が定めています。それを無視して、一方的に賃貸賃料増額や賃貸借契約更新拒絶をしても、それは無効になる可能性があります。
いずれにしても借主と話し合いで賃料の合意してもらうか、裁判で争う形になるでしょう。
賃貸借契約の解除
②の賃貸借契約の解除は、さらに難易度が上がります。
上記のとおり、賃貸借契約は更新されることが多く、終わりがありません。旧法の借地法や借家法の適用がある賃貸借契約であれば、現行の借地借家法の適用を受ける契約に変更したり、賃料アップと安く済み続けようとする借主との駆け引きの中で、賃貸借契約に期限を設ける定期賃貸借契約をする代わりに賃料を据え置きにするなど、提案方法はいろいろあります。
いずれにしても、トラブルや裁判に発展しやすい事例でしょう。
借りている方は、自分の住んでいる家の存続がかかっていますから、本気で抵抗してくる可能性が高いからです。
人に貸している不動産を相続する場合は、収益物件だからと安心していると、この点を見落としてしまいます。十分注意して下さい。
3 貸したままで売れるのか?
結論としては、売れます。
前述のとおり、面倒な賃貸借関係の解消が難しく、しかし早く面倒から抜けたいため、賃貸したままの状態で売ってしまいたいと考える方は多いです。中には、賃貸借契約をすべて解約しないと売れないのでは?古い建物を解体しないと売れないのでは?と誤解している方もいます。
でも、結論のとおり、貸している状態のままで売ることはできますし、実務上は結構あります。
しかし、売り方には注意しましょう。売る相手を間違うと損をしたり、思わぬ落とし穴があるかもしれません。また、通常の不動産売買の条件では売れないでしょうからだまされないようにしなくてはいけません。
貸家や貸地、共有持分などの買取を専門にしている不動産会社はいくつもあります。上場している大企業から町の不動産屋さんまで、規模はピンきりです。
いずれにしても、いくら買取業者といっても、賃貸借契約の内容は勝手に変更できません。売買しても貸主の立場も契約内容も変更はないからです。買主はそのままの賃貸者関係を承継します。しかし、特に借主の許可は不要です。オーナーチェンジですので、賃料の振込先変更などで連絡や挨拶をする機会はあるでしょうが、いくら借主が反対しようが貸主である所有者は自由に不動産を売却できます。
買取金額は、何ら賃貸借関係のない不動産相場では通常売れません。また、収益物件のような場合、建物の耐用年数や土地の広さによってもかなり変動します。つまり、よくある不動産査定のような不動産評価では判断できないのが貸地や貸家の売却です。購入する際の売買契約も特約でイレギュラーな契約をすることもよくあります。間に客観的な専門家も入れないで買取業者とだけで契約をする場合は、注意が必要です。相手は不動産売買のプロです。一般の消費者とは情報と知識に格差がありますので、その格差を利用して商売をしている業者もいるようですので気をつけましょう。
単なる不動産自体の評価だけでなく、契約内容に売主や買主に有利(又は不利)になる条件を課すことによって不動産価格を調整することもよくあります。しっかりを見極めましょう。
不動産売買契約の内容についても、いろいろなパターンがあります。
現状のままの買取りでよい場合もあれば、何らかの契約不適合責任(瑕疵担保責任)を課してくる場合もあります。場合によっては測量ができることが条件だったりします。土地の価値が高いエリアでは、㎡単価が高いので少しの面積の違いに神経質になります。しっかりとした測量(確定測量)が必要であれば、境界線に関する隣地の人の承諾書が必要です。隣地の人が認知症や行方不明の場合は、この境界線の承諾ができず測量もできません。結果、不動産が売却できない場合もあるのです。
先に述べたとおり、買取業者にしてもそれなりにリスクの伴う取引です。損をしないように自己に有利に話を持っていくことは当然考えられます。普通はこうしていると言われれば、反論できる一般の消費者の方は少ないでしょう。これは、不動産仲介会社が入っている場合も同じです。
会社の規模などより、結局、実際に担当する人間がどこまで信用できるかでしょう。大手の会社は売り上げを上げることに必死でしょうし、規模が小さい会社でも、知識や情報の不足から、必ずしも売主に有利な情報を提供してくれる保証はないのです。
このような貸地や貸家の売買は、通常の不動産売買とは大きく異なります。
専門性が高い取引ですから信頼できる第三者の意見がとても参考になる案件でしょう。
最後に
以上、名古屋の司法書士が相続した貸地や貸家について解説しました。
いかがでしたか?
相続したからといって、喜んでばかりはおれません。不動産所有者としての責任も出てきます。
このように不動産を管理したり、維持してくことにストレスや負担を感じる方も少なくありません。そこで、相続した不動産を売却するケースも多いです。ただし、前述のとおり、通常の不動産の売却とはかなり異なります。玄人を相手に売ることになるでしょうから、それなりにこちらも知識や理論武装して臨む必要があります。
名古屋のごとう司法書士事務所では、このような貸家や貸地、収益物件の売却に力を入れています。法律的なアドバイスが必要となるこのような不動産売買はまさに司法書士が関与することが望まれるものです。法律と登記手続きに詳しい専門家が的確なアドバイスをすることで、安心して不動産が売却できるように心がけています。
お困りの際は、お気軽にご相談下さい。