相続した空き家に関する空家等対策特措法【名古屋のごとう司法書士事務所】
2020/03/22
空家等対策特措法とは具体的に何か?
空き家問題は、地域住民の生活の安全等に重大な影響を及ぼします。具体的には、不衛生な状態になったり、害虫の発生、放火などの防犯上の問題などです。
この空き家にも様々なパターンがあります。
相続人で遺産分割協議がまとまらず、停滞してしまっているケースもあれば、実際に相続人がいない又は相続財産である空き家の存在を知らないなどの所有者不明な場合もあります。
最近では、空き家問題に絡んで相続放棄の申立件数が増加しているようです。
これは、地方の実家などの資産価値がない不動産は、相続しても価値がないどころか、固定資産税の負担や維持管理費用を避けるために相続を拒否しているケースもあるようです。相続放棄は、通常は、被相続人の借金等の債務を承継しないために行われてきましたが、昨今は、不動産を資産としてではなく負債とみなして手放す方がいるようです。
今回は、名古屋の司法書士が、空き家に関する法律である「空家等対策特措法」についてみていきます。空き家をお持ちの方はチェックしておきましょう。
1 空家対策等特措法の目的
空家に関する法律である空家等対策特措法の目的を、以下で確認していきましょう。
この法律がどのような考え方で成り立っているのかイメージをつかむことはとても大切です。目的を頭に入れてほかの条文を読んでいくと、きっと理解の手助けになるように名古屋の司法書士がご説明いたします。
「地域住民の生活環境に深刻な影響を及ぼしていることに鑑み、地域住民の生命、身体又は財産を保護するとともに、その生活環境の保全を図り、あわせて空家等の活用を促進するため、空家等に関し、国による基本指針の策定、市町村による空家等対策計画の作成その他の空家等に関する施策を推進するために必要な事項を定めることにより、空家等に関する施策を総合的にかつ計画的に推進し、もって公共の福祉の増進と地域の振興に寄与することを目的とする。」
つまり、空き家の周辺地域に悪影響をなくすため、また日本経済の活性化を図る目的で眠った不動産を有効活用させるために、状況によっては、所有屋の意思とは関係なく行政が強制的に措置をとることができるようになりました。
※後述する「特定空家等」に認定されると行政の介入が可能になります。
所有者を排除して措置を断行することもできるので、この問題に退位する国の本気度も垣間見れます。
2 「特定空家等」の定義
この特定空家等に市区町村が指定すると、助言・指導・勧告・命令が可能になります。また、特定空家等に指定されると、税制上のペナルティを受けます。
具体的には、固定資産税等の住宅用地の課税特例の適用対象から特定空家等の敷地を除くことになっています。つまり、固定資産税が跳ね上がる可能性があるのです。
では、具体的に「特定空家等」の定義を確認しておきましょう。
「そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となる状態又は著しく衛生上有害となるおそれのある状態、適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態にあると認められる空家等をいう」
3 相続財産に空き家があるとき
遺産の中に空き家や空き地がある場合は、相続人が何とかしなくてはいけません。
自宅以外に、昔、地方の土地や山を購入して持っているなど問題になりそうな不動産が含まれていることもあります。
以下、相続人としての対処法をご紹介します。
3-1 相続放棄をする
相続放棄をして相続しないようにする方法があります。
相続放棄とは、相続開始時から相続人とはならないようにすることです。遺産分割協議などで事実上財産を取得しない場合の財産放棄とは違います。相続放棄をするには、原則相続開始後、3ヵ月以内に家庭裁判所に相続放棄の手続きをしなくてはいけません。
この家庭裁判所での相続放棄の手続きをすることで、相続放棄の効果がさかのぼって相続開始時から生じるのです。相続人ではなくなりますから、最初から空き家や空き地に対する相続権はありませんし、関係がなくなります。
ただし、相続人が相続放棄をすると、次順位の相続人に相続権が移ります。
例えば、子2人が相続人である場合、一人の子が相続放棄をすれば、もう一人の相続人が100%の相続権を承継します。この状態でもし、残った子も相続放棄をすれば、次順位の父母等の尊属、兄弟姉妹へと順番に相続権が移っていきます。
3-2 遺産分割をする
相続人のうち、特定の誰かが取得する場合は、遺産分割協議で取り決めをします。
空き家や空き地でも、売れることがあります。仮にいくらかのお金でも売れれば、それが財産になります。
そこで、他の相続人がいる場合は、取得しない相続人の法定相続分相当の金銭を支払って特定の相続人が取得する形もあるのです。これを「代償分割」と言います。
3-3 売却する
また、場合によっては、空き家空き地が普通に売却できるので、相続人の間で売却をした代金を分ける場合もあります。
これを「換価分割」といいます。このような場合でも、遺産分割協議書の中できちんと取り決めた内容を残しておくことで後日のトラブル防止になります。
売却をする場合は、早い段階から計画的に相続手続きをするようにしましょう。
不動産を売却するからといって、不動産の相続手続きである相続登記を省略することはできません。
通常は、不動産売買を不動産会社へ頼むには、まず相続登記をしなくてはいけません。登記記録上の所有者が存在しないため、相続人でも誰にその不動産の権利があるのか、外見上、第三者にはわかりません。あとから、他の相続人が勝手に売っているとトラブルになってはいけませんから、売却に着手する前にきちんと相続登記をするようにしましょう。
また、相続した不動産の売却には、売主に税金として譲渡所得税がかかりますが、この税金をなくす又は軽減できる特例があります。3000万円の特別控除の特例です。
譲渡所得税とは、売却益がある場合に所得とみなして課税されるものです。この売却益から3000万円を引くことができるのです。結果として3000万円以下の売却益であれば、税金を払う必要はありません。この特例が使えるか否かでは、かなり大きな違いがあると言えます。
3000万円の特別控除を利用するには、いくつか要件がありますが、そのひとつに期間の制限があります。被相続人が亡くなった日から3年後の年の12月31日までに売却をする必要があるのです。この3年余りの期間は長いようですぐにやってきます。通常、不動産の売却には、一定の時間が必要です。前提の相続登記の完了までを考慮すると、それほど余裕はないことになります。
まとめ
以上、名古屋の司法書士が相続した空家に関する法律である空家等対策特措法について解説しました。
どのような法律かご理解いただけましたでしょうか?
常識的に考えて、そのままにしておいたらいけないであろう状態であればこの特定空家等に該当する可能性が高いと考えられます。昨今は、周辺住民の目も厳しく、市区町村への通報もあるようです。
名古屋市内でもたまに不自然な空き地や空き家を見かけます。名古屋市内では景観を損ねる可能性も高く、防犯上もよくありません。専門家のアドバイスを参考にして、将来に向けて何らかの対策をとるようにしましょう。
お困り事がありましたら名古屋にあります司法書士にご相談下さい。