借金の相続と保険金の受領【名古屋のごとう司法書士事務所】

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借金の相続と保険金の受領【名古屋のごとう司法書士事務所】

2020/03/08

相続放棄をした場合、相続人は受け取った保険金で返済しなくていけないのか?

自営業の方や中小企業の社長は、事業資金を個人でも保証している場合が多いと思います。

また、ギャンブルなどの浪費や他人の保証人になってしまうなど、何らかの理由で多額の借金を背負って亡くなるケースはあります。

 

一方、このような場合、自分に生命保険金をかけて、亡くなると受取人に保険金が下りるように配慮していることも多いのです。このような場合でも、相続人は借金を返済しなくてはいけないのでしょうか?債権者は、どこからか保険金受領の情報を聞きつけて、返済の請求をしてくることもあります。

 

今回は、名古屋の司法書士が、借金の相続と保険金の受領について解説します。

1 借金の相続

相続は、不動産や預金といったプラスの財産だけでなく、借金等の債務も承継します。

 

借金等の債務の調べ方

借金等の調べ方は、まずは遺留品や郵便物を確認しましょう。
クレジットカード会社や金融機関、消費者金融、サラ金などの名前の書類がないかを探してみましょう。被相続人も財布も見てみましょう。被相続人と生活を共にしていれば、本人からある程度話を聞いていることや何となくわかっていることも多いですが、同居していない場合や生前の交流がそれほどない場合は、残っているものからたどるしかありません。

被相続人の所持品や自宅の中を探しても手がかりがない場合は、本当に債務がないのかもしれません。

しかし、不安な相続人の方は、信用情報機関へ信用情報の開示請求をしてみましょう。

信用情報機関とは、金融機関やクレジットカード会社、サラ金などが自社で契約している個人に関する取引情報をまとめて管理している団体です。例えば、銀行の融資やクレジットカード発行の審査はこの信用情報機関の信用情報を調べて融資の実行やクレジットカード発行を決めています。

この信用情報は、大切な個人情報ですから基本的には本人しか開示請求ができませんが、本人が亡くなると相続人からの請求ができます。手数料を支払って、相続人である証明書類を添付すれば開示請求が可能です。開示請求には少し時間がかかることもあるので、余裕をもって手続きするとよいでしょう。後述する「相続放棄」には期限があるので、注意が必要です。

 

借金等の債務の相続とは

必要な財産だけを承継して、いらないものは承継しないということはできないのです。相続で借金を承継すれば、遺産で払えない場合でも、相続人が個人の財産で返済していかなくてはいけません。

しかも、債務の承継は債権者の同意がない限り、勝手に相続人で負担割合を決めることができません。いくら遺産分割協議などで、特定の相続人に決めてもあくまで相続人間の約束であり、債権者を無視して決めることはできないのです。住宅ローン以外の銀行融資などがある場合は、銀行と協議をして債務の承継を誰にしていくのかを最終的に決めていく必要があります。

 

相続財産で相続債務の支払いができる場合は、債権者に対してはそれほど問題にはなりません。また、相続人のうち誰かが一括で支払ってしまう場合も同様です。

債権者としては、誰かが払ってくれれば、どの相続人の代表者が支払っても構わないからです。債権者はいち早く債権の回収ができればそれでオーケーなのです。

 

このような不本意な相続の場合、相続人を助ける方法が設けられているのです。
それが、「相続放棄」です。

次に相続放棄についてみていきましょう。

2 相続放棄

相続で借金を引き継がない方法として、相続放棄と限定承認の方法があります。

ここでは以下、一般的によく利用される相続放棄について解説します。

 

相続放棄は相続開始を知った時から、3カ月以内に家庭裁判所に申し立てをする方法で行います。

相続開始時から、相続人ではない形になります。つまり、プラスの財産もマイナスの財産(借金などの債務)も一切承継しないのです。

 

注意点として、相続を放棄しておきながら放棄とは相反する行為をすると、放棄の効果がなくなり、相続をしたことになるかもしれませんので十分気をつけましょう。

例えば、相続財産を売却したりして処分する、自分のために消費する、財産を隠しなどをしてしまう場合です。このような場合は、明らかに相続放棄とは相反する行為ですので、放棄の効果が認められなくなります。

 

相続放棄によくある勘違い

また、よくある誤解として、遺産分割で遺産を放棄することではないということです。

ここでいう「相続放棄」とは、民法上の相続放棄であり、家庭裁判所に申し立てて行う相続放棄の手続きが必要なのです。これにより相続人でなくなると、次の順位の相続人に相続権が移っていきます。通常は、次の順位の相続人も相続放棄をする可能性が高いですが、このようにして順々に家庭裁判所へ相続放棄の申立てをしていきます。

 

くれぐれも、遺産分割協議で相続放棄をすることと意味が全く違う点には注意しましょう。相続放棄をすれば、相続人ではありませんから、遺産分割協議をする権利もありません。次の順位の相続人が遺産分割協議に参加する権利を持ちます。

 

また、相続放棄は、相続人の1人がすればよいものではありません。

相続放棄は、相続人一人一人が選択できます。つまり、相続放棄を希望する相続人がひとりひとり自分で手続きをしなくてはいけません。相続人代表者がひとりすれば終わりではないのです。

勘違いをして相続放棄の3か月が過ぎてしまうと、相続放棄が認められない可能性もありますので、十分注意しましょう。

3 生命保険と相続の関係

生命保険金の相続性については、別の記事でも書いていますが、相続財産には含まれず、受取人である相続人の固有の財産になります。つまり、原則、相続の対象ではありません。個人的に受け取るものですから、当然、伊佐分割の対象ではありませんし、相続放棄をして、相続人でなくなっても関係なく受け取れます。

 

生命保険金は、相続ではなく保険契約に基づく支払なのです。

つまり、保険金を受領しても、相続放棄には何ら影響を与えません。

 

よって、原則、相続放棄後に、債権者が受け取った生命保険金の受領を理由に返済を迫ってきても、法的には返済義務がないことになります。実際に、相続放棄をして死亡保険金を受領するケースはあります。

 

ただし、相続税との関係では気をつけましょう。死亡保険金が相続税の計算のうえでは、相続財産に含まれる可能性があるからです。
場合によっては死亡保険金は高額になります。何千万円単位で保険をかけている場合は、他に不動産や預金等がほとんどなくても相続税が発生することがあるのです。不安な方は、まずはすべての相続財産の合計が基礎控除を超えるかをチェックしましょう。

基礎控除は、「3000万円+(法定相続人×600万)」です。
基礎控除を確かめることでおよその相続税発生の目安を知ることができます。

まとめ

以上、名古屋の司法書士が、借金の相続と保険金の受領に関して解説しました。

 

相続放棄は、相続開始後3カ月以内に行う必要があるため、比較的短い期間で申し立てをする必要があります。相続放棄後でも、一定の管理をする義務がある点を忘れずに、素早く対処する必要があります。不動産が遺産に含まれる場合は、上手く交渉すれば、相続放棄をしなくてもよい場合もあり得ます。

 

なお、この相続放棄の3か月は、例外もあります。場合によっては、3か月を過ぎていても相続放棄が認められることもあります。相続人代表者だけが相続放棄をすれば、他の相続人は別途相続放棄をしなくてもよいと勘違いをしてしまった高齢者の場合などです。

 

個別性の強いこのようなお話は、一般論やマニュアルでは対処できません。その人に合った解決策を模索する必要があると思います。お悩みの方は早い段階で司法書士や弁護士などの法律の専門家へご相談されてはいかがでしょうか?

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