相続対策のポイント【ご相談なら名古屋のごとう司法書士事務所】
2020/02/24
1遺産分割対策(相続開始後の対策)
遺産分割対策とは、遺産相続で相続人がもめないようにする対策です。
相続財産の分け方で相続人同士の話がまとまらなければ、最後は、遺産分割調停をしなくてはいけません。もしくは、相続手続きを保留又は放置する形になってしまうでしょう。
まずは、各相続人の希望を円満に実現できる方法を探すことが大切です。
(1) 遺言書で対策
代表的な対策は、遺言書の作成です。
通常よく作成するものとしては、自筆証書遺言と公正証書遺言があります。
自筆証書遺言も法改正により、使い勝手が良くなっております。全文自筆でなくても大丈夫ですので、遺産目録はパソコンで作成した者でもよく、通帳や不動産の登記事項証明書の写しでも大丈夫です。
また、法務局による遺言書保管の制度もスタートします。この場合は、自筆証書遺言のデメリットであった家庭裁判所の検認が不要になるので、利用価値はあります。
一方、公正証書遺言にもメリットはたくさんあります。検認不要は変わらずですが、公証人の面前で内容を確認して作成するので、本人の意思によって作成されたという客観性が高い遺言書になります。遺言の有効性が後日争いになるような場面でも、無効になる可能性は低くなると言えます。
(2) 代償分割で対策
相続財産の各財産の評価額がバラバラであったりして、平等に分けられないようなときにこの代償分割は利用されます。ある相続人がある財産をもらう代わりに、もらえなかった相続人の法定相続分相当の現金を渡すような方法です。
この代償分割用の現金として、生命保険金をかけたり、生前贈与をしたりして原資を確保したりすることもあります。
(3) 遺産分割しやすいように財産を整理する
例えば、生前にある不動産を売却して現金化しておく、また、生前にある程度の財産を贈与しておくなどやり方はいろいろですが、事前に整理されていると、相続人は相続開始後にスムーズに遺産を承継できると思います。
相続税が避けられれない場合は、原則現金で相続税を納税しなくてはいけません。相続財産になければ、相続人が自己資金で納める必要があります。相続開始後、10カ月以内に相続不動産を売却して現金化する方法もありますが、やはり、早期売却ということで希望の価格で売却できないこともあります。このような場合にはあらかじめいくつかの不動産をピックアップして売却をすることがあります。また、相続税納税資金として、死亡保険金などの保険を活用することもあります。
2 相続税の対策
相続開始後に、ある程度の財産を残すと、それを承継する人に税金がかかることがあります。遺産の金額ではなくい、相続人の数等により、相続税の発生する金額は変わります。
およその目安としては、相続税を計算する際の基礎控除額を参考にして下さい。
基礎控除額とは、遺産総額から控除できるものです。遺産総額が基礎控除額より少ない場合は、相続税が発生しないことになります。相続税の計算は複雑ですが、この計算をすることで、相続税発生の有無を調べる簡単なチェックができます。
なお、基礎控除額は、以下のとおりです。
基礎控除額 = 3000万円 + (法定相続人 × 600万円)
例えば、相続人が妻と子2人の場合は、法定相続人が3人ですので、3000万+1800万円=4800万円となり、基礎控除額は、4800万円になります。
(1) 贈与で対策
いわゆる生前贈与です。
生前贈与には、暦年贈与(通常の贈与)と相続税精算課税を利用した贈与があります。
相続時精算課税制度による贈与は、将来の値上がり部分については一定の効果がありますが、相続時に贈与財産が戻されますので、原則は暦年贈与をまず検討すべきかと思います。
贈与税は、一般的に税率が高いので、正面から課税される方法はとらず、特例や工夫をして高い税率を回避するよう必要があります。
(2) 相続財産の評価を下げる
現金や預金などの資産は、相続税の計算ではそのままとなり、不動産のように使用状況や現況などで基本的に評価額を下げることはできません。
そこで、金融資産で不動産を購入したりします。
賃貸マンションを建てて、銀行の借金を作ります。そうすることで相続税上有利にしようとするものです。ただし、上手い話ばかりではないので、よく検討をして進めたい対策です。
賃貸マンションの営業マンの話を鵜呑みにするのではなく、自分自身でもしっかりと収支や将来のシュミレーションをすることが大切です。営業マンは基本的には不利になることを積極的に言いません。都合の悪い事実は自分で調べる必要があります。
そのエリアで競合になりそうな賃貸アパートやマンション、場合によっては、新築戸建てやマンションも競合になります。賃料と住宅ローンの比較によって、借りるのではなく購入を検討する層もいるからです。
収益物件では、途中で計画がうまくいかず、売却をしなくてはいけない事態もよくあります。少なくともローンの残債を払えるぐらいでないと売却が難しいこともあります。
(3) 2次相続の対策
ご両親の相続財産を承継する場合、先にどちらか一方がなくなり、次に2次相続として残った配偶者の相続をする場合があります。最初の1次相続では、どのようにそれ以降の世代に相続をさせるかで相続税が異なります。
① 孫への相続
孫へ生前贈与や遺言などで遺産を承継させると、ひと世代飛び越しての遺産承継ですので、1回分の相続税回避につながります。
② 配偶者への相続の注意点
1次相続での配偶者への遺産承継は、配偶者自身の2次相続の際を考えると、年数を重ねると価値が上がるようなもの(土地など)は避けた方が良いかもしれません。
配偶者への相続は、配偶者控除の特例を利用すると、相続税がかからないケースも多いですが、結局、2次相続の際に相続税を支払うことになります。そうなると、値上がり後の土地などの評価額で相続税を支払うことになるのです。
そうはいっても、配偶者自身の生活もあるので、年齢や親族の協力などケースに応じて、無理のない対策を立てるようにしましょう。数字だけを追ってしまうと、人を無視した相続対策になります。トラブルにもつながるので、十分話し合って進めましょう。
まとめ
以上、相続対策について基本的な考え方を整理してみました。
相続は目的によって必要な対策が異なります。その人に合った形へのカスタマイズが必要なものです。定型的に決まるものではないので、十分自分で調べる又は専門家の意見を聞いてみましょう。間違った対策をすると、相続開始後に相続人に迷惑をかけることにもなるので注意しましょう。
大きく分けると、法律上の問題として遺産分割対策と税金対策としての相続税対があります。
両方を兼ねる対策も検討するかと思います。両方やる場合でも、法律上の問題点をクリアしないと、相続税対策が絵に描いた餅になることもあります。相続税策は、本人と相続人が一枚岩になってはじめてもっとも効力を発揮します。この場合はかなり複雑で法律、手続きの専門家と税務の専門家が必要になります。
相続対策と一口に言っても単純ではないので、よく検討して進めることをお勧めします。