任意後見と法定後見の比較のポイントを解説!【名古屋のごとう司法書士事務所】

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任意後見と法定後見の比較のポイントを解説!【名古屋のごとう司法書士事務所】

2020/02/12

任意後見と法定後見は何が違う??

最近は、「成年後見」という用語は社会的に認知が進んでいると言われています。私自身の日々業務を行っている実感としてもそのように感じています。

 

私が成年後見にかかわるようになって10年以上経ちますが、まだまだ成年後見の運用が本格的に始まったばかりでした。銀行や保険会社に後見の届出や手続きをしようとしても、「セイネンコウケン?」という感じでした。まずは、法律上の立場の説明を何度も重ねて、やっと理解をしてもらっていました。大企業でさえもそのような状況でした。

 

それと比べるとかなり進歩したわけですが、最近は、「任意後見」というものにもスポットが当たるようになってきました。民事信託や遺言だけではできないことができるのです。またこれらの相続対策を併用することもできるのです。相続対策は、三者三様です。自分に合った方法をカスタマイズする必要があります。

 

今回は、名古屋の司法書士が、成年後見に関する解説として、「法定後見」と「任意後見」の比較をしてみたいと思います。後見制度の利用を検討している方必見です。ぜひご覧下さい。

 

 

1.法定後見とは

法定後見とは、ご本人様の判断の能力が衰えてしまった場合に、代わりにサポートする人を家庭裁判所に選任してもらうものです。
法定後見は、本人が既に認知症等で判断能力が亡くなった段階で行うものです。一方、任意後見とは、本人が元気なうちに自分が認知症等で判断能力が亡くなった時の後見人を選ぶものです。この点で決定的に両制度は異なるのです。

 

この場合は、後述する任意後見とは違い、後見人等の選任権は裁判所にあります。申立時に後見人候補者を上げることはできますが、必ず採用されるかはわかりません。第三者の司法書士や弁護士などの専門家が選任されることがあります。この点がデメリットといえます。

この場合の後見人等の報酬は、本人の財産から支払われます。親族や後見人の申立人等の支払い義務があるわけではありません。その点は誤解しないようにしましょう。なお、後見人等の報酬は、親族等の一班の方が後見人になった場合でも同じです。つまり、後見人に子がなる場合、親である被後見人の財産から後見人である子が報酬を受け取る形になります。
この報酬額は、後見人等が家庭裁判所へ申立てをすることにより、裁判所が決定します。後見人等が自由に金額を請求できるわけではありません。この点も専門家と一般の方で同じ扱いになります。

また、ご本人様の状態によって、後見、保佐、補助の三類型があります。イメージとしては、ご本人様の判断能力等が衰えてから行う事後的な後見制度の利用になります。つまり、予期せぬ事態により急遽申し立てを行うケースも多いのがこの法定後見です。

 

専門家が後見人等に就く場合は、ご本人様のこれまでの生活状況等を理解できないまま運用されることも多く、どうしても後見人としては良くも悪くも無難な対応をせざるを得ないところがあります。つまり、一般的に正しいと思われる運用をするので、必ずしもご本人様の希望に叶っているかはわからないのです。

この点は、専門家が後見人等に就く場合の課題ですが、本人に確認できない場合は、勝手に後見人等が判断することもできませんから難しいところです。

2.任意後見とは

任意後見とは、委任契約の一種です。つまり、これは契約になります。

ご本人様の意思能力がある状態で、任意後見人になる人ととの間で任意後見契約を結びます。しかも、この契約は公正証書で作成する必要があります。

 

任意後見契約は、自動的に効力が発生するわけではありません。ご本人様の判断能力が不十分な状態になった時に、家庭裁判所に任意後見監督人の選任を申立てをして、任意後見監督人が就くことで効力が発生します。この任意後見監督人は、裁判所が選任します。任意後見人の業務を監督する人です。

 

このように、任意後見では、自分で後見人を選べます。しかも、自分が元気なうちには老後の生活や判断能力が衰えた後のことを決めて、任意後見人に伝えることができます。つまり、自分の希望に沿った生活を実現することができるのです。

 

自己決定権の尊重という意味では、任意後見は有用な方法になります。

 

任意後見人に任せる業務を最初の任意後見契約で代理権目録で決めるので、何を任せるのか、それをどのように進めるのかなど思い通りに決めることができるのです。この点が最大のメリットといえます。

3.法定後見と任意後見の比較

法定後見と任意後見を比較すると、1番の違いは、自己決定権の尊重の点です。

 

前述のとおり、任意後見は、法定後見と違い、後見人の選任権、後見人の業務内容の決定など、自分の判断能力が衰えて、何も決められなくなっても、あらかじめ決めておいた人生を送ることができるのです。

 

法定後見では、この点、必ずしも思い通りにはいきません。後見人の決定権は裁判所ですし、選ばれた専門家の後見人はご本人様のそれまでの人生や考え方を知りません。限られた情報に基づいて、援助するしかないのです。

 

また、昨今、高齢者夫婦だけや高齢者単独世帯が増えています。頼れる人がいない場合は、親族等に面倒を見てもらうことができません。また、親族等がいても、それが期待できないケースもあります。自分がしっかりしているうちに、自分の将来を決めることが大切になります。

 

また、法定後見と任意後見では、両立しません。ただし、基本的には任意後見が優先されると言われています。これは任意後見の方がご本人様の意思を反映していると考えられているからです。

4.遺言と任意後見の比較

遺言は、ご存知の通り、亡くなった後に効力が発生するものです。一方任意後見は、生きているうちに行う契約です。

両者は、重なりません。

 

むしろ、遺言と任意後見は、併用することが有用になります。

 

生前のご本人様の意思は、任意後見契約でカバーします。亡くなった後は、遺言によってご本人様の意思に基づいて遺産を承継させます。つまり、任意後見契約時に遺言書も公正証書で作成するというワンセットで相続対策をすることが実務上は多いのです。

 

また、遺言で定める遺言執行者という人がいます。遺言執行者とは、遺言の内容に沿って手続きを行い遺産を承継させる仕事をする人ですが、この遺言執行者に任意後見人を選任しておけば、ご本人様が亡くなった後に、遺産承継にスムーズに移行できます。ちなみに、任意後見人の業務は、ご本人様が亡くなると終了します。あとは、相続人に遺産を承継させるだけになります。

5.民事信託と任意後見の比較

民事信託も契約です。詳細は別の機会にご説明しますが、簡単に言うと、ご本人様が自分の財産の管理や運用を長男などの別の人に任せることができる制度です。任された人はご本人様に代わって、不動産の売却などを行うこともできます。

 

任意後見も判断能力が衰えれば、同じようなことができますが、決定的な違いは、裁判所の監督下に置かれるか否かです。

 

民事信託は裁判所が関与しません。民事信託契約の内容によっては、任された人をチェックする人や援助する人がいないので、間違いや悪用などトラブルが起こり得る制度上の問題があります。あくまで、民事信託は当事者間の契約ですので、仕方ありません。特にご本人様の判断能力が衰えてからは、ブレーキをかける人がいなくなり、間違った運用をされることも想定されますので注意が必要です。

 

その点、任意後見は、効力発生すれば、定期的に任意後見監督人と裁判所のチェック受けることになりますので、制度上悪用がしにくいものになっています。もしもの時の安全装置がついているようなものです。

 

この安全装置はとても大切になります。自分が判断できない状態で起こることですから、自分で違うということはできません。そうなると、自分の決めた内容以外は実行されないように誰かのチェック機能が働くのはとても心強いものになります。

 

一方、任意後見は裁判所等のチェックを受けますから、それが逆に財産を運用しにくいケースもあります。そのような場合は、民事信託と任意後見を併用することを検討されてはいかがでしょうか?

 

財産管理は民事信託により、身上監護の部分は任意後見にするというすみわけをすることが可能です。法定後見でも任意後見でも同じですが、民事信託で任された財産については民事信託契約が優先されますので、上手く併用することでさらに自分の思い通りの意思決定が可能になるのです。

まとめ

今回は、名古屋の司法書士が、法定後見と任意後見の比較をしてみました。

 

これらのほかにも遺言や民事信託といった相続対策に関する方法との関係性にも言及しました。相続対策はやり方次第では広がりを見せます。複雑になることも多いので、より緻密な計画が必要です。どの対策が最適な方法かは、総合的な判断も必要です。

 

世界的にもこの自己決定権の尊重は主流になっています。いかにしてご本人様の意思を尊重するのか。任意後見は、今後その活用が期待される方法になります。遺言や生前贈与、民事信託だけではないご自身の生活に直結する大切なものです。ぜひご検討されてはいかがでしょうか?

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