【投資用マンションを相続したら読んで下さい】名古屋のごとう司法書士事務所
2025/10/24
まずはじめに
ご家族やご親族が亡くなられた後、思いがけず「投資用マンション」を相続することになった――。そんなご経験をされた方も、近年では珍しくなくなってきています。
都市部を中心に投資用マンションの購入が広がった背景には、老後の安定した収入源として不動産を活用したいという意識の高まりや、低金利時代の資産運用手段としての不動産投資の普及がありました。その結果として、かつてご両親や親族が購入・保有していた物件を、相続のタイミングで引き継ぐことになるケースが増えているのです。
しかし、こうした「投資用マンション」の相続には、一般的な住宅とは異なる複雑さがあります。
たとえば、「マンションはあるけれど、誰かに貸しているらしい」「賃料が入ってきていたようだけれど、詳細はわからない」「管理費や修繕積立金の支払いはどうなっているの?」といったように、相続人がマンションの実態を正確に把握できていないまま、所有者としての責任を負うことになる場合が少なくありません。
また、相続登記をはじめとする法的な手続きのほか、毎月の収支の確認、固定資産税や管理費の支払い、場合によっては入居者との契約関係など、多岐にわたる管理業務が発生します。「住む予定もないし、不動産投資の知識もない…」「本当にこのマンションを引き継いでも大丈夫だろうか…?」と不安を感じるのは当然のことです。
さらに、相続に関わる税金の問題や、将来的に売却を検討する際の譲渡所得税、物件の資産価値の下落といった経済的な要素も、慎重に検討する必要があります。
投資用マンションは、「ただの不動産」ではありません。毎月収益を生む資産であると同時に、管理責任やリスクも伴う存在です。だからこそ、相続したときにどのような対応を取るかで、その後の人生設計に大きな違いが生じてしまうこともあるのです。
この記事では、そうした投資用マンションを相続した際に「まず何から始めればいいのか」「どのような点に注意すればよいのか」など、基本的な情報を司法書士兼宅地建物取引士の立場から丁寧に解説します。専門知識がなくても理解できるよう、できるだけわかりやすく、やさしい言葉でお伝えしていきますので、どうぞ安心して読み進めてください。
相続という大切な転機に、不安や疑問を抱えたままにならないように。少しでも皆さまの心の負担を軽くし、適切な判断ができる一助となれば幸いです。
1.まずは「登記名義」の確認を
~なぜ「まず名義変更」が最初の一歩なのか~
投資用マンションを相続したとき、最初に何をすればいいのかと迷われる方は多いかもしれません。遺産分割協議の進め方、相続税の申告、将来的な活用方法など、考えるべきことがたくさんあるのは事実です。しかし、どれよりもまず最初に取り組むべき大切なステップ――それが「登記名義の確認と変更」、つまり相続登記の手続きです。
相続登記とは、亡くなられた方が所有していた不動産の名義を、相続人の名義に変更するための登記手続きのことをいいます。法務局で正式に「所有者が変わった」ことを記録することで、その相続人が正式に法的な権利者として不動産を管理・処分できるようになるのです。
登記が故人のままでは何が問題になるのか?
一見、「マンションはそのまま賃貸に出ていて、特に問題もなさそうだから、急がなくてもいい」と思ってしまう方も少なくありません。しかし、名義変更を行わずに放置することで、後々思わぬトラブルや不利益が生じる可能性が高まります。
たとえば、次のような問題が現実に起こり得ます。
1.賃料収入の分配が不透明になり、相続人同士の争いの種になる
投資用マンションは、毎月家賃収入が発生する資産です。その収益が、相続人のうち誰に、どの割合で、どのように分配されるのか――これが明確に決まっていないまま収入だけが入り続けると、「あの人が全部受け取っているのではないか」「支払いの管理が不公平だ」など、感情的な不信感が募りやすくなります。
特に、相続人が複数いる場合には要注意です。家賃の口座が被相続人の名義のままになっていたり、一部の相続人しか管理をしていなかったりすることで、兄弟姉妹間や親族間で深刻なトラブルに発展するケースも少なくありません。登記名義を正式に移しておくことは、こうした将来的な「相続人間の争い」を予防する意味でも非常に重要です。
2.いざ売却したいときにスムーズに取引できず、貴重なチャンスを逃す可能性も
相続登記がされていない物件は、法的には亡くなった方の名義のままであり、現所有者が確定していない状態です。そのため、不動産会社や買主との売買契約を結ぶことができません。
不動産は「売りたいときに売れる」ことが価値につながる資産です。不動産市況が良く価格が高騰しているタイミングを逃したり、買主との交渉が進んでいるのに法的な所有者が確定していないせいで契約ができなかったりするなど、貴重な売却機会を逸してしまうケースもあるのです。
また、金融機関からの融資や担保設定も、名義が正しくなければ利用できません。不動産の「動かせる資産」としての機能を確保するためにも、名義変更は早めに行っておくべきです。
3.次の相続が発生したときに、権利関係が複雑に絡み合ってしまう
相続登記をせずに放置したまま、さらにその相続人が亡くなってしまうと、登記名義はさらに古いまま残り続け、相続人の範囲も2世代・3世代にまたがってしまいます。
このように権利関係が複雑化すると、以下のような深刻な問題が生じます。
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遺産分割協議に関与すべき相続人が数十人以上になる
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連絡がつかない遠縁の親族や海外在住の相続人が登場する
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協議が整わず、登記が数年間にわたって完了しない
こうなると、もはや不動産の処分どころではありません。資産であるはずの不動産が、「動かせない重荷」となり、次世代に不必要な負担を残すことになりかねません。
相続登記の義務化と罰則――2024年4月からの新制度に注意
これまでは、相続登記は法的には義務ではなく、「任意」とされていました。そのため、手続きが後回しにされることも少なくなかったのですが、こうした放置による問題の多発を受けて、2024年4月1日から相続登記が義務化されました。
この法改正により、相続によって不動産を取得した人は、取得を知った日から3年以内に登記申請を行う必要があります。
これを怠った場合には、正当な理由がない限り、**10万円以下の過料(行政罰)**が科される可能性があると明記されています。
「期限を知らなかった」「時間がなかった」「分け方でもめていて進められなかった」――これらの理由では免除されないケースもあり得ます。
この制度改正は、全国的に不動産の名義が曖昧なまま放置され、空き家問題や権利関係の複雑化が深刻化している現状への対応策として導入されたものです。つまり、「登記はすぐにやらなくても大丈夫」では、もはや済まされない時代になったのです。
登記手続きは専門知識が必要、まずは信頼できる専門家に相談を
「相続登記」と一口に言っても、手続きにはさまざまな書類の準備や法的な知識が必要です。相続関係説明図の作成、遺産分割協議書の整備、戸籍謄本の収集、法務局への申請――いずれも慣れない方にとっては時間も手間もかかる作業です。
特に投資用マンションの場合、共有名義になっている、借入金の抵当権が残っている、区分所有法や管理組合の関係書類が必要になるなど、一般的な居住用不動産以上に注意点が多く存在します。
そうした煩雑な手続きを円滑に進めるためには、不動産登記の専門家である司法書士に依頼するのが安心です。さらに、物件の収益性や将来の資産設計まで含めて考える必要がある場合には、宅地建物取引士の知見も併せ持つ専門家に相談することで、より的確なアドバイスを受けることができます。
2.「収益物件」としてのメリットとリスク
投資用マンションと聞くと、家賃収入が定期的に入ってくる「お金を生む資産」としてのイメージが強いかもしれません。実際、故人が生前に購入された投資用不動産は、老後の生活資金や相続税対策として有効であることも多く、「資産として残してくれた」と前向きに受け止める方もいらっしゃいます。
しかし一方で、相続された方がその物件の実情を正確に把握しないまま持ち続けてしまうと、思わぬ損失やトラブルの原因にもなりかねません。
とくに「住む予定はないし、放っておいても大丈夫だろう」「家賃が入ってくるなら安心」と思っている方にこそ、注意していただきたいポイントがあります。
投資用マンションは、プラス(収益)とマイナス(リスク)の両面を持つ特殊な資産です。相続によって得たこの不動産を「持ち続けるべきか」「売却すべきか」あるいは「兄弟姉妹で共有するか」などを判断するためには、冷静にその内容を見極め、現実的な視点で資産としての価値を判断することが求められます。
家賃収入がある=安定ではない? 現在の契約状況と収益構造を確認しましょう
相続されたマンションに入居者がいる場合、多くの方は「とりあえず家賃が入ってくるなら安心」と考えがちです。しかし、家賃収入が「あるかないか」だけでは、実際の収益性は見えてきません。
まず確認したいのは、入居者との賃貸借契約がどのようになっているかという点です。
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家賃はいくらで設定されているか?
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敷金・礼金・更新料などの契約内容はどうなっているか?
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いつ契約されたものか?(契約開始日)
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定期借家契約か普通借家契約か?
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管理会社が間に入っているか? どこまで管理しているか?
これらの情報を確認せずに「なんとなく貸し続けている」と、のちのトラブルにつながるリスクが高まります。
また、実際に手元に残る金額=家賃収入ではありません。
投資用マンションでは、次のような支出も定期的に発生します。
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管理費・修繕積立金(区分所有マンションの場合)
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固定資産税・都市計画税
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火災保険料
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入居者退去時の原状回復費
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管理会社への委託手数料
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長期的な修繕・リフォーム費用
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ローンの残債(あれば)
これらを差し引いた上で「実質的に黒字かどうか」を計算する必要があります。家賃が入っていても、出費の方が多ければ赤字になり、資産価値どころか負担を生む存在になってしまう可能性もあるのです。
空室リスク・老朽化・立地の将来性――収益物件としての「見えにくいリスク」
投資用マンションの最大のリスクのひとつは、空室リスクです。
入居者が退去すれば、当然ながら家賃収入はストップします。加えて、次の入居者が決まるまでの空白期間は、管理費・修繕費・税金などの支出だけが発生し、収入がゼロになるため、実質的なマイナス状態となります。
特に問題なのは、以下のような物件の特徴です。
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駅から遠い、坂が多いなど、立地に難のある物件
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エレベーターがない高層階
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築年数が古く、内装や設備が旧式のまま
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周辺に新築や築浅物件が多数供給されている地域
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空室率が高いエリア(地方や過疎化が進む都市周辺)
このような条件を抱える物件は、入居者がなかなか見つからず、空室が続くリスクが高くなります。
また、建物の老朽化による資産価値の低下にも注意が必要です。築20年、30年を超えるようなマンションでは、建物そのものの評価が下がり、賃料相場も下落していきます。結果として、将来の売却価格が大きく下がる可能性もあるのです。
さらに、マンション全体としての管理状態も重要なポイントです。管理組合がしっかり機能しているか、長期修繕計画が策定・実行されているか、積立金に滞納がないかなども、収益性・資産価値に大きな影響を及ぼします。
売却する? 保有し続ける? 判断の分かれ目は「目的」と「時間軸」
投資用マンションを相続した後、「このまま持っておくべきなのか」「早めに売った方が良いのか」と悩む方は多いです。
この判断に迷ったときは、「何のために保有するのか」、そして**「何年先まで見据えているか」**という視点を持つことが大切です。
たとえば:
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ご自身が将来の生活費の一部として賃料を得たい → 長期保有が前提
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固定費の負担が苦しい、管理の手間が大きい → 早期売却も選択肢
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他の相続人との共有になっている → 売却か分割を検討すべき
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市況が上昇している、立地が良い → 売却益を狙える可能性あり
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老朽化が進んでいる、空室が多い → 売却を急ぐ必要があるかも
また、相続人が高齢である場合には、「次の世代に資産をどう残すか」という視点も重要になります。ご自身のライフプランに合った選択をするためにも、収益性・資産性・税金・維持費など、あらゆる角度からの検討が欠かせません。
プロの目線でのチェックを受けることが、後悔しない判断への第一歩
相続人ご自身が不動産投資に明るくない場合、数字や専門用語の多さに戸惑うのは当然のことです。「管理会社に任せておけば大丈夫」と考えていても、賃料の設定や契約条件、修繕の要否などについて管理会社が最適な判断をしてくれるとは限りません。
そのため、できるだけ早い段階で、不動産の専門家――特に投資物件に詳しい司法書士や宅地建物取引士――に相談し、物件の評価、契約内容、リスクの分析を行ってもらうことをおすすめします。
専門家によるアドバイスがあれば、「思い込み」による判断ミスを防ぎ、長期的に見て最も適切な選択ができるようになります。
3.税務と将来設計の視点で考える
投資用マンションを相続すると、相続人は単に「不動産を受け取る」だけでは済まず、それに伴う税金の申告や納付が求められます。不動産は現金と違い、評価の仕方や処分の方法によって税負担が大きく変わるため、適切な知識がなければ後々「こんなはずではなかった」と後悔する結果にもつながりかねません。
とくに注意すべきなのが、**相続時に発生する「相続税」と、将来売却を検討した際に発生する「譲渡所得税(売却益にかかる税)」**です。これらは、税率や評価方法が異なるだけでなく、適用できる特例や節税策にも大きな違いがあります。
以下では、相続した投資用マンションに関わる税金の基本と、判断する際の視点について、できるだけ分かりやすく説明いたします。
相続税は「評価額」によって決まり、現金と比べて有利になるケースも
相続税は、亡くなった方の財産の総額が基礎控除額(3,000万円+法定相続人の数×600万円)を超えた場合に課税される税金です。相続財産には現金・預金・有価証券・不動産などが含まれますが、不動産は「時価」ではなく、評価基準に基づいて算出される評価額によって税額が決まります。
投資用マンションの場合、その評価額は以下のように決まります。
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土地部分:路線価(国税庁が公表)や倍率方式により評価
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建物部分:固定資産税評価額に基づいて評価
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賃貸中の場合:借家権割合や貸家建付地評価の減額が適用される
つまり、実際の市場価格(たとえば2,500万円で売れるようなマンション)よりも、相続税評価額が低くなることが多く、相続税の負担が軽くなる場合もあります。
とくに「賃貸中の投資用マンション」の場合は、借家権による減額や貸家建付地の評価引下げが適用されることで、数百万円単位で評価が下がることもあります。
ただし、現金化しにくい不動産は「納税資金の準備」が課題に
不動産は評価額が下がることで税負担を軽減できる反面、現金ではないため、納税のための資金を別途準備する必要があるという特徴もあります。
たとえば、相続税額が300万円発生したとしても、不動産しか相続していない場合は、その納税資金を現金で用意しなければなりません。「相続したけど、税金が払えない…」という事態にならないように、資産の構成や現金化の可能性についても考えておくことが重要です。
また、マンションを共有で相続した場合には、「売るにも共有者全員の同意が必要」という制約があり、すぐに換金できないことも考慮しておくべきポイントです。
売却時には「譲渡所得税」が発生――取得費の計算と特例の有無がカギ
相続したマンションを後日売却する場合には、**譲渡所得税(いわゆる売却益に対する税金)**が発生する可能性があります。
譲渡所得税の計算式は、以下の通りです:
譲渡所得 = 売却価格 −(取得費+譲渡費用)
そして、この「譲渡所得」に対して、所得税と住民税(合計で約20.315%)が課税されます。
ここで問題になるのが、「取得費」がいくらになるのかという点です。相続の場合は、被相続人が購入した当時の取得価格を引き継ぐため、古い物件で購入時価格が不明なケースでは、取得費を計上できずに課税額が大きくなるリスクがあります。
ただし、次のような救済措置があります。
「取得費加算の特例」による節税
相続税を支払った場合、その相続税の一部を「取得費に加算」することができる特例があります。これにより、譲渡所得を圧縮し、結果として課税対象額を小さくできるのです。
この特例は、相続発生から3年10か月以内に売却することが条件となっているため、タイミングによって適用できるかどうかが変わります。
「空き家の3,000万円特別控除」などは原則対象外
相続した不動産の売却に関する特例の中に、「被相続人の居住用財産(いわゆる空き家)を売却した場合に、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる」という制度がありますが、これは被相続人が居住していた家屋が対象です。
したがって、賃貸中の投資用マンションには原則として適用できません。このように、相続不動産に関する税制は複雑で、物件の利用状況や売却時期によって適用される特例が大きく異なるため、専門家の判断が不可欠です。
売る?持つ?その判断には「税務」と「ライフプラン」の両面からの視点が必要
投資用マンションを相続した方が直面する大きな選択肢の一つが、「売却するか、それとも保有を続けるか」という判断です。
この判断には、物件の収益性や相場だけでなく、税務面での損得や、相続人自身の生活設計も含めて考える必要があります。
たとえば、
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近いうちに現金が必要 → 税負担が軽いうちに早めに売却
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老後の安定収入がほしい → 保有して賃料を得る選択
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相続税を圧縮できたが、譲渡所得税が重くなりそう → 時期を見て計画的に売却
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他の不動産と合わせた「資産ポートフォリオ」として考える → 分散保有か売却検討
このように、「税金の仕組みを知らないままなんとなく判断する」と、後から予想以上の納税が発生したり、特例を受け損なったりといったリスクがあります。
とくに、**「相続税は専門家に相談したが、譲渡所得税はよくわからないまま売却してしまった」**という失敗例は少なくありません。両者は別の制度・別のタイミングで課税されるため、それぞれの専門家にきちんと相談することが大切です。
相続税も譲渡所得税も、「対策できる時期」に動くことが成功のカギ
税金に関する対策は、「タイミング」が非常に重要です。相続税の申告期限(10か月以内)、取得費加算の特例の期限(3年10か月以内)、譲渡所得税の計算に必要な資料の収集――いずれも時間が経てば経つほど対応が難しくなります。
また、申告期限を過ぎてしまえば、適用できる特例も適用できなくなり、税負担が数十万円〜数百万円単位で増える可能性もあるのです。
相続した不動産に関して「そのうち考えよう」と後回しにせず、相続発生後の早い段階で、税務・法律・不動産の各専門家に相談し、総合的なプランを立てることが、後悔のない選択につながります。
まとめ
投資用マンションを相続された方にとって、それは単なる不動産の引き継ぎではありません。そこには、法律・税金・不動産の収益性という3つの分野が複雑に関わっており、それらを正しく理解し、丁寧に向き合うことで、初めて「本当に資産として価値のあるもの」として受け継ぐことができます。
この記事では、投資用マンションを相続した際に、まず確認すべき登記名義の問題(相続登記)から始まり、実際に物件が収益を生む資産である一方で、空室や老朽化といったリスクも抱えている現実、そしてそれらをどう扱うかを判断するうえで避けて通れない相続税や譲渡所得税などの税金の仕組みについて、それぞれ丁寧に解説してきました。
「名義が故人のまま」では、何も始まりません
相続した不動産の名義が亡くなった方のままになっていると、将来的な売却や管理、修繕、契約更新など、あらゆる場面で法的な制約が生じます。
しかも、2024年4月からは相続登記が義務化されており、放置していると過料(罰金)の対象になる可能性もあるのです。
「後回しで大丈夫だろう」「何をすればいいか分からないからそのままにしている」という方も多いのですが、名義を変えないまま時間が経ってしまうと、相続人がさらに亡くなり、相続関係が2代3代と複雑になってしまうというリスクもあります。
相続した不動産の価値を守る第一歩は、「法的に自分の所有物にすること」から始まります。
賃料収入に安心しきらず、物件の「本当の状態」を知ることが大切
毎月、家賃が入ってきていると、「このまま持っていれば良い」と考えがちです。しかし、家賃収入が継続していても、管理費や修繕積立金、固定資産税、火災保険料などを差し引いた後に、実際に手元に残る金額がどのくらいあるのか――その「収支の実態」を把握できていないケースも多く見られます。
また、築年数の経過や空室リスク、周辺環境の変化(近隣に大型物件ができる、駅の利便性が下がるなど)によって、将来的に収益性が落ちることもあり得ます。
投資用マンションは「持っていれば安泰」という資産ではなく、市場や管理状態に応じて価値が上下する動的な資産です。だからこそ、定期的な確認と判断が求められます。
税金の知識が「判断を左右する」時代
相続税の評価は現金より不動産の方が有利な場合が多く、「税金がかからなかったからラッキー」と思っている方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、将来的にマンションを売却するとなると、今度は譲渡所得税の壁が出てきます。しかも、取得費が不明で譲渡益が大きく見積もられてしまうと、高額な納税が必要になることもあります。
こうした税制は、一定の条件を満たせば軽減できる特例が数多く用意されています。たとえば、「取得費加算の特例」などは、相続から数年以内に売却することで節税効果を得られる制度ですが、期限を過ぎてしまえば使えません。
つまり、「今後どうするかをなんとなく決める」のではなく、税制や法制度の知識を踏まえた上で、冷静に選択肢を整理することが、経済的なメリットを最大限に引き出すためには必要なのです。
「一人で抱え込まない」ことが、安心への第一歩
ここまでお読みいただいて、「やっぱり自分には難しそう」「そんなに色々なことを考えなきゃいけないの?」と感じた方もいらっしゃるかもしれません。それは当然のことです。
相続登記も不動産管理も税金も、それぞれが専門的な知識を必要とする分野です。ひとりで抱え込もうとすれば、時間も労力もかかり、不安だけが増してしまいます。
だからこそ、司法書士や宅地建物取引士といった専門家の力を借りながら、正確な情報に基づいて判断することが、安心への近道なのです。
特に、司法書士は登記の専門家であると同時に、相続や不動産に関する法律問題の相談にも対応できる法律職です。宅地建物取引士の資格も持つ司法書士であれば、物件の収益性や売却可能性といった不動産的な観点からも、より実務的なアドバイスが可能です。
相続した「投資用マンション」は、使い方次第で「負担」にも「味方」にもなります
投資用マンションを相続したことは、ご自身にとって新しい人生の選択肢を得たとも言えます。それが将来的に「安定した資産」になるのか、あるいは「思わぬ負担」となるのか――それは、今どのような行動を取るかにかかっています。
焦る必要はありませんが、放置もまたリスクです。
まずは物件の名義、契約状況、税金の仕組みなどを一つひとつ丁寧に確認し、必要に応じて信頼できる専門家に相談してみてください。
「相続」という人生の節目が、次の世代にとっても安心と納得の残るものとなるよう、今できる一歩を踏み出すことが何よりも大切です。
あなたとご家族の大切な資産が、将来にわたって有意義に活かされることを心より願っています。