【自分たちで売主買主を決めたらはじめる不動産売買の手続き】名古屋のごとう司法書士事務所

0120-290-939
お問い合わせはこちら

ブログ

【自分たちで売主買主を決めたらはじめる不動産売買の手続き】名古屋のごとう司法書士事務所

2025/03/26

まずはじめに

最近では、不動産の売買を不動産会社を通さずに進める「直接取引」の相談を受けることが増えてきました。たとえば、「親族間で土地を譲りたい」「知人に持ち家を売ることになった」「離婚にともなって名義変更をしたい」といったように、すでに売主と買主の間で条件がある程度まとまっているケースでは、「このまま手続きだけ進められればいいのに」と感じる方も多いようです。

実際、売主・買主の双方が納得しており、信頼関係がある場合には、不動産会社に仲介を依頼しなくても、売買契約や登記の手続きを進めることが可能です。特に家族間や友人間の取引では、仲介手数料の負担を避けたいという思いもあるでしょう。しかし、その一方で「契約書ってどうやって作るの?」「登記の手続きって自分でできるの?」「税金はかかるの?」といった疑問や不安の声も少なくありません。

不動産の売買は、人生の中でもそう何度も経験することではないため、たとえ身内や知人同士であっても、形式や手続きをおろそかにすると、後々のトラブルにつながることがあります。売買契約書の記載内容ひとつで責任の所在が変わったり、登記の申請に不備があると法務局で受理されなかったりと、専門的な知識が必要な場面も多くあります。

そこで本記事では、「自分たちで売主・買主を決めたあと、どのようにして不動産売買の手続きを進めるのか?」という視点から、契約書作成のポイントや登記の流れ、必要な書類、税金や費用の注意点まで、司法書士兼宅地建物取引士としての立場からわかりやすく解説いたします。専門的な手続きを正確に進めながらも、安心して不動産のやり取りを行うために、ぜひ最後までお読みください。

1.まずは「売買契約書」の作成と締結から

不動産の売買手続きを始めるにあたり、まず最初に必要となるのが「売買契約書」の作成と締結です。
すでに売主と買主が決まっている場合であっても、正式な売買契約書を交わしておくことは、取引の安全性と法的な有効性を確保するうえで非常に重要です。

売買契約書は“取引の骨組み”となる基本文書

不動産の売買においては、「口約束」だけで取引を進めてしまうと、後々のトラブルにつながるリスクが非常に高くなります。金額、引渡しの時期、境界の取り決め、設備の扱いなど、双方が当初は合意していたつもりでも、日が経つにつれて記憶に食い違いが生じたり、認識のズレが明らかになったりすることがよくあります。

そのようなトラブルを防ぐためにも、売買契約書は必ず作成し、双方でしっかりと内容を確認した上で署名・押印を行うことが大切です。契約書は単なる形式的なものではなく、「何をどのような条件で売買するのか」「いつ、誰が、何をするのか」という、取引のルールを明文化するための文書なのです。

契約書に記載すべき具体的な項目

売買契約書に記載すべき代表的な内容は以下のとおりです。これらは一例であり、取引内容や当事者の事情に応じて、個別の条項を追加することもあります。

  • 当事者の情報:売主・買主それぞれの氏名・住所(法人の場合は法人名・代表者名)

  • 物件の特定:登記簿上の表示に基づく正確な土地・建物の記載(所在、地番、家屋番号、面積など)

  • 売買代金の額と支払条件:全体の金額のほか、手付金・中間金・残代金の支払時期・方法

  • 所有権移転の時期:原則として残代金の支払と引換えに所有権が移転する形が一般的

  • 引渡しの時期・方法:物件の引渡し日時と、鍵や設備の扱いなどの詳細

  • 公租公課の負担区分:固定資産税や都市計画税などの清算を行う場合、その基準日や計算方法

  • 契約不適合責任(旧・瑕疵担保責任):売主がどこまで責任を負うか、期間や補償内容の明記

  • 違約条項・解除条項:契約が履行されなかった場合の対応策(違約金の定めなど)

  • その他特約事項:住宅設備の引継ぎ、境界に関する事項、建物の用途制限など、個別の合意内容

記載漏れがあると、後で「聞いていなかった」「そんな条件だと思っていなかった」といった主張が出る可能性があります。特に不動産は高額で、引渡し後に発覚した不具合や境界の問題が裁判に発展することもあるため、契約書の内容は細かく丁寧に詰めていくことが重要です。

手付金のやり取りには注意が必要

売買契約の際には「手付金」を授受することが一般的ですが、この扱い方にも注意が必要です。民法上、手付には「解約手付」の性質があり、買主は手付金を放棄すれば、売主は受け取った手付金の倍額を返還すれば、それぞれ契約を解除することが可能です(履行に着手するまでに限る)。

そのため、契約の段階で手付金の額や性格(違約手付・解約手付の区別)を明確にしておくと安心です。また、解除時の違約金との関係や、支払いが遅れた場合の扱いについても条項に明記しておくと、後の紛争を予防できます。

印紙税の貼付も忘れずに

売買契約書を作成した際には、印紙税の納付が必要です。不動産売買契約書は課税文書に該当するため、契約金額に応じた収入印紙を貼付し、消印する必要があります。たとえば、売買金額が1,000万円超〜5,000万円以下の場合、印紙税は1万円(軽減措置の対象期間であれば)となります。

なお、印紙税の納付義務者は、契約書を作成する当事者双方です。ただし、実務上は買主が全額を負担するケースが多く見受けられます。このあたりも事前に協議しておくとよいでしょう。

専門家のチェックを受けることも選択肢に

売買契約書はインターネット上でも雛形が出回っていますが、個別の事情や不動産の特性によっては、雛形では不十分なことも多々あります。特に、相続した不動産を売る場合や、再建築不可物件、借地権、共有名義など、法的に複雑な要素があるケースでは、事前に司法書士や宅地建物取引士にチェックを依頼することで、思わぬ落とし穴を避けることができます。

契約書は、後戻りができない「重要な合意の証」です。だからこそ、形式的に済ませるのではなく、一つひとつの内容に納得しながら進めることが、安心で円滑な不動産取引の第一歩となるのです。

2.登記手続きの準備と実行(司法書士の関与が必要)

不動産の売買契約が締結された後は、**「所有権移転登記」**という名義変更の手続きを行う必要があります。
この登記手続きは、単なる事務作業ではなく、「誰が正当な所有者なのか」を法的に公示する重要な手続きであり、不動産取引における最終段階とも言えます。契約書が存在しても、登記がなされていなければ、第三者に対してその権利を主張することはできません。

所有権移転登記とは?

所有権移転登記とは、法務局が管理する登記簿に、所有者が変更されたことを正式に記録する手続きです。
不動産の売買、贈与、相続など、所有権が他人に移るあらゆる場面で必要になります。

売買における所有権移転登記は、通常は買主が申請人となります。ただし、売主の協力(必要書類の提供など)が不可欠であり、また、登記手続きは高度な法的知識と正確な書類作成が求められるため、司法書士に依頼するのが一般的です。

登記手続きに必要な書類一覧

登記申請には多くの書類が必要で、それぞれに記載内容や取得方法に注意が必要です。主な書類は以下のとおりです。

【売主が用意する書類】

  • 登記識別情報通知(いわゆる「権利証」)

  • 印鑑証明書(発行後3か月以内)

  • 固定資産評価証明書(課税明細書でも可)

  • 本人確認書類(運転免許証等)

【買主が用意する書類】

  • 住民票(登記簿への記載用)

  • 本人確認書類

  • 代理人を立てる場合は委任状

【共通書類】

  • 登記申請書(正確な記載が求められる)

  • 登記原因証明情報(売買契約に基づく証明書類)

  • 不動産の登記事項証明書(事前確認用)

  • 収入印紙(登録免許税の納付に使用)

これらの書類には、それぞれ取得先や発行期限の制限があります。たとえば、評価証明書は市区町村役場で取得できますが、評価額が売買価格に影響することもあるため、注意が必要です。また、権利証を紛失している場合は、別途「事前通知制度」や「本人確認情報」を用いた代替手続きが必要となります。

登記のタイミングと実行方法

登記申請は、売買契約締結後、代金の支払い(残代金の支払)と物件の引渡しが完了した当日またはその直後に行うのが一般的です。このとき、売主と買主双方の立ち会いのもと、司法書士が登記申請をオンラインまたは法務局窓口で行います。

特に近年は「オンライン登記申請」が普及しており、司法書士が電子申請システムを通じて迅速に手続きを進めるケースが増えています。ただし、事前にすべての書類がそろっていることが前提です。書類の不備や記載ミスがあると、登記が却下されてしまい、最悪の場合には取引が無効になるリスクもあります。

なぜ司法書士の関与が不可欠なのか?

登記の実務には専門知識が不可欠であり、申請書類の作成、原因証明情報の作成、添付書類の整合性確認など、素人では対応が難しい点が多くあります。
司法書士は法務局への登記手続きの専門職であり、登記に関する全体の流れをコントロールする「法的な交通整理役」として機能します。

また、登記手続きにあたっては、本人確認義務や登記原因の真実性の確認も司法書士の重要な役割です。売買詐欺や不正登記を未然に防ぐために、売主・買主の本人確認や意思確認、契約内容の適正性を丁寧にチェックし、公正かつ安全な取引が実現できるようサポートします。

3.税金や費用の確認も忘れずに

不動産の売買を行う際には、登記や契約といった「手続き」だけでなく、そこに伴う「税金」や「費用」についても、あらかじめ正確に把握しておくことが重要です。これらの費用は取引の総額に影響を与えるため、事前に確認しておかないと、思わぬ出費に驚くことになりかねません。

不動産売買に関係する主な税金

不動産売買に関係する税金は、主に以下のとおりです。

【買主が支払う税金】

  • 登録免許税(所有権移転登記時に法務局へ納付)
     ⇒ 税率は原則2%ですが、軽減措置が適用される場合は1.5%または0.3%などに引き下げられます。課税対象は「固定資産評価額」で、売買価格ではありません。

  • 不動産取得税(不動産を取得した後、都道府県から課税通知)
     ⇒ 原則4%(住宅や一定の条件で軽減あり)。取得後半年~1年以内に通知が来ることが多いです。

【売主が支払う可能性のある税金】

  • 譲渡所得税(所得税+住民税)
     ⇒ 売却益(=売却価格 − 取得費 − 諸費用)が発生した場合に課税されます。
     ⇒ 所有期間5年超なら「長期譲渡所得」として税率が軽減(約20%)、5年以下なら「短期譲渡所得」で約39%の課税。

その他の諸費用

税金のほかにも、以下のような費用が発生します。

  • 売買契約書に貼付する印紙税(契約金額によって異なる)

  • 司法書士への報酬(登記手続きの代理費用。物件の種類や所在地によって異なる)

  • 登記事項証明書や印鑑証明書などの取得費用

  • 測量費や境界確定費用(必要な場合)

  • 金融機関のローン抹消登記費用(売主に残債がある場合)

これらの費用は誰が負担するのかを事前に合意しておくことが大切です。特に、親族間や知人間の売買では、「お金の話はしにくい」と後回しにされがちですが、実際には明確な取り決めがないことが原因で揉めてしまうこともあります。

税務申告が必要なケースとは?

売主に譲渡所得が発生した場合や、買主が住宅ローン控除を利用する場合など、確定申告が必要となるケースがあります。
また、相続で取得した不動産を売却する場合には「取得費加算の特例」「空き家の特例」など、適用できる税務優遇もあるため、事前に税理士や司法書士に相談しておくと安心です。

税金は、「取引後に思わぬ負担が発生した」と後悔しやすい分野でもあります。事前の確認と正しい理解が、安心・納得の不動産売買につながります。

まとめ

不動産の売買は、人生の中でもそう何度も経験することのない、大きな取引です。とりわけ、不動産会社を介さずに、すでに売主と買主が決まっている状態で取引を進めるケースでは、「仲介手数料を節約できる」「顔の見える相手との安心感がある」などのメリットがある一方で、契約や登記、税務など、重要な法的手続きを自分たちで適切にこなす必要があります。

まず何よりも大切なのが、売買契約書の作成です。ただの確認書ではなく、法的に有効な契約書を交わすことが、当事者双方の権利を守る第一歩になります。記載内容が不十分であったり、責任の範囲が曖昧なまま契約してしまうと、のちのちトラブルに発展するおそれがあります。物件の引渡し時期、瑕疵への対応、税金の負担区分など、細かな部分までしっかりと取り決めておくことが肝心です。

その後の登記手続きにおいては、司法書士の関与がとても重要になります。所有権移転登記は単なる名義変更ではなく、「誰がその不動産の正当な所有者であるか」を社会に公示する制度であり、不動産取引の完了を法的に確定させる非常に大切な工程です。登記申請には多くの書類が必要で、少しの不備が大きなトラブルにつながることもあるため、プロによるチェックと手続き代行は、安心と確実性の大きな支えとなります。

さらに、税金や費用の理解も欠かせません。不動産取得税や登録免許税、譲渡所得税、印紙税といった各種の税金が関係し、申告義務が生じる場合もあります。税制は年々変わることもあるため、古い情報を鵜呑みにせず、最新の制度や軽減措置についても確認することが大切です。知らずに放置していると、後で予想外の納税通知が届いて驚くことも少なくありません。

このように、不動産の売買は「契約・登記・税務」の三本柱から成り立っています。とくに家族間や知人間での売買のように、信頼関係が前提にある取引こそ、あえて形式を丁寧に整えることで、関係をより良好に保ち、後々の安心にもつながります。

当事務所では、不動産の専門家である司法書士兼宅地建物取引士として、契約書の作成から登記申請、税務面の留意点まで、オーダーメイドで丁寧にサポートしております。大切な資産をめぐる取引を、確実に、そして円満に進めるために、少しでも不安がある方は、専門家に相談してみることをおすすめします。