相続で必ず押さえておきたい3選【相続の相談なら名古屋のごとう司法書士事務所】
2020/05/15
ポイント1 相続で期限があるもの
相続が開始するとスタートしてしまう期限のある手続きは以下のとおりです。
① 相続放棄、限定承認 → 3ヶ月以内
② 所得税の準確定申告 → 4カ月以内
③ 相続税の申告及び納付 → 10カ月以内
税金に関することが多いですが、法的な手続きは、①の相続放棄等です。
一般の方の相続では、①②③ともに無関係のことも多く、知らなくても結果として影響はないケースもあります。しかし、もし該当するのみ忘れていては大変ですので、必ずご自身の相続で必要かどうかチェックをするようにして下さい。
1-1 相続放棄等とは
相続開始~3カ月以内
相続開始後、すぐに期限がくるものに「相続放棄」というものがあります。
相続放棄とは、亡くなった被相続人の相続人に相続開始からならない内容にするための手続きです。3カ月以内に相続放棄の手続きをすることで、最初から相続人でなくなるという相続放棄の効果が相続開始時にさかのぼって発生します。
相続人でなくなりますので、預金、現金、不動産などの財産を承継しないことは当然ですが、被相続人の債務(借金等)も承継しません。
相続放棄を利用する典型的な例は、被相続人に多額の借金がある又は多額の借金が疑われるような場合です。
被相続人と同居をしている場合や生前に交流がある場合は、被相続人の借金等の債務について把握できていることも多いですが、あまり交流がない場合やそもそも面識がほとんどない相続人は、まったくわからないと思います。親族や施設・病院関係者などからヒアリングをして情報を集めるようにしましょう。
銀行、クレジットカード会社、消費者金融などの場合は、信用情報機関に照会をして取引状況を調べることができます。相続人であれば、手数料を支払えば調査が可能です。この信用情報機関はいくつかありますので、必要だと思われる業界の信用情報機関に調査をしましょう。
1-2 準確定申告とは
相続開始~4カ月以内
準確定申告とは、被相続人が亡くなった年の所得の確定申告のことです。
通常の確定申告は、1月1日から12月31日までの所得に関して翌年の2月16日~3月15日までに確定申告と納付をします。しかし、相続の場合は、1月1日から死亡日までの分について、相続開始後4カ月以内に所得に関しての確定申告をする必要があるのです。これを「準確定申告」と呼んでいます。
この準確定申告は、通常の確定申告のことですから、被相続人が生前に確定申告をしていたか否かが必要か否かの判断基準になります。個人事業を営んでいる場合(自営業)の場合は、毎年確定しんこ菊をしているはずです。しかし、会社員や年金受給者の方は確定申告をしていないことが多いのではないかと思います。会社が年末調整をしてくれますので。
住宅ローンや医療費控除、寄付金控除がある場合は、準確定申告でも通常の確定申告のように還付の手続きができます。
なお、医療費控除の際に注意点があります。対象となる医療費は、生前に被相続人が支払った医療費です。相続開始後、相続人等が支払った医療費は、この準確定申告の際に医療費控除の医療費として扱うことはできません。
1-3 相続税の申告・納付とは
相続開始後~10カ月以内
相続により、一定以上の遺産を承継する場合には「相続税」が発生することがあります。
相続税が発生する場合は、相続開始後10カ月以内に準備計算をして申告する必要があります。また、申告時に納付もします。相続税が多額になる場合は、相続財産の売却等をして用意する必要があるかもしれませんので注意しましょう。
相続税の計算は細かい作業が必要ですが、大まかに発生するか否かの判断は以下の方法で行います。
遺産が次の基礎控除額を超える場合やほぼ基礎控除額と同額ぐらいの場合は、相続税の申告を具体的に検討・準備するようにしましょう。
【相続税の基礎控除額】
3000万円+(600万円×法定相続人の数)= 基礎控除額
遺産の評価額は、上記の概算をする段階ではざっくりとしたものでも構いません。
最初は、検討した方が良いのかざっくりと判断できる程度でよいでしょう。
現金や預金はそのままの数字です。不動産は、土地は路線価、建物は固定資産税評価額を使います。上場株式もとりあえず亡くなった日の終値でも構いません。経営していた会社の株式など(非上場株式)は、計算方法が難しいので会社の税理士の方等に計算をして頂く必要があります。
※路線価とは、相続税や贈与税の計算をする際の不動産の評価額を示すものです。国税庁のホームページに掲載されています。対象土地の前面道路の㎡単価が記載されているので、それに面積をかけてざっくりと計算をしましょう。なお、詳細な計算方法がありますが、最初はざっくりと計算をすればよいと思います。必要に応じて細かい計算を行って下さい。
ポイント2 遺言書の有無の調べ方
被相続人が遺言書を作成しているか否かは、相続にとって大切な問題です。
誰が相続をするのかあらかじめ決められているのか、相続人で話し合って遺産の分配を決めることができるのかが決まってきますので、必ず相続後、最初の段階でチェックしましょう。
遺言書の有無は、まずは、同居の親族等に確認をしましょう。また、司法書士や弁護士などの特定の誰かに預けている場合もあります。司法書士等に遺言書の作成を依頼して、遺言書完成後、謄本等を預けているケースもあります。
しかし、同居の親族等も知らないことがあります。そのような場合、例えば公正証書遺言の場合は、遺言書の有無を照会して調べることができます。遺言検索システムがあるのです。
平成元年以降に作成されている場合、最寄りの公証役場から全国の公証役場で作成された遺言書を調べることができます。相続人であれば、当然照会請求が可能です。なお、司法書士でも委任状を頂いて代わりに調査をすることができます。
なお、自筆証書遺言の保管制度を利用している場合は、公証役場による公正証書う遺言と同様に検索をすることができます。また、相続人への通知を希望していれば、相続人に通知が届きます。相続人であれば、本人が亡くなった後に法務局に対して遺言書の閲覧請求ができるのです。
ポイント3 相続時に住宅ローンがある場合
ほとんど人は、自宅を購入する際に住宅ローンを組んで購入していると思います。
住宅ローンを組む際に入っている保険があります。
「団体信用生命保険」です。通称「団信(だんしん)」と呼ばれています。
これは国民が安心して自宅を購入することができるように設けられた保険です。
通常、住宅ローンは、クレジットカードの支払いや車のローンなどと同様に被相続人の債務です。相続人にそのまま承継されるものです。
しかし、この住宅ローンに付随する団信という保険に入っていると残った住宅ローンを支払う必要がなくなるのです。
団信付きの住宅ローンの場合、債務者である被相続人の死亡によって住宅ローン残高に相当する保険金が、銀行など金融機関に支払われます。これによって、住宅ローンが一括して返済されるのです。この仕組みのおかげで一家の柱となっている方が亡くなっても残された人は自宅にそのまま住んでいけるのです。住宅ローンの返済がありませんので、固定資産税等の支払いだけをしていけばいいのです。
では、相続税の計算において、住宅ローンと保険金はどのように取り扱われるのでしょうか?
一見すると、住宅ローンは相続時に存在する債務であり、生命保険金が支払われているようにも思えます。
結論としては、住宅ローン債務と団信の保険金は、相続税の計算においては、ないものとして計算されます。
相続税は相続開始時点での財産や債務を対象にしますが、住宅ローンは相続発生により直ちに返済されます。また、団信の生命保険金は相続にが受け取るのではなく、銀行等の金融機関が受け取ります。そこで、上記のように住宅ローンを団信の生命保険ともに、相続税では考慮しなくてよいとされています。
最後に
名古屋の司法書士が、相続の手続きで注意しておきたい点を3つほどご紹介しました。
ぜひご参考にしてみて下さい。
相続では、単なる財産の承継にとどまりまらないことがあります。今回ご紹介した期限のある手続きもあり、検討すべき事項は多義にわたるのです。相続手続きの場面においても、遺産分割協議という話し合いが必要です。財産についての話し合いですから、相続人同士で考えの探り合いをしながらの話し合いになるかもしれません。その際、相続人である当事者間だけでは、年齢や経験も違い、公平な遺産分割協議ができないと感じる相続人がいるかもしれません。相続に関する知識や情報の格差は、不安を招き、疑心暗鬼に陥ってしまうこともあるようです。
相続の遺産分割の時に、司法書士などの相続専門家を調整役としていれることで相続や遺産分割協議に客観性が生まれることがあります。司法書士が、相続に関する法律の説明や手続きを公平に解説し、各相続人の希望を叶えるためにどうすることが良いのかその方法をご提案できます。そうすることで、相続に関する知識や情報に不安のある相続人も安心して相続手続きや遺産分割協議に協力することができます。
些細な行き違いでトラブルになってはもったいないです。これまで多数の相続手続きにかかわってきましたが、ちょっとしたことが原因でケンカになり、遺産分割が進まず、裁判になってしまったケースを見てきました。裁判となって弁護士費用などを支払うぐらいなら、最初から第三者の専門家に入ってもらって、公平で円満な相続手続きをした方が費用がお得です。
いずれにしても、相続人全員でトラブルのない円満な相続手続きを目指しましょう。