共有で相続した不動産を売却する時【名古屋のごとう司法書士事務所】
2020/03/23
1 空家の譲渡所得の特例とは
相続により被相続人の居住用家屋及び敷地を個人が取得した場合、一定の要件のもとに売却・譲渡したときは、譲渡所得の計算において3000万円の特別控除を適用できます。
例えば、被相続人の自宅を相続したが、未使用の空き家の場合です。この場合、耐震基準を満たすリフォーム等を行い土地と家屋で売却する又は家屋を解体して更地で売却することが考えられます。このように不動産を将来に向けて有効活用する場合は、税金面でメリットを設けているのです。
(1) 被相続人の居住用家屋とは
被相続人の居住用家屋とは、相続開始の直前において被相続人の居住の用に供されていたもので、かつ以下の条件を満たすこのです。
① 昭和56年5月31日以前に建築されていること
② 区分所有建物(=マンション)でないこと
③ 相続開始の直前において、被相続人以外に居住していた者がいなかったこと
(2) 適用期間の要件とは
この特例の適用を受けるには、相続日から起算して3年を経過する日の属する年の12月31日までで、かつ、※特例の適用期間までに譲渡することが必要です。
※平成28年4月1日から令和5年12月31日までとされています。なお、この期間は延長されることがありますので、国税庁のホームページなどで詳細はご確認下さい。
(3) 譲渡の際の条件
空家の3000万円の特別控除の特例を受けるには、譲渡の際に以下の条件も満たす必要があります。
① 譲渡価額が1億円以下であること
② 土地と家屋を譲渡する場合、譲渡に家屋は現行の耐震基準に適合するものであること
※家屋については、確定申告手続きの際、耐震基準適合証明書をつける必要があります。
②の場合は注意が必要です。空き家をいわゆる現況有姿の売買でする場合は家屋に要件があるのです。買主サイドで更地での活用を考えている場合は、わざわざリフォームをして耐震基準を満たす必要はないので、家屋を解体して更地で引き渡す売買にした方が良い場合があります。
この場合に、この特例を適用するためには、家屋の取り壊しは必ず売主側で物件の引渡し前に行う必要があるので注意しましょう。さらに確定申告の手続きに添付する書類として「被相続人居住用家屋等確認書」を市区町村から交付を受ける必要がありますが、その際、解体工事の請負契約書写し等の提出する場合は、請負契約は売主の名義で契約をする点にも気をつけましょう。
2 共有で相続した場合の空家の譲渡所得の特例の適用
被相続人の居住用家屋及び敷地を共有で相続し、その状態で譲渡・売却をした場合、空家の譲渡所得の特例である3000万円の控除については、その居住用家屋が一定の要件を満たしていれば、共有者それぞれについて3000万円の控除が適用されます。
AとBの共有で相続して登記名義を変更した後、ABが売主として売却すると、空家の譲渡所得の特例は、Aは自分の計算において3000万円の控除が使えますし、Bも自分の譲渡所得の計算において3000万円の控除が使えます。
このように空家の譲渡所得の特例である3000万円の控除は、共有者ごとに適用を受けることができるのです。
まとめ
以上、今回は、不動産を共有で相続した後に譲渡・売却をする際の空家の譲渡所得の特例の適用について解説しました。
譲渡の際には、共有者各人においてそれぞれ3000万円が適用されますので、それぞれが他の共有者とは無関係に計算をして確定申告すればよいことになります。
この3000万円の特例を受ける場合は、確定申告が必要です。この確定申告は、譲渡や売買の翌年になることが多いので忘れないようにしましょう。