遺産分割協議書には印鑑証明書が必ず必要?【名古屋のごとう司法書士事務所】
2020/02/05
遺産分割協議書には必ず相続人本人の署名と実印押印が必要なのか?
1.遺産分割は何のためにするのか
相続が開始すると、遺産の承継が起こります。
遺言書があれば、遺言書の内容に沿って遺産の承継を行います。例えば、「自宅を妻に相続させる。○○銀行の預金を長男に相続させる」といった内容であれば、その内容に沿って、妻や長男が遺産の相続手続きを行います。
しかし、遺言書がない場合は、相続人全員で遺産の分配方法を話し合う必要が出てきます。法定相続分ですべての財産を共有するのは現実的ではない場合が多いので、ほとんどの場合では、遺産分割協議によって、相続人が取得する財産を決定することが多いのです。
民法では、妻が自宅を取得するとか、子供が預金を相続するなどの具体的な相続方法を定めていません。法定相続分という割合を定めているだけなのです。そこで、相続人で話し合って具体的に誰がどの財産を取得するのかを決定する必要があるのです。
2.遺産分割協議書の作成
相続人の話し合いで、誰がどの財産を取得するのか決まるといよいよそれを書面化します。この書面を「遺産分割協議書」と呼びます。
法律上は、遺産分割協議を必ずしなくてはいけないわけではないので、そのやり方や作成方法も決まっていません。
しかし、実際の実務では、相続人が署名し、実印を押印しています。さらに遺産分割協議書の一部として印鑑証明書もつけています。
理由としては、まず、遺産分割内容について後日紛争が起きないようにするためです。各相続人の意思を明確にし、あとから言った言わないのトラブルを回避できます。
自分でサイン(署名)をして、通常は本人しか持っていないであろう実印を押印しているわけですから、あとから、遺産分割内容を知らないとか、言い逃れのようなことはできなくなります。遺産分割内容を確定させる効果があるのです。
もう一つは、相続手続き上の要請です。
上記の理由から、相続登記をはじめ、預貯金、株式、投資信託などの各種相続手続きでも基本的に、遺産分割協議書には必ず実印の押印とそれに対応する印鑑証明書の添付が要求されているのです。
相続登記で名義変更する法務局や預金を払い戻しをする銀行などの金融機関にしても、権利のない相続人へ財産を承継させないために厳格な書類で手続きを行う決まりになっています。それほど大したことのない財産であれば別ですが、そうではない財産の相続手続においては、ほとんどのところでそのような取り扱いになっています。
最後に
以上、名古屋の司法書士が、今回は、遺産分割協議書作成における、本人の署名や実印の捺印について解説しました。
法律上は、特に署名や実印がないと無効になるというわけではありませんが、実際の相続登記などの各相続手続きにおいては使えないので、結局、最低でも実印の押印や印鑑証明書の添付は必要になってしまいます。後日の紛争回避と手続き上の要請により、実際はそのやり方に従うしかないと思います。
遺産分割協議書の書き方や実際の内容についてはまた別の機会で解説したいと思います。
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