【遺産分割で大切にしたいコトバ】名古屋のごとう司法書士事務所

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【遺産分割で大切にしたいコトバ】名古屋のごとう司法書士事務所

2025/12/11

まずはじめに

相続という言葉には、法律やお金といった現実的な側面がある一方で、私たちの心に深く関わる「感情」や「人間関係」が強く影を落とす場面でもあります。とりわけ、親や配偶者など、身近な大切な人を亡くした直後に訪れる「遺産分割協議」は、心の整理もつかないまま、兄弟姉妹や親族と財産について話し合いを進めなければならないという、非常にデリケートな局面です。

遺産の分け方に関する話し合いと聞くと、多くの方が「お金の取り合い」「揉め事になりそう」というマイナスの印象を持たれるかもしれません。実際、相続をきっかけに兄弟姉妹の仲が悪化してしまった、というご相談も決して少なくはありません。しかし、その一方で、丁寧に言葉を選び、相手の立場に寄り添いながら話し合いを進めたことで、家族の絆を深められたという声もあります。

つまり、遺産分割という手続きのなかで「どんな言葉を使うか」「どのように気持ちを伝えるか」は、その後の家族関係にとってとても大きな意味を持つのです。たとえ相続財産の内容が複雑でも、関係性が難しくても、言葉一つで空気が変わることがあります。逆に、たった一言で長年の信頼が壊れてしまうこともあります。

「長男だから当然だ」「自分は介護をしてきたから多くもらって当然」――こうした“正しさ”を前面に出す言葉は、他の相続人の心に波紋を広げてしまうことがあります。その一方で、「いままでありがとう」「この機会にみんなで話せてよかったね」といった、相手を思いやるひと言があるだけで、場の雰囲気はやわらぎます。

本記事では、司法書士として多くの相続手続きをサポートしてきた経験をもとに、「遺産分割の場面で大切にしたい言葉」について、法律的な視点だけでなく、人と人との関係性を重視した視点からお伝えしていきます。相続で家族の仲が悪くなるのではなく、「話してよかった」と思える遺産分割にするために――。これから相続に向き合う皆さまに、少しでもお役に立てる内容になれば幸いです。

1 「法律」より先に「気持ち」を尊重する

相続手続きにおいて、遺産の分割は民法に定められたルールに従って行われます。
法定相続分という基準があり、それに基づいて財産を分けることが原則となります。しかし、現実の相続の場面では、法律だけでは整理できない「気持ち」の問題が立ちはだかります。

相続というのは、単に不動産や預貯金といった財産をどう分けるかという作業にとどまりません。
それまでの家族の関係性、介護や同居の有無、親との関わり方、兄弟姉妹それぞれの人生背景――こうした、法文には書かれていない「物語」が、一人ひとりの心に存在しているのです。

例えば、あるご家族では、長年親と同居して介護を担ってきた娘さんが、他の兄弟から「法定相続分通りに分けよう」と言われ、大変ショックを受けてしまったということがありました。兄弟にとっては法律に従った当然の提案だったのかもしれません。しかし、娘さんにとっては、「親を見送ったあとの労いの言葉もなく、まるで自分の苦労が無視されたように感じた」と涙ながらにお話されていました。

一方で、別のご家族では、同じような状況でも話し合いがスムーズに進んだ例もあります。その理由は、分け方の前にまず「ありがとう」という言葉があったことでした。「お姉ちゃん、ずっとお母さんの面倒をみてくれて本当にありがとう。感謝してるよ」と弟さんが伝えたことで、話し合いの空気が和やかになり、誰もが納得できる形に落ち着いたのです。

こうした場面を司法書士として何度も目にしてきて強く感じるのは、「相続において一番大切なのは、最初に“心を通わせる”こと」だということです。
もちろん、法律的な手続きはきちんと守らなければなりません。
けれども、話し合いの土台が不信感や怒りでできている状態では、どんなに法的に正しい提案をしても、受け入れてもらうのは難しいものです。

まずは、相手がどう感じているのか、どんな思いを抱えているのかに耳を傾ける。
そして、自分の主張を押しつけるのではなく、「私はこう思っているけれど、あなたはどう感じている?」と、相手にも語ってもらう姿勢を持つ。
そういった対話の積み重ねこそが、遺産分割協議を円満に導く最大の鍵になるのです。

遺産分割の話し合いでは、時として長年のわだかまりが表に出てくることがあります。
「小さいころからお兄ちゃんばかり可愛がられていた」「私は家を出て、苦労して一人で生きてきた」など、過去の思いが噴き出すこともあります。
それでも、相手の言葉に対して「そんなの知らない」「関係ない」と突っぱねてしまえば、溝は深まるばかりです。

逆に、「そうだったんだね。いろいろな思いを抱えていたんだね」と受け止めるだけで、相手の心は驚くほどやわらぎます。
人は、自分の気持ちを理解してもらえたと感じると、自然と相手にも優しくなれるものなのです。

法律は大切です。でも、それ以上に「人と人との気持ちのつながり」を尊重する姿勢が、相続においては何よりも大きな意味を持ちます。
法律をうまく活かすためにも、まずは「気持ちに向き合う」。
それが、争わない相続、納得できる遺産分割への第一歩になるのです。

2 「平等」は「公平」とは限らない

相続の話し合いになると、よく耳にするのが「法定相続分に従って、平等に分けましょう」という言葉です。
一見、これはとても合理的で、誰にとっても納得のいく解決策のように聞こえます。法律にもとづいているのだから、当然だろうと思う方も多いでしょう。
しかし、実際の相続の現場では、「平等に分ける」という考え方が、かえって話し合いをこじらせてしまう原因になることも少なくありません。

ここで大切なのは、「平等」と「公平」は必ずしも同じではない、ということです。
法定相続分に従えば、たとえば配偶者と子どもが相続人であれば、配偶者が2分の1、子どもが残りの2分の1を人数で割って取得するというのが基本の考え方です。
しかし、それはあくまで“形式的な平等”であり、それぞれの家族の中にある現実や背景、関係性までは反映していないのです。

たとえば、長男が親と同居し、日常の生活の世話や看取りまで担ってきたという場合。
他の兄弟姉妹は遠方に住んでおり、ほとんど親の介護には関わらなかった。
それでも法定相続分に従えば、兄弟全員が同じ割合の遺産を受け取ることになります。
そのとき、介護を担ってきた方が心の中で「本当にこれでいいのか」と感じるのは、ごく自然なことです。

また、親が亡くなる前に、ある子どもだけに多額の生前贈与をしていた場合。
他の子どもたちにとっては「すでに財産をもらっているのだから、今回の相続ではその分を差し引いて考えるべきではないか」という気持ちが芽生えます。
一方でもらった側は、「親が自分の意思でくれたものだ」と主張することもあります。
こうした意見の違いは、法定相続分だけでは解決できません。

司法書士として相続の現場に立ち会っていると、こうした「感情の不公平感」が、話し合いを複雑にする大きな要因になっていると強く感じます。
人は、数字の上で平等でも、「気持ちの上での納得」がなければ、簡単には受け入れられないのです。
この「納得感」こそが、公平性のカギになります。

では、どうすれば「公平」な遺産分割が実現できるのでしょうか。

それは、相手の立場や経験に耳を傾け、違いを理解しようとする姿勢を持つことです。
「自分はこう思う」という主張をする前に、「相手はどういう状況だったのか」「どんな思いを抱えていたのか」を想像してみる――それだけで、話し合いの方向は大きく変わります。

たとえば、こう言ってみるのはどうでしょう。

「同居してくれていて本当に助かったよ。介護の大変さ、私には全部はわからないけど、感謝してる。」
あるいは、
「昔のことで知らなかったけれど、お兄さんが親の借金を返済してくれていたんだね。ありがとう。」
そんなひと言があるだけで、受け取る側の気持ちはやわらぎ、「じゃあ今回はこうしようか」と歩み寄るきっかけになることがあるのです。

もちろん、すべての意見が一致するとは限りません。
けれども、一人ひとりの置かれてきた立場や、心の中にある想いに目を向けることで、表面的な“平等”ではなく、心から納得できる“公平”な解決に近づいていくことができます。

数字では測れない価値がある。
それが、家族という関係性の中で進めていく相続の、本質なのだと思います。
大切なのは、「正しい分け方」ではなく、「納得できる分け方」をみんなで探していくこと。
そのためには、少しだけ相手の立場に立って考えてみる――
そんな姿勢が、円満な相続への道を開いてくれるのです。

3 「争族」にならないための言葉の選び方

相続に関する相談を受けていると、耳にすることが多くなった言葉があります。
それは「争族(そうぞく)」という言葉です。
本来、「相続」は、亡くなった方の思いを受け継ぎ、大切な財産を次の世代に引き継ぐ行為であり、家族の絆を改めて感じる機会でもあるはずです。
しかし現実には、この「相続」がきっかけで、兄弟姉妹が絶縁状態になったり、裁判にまで発展したりと、深刻な争いへと発展してしまうケースが後を絶ちません。

そしてその背景には、金額や財産内容の問題だけでなく、「言葉の衝突」があります。
人は、内容そのものよりも、“どのように言われたか”という部分に心を動かされます。
遺産分割の場面では、冷静さを保つことが難しくなるため、つい思ったことをそのまま口に出してしまい、結果として相手を深く傷つけてしまうことがあります。

たとえば、「それはもう私がもらうことに決めたから」「あなたは何もしてこなかったじゃない」というような言葉。
本人には悪気がなくても、言われた側には強い否定や非難として伝わってしまいます。
すると、それに対する反発や不信が生まれ、感情がこじれていきます。

司法書士として実際に立ち会ったケースで、遺産の内容自体はそれほど複雑でなく、分け方にも大きな争点はなかったにも関わらず、話し合いが難航したことがありました。
その原因は、ある兄弟の「お前たちは親の介護をしてこなかったから口を出す資格はない」という一言でした。
その瞬間、場の空気は一気に凍りつき、それ以降の話し合いは何を言っても平行線。
最終的には家庭裁判所での調停に持ち込まれることになってしまいました。

一方で、似たような状況でも、穏やかな言葉を選ぶことでスムーズに進んだケースもあります。
「私も親の介護に関われなかったこと、今でも申し訳なく思ってる」
「だから、できるだけ納得してもらえる形で進めたい」
そんな言葉が、相手の気持ちを和らげ、話し合いを“家族の会話”に戻してくれるのです。

つまり、遺産分割で最も大切なのは、「何を言うか」ではなく「どう言うか」。
言葉の選び方一つで、家族の未来が大きく変わってしまうのです。

ここで、遺産分割協議の場面で意識したい「やさしい言葉の使い方」の一例をご紹介します。

  • 「私の考えを押しつけるつもりはないけど、こう感じているんです」

  • 「お互いに納得できる形を一緒に考えられたら嬉しいです」

  • 「この先も家族として付き合っていきたいから、きちんと話しておきたい」

これらの言い回しは、相手を責めることなく、自分の気持ちを伝えながらも、対話の扉を閉ざしません。
相続という大切な場面だからこそ、相手の立場や感情に配慮した言葉選びが求められます。

また、感情が高ぶりそうな場面では、無理に言葉を続けるのではなく、少し沈黙を置くことも効果的です。
「ちょっと言葉を選ばせてください」「すぐには答えが出ないかもしれませんが、考えてみます」――そうした一言があるだけで、場の緊張がやわらぎます。

法律の世界では、合理性や形式が重視されますが、家族の話し合いにおいては、何よりも「関係性」と「気持ち」が大切です。
裁判所を通じた分割や調停にまで進んでしまえば、費用や時間がかかるばかりでなく、精神的な負担も非常に大きなものになります。
それを避けるためにも、まずは言葉で相手と心を通わせること。
それこそが、「争族」ではない、思いやりのある相続を実現するための第一歩なのです。

まとめ

相続というのは、単なる財産の分け合いではありません。
それは、家族それぞれの人生や関係性、これまでの歩みを映し出す、大切な節目でもあります。
そして、その節目をどう乗り越えるかによって、家族の未来のあり方も大きく変わってきます。

遺産分割の話し合いは、多くの方にとって初めての経験であり、慣れない言葉や手続きに戸惑うことも多いでしょう。
そのうえ、相続人同士の思いや記憶が交錯する中で、「どうしても納得できない」「感情が先立ってしまう」ということも起こります。
そうしたとき、私たちはつい、「正しさ」や「権利」を主張しがちです。
しかし、その前に一度立ち止まり、相手の気持ちや状況に心を寄せてみる――それだけで、話し合いの方向性は大きく変わっていくのです。

今回の記事では、遺産分割において「言葉」がどれほど重要な意味を持つかをお伝えしてきました。
まずは法律よりも「気持ち」を尊重すること。
次に、表面的な「平等」ではなく、本当の意味での「公平」を目指す視点を持つこと。
そして、争いを生まないための「言葉の選び方」を意識すること。
どれも、特別な知識や経験がなくても、心がけひとつで実践できることばかりです。

遺産分割を進めるうえで、司法書士のような専門家がサポートする場面ももちろんありますが、最終的に話し合いをまとめるのは「家族自身の言葉」です。
その言葉が相手を尊重し、思いやりに満ちたものであれば、相続は「争族」ではなく「想続(そうぞく)――想いをつなぐ機会」になるはずです。

財産は目に見えるものですが、人の気持ちや家族のつながりは目には見えません。
だからこそ、ひとつひとつの言葉を大切にすることが、これからの家族関係を育んでいく鍵となります。

遺産分割を通して、家族の歴史を振り返りながら、未来へ向けた新たな一歩を踏み出していただけたら――
そのためのお手伝いができるよう、私たち司法書士も、常に寄り添う姿勢を忘れずにいたいと考えています。

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