【相続登記のトラブル事例3選 ― 手続き前に知っておきたい落とし穴】名古屋のごとう司法書士事務所

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【相続登記のトラブル事例3選 ― 手続き前に知っておきたい落とし穴】名古屋のごとう司法書士事務所

2025/06/24

まずはじめに

相続登記という言葉を耳にしたことがある方は多いと思いますが、実際にその手続きを行う場面に直面すると、思わぬ困難やトラブルに巻き込まれることが少なくありません。2024年4月からは、相続によって取得した不動産の名義変更(相続登記)が義務化され、正当な理由なく3年以内に登記をしなかった場合には、10万円以下の過料が科される可能性がある制度が始まりました。このことにより、多くの方が「相続した不動産の登記を済ませなければならない」と意識するようになってきました。

しかし、現実には「登記のやり方が分からない」「相続人と連絡が取れない」「家族間で意見が合わず遺産分割ができない」など、制度を理解していても一筋縄ではいかない事情があるケースが非常に多く見受けられます。法律上の手続きが必要であることは分かっていても、感情や人間関係、過去の経緯などが複雑に絡み合い、相続がかえって家族間の対立を深めてしまうことすらあります。

とくに相続登記では、不動産の権利関係が明確になるという法的メリットの一方で、手続きを怠ることによって大きな不利益や将来のトラブルの原因になりうるリスクも存在します。たとえば、名義変更をしないまま放置していた結果、次世代の相続人が増えて手続きができなくなる「メガ共有」状態に陥ったり、共有名義にした不動産が将来的に活用や売却できず、資産としての価値を失ってしまうといった問題があります。

また、相続人の中に認知症の方や未成年者、連絡がつかない人がいる場合には、家庭裁判所を通じた特別な手続きが必要になるなど、事前に想定していなかったハードルが次々に立ちはだかります。こうした現実的な問題に直面したとき、多くの方が「もっと早く専門家に相談していればよかった」と感じられるのも無理はありません。

この記事では、実際のご相談事例をもとに、相続登記において特に多く見られる3つの典型的なトラブルについて詳しく解説します。それぞれの背景やリスク、回避のために必要なポイントを司法書士の視点からわかりやすくご紹介し、同じような悩みをお持ちの方にとって参考になる情報をお届けできればと思います。大切な不動産を円滑に引き継ぎ、後悔のない相続を実現するためには、現実のリスクを知り、適切な対応を知っておくことが非常に重要です。

1 行方不明の相続人がいて登記できない

【事例】
父親が亡くなり、相続人は長男・次男・長女の3人。母親はすでに他界しており、遺言書はない状態でした。次男と長女は実家近くに住んでおり、相続後の不動産の名義を変更しようと司法書士に相談しましたが、長男は10年以上前から家族と疎遠で、連絡先も不明。電話番号や住所も古く、現在の居場所がまったくわからないという状況でした。話し合いができないため、遺産分割協議が成立せず、登記手続きが進まないという問題が生じていました。

【解説】
相続登記を行うためには、まず相続人全員で遺産分割協議を行い、その結果を「遺産分割協議書」にまとめて、署名・実印押印と印鑑証明書を添付する必要があります。遺言書がない場合には、この協議が唯一の合意形成手段となるため、相続人のうち1人でも連絡が取れない、あるいは協議に参加できないという状態になると、登記は進めることができません。

こうした「行方不明の相続人」がいる場合には、家庭裁判所に対して「不在者財産管理人」の選任を申し立てるという法的手続きがあります。この制度では、行方不明者の財産を保全しつつ、その人の代理人として遺産分割協議に参加できる人物(たとえば弁護士や司法書士など)が選ばれます。この管理人が協議に加わることで、登記のための書類が整えられるようになります。

ただし、この手続きには複数の書類の準備や裁判所とのやり取りが必要であり、早くても1〜2か月程度、場合によってはそれ以上の時間がかかることがあります。また、管理人には報酬が支払われるため、申立人(通常は不動産を取得する相続人)がその費用を負担することになります。手続きが煩雑で時間がかかる一方で、正規の方法としてはこれが唯一の道となることが多いため、放置せず早めに着手することが大切です。

さらに、行方不明者が本当に生存しているのか、それとも亡くなっている可能性があるのかによっても対応が異なります。生死不明の状態が7年以上続いている場合には、「失踪宣告」の手続きをとることも可能ですが、こちらも裁判所を通じた手続きで、簡単には進まないため慎重な判断が求められます。

加えて、行方不明の相続人に法定相続分の財産が渡るような協議内容を考えていた場合でも、何らかの理由で、管理人が同意しない可能性もあります。つまり、不在者財産管理人の選任により形式的には手続きが進められても、実質的な合意内容の調整は引き続き慎重に行わなければならないという現実があります。

行方不明者の存在は、当事者の誰にも責任がないことでありながら、手続き全体に大きな影響を及ぼします。特に、亡くなった方が遺言書を作成しておらず、遺産分割協議が唯一の方法となる場合には、行方不明者一人の存在がすべての進行を妨げてしまう可能性があります。こうした事態を防ぐためにも、生前に相続対策として遺言書を整えておくことや、家族間の連絡を絶やさない努力も重要といえるでしょう。

司法書士は、こうした問題の早期発見と法的対応の選択肢を示す専門家です。行方不明の相続人がいるという状況であっても、制度を正しく理解し、必要な手続きを適切に進めれば、相続登記を完了させることは可能です。一人で悩まず、まずは専門家にご相談いただくことが、解決の第一歩となります。

2 共有名義にしたら売却で揉めた

【事例】
父親の相続が発生し、遺された実家の土地建物について、兄弟3人で話し合った結果、「とりあえず今すぐ使う予定もないし、3人の共有名義にしておけばいいだろう」という流れで相続登記を済ませました。協議の段階では特に大きな対立もなく、「そのうち売却するか、誰かが住むか考えよう」と曖昧なまま名義だけ共有にしておいたのです。

ところが数年後、長男が「不動産を売却して現金で分けたい」と言い出し、不動産会社を通じて買い手も見つかりました。しかし、他の兄弟2人は「思い出の家だから残しておきたい」「自分の子どもが使うかもしれないから今は売りたくない」と反対。結局、全員の同意が得られず、売却話は立ち消えに。不動産会社との交渉も頓挫し、兄弟間の関係も悪化してしまいました。

【解説】
不動産を共有名義で相続すると、その後の運用や処分において「共有者全員の合意」が必要になります。具体的には、不動産の売却、賃貸、解体といった行為には、原則として共有者全員の同意がなければ実行することができません。一人でも反対すれば、たとえ他の共有者が賛成していても、手続きは進まなくなります。

このように、共有は一見「平等で便利な形」に見えて、実際には非常に扱いにくい状態なのです。とくに兄弟姉妹などの複数の相続人が相続する場合、それぞれの生活環境や考え方、経済状況が異なるため、将来的に意見が食い違うことは少なくありません。今は仲が良くても、数年後には状況が変わることも十分に考えられます。

また、共有状態のままで年月が経つと、相続が次世代に及び、共有者の数が増えていくという問題もあります。いわゆる「メガ共有」状態に陥ると、10人、20人と共有者が増え、もはや誰がどこに住んでいるのかも分からない、意思統一など到底不可能という状況になります。これは、売却どころか、不動産の管理や税金の支払いさえ困難にする深刻なリスクです。

こうした事態を避けるためには、相続の段階で「共有」にするのではなく、できるだけ単独名義での登記を行うことが理想です。特定の相続人が不動産を取得し、他の相続人にはその代わりとして金銭を支払う「代償分割」などを用いれば、後々の運用がしやすく、柔軟に対応できます。代償金の額は不動産の評価額を参考にしつつ、実務的な支払い可能性も考慮して調整します。

また、売却を前提とした相続であれば、最初から相続人全員で不動産を共有せず、「相続登記前に売却を行う」方法もあります。いわゆる「相続人全員の名義で売却→売却代金を分配→その後に登記手続きを完了させる」という流れです。これには注意点もありますが、状況によっては有効な選択肢となります。

なお、いったん共有名義にしてしまった不動産を後から分割したり、単独名義に変更することもできますが、それには持ち分の譲渡や贈与、登記のやり直しなどが必要であり、余計な費用や手間が発生します。また、不動産取得税や贈与税が課税される可能性もあるため、専門家に相談した上で慎重に判断する必要があります。

「とりあえず共有で…」という判断は、その場しのぎにはなるかもしれませんが、長い目で見ればかえって大きな問題を招くことが少なくありません。不動産は「使い方」と「処分のしやすさ」がその資産価値を左右します。トラブルを防ぎ、資産として有効に活用するためにも、相続段階での適切な分割方法の選択が非常に重要です。

司法書士は、こうした不動産相続の実務に精通しており、個別の事情に応じたアドバイスや文書作成を通じて、後悔のない相続をサポートします。共有にする前に、ぜひ一度ご相談いただくことで、将来のリスクを大きく減らすことができます。

3 登記を放置して固定資産税が倍増

【事例】
祖父が亡くなってから20年以上、誰も実家の土地建物の名義を変更せず、登記簿上は今もなお祖父の名前のまま。不動産の利用も特になく、空き家としてそのまま残っていました。家族の中で「誰が相続するか決めていないし、いずれ考えよう」という気持ちで放置していたところ、2024年の相続登記義務化後、市役所から「固定資産税の納税義務者を変更する手続きが必要」との通知が届きました。さらに、管理状態が悪いとして「空き家対策特別措置法」による勧告を受け、固定資産税が6倍に増額される可能性があることが判明。あわてて相談に来られたケースです。

【解説】
不動産の相続登記を長期間放置すると、固定資産税や管理責任に関して、さまざまな問題が発生します。相続登記とは、亡くなった方の名義のままになっている不動産について、相続人名義に変更する法的な手続きです。以前は義務ではありませんでしたが、2024年4月からは相続開始から3年以内に登記を行うことが法律で義務づけられ、正当な理由なく放置した場合には10万円以下の過料が科される可能性があります。

加えて、相続登記がされていない不動産は「所有者不明土地」として扱われることがあり、固定資産税の納税通知書も登記上の名義人宛に送られることになります。亡くなった人宛の通知を家族が代理で受け取って納税している場合もありますが、これはあくまで便宜的な対応にすぎません。本来は、相続登記を行って正式に所有権を移転し、納税義務者としての立場も明確にすべきです。

さらに深刻なのが、「空き家」のまま放置された建物が行政の指導対象となるケースです。空き家対策特別措置法では、適切に管理されていない空き家に対して市区町村が「特定空き家」として指定し、改善指導や勧告を行うことができます。勧告を受けると、これまで住宅用地特例で軽減されていた固定資産税の特例(1/6または1/3の軽減)が適用されなくなり、実質的に税額が最大6倍になることもあります。

このような経済的負担に加え、倒壊の恐れや防犯上のリスク、近隣からの苦情などが重なると、行政からの強制的な対応(解体命令など)につながることもあります。しかも、所有者不明のままでは行政も手を出せないため、周囲の住民にとっても大きな不安要素となります。

また、登記を長く放置していると、次の世代で相続人の数が増加し、名義変更の手続きがさらに複雑になります。相続人が10人以上になることも珍しくなく、必要書類の取り寄せや署名・押印の手配が非常に困難になります。特に、高齢の相続人が認知症になると、成年後見人制度を利用しなければならなくなり、手続きが長期化することもあります。

こうしたリスクを避けるためには、「不動産の名義が亡くなった人のまま」になっている状態を早期に解消することが重要です。相続が発生したら、できるだけ早い段階で遺産分割協議を行い、相続登記を完了させることで、固定資産税の問題や空き家リスクを未然に防ぐことができます。

司法書士は、登記手続きだけでなく、相続人の確定、遺産分割協議書の作成、必要書類の収集など、登記完了までの一連の流れをサポートします。もし「相続は済んでいるつもりだが、登記していない」という不動産がある場合は、放置せず、まずは現状を確認することから始めてみてください。相続登記を先延ばしにすることは、将来の大きな経済的負担やトラブルの原因になりかねません。

まとめ

相続登記は単なる名義変更の手続きにとどまらず、家族間の協議や不動産の将来活用と深く関わっています。今回ご紹介した3つの事例 ― 行方不明の相続人による協議の頓挫、安易な共有名義による売却の行き詰まり、登記の放置による税金の負担増 ― は、どれも「きちんと話し合い、早めに手続きしておけば避けられた」ケースばかりです。

相続は突然やってくるものであり、その時に冷静かつ的確に判断することは簡単ではありません。しかし、不動産という資産は、放置すればするほど手続きが煩雑になり、負担が増す性質を持っています。名義人が故人のままであれば、相続人全員の合意がなければ一歩も前に進めませんし、放置すれば次世代での相続人が増えて「共有」や「所有者不明化」に拍車がかかるのです。

また、法改正によって相続登記の義務が明文化され、放置すれば過料や税負担の増加といった法的・経済的リスクも高まっています。いまや「いつかやればいい」では済まされない時代になっていると言えるでしょう。

こうしたリスクを未然に防ぎ、不動産を「生かす相続」にするためには、初期の段階から専門家に相談することが極めて有効です。司法書士は、相続登記のみならず、家族の意向や財産の実態を踏まえた最適な遺産分割の形をご提案し、手続きの円滑な進行を支援いたします。

トラブルを防ぎ、円満な相続を実現するためにも、ぜひ早い段階での行動をおすすめします。家族の財産と絆を守るために、相続登記は「後回しにしない判断」が未来への安心につながるのです。

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